SHIMIZU_MICHIKO
清水ミチコの試供品無料進呈
(秘密厳守)
1999年2月の日記

第35回

2月1日・月曜日
ドラマロケ。
ロケバスで高嶋政伸さんと音楽の話。
「清水さん、クラシック詳しいでしょう?」
から始まった。
すごい誤解だ。
しかし、この人の鼻歌は日本一うまい、と思っていた。
私は以前、たまたま廊下ですれ違いざまに聴いて
びっくりした事がある。
口でドラムスとトランペットを小気味よく鳴らして
テイクジAトレインをやっていたのだったが、
確かにそれがうまかった。
こんな人はざらにはいない。
それを言うと照れていた。

私は人の鼻歌をすかさず聴いて、
そのタイトルや歌のクセなどを
一人心の中で確認するのが好きだ。
印象的なのは森口博子さんで、
ある日のロビーで、私の目の前で高い声で、
オリビアニュートンジョンを口ずさんでて、
それが長かったのだ。
これはめずらしかった。
ついにラストまで歌った。

私も歩きながらよく歌うのだが、
たいがい人がいるとわかると、どうしても止めてしまう。
しかし、一度やはりスタジオの廊下で
私が一人大きな声で歌ってたら背後で、
私の音程に合わせて下の旋律を上手にとった人がいた。
振り向くと玉置浩二さんで、「わ」、と思った瞬間に
「はい、そのまま。続けよー」
という顔をなさり、仕方なく最後まで歌った。

2月2日・火曜日
NYから日本に帰ってきた、高平みくちゃんと
「寺内貫太郎一家」を観に行く。
みくちゃん、6才の時、初めて家出をしたそうだ。
向かった先がなんと当時近所だったタモリさんの家で、
(親は知り合い)タモリさん、みくちゃんに
「小学一年生」(本)を買ってあげたそうだ。
普段から親が絶対買わないシリーズの本なので、
すごく面白かったと言う。
自分の家に、困っている6才の少女がたずねてきたら、
どんなに(意外と)嬉しかっただろう。
みくちゃんはそういうふうに自然と、
人を喜ばせる才能(?)がある。
しかし、若いのに建築家の名前や、
絵画の手法らしき名詞など、サラサラ言うので、
こっちはついていけず、
それ何なの、と中断することしばしば。
みくちゃん、あやまりながら、
あ、またあやまると嫌味ですかね、
と気を使っていた。

2月3日・水曜日
ドラマスタジオロケ。
佐野史郎さんが高嶋政伸さんに
「俺の好きな音楽」を教えようと、
いろんなCDをわざわざデッキでかけていた。
私もメイクしながら横で聴いていたのだが、
いいものだった。
途中、いやに気味の悪いのが流れてきた。
「なんですかその気持ち悪いのは」と佐野さんに聞くと、
「あ、わかります?」
と言う。
「これ、やっぱり気持ち悪いって感じます?」
と嬉しそう。
なんでも大瀧詠一さんお勧めの中の一枚で、
この、気持ち悪いのが今、かえってヨイのだそうな。
ベルトケンプフェルトという人。
佐野史郎さんと。

2月4日・木曜日
ビバリーとTBS。
終わって遅刻しながら山下達郎さんのコンサートへ。
実に面白かった。
ミュージシャンに対して
こういうと失礼なのかもしれないが、
まちがいなくおもしろかった。
ほぼ4時間。アンビリーバブル。
MCで「タバコ止めて10年になりますが」と言ってて、
これはやはり自分に喫煙止めろ、という啓示だと解釈。
この日はたまたま誕生日だったそうで、
竹内まりやさんが一緒に歌うという一幕もあった。
家に帰って、達郎さんが歌ってた
「煙草が目にしみる」をピアノで弾く。
カンで弾いたのだが、なんだかうまくできて、
練習したかのようだ。

2月5日・金曜日
NHK生放送。
家を出るとき玄関に張り紙がしてあり、
「このマンションにお住まいの方、
深夜11時以降のピアノ、近所迷惑です!」
とあった。

弟も(ジャズ研)、やはりマンションで
サックスを練習していると、下の部屋から
コン! コン! と何かを上にぶつける音で
「やめろ!」と苦情が来ていたそうだ。
私のピアノはわかるが、
弟のサックスはめちゃくちゃうまい。はずだ。
ちなみに書いていた小説も妙にうまい。
小さい頃から天才天才、とまわりから言われてて、
私も、そうだ、そうだ、と身びいきで応援してたのだが、
とにかく人前に出るのが嫌い。
このネックは大きく、
「小説どれかどっかに出せば。姉ちゃんハクがつく」
と言っても、
なんだかんだと理由をつけられては断られている。
まるで前に出ている私がバカにされているようでもあり、
けっこういらつく。

1999-02-13-SAT

第36回

2月6日・土曜日
ドラマロケ。
そのあとでTBS「見ればなっとく」打ち合わせ。
図書館で借りていたS・キングの
「ドロレスクレイボーン」読む。
途中で、いつかビデオで見た映画だったとわかったが、
映画より悲しく、おもしろかった。
同じく借りた
「音がなければ夜は明けない」(山下洋輔)の中に
「糸井さんには背後にせっぱつまった覚悟が
ある気がしてならない」
と書かれてあり、
あ、これだ、これだ、となんだかスッキリした。

2月7日・日曜日
ピアノメトロノームで。
うまくなる。あなたはだんだんうまくなるー。
と暗示をかけながらの練習。
一拍のタイミングを、
自分の中でギリギリまでのばしきって、
ピッと放つという、(普通、どーしても短くなりがち)
基本ながらも永遠の一瞬(C/byユーミン)を
感じることが大切なのらしい。
と、同時にコードを覚える。
大人になってからの勉強は楽しいな。

そのあとコドモが行きたがってた
代官山のショップ「アランジ・アロンゾ」へ。
コドモが筆入れをここで買って学校に持っていったのに
翌日、体育の授業中に紛失してしまったのだ。
(ぱくられたのよーあなたはぜったいぱくられたのー)
とも言えず
「今度から気をつけなさいよ」と、
わけのわからない注意をして、
いつかまた行ったる、と約束してたのでした。
ここはいつもぎゅうぎゅうの混雑。
店は6畳ほどしかない中、30人ほどがひしめいているので、
窓ガラスがいつも完全に曇っている。
これ全て、人の息からの湿気、と思うとぞーっとし、
一生懸命忘れた。
私も「ワルモノ」というデザインの財布600円を
自分用に選ぶ。
コドモ、また同じデザインのを選んでて、
「どうせなら新しいのにしたら」
と、貧乏くさい意見を言おうと思うが、
また「好きだから」と言われそうでやめた。

2月8日・月曜日
ドラマロケ。
そのあとでTBS「見ればなっとく」ゲスト。
南美希子さん、カイヤ川崎さんと一緒に。
「夫から誉められればキレイになるか」
という内容だったのに、私にだけ質問が
「顔マネする観点からどうか」
という問いになっていた。
質問やり直させる。

移動の時、車中で、遅れるかもしれない
→本番に間に合うかギリギリ
→ハッキリと遅刻中
→だいたんに遅刻中
と、刻一刻と車中で時間の名前が変化し、
すごーくタバコを吸いたくなった。
しかし当然、持ち合わせもなくあきらめかけてたところ、
メイクさんが私の吸っていたブランドを持っていて
奪うようにしてすがり、一服した。
マネージャー、スタイリストさんら、
「あ」「あ」「あ」と口々に。
こういう中で「え? 関係ないじゃん、別に」
というヤンキーのようなヒトを無視しきった
スパーッという吸い方、何ておいしいことであるか。

1999-02-17-WED

第37回

2月9日・火曜日
ドラマロケ。
いつもの事ながらバラエティに比べ、
ドラマの時間のかかり方というものはとてつもなく長い。
それだからこそか、佐野さん、今日はギターを持参し、
待ち時間に歌っていた。
そのうち文庫本を読み始め、
「何を読んどるかな」と取り上げると、
隠そうとしたが、なんとニーチェで、笑ってしまった。
「佐野さん、家でお香炊いてるでしょ」と言うと
「あ。炊いてる」という。
「戸川純さんの歌大好きね。」
「好き好き」。
「江戸川乱歩ファン」
「はまりましたねえ」。
「両親が幼い頃に離婚。」
「しないしない」
「けどトラウマ大きい」
「そうねそうね」
と、ひどい当てずっぽう。
いちいちワーハッハ! と私が笑うので
ちょっと心外そうだった。
しかし、役者になろうとする人で、
トラウマない人はいないんじゃないか、とのこと。
それを横で聞いてた菅井きんさんに、
「失礼ですが、、、何か、、」
と聞くと
「あたし、今までずーと平凡なのよ。恥ずかしいほど」
と意外にも早口なトーンで答えられた。
「こないだも{いつ見ても波瀾万丈}に出て
って言われたんだけど、ネタがなさすぎて
番組が難しいって言われましたの」
とおっしゃってた。
どこか上品なはずだ。

佐野さんとすがいさん。

2月10日・水曜日
美容院へ。
いつもは麻布の「ツイギー」と決めているのだが、
たまには変えてみようと
原宿の知り合いの店でカットしてもらう。
帰りにヤノッチの誕生日プレゼントを買おうとブラブラ。
プレゼントを選ぶのは才能だと思う。
これもあれだし、これも違う、と迷ううち、
夕食の時間が間に合いそうになくなる。
結局ノースフェイスのシャツにした。
お好み焼きを作り、家族で。
ホットプレートは、結局実家の方がうまく使ってるようだ。
こんな時でしか使わない。
しかもしぶしぶの、ガス信仰。
広島風より、大阪風のヘルシーではない方が好きだ。

自分の部屋でピアノを弾いてると
コドモが「失礼しまーす」
と入ってきて、ビデオを見始めた。
ライオンキングの英語版。
ピアノうるさくないのか、と聞くと
うるさいけど仕方ないんじゃない、と言う。
居間で見たらいいじゃない、と言おうとしたが、
ライオンキングに出てくる曲に合わせて弾いてやった。
「お、やるねー、清水ミチコ、出た、清水ミチコ」
などと言われる。

2月11日・木曜日
ビバリー放送。
家に帰ると、
コドモのクラスの転校生と、いつものメンバーが家に来た。
会うなり転校生に
芸能人でしょ? と高飛車に聞かれ、
転校生だって? と聞き返す。
勝手に私の部屋に入ろうとしたので、
「これこれ、そこはだめ、入らないでね」、
と言うと
「なんでダメなの」。
「そこ私の部屋で、汚いから」と、本音。
「えー芸能人なのに汚いんですか、部屋汚いの?
みんなに言おー。言っちゃおっと」
なんて言う。
カツンと来ると同時に、
コドモが
「家にいる時は普通の人なんだよ、清水ミチコじゃないの」
と助けてくれる。
あとで掃除しながら、あの時ありがとうね、
実は一瞬ムカついたんだよ、
とバキュームしながらお礼を言うと
「あたしも自分の親だからー、
かばうのもナンかなー、と迷ったんだけどー、
ここは言った方がいいかなと思って言っちゃった」。
あーおまえはいい子だー。
と、ほっぺたや鼻をべろべろなめた。
いやがったが、
今までのそれ(いやがり方)とはちょっと違って、
一瞬、すごく本気で厭そうな顔をした。
お、おい。

1999-02-21-SUN

第38回

2月12日・金曜日
メレンゲ、ナレーション録り。
家でビデオにとっておいたドラマ「鬼の棲家」を見る。
そのままにしておいたら去年、録画してた紅白が出てきて
安室ちゃんが感極まりながら歌ってた。
再び、じーんときてたら、コドモが
「ね、なんで、この人急に泣いてるの」と聞く。
「この人はねえ、こないだ出産したわけ。
やっと体調がもどって、大晦日にこうしてステージに
もどってきたから、本人も嬉しいし、
見ているみんなも、お帰りなさい! 待ってたんだよ!
っていう拍手だから、涙で感動しているわけ!」
と、一緒に盛り上がろうとばかりに言うと
「かわいそうだねー。赤ちゃんひとり」
あーおれは、そんなことちっとも考えてなかったー。

2月13日・土曜日
「テレビタックル」ゲスト。
覆面で、凄い男が出た。
コドモの入試なら、俺に金を出せば有名私立、
どこでも入れられるぞ、という男で、
ちっとも悪いことしてない、むしろ親切な仕事、と
やくざな口調で胸をはっていた。
「じゃあ、テレビにあなたの顔、出してもいいですよね」
と私が言うと
「おー、俺はいいよ平気だよ!」と言う。
たけしさんが、こんなのあとでメンドーになるんだよ、
と止められた。

マネージャー・ヤノッチ、インフルエンザでお休み。
大丈夫かなと、携帯に電話したらお母さんが出られて、
どうも清水ですー、と言うと、
なんとやのっち本人だった。
体調がどんなもんかが、
60才くらいのシワシワしゃがれ声になってるのでわかった。
かわいそー。
「声、こんな風だったよ」、と中川さんにマネして伝えた。

1999-02-23-TUE

第39回

2月14日・日曜日
宝島の顔マネ写真撮って、原稿。
タタターと、やっつける。
パエリヤとアホ(にんにく)スープ、
ほうれん草とベーコンのサラダを作った。
これもタタター、とやった。
「あとは焼くだけ!」の状態で売られている
白い冷凍フランスパン、
下北沢の輸入食品店で買ってあったので、それも焼いた。
バリバリ。うまい。
夫が読み終わったマークスの山、借りて読み始める。
夫がもらってた義理チョコ、家族みんなで食べる。

2月15日・月曜日
ピアノ弾く。本を片手に。
コードなど、憶えても憶えても
果てしなく知らないことばかりで、いやになる。
途中で、知らなくてもいいんじゃないの?
音楽って学習するもの? 違うんじゃない?
と、途中できれいな言い訳が出る。
禁煙もそうだ。
きのう、おとといと2本。
1月は1本、2月は2本よしとしてまた一年が始まる、
というサイクルでこのままふえるのではないだろうか、
と思い、明日あたりスポーツクラブに行こうと決意。
汗を流すとニコチンまで流しきれる気がするし、
ぜったいやめる、とぜいぜいしながら
また気持ちを新たにできるからだ。
しかし、私が明日、たとえ一箱吸いきったとしても、
これは長い人生をおもんぱかれば禁煙中である、
と言えるのである。
おもんぱかれば、のあたりに今、
なにかが出たような気がするけれども。
自分の単純なところを伸ばす。これモットー。

そのあと、インタビュー1誌。

2月16日・火曜日
本当にスポーツクラブへ。
筋肉トレーニングをやっていると、禁煙したいどころか、
ちょっとしたタバコの匂いが気になり、
やだなあ、タバコ吸う人、かわいそう、
なんてちゃっかり下に思ってしまった。
そのあと(このクラブでは)初めてサウナに入った。
バスタオルを巻いて文庫本を読んでたら、
裸の団体が入ってきて、
「ずるい! みんな裸なのよう!」
という顔をいっせいにされたような気がした。

ずっと昔、友人がサウナに入ってたら、
あるヌードで話題のタレントさんが
バスタオルをしっかり巻いて入ってきたのだという。
その時、とっさに「あんた、いつも裸じゃない!」
と、思ったのだそうだ。
すごい論理だ。

にらと豆腐のちゃんぷるーと、味ごはん、
レタスににんにくたっぷりのドレッシングを作って
混ぜたので夕食。

2月17日・水曜日
赤坂泰彦さんの番組の、ユーミン特集に出るので、
リクエストを7曲選ばなければならず、
一連の曲目のリストを読んでいると、コドモが
「私、青春のリグレット好き」
なんて言うのでびっくりした。
歌詞をあわてて読み返すと、
「私を許さないで、憎んでも憶えてて
今では痛みだけが、青春のリグレット」とある。
スゴイ、あんたわかるのか、と言い、
「いつのまにこの曲を知ったの?」
と聞くと
「学校で、先生がよくかけてるから」
と言った。
親バカだったのか。
先生はまた、なんでかけるのか、と聞くと
「いつかこれを運動会で全員で踊るんだって。
だから教室でコンサートビデオのフリツケを見た」
と言っていた。
驚くことが多すぎる。
でもこれはないよな。

1999-02-25-THU

第40回

2月18日・木曜日
LFで、ラジオビバリー昼ズとTBSかもネギ放送局。
収録の合間がいつも3時間ほど空くので、
ここをどう有効に使うか、楽しみ。
映画もいいし、エステもいいな。
たまにはランチをゆっくり東京ウォーカー片手に
探してみるか、と、雑誌をめくりながら迷う。
結局、ヤノッチとハンバーガーとポテトを食べながら、
渋谷のシネマライズで、ベルベッドゴールドマインを見た。
きっとまわりにポテトの匂いが充満したのではないか。
家に帰ったら、パソコンの調子がおかしく、
ちっとも開けられない。

ここんところ、フローリングの部屋のみ、と限定で
放し飼いをしているハムスターが
カリカリカリカリカリカリカリカリと、
部屋の隅っこで音をたてていたが、
もしかしたらどっか、かじられたのかもしれない。
でも結局出てくるときの顔はかーわいい。
「え?」ってな表情をしている。
「探してました?」なんて顔をする。
パソコンどうしたらいいんだ。
カリカリカリカリカリカリカリカリ。

2月19日・金曜日
NHKで生放送あと、取材2本。
部屋で隣のカリカリカリカリカリカリ聞きながら
ワープロでカタカタカタカタカタカタ原稿打つ。
そのあと、夕食作りながらコドモと立ち話。
おかずは何かと聞くので、
今日は地味です、納豆と焼き魚と煮物、
あと冷蔵庫の残りもの。
と言うと
羽田空港見学に行ったとき、ある男の子のお弁当が
なんとも言えないものだったそうだ。
なんと、なごみ茶と、佐藤のごはんと、
スナックさやえんどう。
え、おかずは、と聞くと、
おかずないから、お茶漬けにしてたんだって、
なんて言う。
当日まで、親に言い忘れたのかもしれない。
しかし、本人なんと、けっこう元気に
なごみ茶でなごむちゃ、なんてふざけながら
笑って食べてたらしい。
しみるなあ。

2月20日・土曜日

赤坂泰彦さんのLFの番組にゲスト。
ユーミンになりきってコメントする。
途中、本物と間違えて
挨拶にやってきたディレクターがいて、私を幸福にした。

テレ朝の番組に出て、
夕方、ビバリー昼ズのディレクター橋内さんの結婚式へ。
名前を書くところで、ある女性から
「おひさしぶりです! 会社、やめました私!」
と声をかけられた。
いきなり赤信号点滅。
いったい誰だかわからないまま、
(多分覚えてない)作り笑顔で答える私。

会場の奥の部屋に
高田文夫さん、大瀧詠一さんがいらしていた。
グラスに乗ったおいしそうな牡蠣を食べながら、
LFの方と話をしていると、いきなり大瀧さんがその人に
「あのねえ、今、会話してる清水さん、
 多分あなたの名前を知らないよ」
なんてささやくではないか。
鋭い。
まるでさっきの事件を見てたかのようだ。
しかし、はい、そうです、とも言えず
「馬鹿なことを、、。ねえ、、。」
とお茶を濁すつもりで、ビールを取り、小さな時間を作る。
ヤノッチが(LFの局長、小笠原局長! 一番偉い人!)
と口のパントマイムで教えてくれた。
「さ、小笠原局長! どうぞ」
と瞬時に名前とビールを入れたが、
ばればれだったようだった。
「ね?」なんて笑ってんの。
これで私は一生小笠原局長の名前は忘れないだろうが、
局長も私の事を一生忘れないだろう。
なんてことをしてくれる。

橋内さんの結婚式

1999-03-03-WED

第41回

2月21日・日曜日
今日から3日間オフ。
すばらしいサーンデー。
3日間を有効に使おう、とベッドで決心。

また自転車でコドモと二人図書館へ。
しーん、としていて心地いい。
全く音楽がかかってない所は、
今、なかなかないかもしれない。
コドモが「今、子供用閲覧室で友達に会った」と報告。
A君、といえば必ず図書館で会える、
という噂があるくらい、本が好きな子なのらしいが、
同時に、ここで会うとなぜか学校よりも態度がそっけない、
という噂もあるらしい。
コドモが「あ、A君」と声をかけたら、振り向きざま
「悪い?」
とだけ言われたそうだ。
そっけないわあ。笑ったわあ。

スペイン料理の本、宮部みゆき、町田町蔵のCDを借りる。
レンタルショップでビデオ「冷たい月を抱く女」も借りた。
借りてばっかりだ。
ファーストキッチンに行く。
さっきからいちいち会話の語尾に
「悪い?」とつけながら、お茶を飲んだ。
コドモはソフトクリーム、私はカプチーノ。悪い?

家に帰ってから、どういうわけだか
いきなり気持ち悪くなり、横になる。
夕べの牡蠣にあたったらしい。悪い。
牡蠣があたった時にしていた友達の話と同じ症状なのだ。
苦しい苦しい、と言いながら薬を飲んで死にながら寝た。
夫が帰ってきて、夜、笑いながら白粥を作ってくれた。
人が死にかけているのに、
何を思ったら笑顔になれるのだろうか。

2月22日・月曜日
体調良くなり、午前中ピアノ弾く。
午後、恵比須の歯医者さんへ行って治療してもらう。
ああ、このなんともイヤな音。
苦しんでいる途中、
はははは! と歯医者さんが笑って機械を止めた。
私の表情がオーバーだと言う。看護婦さんまで笑っている。
ほんとですか、と顔が赤くなった。
人が苦しんでいるのに、ここでも笑顔だ。

夕方、フライパンでパエリヤを作る。
料理の本でどうしてもまた作りたくなってしまった。
イカとえびと玉ねぎとニンニクとトマトと塩とサフラン。
米を洗わない、とあえて本格的な作り方をしたのに、
洗った方がおいしいような気がした。
サングリアも作った。

2月23日・火曜日
夫が夕べのパエリアのイカに当たったらしく、
顔にじんましんができていた。
笑った。スタンディングオベーション。
笑いながら夫婦で同じ薬を飲む。(ミヤリサン)

たくさんのベルマークが玄関に届けられていた。
見ただけでたるくなる。
PTAのベルマーク委員、けっこう細かくてたいへん。
今月は300グラムはありそうな量だ。
こんだけやってんのに、
何をもらうか決めるのは教頭の一存だ。
なんでなんだ。と、思いつつ切っては貼っていく。

コドモが帰ってきて、
ドラえもんの映画版ビデオいっしょに見ながら、
またジャイアンがやにいいヤツになっている。
ジャイアンはテレビでは好きなだけ悪さをしているのに、
いつも映画化されたとたん、おとなしくなってしまう。
おまえもなんでだ。

夕方、スーパーに行く。
途中でコドモが店頭を指さし、
「サレ」。
と言う。
なんだろ、と思いつつそのまま黙って歩く。
しばらく歩くとまた店頭を指さして、
今度はハッキリと「サレ!」
と言っている。
そのうち、私に向かって
「ね、サレって何なの?
 なんでいっぱい店にサレサレって書いてあるの?」
と聞く。
わけがわからなかったが、指さす方向を見たら、
そこら中に「SALE!」と貼ってあった。

1999-03-05-FRI

第42回

2月24日・水曜日
日テレ、ナレーション撮り。
南麻布を通ったら、
SUPER・NISSINという看板を発見。
すごそうな巨大スーパーマーケットにときめいた。
「ちょっと車止めてー、お願ーい、
ここで40分ほどお互い自由行動にしようよ」、
と勝手な言いまわしでヤノッチにたのみ、フリーで買い物。
楽しかった。
カートがとても大きく、
すべり出しから開放されたような気分になる。
心の中で一人しゃべりが始まる。
商品を誉めたり、説明を読んで、
こういう味なんじゃないの、
こりゃまた美鶴ちゃん喜びそうなパイじゃない、
まだまだ食べたことない食べ物はこんなにあるのか。
これ、コドモの友達に出すか、
賞味期限までに来るかしら、など、とめどなく続く。

ケテルのポテトチップス、ピザ生地、胡椒挽き、
プルーン、珈琲の豆、ポークチョップ、レンズ豆、
ナムル、醤油、ハーシーズのホワイトチョコ、
ワイン、ナッチョチップス、コリアンダー、など。
太った外人気分で購入。
中でもホワイトマッシュルーム1キロ450円とあり、
その安さにちょっと興奮。
よって夕食はハイテンションのまま、
マッシュルームガーリックソテーと
焼ポークチョップマッシュルーム添えに
マッシュルームサラダを作った。快感。
マジックマッシュルームだ。

2月25日・木曜日
ビバリー生放送。
この曜日に届いている新しい週刊文春、
いつもまっ先に読みたく、高田さんと奪い合いになる。
(買えよな)
それにしても、ラジオは本当に楽しいなあ。
今日は動物の鳴き声、各種できることがわかった。
できるなよ、わかるなよな、と高田さん。
日曜洋画劇場特番の打合せのため、
ラサール石井さんのいる下北沢の本多劇場へ。
ロビーで打合せ。
この劇場は公演前の早い時間に行っても
役者さんの気が濃く残ってるようだ。
そのあとTBS。
食堂で納豆おろしそば。
空気が乾燥していて、マスクしたくなる。

2月26日・金曜日
NHK生放送。
番組の途中で、地震のニュース。
生まれて初めてこういうセリフをまじめに言いました。
「えー、番組の途中ですが、
ただ今、緊急ニュースが入ったもようです。
繰り返しお伝えします、ただ今、、」。
私は今、仕事中なのだ、という感じ。
学研の取材。
家に帰ったら夫がいて、
「あの時のニュースのフリって、
あんたのそのテのモノマネみたいだった」
と言うので笑った。
確かに。

そのあと、きんたまの会2。
下北沢の佳月で。
座ったとたんご主人が
「ゆうべ高田さんここに来てあんたの話して
皆を笑わせてたーアッハッハ」と言う。
「全部、嘘ですから」とコメント。
今回はなぜかドナーの話から死まで、
下品でなくまじめな展開になった。
途中、「清水さんですよね」とお客さんの一人に言われ、
またややこしい人だったらやだな、と思ったら
なんと近藤房之介さんだった。
私たちみたいにガツガツ食べないで、
ちゃんとお酒を楽しむ風。大人の雰囲気。

そのあと腹苦しーとか言いながら、
夫の行き付けの店でもある、ストーリーズへ。
ほとんどウーロン茶を飲んだはずなんだけど、
やっぱりフラフラしてしまった。

1999-03-07-SUN

第43回

2月27日・土曜日
朝、コドモが部屋に入ってきて起こされた。
あ、ごめん、と言うつもりが時計の針を見て驚き、
「早く早くっ」、とせかしてしまう。
しかし、今日はコドモも休みの土曜日だったのだ!
やたっ! こっちゃ来い、とベッドに連れ込んだ。
あーいい肌触り。
また寝ましょう寝ましょうと言って
抱き合い足からみ合い寝る。
途中、コドモだけ起きてマンガを書いていた。
おじゃる丸というアニメに出てくる脇役の
電ボというホタルが主人公で、実は家族がおり、
兄弟の為に活躍するというストーリー。
私が小4の時はエロマンガストーリーを書いて
友達に好評だったので、えろう違いまんなあ、と思う。
が、説明できず。
夜、夫が友達とストーリーズへ行こうとする。
浮気しないでねー、と言うと
「ロベロベなんだね」、とコドモ。
ロベロベとはラブラブのことで、
なんでクラスの女子はアルファベットで
ロベロべばっかり書くのかわからなかったそうだが、
こないだのSALE! から
いろいろ英語が見えてきたのらしい。

NHKを見てたら高平哲郎さんが
「今でいうと清水ミチコがあちゃらかで、、」
という意味のことをおっしゃっており、
きゃーっと、嬉しかった。
高校時代の憧れのライター。
あー、あの時代の私に教えてあげたら喜んだだろうな。
信じないかも。
ママ、あちゃらかなの? あちゃらかって何、とコドモ。
そのあと二人でお風呂に入った。
一日まるで、愛人を持つおやじと何の変わりもない。
そのうち
「もしかしたら私はこのコを自分から離れないように
いつのまにか洗脳してるんじゃないか?」
とシャンプーしつつ、疑う。
丸一日、禁煙できた。

2月28日・日曜日
原稿3本。
タバコ吸いたい。ニセタバコ・ネオシーダーを吸う。
(いちおう医薬品)部屋がすごい匂いになる。
あるからいけない、と思い、
自分のタバコはとっくに全部捨てたんだけど、
夫の強いタバコが置いてあり、私を誘惑する。
しかし、頑張った。
1本ですんだ。
もはや1本ごときは禁煙のうちになってしまった。
今度ニコチンガムを買ってみよう。
阿木耀子さんのインタビュー誌を読んでたら偶然
「私、もともと男っぽいところもあったんだけど、
タバコ、今日からやめようと思ったら
スパッとやめられたの」
とあった。
なんてことだ。こんな人がいるんだな。
禁煙に個性があるんだなあ。

こないだ近藤房之介さんに会ったと思ったら、
今度BSで、ちびまる子ちゃんの特集に
出る事になっていた。
ちびまる子ちゃん、夕方テレビで見る。
やっぱり面白いなあ。
小学生がもともとおもしろいのかなあ。
3月のスケジュール表、トイレに貼る。
あまりに忙しそう。
一瞬たりとも時間にふりまわされない、
阿木耀子、と念じる。

1999-03-09-TUE

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