糸井 |
とんでもないものへのリスペクトがないと、
つまんない民主主義になるじゃないですか。 |
原田 |
そう。デジタルに関しては、
マック使えば誰でも音楽つくれる、
絵を描ける、デザインできる。
だけどぼくはデジタルになればなるほど、
本当のバリューは、アナログのバリューを
組みこむのが商品価値だよ、と思ってるんです。
音楽もそうです。
CDだったら、完全にノイズレスですよね。
そこにホワイトノイズをわざと入れる。
アナログのバリューをそこに乗っけてるんです。
スティーブ・フェローニという
ドラマーがいるんです。
むつかしいリズムは全然叩いていないんです。
全然むつかしくない。ちょっと遅れてるんです。
そのズレの感覚っていうのが、
誰が真似してもできない。 |
糸井 |
それがいいわけですか?やっぱり。 |
原田 |
それはもう!(いい)
気持ちを揺さぶるんです。
今度糸井さんにお見せしますけど、
そのドラムのリズムは、単純ですよ。
ツンツツタンタタ、そういうレベルですよ。
だけど、シンプルだけど、ぐいぐい動くんです。
それは、アナログ的に揺れてるんです。 |
糸井 |
彼のなまりみたいなものですよね? |
原田 |
そう、なまりみたいなもの。 |
糸井 |
それが気持ちいいんだ。 |
原田 |
ぼく、いっぱい
素晴らしい演奏をきいたことがありますが、
1回ブルーノートで、名前は覚えていませんが、
6人くらいのコンボで、
サクソフォンプレイヤーがいる。
ジャズっていうのは最初、
アンサンブルではじまりますよね。
そのうちソロになりますよね。
そのうち、フォーバスといって、
4小節ずつかけあいがはじまりますよね。
で、フォーバスになった、
ピアノが4小節、ベースが4小節、
ドラムが4小節、がんがんまわって、
最高潮に達するんです。そのうちにサックスの番で、
次の4小節、サックス、って思ったときに、
サックスのひとは体を動かすだけで、
わざと音出さないんです。
会場が揺れてるんです。
音がないのに揺れてるんです。
もう最高に楽しかった。
音を出さないで
みんなの気持ちをスイングさせるというのは、
あれは空気がそうなんです、音じゃないです。 |
糸井 |
それって、人間という個と、人類という類を
みんな兼ねそなえている、人間じゃないですか。
そこのところを感じた瞬間ですよね。
しびれるなー。 |
原田 |
1,2,3,4、ドンとサックスに来るでしょ?
音ないんですよ。でもみんな、
体が揺れてるんですもん。 |
糸井 |
それってオーディエンスがいなかったら
ありえないですよね。 |
原田 |
そうです。 |
糸井 |
そこがおもしろいんです。ネット的なんですよね。 |
原田 |
あれは楽しかった。
(つづく) |