帰ってきた松本人志まじ頭。

第13回 ぼくたちは、着るものをどう変えるだろうか。



糸井 年がイッていておしゃれをしていても、
「まるで老けたオカマのように見える日」
「何でもなくおしゃれしてると見える日」
には、明らかに違いがありますよね。
でもたぶん、その差は、心の状態の差なんです。
着ている側の魂なんですよ。

着るものに自分の売り物を決めて
そこを押し通そうとすれば、それはそれで
すごく効率がいいんだろうけれども、
そこに居続けようとすると
絶対にハズしますよね。
だから売り物は作らずにいくほうが
やっぱり、長く楽しめると思います。
松本 そっか。だから高須は古着をやめたんだ。
高須 いや、ぼくは本人では気づいていなくて、
知らずにやめていた時に、服屋の兄ちゃんに、
理由を説明してそうだなあと思ったんです。

また古着がよくなる時期も、あるんだって。
古着を着ていておしゃれに映る年齢が、 
50歳を過ぎたらまた来るって言われたから、
ビンテージのジーンズとか
とってあるんですよ・・・。
そこらへんは、ダッフルコートとおんなじですよ。
糸井 おお、ダッフルコートねー!
高須 ダッフルコートは、
中途半端に着てると浪人生みたいに見える。
だけど、40歳くらいになると、
ダッフルコートがかっこよくなるでしょ?

要は、時代を間違えると、
とんでもないことになってんねんけど、
その時代を越すとかっこよくなるという。
それは、古着を着ないのは、
自分でわかってるんだ、って(笑)。
今着るとサイアクだって・・・。
松本 (笑)防衛本能が働いたんだ。
高須 (笑)やばい、って。
「やばくなってまうから、
 ちょっときれいにしようという
 心がはたらいているんです」と言われて、
なるほどなあと思った。
松本 アンテナは受信してるんだ。
高須 そう、やばいやばい、っていうのを。
糸井 うん、あるんだろうね。

ただ、やっぱり、ぼくたちは、
こういう話をしているという時点で、
残念ながら、ファッションには
縁のない育ち方をしたっていうことですよね。

例えば、イギリス風の育ち方をして、
お父さんもお母さんもおしゃれで、
という子どもだったら、
ごく普通に古着も着ないで
親父のような格好をしてても、
若い時には若く見えて・・・ってなるだろうし。
末永 日本には、そういうの、ないでしょう?
糸井 ないかー。あ、末永さんなんて、
坊ちゃん坊ちゃんしてるけど、どうですか?
末永 あんまり、考えたことがないですね。
古着を着ようとかいうのって、
ある種のアピールですよね。
そういうのは、なかったですね。
ファッションで自分を主張したいとは。
糸井 皇族のひとたちの服装って、
やっぱりたいしたもんだなあと思うんですよ。
ああいう人たちを見てるとさあ。
あの人たちって、やっぱり
俺たちには絶対にないものを持っているよね。

似合うだの似合わないだの
ダサいだのといろいろ言っている奴は
そういうところで
自分を出さないといけない人で、
皇族の人なら「失礼のないように」と
ただ思っていればいいわけですから。

割とみっともないのは、
急にファッションリーダーになるやつで、
だから、松っちゃんが坊主になった時に、
俺、やった!と感じたの。
「これで、何にも似合えへんやろ!」
って言いたかったのかと思って。
松本 そうですね。
糸井 スタイリストの借り着を着てるのに、
「じぶん、それどこで買ったの?」とか
お笑いのタレントが言うのを聞いていると、
でも、あなたは、
それを言う資格ないかもしれないよ、
と思っていたから。

いい悪いは別にして、
昨日はじめたようなやつらが
他人にああだこうだ言うっていうのが、
何か貧乏くさいですよね。

でもさあ、年とってから
カジュアルと言えばチノパンというところで
落ち着かないとすると、苦労するよね。
高須 (笑)苦労しますよ。
糸井 明らかに単なる「無理な人」というのが、
見本としていっぱいいるじゃないですか。
俺も、いつでもそこになる可能性があるし。
高須 坊主ってずるいですよね。
いいとことったなと思ったな。
考えたやろ?それについていろいろと。
なりたいという気持ちもあったやろうけど。
松本 うーん・・・。
そうだな。
雑誌でもいろいろ聞かれたし、
いろんな理由をいっぱい言ったから、
まあ、ぜんぶが何%かはほんとうだし、
100%はぜんぶほんとではないんだけど、
何でやろうなあ・・・?
でも、よかったと思う。
糸井 坊主って、さっき言った、ダンボールで
家を建ててみせるというのに近いよね。
松本 うん。
糸井 俺に坊主を載せたら、坊主が変わるぜ、
というくらいの気迫を感じるよね。
松本 『HEY! HEY! HEY!』をやっていて、
すごく感じたことがあったんですよ。
それもどっかで言ったと思うんですけど、
まず、ダウンタウンが出てきて、
「キャー」って言われるんですよ。
その次にミュージシャンが出た時にも、
やっぱり「キャー」で・・・。

「おんなじキャーか?」
それすごい嫌やったんです。

別にミュージシャンが悪いことはないんですけど、
でもまあ、坊主にしたら変わるのかなあと思って。
結果、まあ、思ったほどは
変わらなかったんですけど。
糸井 俺も坊主に近いくらいのことをしたことがあって。
「みんな、過剰にかっこいいんじゃない?」
と思っていたから。青山あたりで、
全員がかっこいい5人くらいの飲み会を
よく見かけたりするじゃない?

でも、それはちょっと、
フカシが強すぎないか・・・?と思った。
松本 (笑)
高須 フカシが強いって(笑)。
糸井 それで、例えばの話、静岡とかに出張に行って、
「東京から来たんですか?」とか聞かれて
「うん、そう」とか言ってるのは、ちょっと、
そこでトクしすぎてるんじゃないか?と思って、
その流れがちょっと嫌だったの、俺。
で、何か無理してるなあ、
みたいなのじゃないところで探したら、
選択肢に坊主は、あるもんなあ。
松本 うん。むつかしいですよ。
今着ているのも、毎年、
冬になると買う、ものなんですけど。。
左官屋ハイネックみたいなので、
ポケットがついてて、
1000円ぐらいのやつなんだけど。
これは、何か俺っぽいなと思ったんです。

でも、あんまり行き過ぎて、
「そればっかり」になったら、
今度はまた、やばいでしょ?
糸井 そうなの。裏表なんだよね。
高須 そっちいってるやつと思われる。
松本 ね?
「こいつ無理してんなあ、
 なんかフカしとんなあ〜っ」
になってきたりするから、
そっちだけに意識がいくと、かっこ悪いし。


(つづく)

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2001-01-17-WED

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