「代々木公園でみちくさ」編  今回の先生/柳生真吾さん プロフィールはこちら
名前その1 ミズヒキ
雨の中、代々木公園にたどりついたおふたり。
最初に見つけたのが、ミズヒキでした。
偶然にも、ついさっき「ほぼ日」で話していた植物が
「みちくさの名前。」の第1号になりました。

 
吉本 あ、いました、この子。
柳生 ああ、すごいですよ、最初に見つけちゃった。
この子、ご存知ですね?
吉本 はい、ミズヒキ。
柳生 正解(笑)。
吉本 なんでミズヒキっていうんですか?
柳生 ええと、それはですね、
水引きってあるじゃないですか、
紅白の、ご祝儀袋につける。
吉本 ああ、水引きのことですか。
柳生 あれに似てるから、この名前なんです。
吉本 なるほど。
柳生 しゅーっと細くて。
吉本 赤いから、ミズヒキなんですね。


ミズヒキ
分類/タデ科 ミズヒキ属
学名/Polygonum filiforme
原産国/日本
  開花期/秋
分布/日本全国
大きさ/30〜80センチ
柳生 ええ、でも赤だけじゃないんです。
ぼくはこれ、すごいなと思ったのは、
紅白なんですよ、花を裏から見ると、
ほら‥‥。

雨のことなど忘れたかのように、
吉本さんは熱心に耳を傾けます。

次のみちくさは、明後日に。
しばらくは、いちにちおきの更新ではじめてみます。

 
  吉本由美さんの「ミズヒキ」
 
ちょっと昔の秋の中頃、
庭のすみっこに1本の新人が現れた。
初めはありふれた草と思っていた。
でも数日後、小さな赤い粒々を並べた穂を
2本ひゅんひゅんと空に向かって伸ばし始めた。
といっても身の丈せいぜい20センチくらいだから、
まだまだ幼児ではなかろうか。
アカマンマ(イヌタデ)に似ているけれど
ずっと細くてキリッとしている。
ねじ花にも似ているけれど
何しろキリッとしてねじれていないから違うのだろう。
虫めがねで見た。
交互に並んでいる赤い粒々は花らしかった。

何者か? すぐに牧野植物大図鑑を繙く。
何かっていうと牧野先生の図解に頼る生活が
もう何十年も続いている。
そのときも新人の履歴はすぐに判明し、
ミズヒキであるという。
ミズヒキというからには、冠婚葬祭の包み物にかける
きれいなあの紐のたとえだろうか。
確かに両者ともきりっとしている点では
通じるものがあるが、いまいちもの足りない。
たとえば早春庭木の下に
ひそっと一穂小さな白い花を付ける植物を、
まるで静御前のように可憐で美しいから「一人静」、
それとは別種の花穂が二手に分かれているのは「二人静」、
と呼ぶと知ったときの
「な〜〜〜るほど!」という驚きが足りなかった。

けれど今回、柳生さんからミズヒキの秘密を教わり、
目からウロコが剥がれ落ちた。
穂が水引のようにススッとしている点以外に
ミズヒキと呼ぶその理由は、
「赤い花の裏は白い」ってことだったのだ。
エッ? と思って裏を見ると、つまり下から見ると、
白の行列でつまり“紅白”、水引そのもの。
うまい、座布団50枚!
てなもんで、いや〜、名付け親はどなたであるか。
頭が下がる。ちなみに、白一色のギンミズヒキ、
黄色一色のキンミズヒキもある。

2008-12-03-WED
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