SHIMIZU_MICHIKO
清水ミチコの試供品無料進呈
(秘密厳守)
1999年11月の日記

第105回

11月1日・月曜日
先月から楽しみにしていた学芸会。
大橋君を探せど探せど見つからなかった。
休んだのかなあ、おかま役、見たかったのに、
と思っていたら、最後になって発見。
と、いうのはなんと、顔がかわいい上に、
声ももともと高いのがわざわい(?)し、
まったく女装しているとはわからなかったのだ。
つまり、完全に女の子だ、と素通りしてしまい、
誰もが(普通に演技をする女の子)と、
思ってたようだった。
失敗の大成功なのだ。

コドモは、あとからビデオを見て
「私、こんなヘタクソだったの?!」と、こぼしていた。
わかるよ、その気持ち。
一人一人にビデオがなかったコドモ時代に生まれて、
本当に良かった、と思えるくらい。

11月2日・火曜日
日テレ生放送。
アナウンサー(女子)が
「私、将来、かわいいおばあちゃんになりたいんです!」
と言ってた。なんともぬるい。私なら自殺する。
そのあと羽田へ。
「唐津くんち」、NHK生放送のため。
こういう仕事でもないと、祭りには参加しないなあ、
と思っていたら、ホテルに「中尾彬御一行様」との看板が。
趣味でいらしているのだそうだ。
すごいな。これぞ「男の」趣味と実感した。



11月3日・水曜日
くんち、凄い。派手!彩色!
私は高山出身なので、
祭りは雅びーなものしか知らなかったんだなー。
男しか参加できず、女性はウラで豪勢な料理をふるまう。
ここにドメスティックな日本人の姿を見たような。
女性はちいとも
「なんで参加できないんですか! 女性差別です!」
なんちゅうもんも、なかったようだった。
「頑張りんしゃい!」そんなカンジよね。いいねー。
だってホント、祭りって、
絶対的にどっか「男の」趣味なんだもん。



11月4日・木曜日
ビバリーのあと、「スーパー知恵モン」録画撮り。
「自由が丘特集」だったんだけど、
あのO監督(仮名)が電話に出られ、
さすがの野球音痴の私ですら、
(そりゃあ、この時期ゃ、
 ダイエーの優勝について聞かねば)と、
思えるところなのに、志の輔さん、O監督に、
「ナボナ」についてのトークを終始せねば、
という気まじめさが面白かった。
O監督も、「ナボナ」についてだけを、
マジメに振り返っておられた。
「話題のあの監督が、ナボナを語る!」というのは、
もったいないようで、貴重かもしれない。
ちなみにナボナは4種類あって、チーズ、パインなど、
「お菓子のホームラン王」の味を、続投してるそうです。

11月5日・金曜日
夢でガスターテンのCMに出ていた。
それを話したら、なんという偶然か、
ヤノッチがそれをたまたま持っていて、
「これ、おいしいんですよー、胃薬なのに」と言う。
これは現実の話。
私も味見してみたら、ホントにおいしかった。
「こういう仕事が来てるんだけど、、」
という声を聞いているうちにまた眠くなった。
「疲労を披露するヒーロー」のようなカン違いの顔は、
まったく気持ちいい。
でも、内容はぜんぜんヒーローじゃなかった。
そのあと、ファンレターを全部まとめ読み。
私のファンは、私に似ている。

1999-11-20-SAT

第106回

11月6日・土曜日
朝からLF生放送。
早起きして出かけると、
「ちゃんと働いてる!」というカンジがする。
同じ内容でも、遅くから始まる仕事だと、そうでもない。
なんでだ。

そのあと今年最後の「おかず屋さん」収録。
上品な先生と、料理を作っていると、
どこからか「ハエ」がやってきた。
料理番組には一番向いていない生き物と、
ひとりさりげなく戦ったつもりだったが、
時々パン!パン!と、私が濡れタオルでたたくので
(これしか武器がなかった)、
先生、驚いておられたようだった。
ハエ2匹の上、信用まで逃した。


おかず屋さん、スタッフ

そのあと、山田五郎さんとトーク。
「ヤマダゴローさんって、本名ですか?」と聞くと、
「そんなわけないじゃん!まさか!」と、
驚いたように笑っていた。
昔、さくらももこさんにも、
同じ驚き方をされたことがあったっけ。

11月7日・日曜日
天才てれびくん収録。
椎名林檎とゆず。まるで果物つながりのようだが、
ぜんぜん爽やかじゃないモノマネ。
この番組のディレクター山田さんが、
この日記を読んでくれてるんだそうだ。

ところが私が、
「私と会った人が、その日の日記に、
自分の登場シーンがないと、
読んでからすごくガッカリするらしいんだよ。
でも、全員を全部書くなんてさー、
できるわけないじゃんねー」と言うと、
「や、すごくわかる、それ!(自分と会った事が)
小さいことなのか、と思っちゃう」と言っていた。
皆さん、本当に大切な出会いを、ここに書くでしょうか。
いいえ。
忘れそうだから、書いているにすぎないのです。

家に帰ると、松任谷由実さんから
新譜の「FROZEN・ROSES」のテープと
手書きのメッセージが届いていた。
驚きながら夫に見せると、
すぐに「いたずらだよ」と言う。
どうしてすぐ人を疑うのかな、かわいそうな人、
と思いながら、夫の指さすところ
(差出人のシールをはがしたあと)を見てみたら、
知り合いの名前がうっすらと残っており、
このいたずらに、一気に激怒。
しかもこの日記を読んで、
ほくそ笑んでいるそいつの姿を想像すると、
さらにくやしい。ま、笑ったけど。

11月8日・月曜日
「BS・マンガ夜話」に出演。
「ガラスの仮面」編。
ゲストは私と呉智英さんと、荻野目慶子さん。
なんでも荻野目さん、この「ガラスの仮面」を読んでから
すぐに劇団に入りたくなり、本当に入団して、
そのあと「奇跡の人」のくだりを読んで
オーディションを受け、ヘレンケラー役に合格して、
舞台に立ったのだそうだ。

吸い込まれるような目で、
「私にも本当に、紫のバラの人がいたんです……」と言う。
「ファンという意味かな?」と聞くと、
「そうじゃなくって……」と言う。
興味深くなったところで、
呉智英さんが話を主題(マンガ)にもどそうとしたので、
「今は、しーっ!!」と、止めた。
ここまでピュアだと、
そのゆっくりした話し方から、表情から、
見てるこっちまでストイックさがうつりそうなほどだった。
いつかUFO見るな。

11月9日・火曜日
日テレ生放送。
そのあとそのままの格好で女性誌取材。
カメラマンさん、毎週ビバリーを
聴いてくださってるんだそうだ。
「ビバリー聴いたあと、こっちの番組にチャンネル変えて、
何時になるとここ行って、深夜はここで」というルートが
聞いてておもしろかった。
「普通、カメラマンってFMっしょ?
俺は違うんだよお、わかってんだよ」と、嬉しそうだった。

そのあと、地味な服に着替えて、
チャリにまたがり、小学校の個人面談へ。
「(コドモが)けっこう恥ずかしがり屋ですね」
と先生が言ったので、
「あー、私もそうでしたねー」
と言ったら、笑っておられた。
しかしそのあとはずうっと誉められるので、
「いいえ」、「いやいや」、「そんなそんな」
という、謙遜の返事ばっかり。

周りの主婦に聞いたところ、
「今のちゃんとした先生とは、そういうもの」らしい。
「欠点をけなすより、長所を誉める」と。やっぱり。
でも、えらいなあ、その姿勢。
私も、子供の頃は、「誉められた!」と思ったら、
本当にやる気になってたもんなあ。
実は大人になってもそうなんだけど。

11月10日・水曜日
「スーパー知恵モン」生放送。
そのあと銀座で雑誌の仕事があったので、
限られた時間の中、THE GINZAや、BEAMSなどで買い物。
買うときは必ずヤノッチに相談。
試着しても、彼女が首を横にふると、
私があっさりもとにもどすので、お店の人はヤノッチに、
「何者なんだこの人」という顔だった。

セーター、ブーツ、パンツなど、
暖かそうな洋服をいろいろ見てまわった。
来週、吉田日出子さんと二人で、
佐渡へ行く旅番組があるので、それ用にと。

夕方、家でそれらをもう一度着てみて、
「やっぱり正解!」と思いながら、
新しいブーツのまま派手に居間を闊歩し、
家族に披露した。コドモも「私も歩く」と、
そのブーツをぶかぶかとはいて歩いた。
しかしそのうち「暖まるから」と言って、
ハムスターをブーツの中に入れたがるので、
すぐに箱にしまった。

1999-11-24-WED

第107回

11月11日・木曜日
ラジオ、ビバリー昼ズ。
めずらしく放送がつまーんなかった。
高田さんもあんまりのようだったが、
私もローテンションで、
あがけばあがくほど最悪なコンビと化した。
不思議なもので、こういう時の終了後の疲労はきつーい。

よかった時は、それだけ体も使ってるハズなのに、
疲れを知らない子供のように(シクラメンの香り)、
「もう10本録りませんか!」なほど、元気になるのに。

いきなり天気や交通情報をお願いするという、
AMのださーいところは、結構好きなんだけど、
それすらめちゃくちゃ「くだらねえ事」に思えてしまった。

そのあと歯医者さんに行ったら、虫歯を発見されるし、
夫はまたアレルギー出てるし、
コドモの部屋はまたちらかってるし、と、
とにかくマイナーコードな一日。

11月12日・金曜日
悪いことは続くもので、某番組の偉い方から
「あんまりふざけないで(コメントして)ください」
と言われる。あれ!意外な!
ただ「あっ、すみませんでした」と頭を下げながらも、
心では(ふざけを叱られている女性の姿=自分)が、
なんだかちょっとすごい、と思えた。
小学生のレベルじゃないの。
それにしても私は、生まれてからずっと
同じ注意ばっかり受けてるような気がする。

11月13日・土曜日
北海道の友達に電話した。
こないだカニを贈ってくれたので、お礼がてら。
つい最近、この友達は自宅にFAXをつけたばかりで、
紙を送り合うのがが楽しく、しょっちゅう人と
やりとりをしてたのだそうだが、彼女のおばあちゃんが、
「清水ミチコさんのところに“のしイカ”も、
 それ(FAX)で送ってやれんのか」と、
まじめな顔で袋を指さしたと言う。
なんてかわいーのだ。
想像すると、匂いが残りそうだ。
夫と二人、深夜までしゃべる。

11月14日・日曜日
神奈川大学の学祭へ。
気の利いた声がかかり、さーすが、と思った。
ヤジというもの、すごーくそこに出る人の空間を象徴する。
いいヤジだった。ありがとうね。

帰りに、久々に田園調布のPATE屋へ行って、
レバーパテとガーリックトーストなどを買う。
家用と、ヤノッチ用、プレゼント用にと分けてもらった。
久々におっとりした林さんと話をしながらも、
言いたかった言葉がどうしても照れてしまい、
また言えなかった。
林さんも、臭い言葉に敏感そうなので、
どうしてもストッパーがかかってしまったりしてね。
「こういう意味の事を、気兼ねなく伝えたいときには、
 どう言ったらいいか、のハウツーに答えてくれる」
という職業があったら繁盛するんじゃないかなー。

そのあと、懐中電灯を片手に月の観測する。
これは仕事などではなく、コドモの宿題のつきあい。
月って、黙って見てると、
見てるようで、見られてるような不思議な気分になる。

11月15日・月曜日
吉田日出子さんと、新潟駅で待ち合わせ。
BSの番組で、二泊三日の旅行をするのだ。
しかしながらそこは仕事。
前もってスタッフが下調べをしてくれて、
この場所へ行こう、と言って移動するはずが、
吉田さん、わかってるくせにニコニコと
全く違う場所に行きたいと言う。
そのまま行った。さすがアングラの女王。

今やパンクロッカーですら、言われた事を聞くようで、
時間どおりにちゃんと来たりするもんねえ。
そこへもってきて、
料理がヘタ、眼が悪い、スローな話し方、と、
もてる女性の3要素を全て持っていた。

食事をしてたら、吉田さんに、妙齢のご婦人が思いっきり
「古田さん、ですよね!」と、話しかけてきて、
「や」と、つまっておられた。
顔、隠して笑った。

私はいつか、新幹線で、メガネのご婦人に、
「お、落合先生じゃ、ございませんか!」と、
感動の目で話しかけられてこられ、
「や、違いますね、私は」と言った事がある。
落合先生って、誰。信彦か。恵子か。

ちなみにナンシー関さんは、駅で切符を買ってたら、
若い女の子がさーっと隣にやってきて、
まちがいない! という表情で
「ドラムスの、ユキ、さん、ですよね!」と、
嬉しそうに言われたんだそうだ。
いったいどんなグループなのだ。
ドラムスのユキ。

1999-11-27-SAT

第108回

11月16日・火曜日
吉田日出子さんと小型飛行機に乗って新潟から佐渡へ。
低空飛行で、ゆっくりと海を渡るのって、
けっこう怖かった。
ここで死ぬかもしれないから、
「カメラに向かって最後のメッセージを二人で言う」
という事をしたのだが、
終わってから吉田さん、私にそっと耳打ちで、
「私ねーえ、ホントーにいつ、死んでも、いいのよねー」
と、おっとりと、でもマジメに。
独身は言えるからねぇ、私はまだ困るよー、と唱えた。
パンクになれんー。

佐渡は能がさかんな所なんだけど、
夜、能舞台とピアノまで借りて、二人で歌を歌うことに。
右には古い神社、左手には鳥居、
前にはかがり火と、超渋豪華。
でも寒くて、
“体中に貼ったホカロン”で一命をとりとめた。



深夜、一人で、「たぶんもう誰もいないでしょ」と、
温泉に入ってみたら、のんびりと歌声が聞こえてきて、
その声の主は吉田さんであった。
私一人で照れて、
「どーもー、きゃー」と、笑って入ったが、吉田さんは
「お先にー」と、まったく平気。高い。
(って言葉はおかしいかもしれないけど)高いのよねー。
バディは二人ともある部分低いんだけどさ。

湯船で二人、窓の景色を見ながら、
自由劇場について、性格とのつきあいについて、
岡林さんとの話などを聞く。
頭の回転のいい人って、業界に多いし、
話しててもムナシーくなったりするんだけど、
ゆっとりした話し方の人って、
じわじわと脳裏に味がしみてくる。しみたねー。

寝る前に部屋でヨーヨー・マをMDで聴きながら寝る。
(佐渡にヨーヨー・マなんてどうよ、案外)
なんて思って持ってきたんだけど、
北の海では演歌っぽいような、うなるような
日本のこぶしの声が聴きたくなるもんなのでした。

11月17日・水曜日
二人で名物「たらい船」に乗る。どうなのこれ。
カメラ回り終わったところで、空にとんびが飛んでいて、
吉田日出子さん、まじめに空に向かって、
船からホーイ、ホーイ、ホーイ、と、
何度も呼び続けていた。
アホみたいですよー、と言いながら降ろした。

ところで、吉田さんのお姉さんは、
アメリカで精神科医を営んでいるそうなんだけど、
吉田さんが20代の頃、さる事があり、
かなりブルーで、ずっと部屋に閉じこもっていた時、
たまたま日本に帰っていた「お姉ちゃま」に、
「あなた、なんだかおかしいわ。
 お姉ちゃまとお話しましょう」と言われ、
「いやなの」、
「しましょうよ」、
「診てもらうのって、いや」、
「あら」と会話が止まり、
「どうして、診てもらうのがいやなの?」
と訊かれたという。
「誰とも話したくないから」。
「それは、どうして?」と、
そのあとずーっと「どうして?」を
繰り返されたんだそうだ。

そして、
「どうして」「どうして」「どうして」と、
少しづつ言葉でたどって行くと、
もちろん結果は出ないんだけど、
ひもとけるものが見えてきたんだそう。
あ、こんなことだったのか、
ここをクリアすればいいのかな、と、
小さな糸口が見つかったんだそうです。

こうやって人の話をずんずん聞いてきた職業の人も、
精神的にすごい鍛えられてるんじゃないかなあ。
もとシンガーソングライターで、
精神科医のきたやまおさむさんの
「みんなの精神科」という本でも、
「とにかく話を聞き出す、
 このくらいで、我々はお金をもらってます」
と書いてありました。
ただし、「私はどうしてモノマネをするのか」を
どんどん考えていったら、ややブルーになってきたので、
面白半分に自分に聞かないように。

11月18日・木曜日
ラジオビバリー昼ズとCBC。
そのあと美容院で、髪にストレートパーマをかけてもらう。
一瞬でサラッサラに。10代の時を思い出した。
この、サラッサラ、を肌で何度も感じたく、
「呼んだ?」とか言って、
意味もなく左右に首をぶんぶん振る。

夕方、井上陽水さんのコンサートへ行った。
私が「生まれて初めて行ったコンサート」は小6の時、
親に連れられて行った名古屋での
「デューク・エリントン WITH カウント・ベイシー」
だったが、自分で決めてちゃんと行ったのは、
中学の時、飛騨高山体育館に来てくださった
井上陽水さんだった。
カルチャーショックだったねえ。
自分がワンランク・アップした!かのようでした。

今日のコンサート、中身が濃くって、
お客さんもよかったし、歌は余裕だし、
あー、モノマネする気持ちもわかるわ、私。
ある意味正しいわ、私。ってカンジ。

しかし、楽屋に顔を出すのがはばかられて。
ご本人に、どう挨拶したらいいのかわからない。
だいたいここに顔を出すべきだか。
あやまるのも失礼でしょう、
かといって、軽いノリでごまかすのもイヤなのよねー。
さー、どう出るべきか、と、思ってたら、
クマさんが陽気に、
「おーい、陽水、コイツさー、
 おまえをバカにしてんだるぞー、
 あのネタ、知ってるかー」とちくった。軽すぎる。

そしたらご本人がヨユーでニヤニヤしながら、
「あなたさあ、ずいぶん僕に、
 あこぎな事してるそうじゃない」と、
あの声で言われた。あこぎ。確かに。
「あ、いや、どうですか」などと濁す。
しかしそのあと、
「全員で写真を撮りましょう」ということになった。



日本人とは不思議なモノで、
こんな時でも瞬時にニコニコ集まる。いいところ。
私はたまたま一番前にいたんだけど、
後ろの誰かに「ペシッ!」と頭を叩かれた。
「あ、井上陽水」とすぐにわかった。
その方向と、手のでかさで。
ところが、そのあとも続けて3発、
「ついでに」という感じで
「ペシッ」「ペシッ」「ペシッ」ときたので、
私は振り返って、
「一発目はわかります!でも、そのあとの3つは、
納得いかない。どなたですか!」と聞くと、
みんなニヤニヤとカメラを向いて黙っていた。
どうも私は高校の頃からこんな役目だ。
(先輩のマネする→うける→またやる→ちくられる→
 叱られる→しょげる→別の意味で笑われる)という、
被害者的加害者。

11月19日・金曜日
コドモ、社会科見学から帰ってくる。
日野車体工場、東芝科学館、日清製油工場、
などに行ったそうだ。
なんでも「とても素敵なところ」だそうで、
将来はできたら、東芝か日清に勤めたいそうだ。

「宝島」で、ライフスペースの高橋さん顔マネ。
ひくかなあ。

大橋君、ちょっとだけ来てすぐ帰った。
「こないだ、大橋君のこと、私はわからなかったよ。
 女の子とばっかり思っちゃった」と言うと、
「うーん、そうねえ、
 そういう人、多かったみたい、ですねー」と、
井上陽水のようにしみじみ語尾をのばした。
おまえは大人か。
別件で、お父さんにえらく叱られたんだそうな。

まったく「(昔と違って)最近の子供は」、
なんてよく言うけど、実際は昔とおんなじで、
実は環境が違うってだけで、一人一人の個性というもの、
面白いほど違うんだなあ。
「子供に完璧な環境」なんて、
実はそもそも存在してないような、ねー。
「子供に申し訳なく思わない」親なんて、
現実にいるのかなあ。
「子供を思う親心」って、
いつまでも不当に美化されてるような。

11月20日・土曜日
LF生放送。
ここに時々出る「山本元気さん」という、
「やな名前」のニュースキャスターがいるんだけど、
あまりにもムキムキにできた体型なので、休み時間に
「なんなのその筋肉?」と聞いてみたら、
彼は“古武術”をずっと習っているのだそうだ。

“古武術”とは、忍者みたいな武術で、
(けっこう汚い手も多く)、攻撃的というより、
相手から身を隠す、自分を消してスキをつく、
とにかく守る、といった訓練につきるのらしい。
それにはとにかく「リラックスする練習」が必要だそうで、
ハタから見ると、まるで「アホみたいな笑顔集団」で、
集合してるらしい。

人間というもの、ここぞ、って時に
「怒りや恐怖」を持つと、
「またたくまに、思うように筋肉を動かせなくなる」
ものなのだそうだ。
だから、まずは「リラックスを修得する」練習なんだって。
習いたい。

「それ、今まで役だった事ってあったの?」と聞いたら、
「僕はまだないんだけど、道場に通ってる友達は、
ある日の夜、イラン人にナイフを持って来られたんだけど、
顔は弛緩したまま、スキをついて、一気に左手でナイフを、
そのあと右足で急所を蹴って、とにかく自分を守れた」
のだそうだ。
でもそのあと(教わったとおり)、すぐに
「それ(放って道に落ちたナイフ)をハンカチで押さえ、
警察への証拠として右手につかんだ」のだそうだが、
その時初めて、驚くほどぶるぶると手が震えて、
すぐ目の前にあるナイフが
うまくつかめないのがわかったんだそうだ。
その時初めて、
「ああ、やっぱり俺は怖かったんだ。
だって今、すごかったもん、この現場」と、
「安心の涙」がとうとうと流れてる理由も
わかったんだそうだ。
なんとも実感のある話でしょ。

きっとこの道場は「自分の弱さ」を
しっかり認識できた人が通おうと思うところ
なんじゃないかなあ。それすら難しいもんね。

「じゃあ、放送なんかじゃもうアガらない?」と聞いたら、
それも含めて通っております、との事だった。

1999-11-30-TUE

第109回

11月21日・日曜日
「天才てれびくん」収録。
そのあと、この番組の大晦日スペシャルの打ち合わせ。
家でコドモ、
「クリスマスプレゼントに、
ハムスターの子供を頼むかもしれない」と、
真剣に言ってきた。
「ハムスターの研究レポート」を読むうちに、
「自分のしつけがいかにまちがっていたのかが、
よくわかった。エサなどに甘すぎた」
のだそうだ。
「えーまたー? あのマンガはフィクションです、
って書いてあるじゃんー。まー、考えとくけどさー」と、
鈍い返事をする。
「頼みます、どーか!」と、土下座していた。オーバーな。

大根の茹で味噌、納豆、野菜炒め、玄米、焼き芋、
という、薬膳のような夕食。
時間があると、かえってこういうメニューになるような。

11月22日・月曜日
午後からLFの番組「井上陽水スペシャル」で、
陽水さんとせまいブースで2時間半。楽しかったー。
「感謝知らずの女」かからなくてよかった。
かかってたら、どんな顔で。



なんと「終了後、食事でも」と、ヨユーで誘ってくださり、
ジャガーに乗せていただいた。
車の中でかかったCD、私にはなつかしい声で、
「これって! タモリ1stですよねー!」と言ったら、
「うん。あれ?あー、そうか。よくこのCDかけるとさ、
助手席の人に、意外な選曲だなあ、って顔されるんだけど、
あなたは、そうなの。普通なわけね、これが」
と言っておられ、そこからずうっとタモリさん談義。

途中、陽水さんが携帯電話をかけられたので、
「次に何が入ってるか調べてみよ」と思い、
失礼ながら「CD・2」を勝手に押してみたら、
「タモリ2nd」のイントロがおもむろに出てきたのには、
一人で笑った。変な人だなあ。

ところが、食事をしながら話していると、
「やっぱり、あなた、変」と、
まったりした精神科医のような口調で言われていた。
1時間ほどして、ご子息登場!
ご子息、まるで「目の前の人を必ず幸せに!」を
モットーとされてるような明るい学生さんで、
まぶしかった。
親子の会話を聞いているはずなのに、
親子のようでなく、といって他人でなく。
たいへん興味深いものを持った。
凄い一日。

11月23日・火曜日
ゆうべの一件、夫に話ながら
コーヒー、新聞、トースト、電動歯ブラシ。
そのあと日テレへ。
向かいながら
「そういえば私の車のCD、最近は何を入れてたっけ」と、
チェックしてみたら、
「魅惑の民族音楽〜インド編」。

メーク室で、メークさんに「靴がかわいい」と言われる。
コキュの靴って、安っぽいところがいいよねー、と、
二人でうなずく。
楽屋でふと見た雑誌に、マライア・キャリー発見。
あの人、今年もあからさまな薄着で来日。
またぶるるん、をかもしだすのね。冬なのに。

帰りに本屋さんで、
「イギリス式・いたずらの天才」を買った。
糸井さんはすごいなあ。
(これの濃い本をずっと昔に出しておられる。
しかもタイトルは「スナック芸大全」)。
立ち読みして笑ったのは、
タイトルは忘れちゃったんだけど、
片平なぎさの「私が2時間ドラマで訪れた土地」を、
日本各地、くまなく紹介するガイドブック。
ちゃっかりしてる。

11月24日・水曜日
そろそろ、と思っていた「こたつ」をついに出す。
こんな事で息が切れた。
「こたつ」と言えば大橋君。
早くここで寝そべってマンガでも読んでほしい。
黒沢明「七人の侍」、
昔ビデオ録画したやつを観ようとするが、
コドモが帰宅した。
さっそくこたつに足を入れながら、
「宿題中だから音しぼってー」と言われる。
ちぇっ。自分の部屋で宿題やれよー。
ま、私もそうだったけど。
しかし、ヘッドフォンをしてみたら、
これが今まで何を言ってるのか、
ボリューム28くらいにしてもなかなか聴き取れなかった
「七人の侍」のセリフが、よーく聴き取れて驚いた。
農民のアイデア大成功。
今度からこうやって観よう。

こたつで夕食をとると、顔が近くなるせいか、
いかにも家族でございます、という構図になる。
でも食べたのは夫の作ったチャーハンとスープ。

11月25日・木曜日
ビバリーとCBCとTBSでTV。←早口言葉。
そのあと、パソコン雑誌でソラミミストの安齋肇さん、
イラストレーターのなんきんさんとの3人で、
「バカHP大賞」を選ぶ。
安齋さんの話によると、なんきんさんは、
「最近ダンスに凝っていて、
バレエやタンゴなど欠かさず観に行き、
『“ターン”ができないヤツは男じゃない』と、
長い髪でくるくるっとターンをしながら言いはる」
のだそうだ。
ははははは。



安齋さん、自分で
「太っちゃったよー」なんて言ってたけど、
横浜に移住したら、来る人来る人みんなが
「じゃ、中華街に行こ!」と、
当然のように誘われるのだそうだ。
チャイナ太り。
でもあいかわらず品のいい人ですこと。
この日はそのあと番組の打ち合わせもあるのに、
HP笑いながら見るうちに時間は過ぎ、
ヤノッチ、何度も苦しいマキを入れてくれていた。

1999-12-06-MON

第110回

11月26日・金曜日
クリスマスのツリーや、リースなど出す。
いつもだらしのないこの家も、
ちゃんとかたづけてこうして飾ってみると、
なかなかいい住まいじゃないですか。あとはキープ。
トイレにもデコレーションする。
トイレと言えば、こないだの吉田日出子さんとの番組の
女性ディレクター、夜中の佐渡の「ボットン・トイレ」で、
ポケットに入れていた携帯電話を落としてしまった。
彼女はなんと同じ失敗を、
これで3度も繰り返した事になったのだそうだ。
(また落とすんじゃないか)、と思った瞬間に、
ほんとに落ちたの、と、絶望的表情でした。
呼び出し音を鳴らしたら、どうなるのかしら。
返事きたりして。
「はい。よくも落としましたね……」と聞こえたら、
こわいですね。

11月27日・土曜日
LF「お願いDJ・ハッピーウイークエンド!」生放送。
聴取率がよろしいのだそうで、
局長から小林克也さんと共に賞を受け賜った。
ありがたいことですー。

今日は私のお母さんの誕生日で、実家に電話した。
さっそく「清水でございますー」と、営業用のすました声。
「私だけど」と言ったら普段着の声にすぐもどった。
声を変える血統なのか。
久しぶりに長話をする。
夜、年賀状デザインやり直し。
事務所のバイオでやってみるが、
うまくいかず、自分の部屋で。
こういうことはやっぱりマックよね、なーんて思う。

11月28日・日曜日
天才てれびくん2週分。
こないだ、この番組のレギュラーの小学生の
男の子の一人が、休み時間に文庫を真剣に読んでたので、
「なに読んでるのー」と、本を取り上げたら、渋澤龍彦。
私にはタイトルの漢字も読めず、たじった。
これ、いいっすよー、とマジで軽く言っていた。
ヤノッチはつい最近
「少年マガジン、そろそろ定期購読するのを
止めようと思って」と言っていた。
どっちかがまちがってる。
いや、どっちもだろう。

そのあと「渋谷・原宿ポップストリート」生放送。
50年代から90年代までのファッション対決で、
オセロさんらとご一緒。
時間が押したところで、
ADさんから指でくるくる合図される。(早く早く!)。
私はどーも昔っからこの「失敬な感じ」に笑ってしまう。
わかるけど。わかるだけに。
さっきまで、あんなにシタテに出てくださってた
ADさんが、本番でいきなり指先で命令する、
というこの図式が、何度見てもやっぱりおかしい。

オセロさんの話では、
「彼はまた、昔っから心配性やねん」だそうで、
私が、ドロンズが出た時に、
「お帰りなさい!ドロンズ!」と、(わざと)言ったら、
「遅い!」というしかめっ面を満面に出していた。
さらに、エンディングで、
「よいお年をー!」と言ってみたら、
また、(早い早い!)と、
必死で手でバッテンを作っていた。
まじめなのかな。

11月29日・月曜日
コドモとテーブルで、「せーの!」で、詩を書く。
お題は「悲しみ」。
そのあと「怒り」の4コママンガで勝負し、
「喜び」イラストで競う。笑ったー。
といっても、全部ボールペンで
ちょちょいのものなんだけど。

夫に判定してもらうが、毎回ついつい
コドモを優位に立たせたがりがちで、
「ちゃんと考えてね」と、コドモから釘を打たれていた。
笑えた。わかってたのか。
しかし、コドモ、
「悲しみ」の詩を書くとき、妙にうっとりとした表情で、
あ、これも彼女が好きだった
「みじめ暮らしごっこ」の一種ではないか、と
ちょっと不安になる。
これも将来のイメージトレーニングというヤツに
なるのではないかと。
ひとり、という字を、
「一人」ではなく「独り」と書いていたのが、
不安をさらにつのらせた。

11月30日・火曜日
チャイムで起きた。
夫はとにかくやさしーヒトで、妻に甘い。そこがいい。
よほどの事がないかぎり、何時まで寝ていても
(自分の事で)私を起こす、なんて事が
今まで一度もないのだ。ありがとう、あなた。
でも、実はできるだけ顔も見たくなかったのでは、
という強い疑念も。

チャイムの主は宅急便屋さんで、
夫の青森の知人から、発泡スチロールに入った
「ほたて貝」がどっさり。
見ると、ぜんぶがぜんぶ、しーんと生きていた。
この生命感の怖さよ。鳥肌。
しかも、それら全てをすぐに私の手で殺す、という構図。
声が聞こえなくて良かった。
さっそく夫婦で貝にスプーンを突っ込んで順にさばく。
ちょっと聞こえた。
「ヤツらに痛みの神経はないと
誰かに聞いた事があるけど、本当かな」と言ったら、
「本当だ」と即座に言った。同じ事を感じてたのね。

夕食用に、刺身用と、
バタ焼き用(←「暮らしの手帖」風。バタ。)
とに分ける。
それ以外は全て冷凍。
なのに、タッパの中で、まだうごめいていた。
すぐドア閉めた。
確かに殺したのは
いなめない。(←「山崎まさよし」風。いなめ。)

1999-12-11-SAT

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