糸井 |
年がイッていておしゃれをしていても、
「まるで老けたオカマのように見える日」
「何でもなくおしゃれしてると見える日」
には、明らかに違いがありますよね。
でもたぶん、その差は、心の状態の差なんです。
着ている側の魂なんですよ。
着るものに自分の売り物を決めて
そこを押し通そうとすれば、それはそれで
すごく効率がいいんだろうけれども、
そこに居続けようとすると
絶対にハズしますよね。
だから売り物は作らずにいくほうが
やっぱり、長く楽しめると思います。 |
松本 |
そっか。だから高須は古着をやめたんだ。 |
高須 |
いや、ぼくは本人では気づいていなくて、
知らずにやめていた時に、服屋の兄ちゃんに、
理由を説明してそうだなあと思ったんです。
また古着がよくなる時期も、あるんだって。
古着を着ていておしゃれに映る年齢が、
50歳を過ぎたらまた来るって言われたから、
ビンテージのジーンズとか
とってあるんですよ・・・。
そこらへんは、ダッフルコートとおんなじですよ。 |
糸井 |
おお、ダッフルコートねー! |
高須 |
ダッフルコートは、
中途半端に着てると浪人生みたいに見える。
だけど、40歳くらいになると、
ダッフルコートがかっこよくなるでしょ?
要は、時代を間違えると、
とんでもないことになってんねんけど、
その時代を越すとかっこよくなるという。
それは、古着を着ないのは、
自分でわかってるんだ、って(笑)。
今着るとサイアクだって・・・。 |
松本 |
(笑)防衛本能が働いたんだ。 |
高須 |
(笑)やばい、って。
「やばくなってまうから、
ちょっときれいにしようという
心がはたらいているんです」と言われて、
なるほどなあと思った。 |
松本 |
アンテナは受信してるんだ。 |
高須 |
そう、やばいやばい、っていうのを。 |
糸井 |
うん、あるんだろうね。
ただ、やっぱり、ぼくたちは、
こういう話をしているという時点で、
残念ながら、ファッションには
縁のない育ち方をしたっていうことですよね。
例えば、イギリス風の育ち方をして、
お父さんもお母さんもおしゃれで、
という子どもだったら、
ごく普通に古着も着ないで
親父のような格好をしてても、
若い時には若く見えて・・・ってなるだろうし。 |
末永 |
日本には、そういうの、ないでしょう? |
糸井 |
ないかー。あ、末永さんなんて、
坊ちゃん坊ちゃんしてるけど、どうですか? |
末永 |
あんまり、考えたことがないですね。
古着を着ようとかいうのって、
ある種のアピールですよね。
そういうのは、なかったですね。
ファッションで自分を主張したいとは。 |
糸井 |
皇族のひとたちの服装って、
やっぱりたいしたもんだなあと思うんですよ。
ああいう人たちを見てるとさあ。
あの人たちって、やっぱり
俺たちには絶対にないものを持っているよね。
似合うだの似合わないだの
ダサいだのといろいろ言っている奴は
そういうところで
自分を出さないといけない人で、
皇族の人なら「失礼のないように」と
ただ思っていればいいわけですから。
割とみっともないのは、
急にファッションリーダーになるやつで、
だから、松っちゃんが坊主になった時に、
俺、やった!と感じたの。
「これで、何にも似合えへんやろ!」
って言いたかったのかと思って。 |
松本 |
そうですね。 |
糸井 |
スタイリストの借り着を着てるのに、
「じぶん、それどこで買ったの?」とか
お笑いのタレントが言うのを聞いていると、
でも、あなたは、
それを言う資格ないかもしれないよ、
と思っていたから。
いい悪いは別にして、
昨日はじめたようなやつらが
他人にああだこうだ言うっていうのが、
何か貧乏くさいですよね。
でもさあ、年とってから
カジュアルと言えばチノパンというところで
落ち着かないとすると、苦労するよね。 |
高須 |
(笑)苦労しますよ。 |
糸井 |
明らかに単なる「無理な人」というのが、
見本としていっぱいいるじゃないですか。
俺も、いつでもそこになる可能性があるし。 |
高須 |
坊主ってずるいですよね。
いいとことったなと思ったな。
考えたやろ?それについていろいろと。
なりたいという気持ちもあったやろうけど。 |
松本 |
うーん・・・。
そうだな。
雑誌でもいろいろ聞かれたし、
いろんな理由をいっぱい言ったから、
まあ、ぜんぶが何%かはほんとうだし、
100%はぜんぶほんとではないんだけど、
何でやろうなあ・・・?
でも、よかったと思う。 |
糸井 |
坊主って、さっき言った、ダンボールで
家を建ててみせるというのに近いよね。 |
松本 |
うん。 |
糸井 |
俺に坊主を載せたら、坊主が変わるぜ、
というくらいの気迫を感じるよね。 |
松本 |
『HEY! HEY! HEY!』をやっていて、
すごく感じたことがあったんですよ。
それもどっかで言ったと思うんですけど、
まず、ダウンタウンが出てきて、
「キャー」って言われるんですよ。
その次にミュージシャンが出た時にも、
やっぱり「キャー」で・・・。
「おんなじキャーか?」
それすごい嫌やったんです。
別にミュージシャンが悪いことはないんですけど、
でもまあ、坊主にしたら変わるのかなあと思って。
結果、まあ、思ったほどは
変わらなかったんですけど。 |
糸井 |
俺も坊主に近いくらいのことをしたことがあって。
「みんな、過剰にかっこいいんじゃない?」
と思っていたから。青山あたりで、
全員がかっこいい5人くらいの飲み会を
よく見かけたりするじゃない?
でも、それはちょっと、
フカシが強すぎないか・・・?と思った。 |
松本 |
(笑) |
高須 |
フカシが強いって(笑)。 |
糸井 |
それで、例えばの話、静岡とかに出張に行って、
「東京から来たんですか?」とか聞かれて
「うん、そう」とか言ってるのは、ちょっと、
そこでトクしすぎてるんじゃないか?と思って、
その流れがちょっと嫌だったの、俺。
で、何か無理してるなあ、
みたいなのじゃないところで探したら、
選択肢に坊主は、あるもんなあ。 |
松本 |
うん。むつかしいですよ。
今着ているのも、毎年、
冬になると買う、ものなんですけど。。
左官屋ハイネックみたいなので、
ポケットがついてて、
1000円ぐらいのやつなんだけど。
これは、何か俺っぽいなと思ったんです。
でも、あんまり行き過ぎて、
「そればっかり」になったら、
今度はまた、やばいでしょ? |
糸井 |
そうなの。裏表なんだよね。 |
高須 |
そっちいってるやつと思われる。 |
松本 |
ね?
「こいつ無理してんなあ、
なんかフカしとんなあ〜っ」
になってきたりするから、
そっちだけに意識がいくと、かっこ悪いし。
(つづく)
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