第100回
10月6日・水曜日
ナレーションの仕事。地味だけど好きな。
ちなみに私は、中学時代の国語の時間も「本読み」だけは、
(当ててくれよー、先生よお!) と思ってたほどで、
「(ためて)……メロスは。
走った!!(←大きく・感動的に)」と、
思いっきり芝居口調で読むのが大好きだったんですよ。
みんなもクスクス笑うし。
こういう、朗読に限らず、歌声やピアノに、
「ムダに心を込めてやる!」という世界は、
ずうっと私の得意ジャンルとするところ。
ムダに、やみくもに、なのがポイントね。
この日記もやみくもに
今日でちょうど一年になろうとしてます。
今までのご愛読を、皆さんに感謝します。
またお会いしましょう、さようなら。
と、一年前には結ぶつもりでいましたが、
もうちょっと残ることにしました。
皆さん、返事書いてないけど、
メールたくさんありがとうね。
ところで、今日は事務所の仕事が終わった夕方に、
家族とスタッフ全員を誘って、電車に乗って、
「ハンバーガーをテイクアウトして持ち込み、
映画(マトリックス)を観に」行ってきました。
5人くらいの人数で映画を観に行ったことって、
ありますか?
私は一人が一番好きだ、と思ってたけど、
こうやって仲間とつれそって行く映画って、
こんなに楽しいのか! と思うくらい、楽しかった。
夕食はそんなんだったし、映画が終わってすぐに
バラバラに電車に乗って帰ったんだけど、
スペシャルスイート・デイってカンジ。
みんなも確かにそういう顔をしていたようだった。
誰も何も盛り上げようともしてないのに、
なんだか盛り上がる日、というのがあるもので、
今日はそういう日。
自分が幸せだと、
ぜったいに巻き込まれる人間がいる、と思えました。
とかいって、
私が誰かに巻き込まれてたのかもしれないんだけど。
10月7日・木曜日
ニッポン放送でナマ放送。
そのあと、たまっていた原稿書く。
事務所にそれを持っていって、
そのついでにした中川さんとの話が面白かった。
ナカガーさんの友達の話なんだけど、
「市販の歯磨き粉の研磨剤には、
たくさん漂白剤が入っていて、
結局は体に悪いのである」
という事がわかったので、
「漂白剤の入ってない、天然だけで作られた
歯磨き粉を買って使い始めた」のだそうだ。
そうしたら、2週間目で、歯がマッキッキに
なってきたのだそうだ。歯がマッキッキ。
世にも楽しい語呂じゃないですか。
その友人が、「おや?」と思う頃、たちまち家族に
「あんた、歯が黄色くなってるわ!」と指さされ、
急に怖ろしくなって、すぐ市販のものにかえたら、
1週間でたちまち白さがもどってきたという。
すごいねえ。歯がマッキッキ。
ってことは、昔の人はみんな、歯がマッキッキ。
多少、鈍感でなけりゃ、生きにくい世の中って事ですなあ。
そのあと、私が
「歯ブラシっていえば、舌のこけを取るときさー」、
と、話しだしたら、ナカガーさん、
ぎょっとした顔で、話の中身よりも
「何ですか! 舌のこけって!」と、驚いてた。
“こけ”ってのはつまり、舌べらについた垢のようなもので、
これは取り出してみると、取らなかった自分の時代が
信じられないほど、気になるんですよね。
でも、「舌のこけ」、ってのも、
誰がつけたネーミングなんだか、人聞き悪い。
ものすごく悪い。
でも、一回取ると、取らないと気になるしー。
白い色は恋人の色、なんではなく、
現代の求める色、なのかもねー。
10月8日・金曜日
「誰でもピカソ」で、久しぶりにクマさんと会った。
「ほぼ日で、市川の新作品見ちゃったよ!」と言うと、
照れながら、
「そっか! 見たか! メール交換しよっか?」と言った。
この言葉が日本一似合わない男、決定1999!。
楽屋に行って静かにお化粧をしてたら、ノックが聞こえた。
普通ノックは「コン、コン」と2回やって、
相手の返事をうかがうものなのに、
「スコココココココココココココン!!」と、
「いかにも両手で連打ってる!」という音。
誰だろう、いったい、と思ったら、
綾戸智絵さんだった。出た!
「ミッちゃん、元気やったか!?
いやあ! 元気そーやんか! わかるわあ。
あんな! うちな! ちゃんとつけとんねんよ!」と、
早く早く!と言わんばかりに、自分の首を指さした。
実はずっと前に彼女と楽屋で御一緒した時、
私のアクセサリー(ビーズだらけ)を見て、
「うわあ、えーなあ! えーなあ!」と、
すごく羨ましがっておられたので(こんな人も初めて)、
「どれでも1つあげよっか〜」と言ってみたら、
本気で喜んでゲットしてくれたんでした。
それにしても、まじかに顔を見ただけで
パワーをもらった気がした。コドモみたいなのだ。
帰られたあと、またメイクにもどりながら考えた。
彼女はおそらく、無邪気なままだったのではなく、
人生のどこかで「コドモに変わった」のではないか。
ターニングポイントがいったい何だったのかは
知らないけれど。
きっと、そういう地点があったのでは。
「細かいポイントなんかよりも、今を見てほしいねん!」
という顔なのだが。
大人になると、こういう人に会えるのがお値打ちだ。
10月9日・土曜日
LFで生放送。
この御時世に、ブリジストンが
新しく協賛に加わってくださった上に、
「皆さんにどうぞ」と、
出演者にゴルフボールのセットをくださった。
でも「私には……豚に真珠なのね……」と思ってたら、
元祖スケバンデカ(と、心の中で呼んでいるご婦人)が
やってきた。
そうだ、ま、ゴルフ好きのスケバンデカにあげたろーかな、
と思ったその矢先、
「それ、ちょうだい! ゴルフ嫌いなんでしょ!」と、
当然のように私のゴルフボールの箱に手をかけた。
私もつい「彼女に渡すもの」と
脳に命令したばっかりなんで、
ポカーンと渡してしまってた。直後アッターきた。
なんでこう「宿題しようかな!」と思ったときに
「宿題しなさい!」と言うのか、妙齢のご婦人は!
ちょっと待てば、
お互いにどんなにいい気分だったかしれないのにさー!
しかもそのあと
「清水さんね(←笑って)、
これって1コ600円するもんなのよ。
6×6で3600円するのよ?」と私に教えた。
おいおいおいおいおいスケバンデカよおー、
ありがとーよおおおお!!
10月10日・日曜日
コドモが「たれぱんだ」のイラスト入りの紙に
絵を描いていた。
私が「たれぱんだって嫌い」と言うと、
「なんで」とコドモが聞く。
夫もいたので、ちらっと聞こえるように話した。
「つまりですね、今の世の中、昔と違い、
勉強できない学生で何が悪いんだ、成績が悪くても、
本人さえしっかりしてたら別にいいじゃないか、
という風潮になってきました。そこまではいいです。
ところがそのうち、かわいかったなら、
なんーでも許されるようにまでなってきました。
ボーダーラインが、ゆるくなったわけです。
しかし、たれぱんだ。
これは、顔がたまたまかわいいってだけで、
キティちゃんのように、立って歩いて活躍もする
ってことすらしないのをまだ前提としています。
だらー、と死んだように寝ているだけです。
本人はぜったい『たれてる方がかわいい』と
世間に思われてる事を確信しておる。
ここが太いと。
ですから私には、
その甘さに甘えた鈍くさい鋭敏さが、
こにくったらしい、と思えるのです」
と演説した。
そしたらコドモ、
「なるほど、そんな事まで考えてたのかー」と、
顔もあげず、ゆっくり言ったあと、
「けなげやのお」と、ピリオド打つかのようにいった。
「今の“けなげやのう”は、うまかったな」と、
夫が笑った。
確かにそうだった。
「けなげやのお」は、クラスで流行ってるんだそうだ。
なんて事だ。
「さむっ!」よりひどいボキャブラリーだ。
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