第117回
1月1日・土曜日
私が小さかった頃、たいそう器量のいい
おせちという女がいて、誰もが夢中になるという
華やかな時代があった。
しかし、今日の食卓の席をもって、と、
引退声明をのべたのが、私にはわかった。
たぶん、来年の今頃は、もうここにはいない。
さよならおせち。ごめんねおせち。
誰も喜ばなくて。箸がのびなくて。
器量は悪くとも、ずっしり、しっかり者の雑煮が、
このあとも継いで行くらしい。
「最後に湯気で勝つなんて、思ってもみなかったべっさー」と、
訛りながら雑煮がすまなそうに笑った。
イラスト:清水ミチコ
1月2日・日曜日
新年早々ネタ書き。
今日から私は部屋にこもるから、とは言いながら、
部屋のいろんな所が気になり、掃除してまわる。
受験の時みたい。
実は自分はA型で、几帳面タイプなんじゃないかな、
と思うくらい。
ノート類を整理してたら、
学生時代に、友達(女の子)からもらった、
「ノート一冊にびっしり書いてある手紙」、が見つかり、
思わず読みふけった。
それはもうまるでそういう世界。
「おじょーは(当時のあだ名)、
いつも何を考えてるのかわからない」を、詩にしてある。
へこんだ。
友達も、これが大人になってから
また見る可能性がある、とは思ってなかったんだろうな。
私もきっと、忘れている恥ずかしいモノが、
どこかで生きているかも。ぞうー。
1月3日・月曜日
初電話に出たら、ものすごいダミ声。
まちがいなくいたずらだ! と思ったら
「今、高平ん家にいるんだけどさ、来ない?」と、
ご陽気な坂田明さんだった。
「監督、何人くらいいるんですか、そっちは」と聞いたら、
「そうねえ、ざっと見て160人はいないけど、5人」。
心はもの凄く揺れたが、
「今、ネタ書いてるんで、やめときます。
ジアンジアン、来るように皆さんに言っといてね」と、
こっちから誘った。
行かねえぞー!と遠くからヤジが聞こえた。
1月4日・火曜日
コドモとハムスターのオリを買いに行く。
今日まではティッシュペーパーの箱の中。
私はハムスターが増えるのはぜんぜん構わないんだけど、
「成長が違うハムスターを
同じオリで一緒に生活させると、ケンカになって、
弱い方が死んでしまう可能性があります」だそうで、
当然この、「家の中にオリが1つ増える」、
というのがすごくイヤなんだなー。
2つもあるといきなり部屋が超カッコ悪くなる。
1つ置いたってそうなんだけど、2つだと、意味が違う。
意味が。
異常に好き!みたいなインテリアになるのが
もう目に浮かぶ。
私は客人の一人一人に説明するだろう。
そう好きではないんですよ、みたいな顔で。
そんな意味のことをコドモに言う。
「ああ、わかる、わかるけどー」と言っていたが、
もうオリを買う事で頭がいっぱいで幸せ!
ってな表情だった。
店内で選んでると、男子高校生らしき2名、
くすくすと笑いながらハムスターを選んでいたんだけど、
ちょっと聞こえてしまった冗談が、
いかにも買ってからすぐにいじめられそうで、すくんだ。
帰りに歩きながら、
ブルーになるな、忘れろ、今の会話、と暗示かける。
1月5日・水曜日
TBSへ。
お正月休みはたっぷりあったはずなのに、
かえって疲れてるのは何なんでしょう、ゆるむんですかね、
なんて会話を、メークしながらヤノッチと。
ヤノッチ、
「お正月はたくさん番組をとりまくるから、
ビデオのテープをたくさん買っておいたのに、
結局これ、ってのが1本だけだった」と言ったので、
何を録った? と聞いたら
「ジャッキー・チェンの映画!」(タイトル忘れた)
だそうで、
「お、さっそく年始から気が合わないね!」
と言って笑った。
しかし、
「ジャッキー・チェンの映画は、かえって
日本語の吹き替えで見ないとカンジが出ない」
ものなのだそうだ。
そんなに面白いんなら、私も1回見てみよっかな、
たまたま見逃してるんだよ。
ブルース・リーものは全部見てるのに。
どれから見るのがわかりやすいかな、と聞いたら、
「どれも確実にわかりやすいっす!」との事だった。
意表をつかれた。
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