第35回
2月1日・月曜日
ドラマロケ。
ロケバスで高嶋政伸さんと音楽の話。
「清水さん、クラシック詳しいでしょう?」
から始まった。
すごい誤解だ。
しかし、この人の鼻歌は日本一うまい、と思っていた。
私は以前、たまたま廊下ですれ違いざまに聴いて
びっくりした事がある。
口でドラムスとトランペットを小気味よく鳴らして
テイクジAトレインをやっていたのだったが、
確かにそれがうまかった。
こんな人はざらにはいない。
それを言うと照れていた。
私は人の鼻歌をすかさず聴いて、
そのタイトルや歌のクセなどを
一人心の中で確認するのが好きだ。
印象的なのは森口博子さんで、
ある日のロビーで、私の目の前で高い声で、
オリビアニュートンジョンを口ずさんでて、
それが長かったのだ。
これはめずらしかった。
ついにラストまで歌った。
私も歩きながらよく歌うのだが、
たいがい人がいるとわかると、どうしても止めてしまう。
しかし、一度やはりスタジオの廊下で
私が一人大きな声で歌ってたら背後で、
私の音程に合わせて下の旋律を上手にとった人がいた。
振り向くと玉置浩二さんで、「わ」、と思った瞬間に
「はい、そのまま。続けよー」
という顔をなさり、仕方なく最後まで歌った。
2月2日・火曜日
NYから日本に帰ってきた、高平みくちゃんと
「寺内貫太郎一家」を観に行く。
みくちゃん、6才の時、初めて家出をしたそうだ。
向かった先がなんと当時近所だったタモリさんの家で、
(親は知り合い)タモリさん、みくちゃんに
「小学一年生」(本)を買ってあげたそうだ。
普段から親が絶対買わないシリーズの本なので、
すごく面白かったと言う。
自分の家に、困っている6才の少女がたずねてきたら、
どんなに(意外と)嬉しかっただろう。
みくちゃんはそういうふうに自然と、
人を喜ばせる才能(?)がある。
しかし、若いのに建築家の名前や、
絵画の手法らしき名詞など、サラサラ言うので、
こっちはついていけず、
それ何なの、と中断することしばしば。
みくちゃん、あやまりながら、
あ、またあやまると嫌味ですかね、
と気を使っていた。
2月3日・水曜日
ドラマスタジオロケ。
佐野史郎さんが高嶋政伸さんに
「俺の好きな音楽」を教えようと、
いろんなCDをわざわざデッキでかけていた。
私もメイクしながら横で聴いていたのだが、
いいものだった。
途中、いやに気味の悪いのが流れてきた。
「なんですかその気持ち悪いのは」と佐野さんに聞くと、
「あ、わかります?」
と言う。
「これ、やっぱり気持ち悪いって感じます?」
と嬉しそう。
なんでも大瀧詠一さんお勧めの中の一枚で、
この、気持ち悪いのが今、かえってヨイのだそうな。
ベルトケンプフェルトという人。
2月4日・木曜日
ビバリーとTBS。
終わって遅刻しながら山下達郎さんのコンサートへ。
実に面白かった。
ミュージシャンに対して
こういうと失礼なのかもしれないが、
まちがいなくおもしろかった。
ほぼ4時間。アンビリーバブル。
MCで「タバコ止めて10年になりますが」と言ってて、
これはやはり自分に喫煙止めろ、という啓示だと解釈。
この日はたまたま誕生日だったそうで、
竹内まりやさんが一緒に歌うという一幕もあった。
家に帰って、達郎さんが歌ってた
「煙草が目にしみる」をピアノで弾く。
カンで弾いたのだが、なんだかうまくできて、
練習したかのようだ。
2月5日・金曜日
NHK生放送。
家を出るとき玄関に張り紙がしてあり、
「このマンションにお住まいの方、
深夜11時以降のピアノ、近所迷惑です!」
とあった。
弟も(ジャズ研)、やはりマンションで
サックスを練習していると、下の部屋から
コン! コン! と何かを上にぶつける音で
「やめろ!」と苦情が来ていたそうだ。
私のピアノはわかるが、
弟のサックスはめちゃくちゃうまい。はずだ。
ちなみに書いていた小説も妙にうまい。
小さい頃から天才天才、とまわりから言われてて、
私も、そうだ、そうだ、と身びいきで応援してたのだが、
とにかく人前に出るのが嫌い。
このネックは大きく、
「小説どれかどっかに出せば。姉ちゃんハクがつく」
と言っても、
なんだかんだと理由をつけられては断られている。
まるで前に出ている私がバカにされているようでもあり、
けっこういらつく。
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