糸井 |
こないだうちは2度販売をしたんですよ。
1回目がTシャツで、2回目が袋、
「紙袋」って名づけたんですよ。
つまり、捨てて欲しいんですよ。
大事に、これはバッグだよ、と言っちゃうと
他のバッグと競争しなきゃいけないんで、
どんどん「これ原田さんにあげますよ」って、
袋ごと原田さんにあげちゃえるような
風呂敷みたいなものにして。
それが6500セット売れたんです。
それも、今の原田さんの話とおんなじで、
買いたいだけ売ろうと思ったんです。
1000枚売れたら商売になるんだけど、
売れるかなあってどきどきして、6500枚。
うれしかったですねー。
うちは結局、メンバー一緒ですから、
申し込みがたくさん来れば来たで悩むんだけど。 |
原田 |
存在するメディアを買い占めて
やるという時代ではないと思いますね。 |
糸井 |
100万個売るための方法とは違うと思うんですよ。 |
原田 |
社内でもすすめるんですよ。
メディアのイノベーションを起こせと。
存在するメディアをただ買うんじゃなくて、
ないメディアをつくるのがエネルギーだからね。
マラソンレースを見てても、
ゴールのテープにIBMって書いてあるでしょ。
あれだってメディアじゃあない。
表参道の商店街、あの両脇に
「iMacを1台ずつ置かせてください」
って言っておけば、すごいメディアになる。
そういう、ないものをつくるんです。
ウェブパブリッシングだってね、
今までにないメディアをつくれますよ。
バナー広告じゃなくてもつくれるかもしれない。
もっとこう、爆発的な、今までにない、
階層的に自分たちを探求してゆくような
広告宣伝をできるかもしれない。 |
糸井 |
全部うちからやります(笑)。
とにかく、実験はただですから。
ウェブのすごさというのは・・・
出版で実験したらそのぶん全部
赤字になるけど、考えを試すためには、
ウェブっていくらやってもただなんですよ。
これはやっぱりすごいですね。
無邪気の英語が欲しいなあー。
イノセント?うーん・・・違うな。
俺、昔ペンギンが好きで。
ペンギンって獰猛で無垢なんですよ。
南極行くとペンギン近づいてくるでしょ?
あれはなぜかというと、
敵に会ったことないからですよ。
それは無垢なんですね。
でも敵だとわかった瞬間に
ものすごく突っつく。獰猛なの。
で、ぼくは自分を
ペンギニストと言ってたんだけど
・・・イノセントかなあ?
もうちょっと楽しそうなのが欲しいね。 |
原田 |
無邪気って、直訳じゃないんですよね。 |
糸井 |
だってさ、わざわざ「邪」っていう文字入れてさ、
それを消してるわけでしょ?
「邪」の強さが欲しいよね。 |
原田 |
今までのものにこだわらない、
既成概念にこだわらない、
常識なんてなくていい、
過去のこと見ない、今のこと見ない、
次のことだけを考えてストレートに言える、
これはすばらしいことなんですね。 |
糸井 |
そうか、アメリカは
それをクレイジーにしたんだな。 |
原田 |
スティーブ・ジョブスのことを
本当にうらやましいと思ったのは、誰に対しても、
どこでも、自分の思うことを
無邪気に、ストレートに言える。
こいつはすごいや、うらやましい。
給料もらってないですからね。
今年スティーブに
大きなボーナスが出ましたけど。 |
糸井 |
アイドンケアって言いつづけなきゃいけないね、
今はねー。 |
原田 |
彼、会議やりますよね、意見言いますよね。
誰に対しても、違うと思ったら、
「I disagree with you.」
って来ますから。
相手を傷つけてるなんて思ってないですよ。
彼は自分の意見をストレートに、信念を持って
情熱を持って言っているだけですから。 |
糸井 |
彼はだけど、ジョブスっていうひとは、
ぼく本でしか知らないんだけど、
やっぱり一度は普通のひとになったのが
全部取り払って無垢になったんですか?
それとも天然なんですかね? |
原田 |
ぼくは天然だと思う。
ベジタリアンで、水しか飲まないでしょ?
お酒飲まない、ビール飲まない。
こないだ食事してても、
3時間くらいでしたけど、
最初から最後まで仕事の話、どんな商品を
つくったらいいかという、そんな話ばっかり。 |
糸井 |
それ、楽しいんでしょ? |
原田 |
楽しいです!
こっちでこうやってぼくが
別のひとと話しているとしますよね。
彼、きいてるんです。
で、話に乗ってくるんです。
すごい耳いいし、ずっとしゃべってて
こっち向いてくるんです。 |
糸井 |
聖徳太子だ。 |
原田 |
(笑)すごい情熱家ですよ。
(つづく) |