Yeah!Yeah!Yeah!
マイクロソフトの
古川会長がやってきた。

14

糸井 仕事にするつもりはないんだけど、
手が空いたらやりたいことがあるんです。
これ、アップルにも言いたいんだけれど、
「こうしてください、ああしてください」
って画面にインフォメーションが出るじゃないですか。
あの文章が、全部、ダメなんですよ。
あれを俺の仕事として、いつかプレゼンテーションしに
行きたいんですよね。全コンピュータ会社に。
ふざけてますよね。
「アプリケーション・エラー」
とかさ。なにを言ってるんだ! って。
ほんとうは、解ってる人用と、解ってない人用に、
2種類のメッセージが欲しいんですよ。
解ってる人用のメッセージは、はなから初期設定で
やっとけばいい。でも、解ってない人だったら、
「これはあなたには手に負えません」
って出ても、かまわないんですよ。
「すぐにここに電話しましょう」
って出ても。
問題を解決するのに、全員同じふうに、難しいことばじゃ、
僕、ぜんぜんわからないです。読まないですよ。
「ナニナニが見当たりません」
とかいろんなこと言うじゃないですか。
どこがアップルは優しいんだ?
でも、ウインドウズはもっとキツイですよね。
あれ、お役所の言葉なんですよね。
古川 そうですよね。
何番のエラーですとかね。
糸井 その「何番」の対処表があればいいよ!?
対処表があってもわからないですよ……。
「ワタシ今、何いけないことしたの!?
 お願いだから言ってください」
って気分になるんです。ものすごく
「どうしよう?」ってオロオロします。
糸井 感情を入れて優しくしていく、というやりかたは、
間違いだと思うんです、僕。
つまり、よく例に出すんだけど、
税務署員が全部詩人だったらヤだよね、って言うんです。
つまり督促状が名文句だったりして。
「君が払わない日 その日が来た……」
なんて来たら、ヤじゃないですか!?
そこはね、さらっと、「ということで」って
やってほしいんだけど。
行き来はあるべきだと思うんですよ。
それは、俺ならできる、って思ってるんです。
いつか、時間が空いたら、売り込みにいこうと。

古川 昔、MS-DOSがフロッピーとか読みそこなったとき、
出てきたエラーメッセージの翻訳候補なんですけどね。
英語のメッセージは、ABORT, RETRY, IGNORE?
とか言うんです。
しかし出てきた翻訳のメッセージは、
「途中でやめますか? もう一度しますか?
 無理やりしますか?」
ほとんど犯罪だよそれは、って。
糸井 それはね、単純に言っちゃうと、簡単なんですよ。
ゲームデザインやってる人が、かかわるべきなんです。
ゲームって、インターフェイスがすべてなんですね。
古川 ……ゲームでもですねえ……。
糸井 いや、バカも多いですけどね。
古川 ジョイスティックの翻訳で、
「悦楽棒」って書いてきた人がいる(笑)。
糸井 それはもうユーモアの域じゃないか(笑)。
如意棒、とかつけちゃうの。
……ジョイスティック!
いいなあ。買いに行きますねー。
糸井 正直に言うと、俺は、あんまりヤじゃないなあ!
古川 その手のね、ちょっと想像を超えたような。
糸井 「コンテンツを選べる自由」
というのを語るように、
「テキストを選べる自由」
というのが4種類くらいあればいい。
今、ナビゲータで関西弁のやつとか
くだらないオモチャはあるけれど、
本当に必要なものって、ああいうことしないんですよね。
あれはね、俺、やるよいつか! いつかね。
今は……やれないけど。
大変な仕事だと思うんですよね。
もっと言うとね、マニュアル工場をつくりたいんです。
世界中のマニュアルは全部俺がつくる。
「この会社に頼むと
 なんてわかりやすいマニュアルをつくるのかしら!」
って。で、もう、弟子がどんどんできて、
どんどん上手になる。
これね、夢なんです。「やまとことば研究家」としては。
よく法廷ドラマ見てると、
「証人の金澤さん、5歳の子どもにわかるように
 言ってください」
って言うじゃないですか。あれですよ。
古川 以前、一定のルールを作ろうと、
マニュアルについて語っていたことがあるんです。
1行の中にカタカナ言葉を2つ以上出さない、とか、
1ページの中に、初めて出会う単語を、
2つ以上はつくらない、とか。
1ページに2回も見たことのないものが出てきた瞬間に、
やんなっちゃうから。
それを散らして、少しずつ勉強してもらおう、と。
糸井 どんなに自然にいくものでも、
2つ説明の要るものっていうのはダメなんですよ。
これはもう基本ですよね。
だって、ホームページ、ここをクリックして
次ここに行くに絶対決まってる、って思ったって、
全員が行くわけじゃないんですよ。
7割に下がりますよね。相当な重要度があっても。
ふつう、5割以下ですよね。
ここまで来てどうしてここまで行かないの、って。
そういうのって心の問題なんですよね。
いつか、プレゼンテーションに行きますよ。
「ためしにこのページだけつくってみたんだけど」って。
やんなきゃだめですよね。
このまま行ったら、理科系のやつらの……、
思うツボ?
糸井 思うツボどころか、思ってないから困る。
思ってるんだったらいいんだ。
で、その次に誰が来るかって言ったら、法律家ですよ。
こうすれば間違いない、っていうやつらが、参加しちゃう。
ウチでヨーグルト配ってたじゃないですか。
あれ、笑っちゃうんだけど、世界で初、
ってことがあったんですよ。
ヨーグルトの感想をもらう質問メールを、
2000弱、出しているんですね。送った人の数だけ。
ところが、返りが、2000通を越えているんですよ。
これ、世界初だと思うんです。質問を越えた答えの数。
クイズでもなんでもなくって、
一緒に食べた人がいるんです。
で、ひとこと、「転送なんかしてくれて、
一緒に食べた人の感想なんかももらえると
すっごくうれしいです」って書いただけなんですよ。
そしたら、来るんですよ。
それだってね、それを書いておかなかったら
2000以下になったと思う。
だけど、みんな「ちょっとお願いします」っていう
低い位置から語ることができないんですよね。
ペコペコして揉み手しても、
誰も言うこときいてくれないけど、
低い位置のところで「頼む」って言われたら、
そんなにヤじゃないんですよ。

コンピュータって、間違うしさ、
いろいろ不都合もあるんだけど、
一緒に解りあおうよ、っていうような姿勢で、
多分、つくれるんですよ。
ゲームだと、とんでもないことするやつが
山ほどいるんですよ。
「まさか、ここに寄ってここに来るとは思わなかった!」
っていうようなやつ用の仕組みを作り慣れているんで、
僕らはあきれる経験は山ほどしているんです。
しかも僕は、いまのところ、ひらがなメッセージに
こだわっているんですよ。
これはパソコンにひらがなを入れろ、
ってことじゃないんだけれど、
耳で聞いた言葉で使えないと、たぶんだめだな、
ってことなんです。
漢字をつかっちゃうと、便利に使えすぎちゃうんですね。
ロールプレイングゲームをするときには、
耳で聞いた言葉で、
本当にしゃべれる言葉しか書かないようにしている。
それで説明できないことは、やめちゃうんです。
そこまでやってもね、まだ、なんとかなるんですよ。
だとしたらね、コンピュータが乗り越えなければ
ならないのは、実はテキストの壁だだと
思っているんですよ。
アプリケーションがどうだ、デバイスがどうだ、
って言ったって、知らないですよね。
古川 エラーメッセージにしても、
「ぼくにはどうしようもありません ごめんなさい」
って出てきたほうがカワイイですよね。
糸井 で、どうしようもないなりに、道はあります、と。
「どれをえらびますか?」って、
また分かりやすい言葉で、「電話をする」だとか。
「近所に詳しい人がいたら、これくらいのことが
解る人ならこれも解るはずです」なんてのも、
奥まで入っていけばいいわけだから、
相当、できるんですよ。
それのためのメモリが別に多いわけじゃないし。
いつかね、俺は、持ってくよ! 
これは、ほかの仕事とね、僕の興味が
飛び抜けて高いんですよね。
古川 最後にどういう言葉で表現するか、ってのは、
言葉に対する感性の高い、糸井さんみたいな方に、
練り込んでもらうしかないわけだけれども……。
たまたま、なんですけどね、
たとえばこういう状況のときには、
ここから単語を引っ張ってきて画面に出しなさい、とか、
それまでの間、いままで自分が操作したことを
ちゃんと監視しながら、ここで困ったんだとか、
いままで印刷のコマンドを3回まちがえて、
何々をしようとしたけれど、途方にくれている、とか、
そういうところまでを類推しながら、
ヘルプメッセージを出す、っていうカラクリは、
……そういうロジックは、だんだん高まってきたんです。
糸井 そうですか。
古川 そのときに、画面にどういう……たとえば、
喜怒哀楽を表現するようなペットを出して、
その通りでいいんですよ、ということを顔で表現したり、
困った顔をしたり悩んでくれたりね、
そういう感情の表現をキャラクターの部分で
どういうふうに表現するか、とか。
それから、あいまいな言葉で表現したときに、
それは何に関連したものなので、ここに書いてある
エラーメッセージをこうしなさい、
というところまで検索して、そこにポインタを合わせる、
そういう技術は実は、どんどん高まっている。

糸井 いままでは、そうすると、だめだったんですね。
古川 だけど最後の最後で出てくるメッセージが、
「お前、バカにしとんのか!?」
というものになるから、せっかくそこまで行ったんだったら
最後のそういう言葉の選び方も、表現の方法も、
もっとチューニングがなされていれば、
そうしたらもう少しやさしいものになるんじゃないか。
糸井 それは、じゃあ、2、3年以内に、攻めましょう!
古川 それで面白いのはね、顔のパターンがいくつかあって
喜怒哀楽を表現するのがいいに違いない、そして、その
フェイシャル・コミュニケーションのことを、
ソシアル・インターフェイスというんです。
今までのユーザー・インターフェイスという言葉が、
なんか、こう、どっか……、
糸井 ヘン、ですよね。
古川 社会的接点の中で、人間本来のコミュニケーションは
どうあるべきかということを、いま、
ソシアル・インターフェイスというんですね。
この部分では、人間って、問い合せをしたい内容が
わかってるんだったら、わざわざ聞かないよ、
という気持ちがあって、そこがあいまいにしか解らないから
何とかして、ということを言うわけですね。
もう本当に人に聞くような言葉で、あいまいに
表現しても、それなりに解析してくれるもの。
たとえば段組……段組っていう言葉じゃなくて、
「文字を、1段、下げるのはどうやるの?」
ってときに、それに相当するような画面が出てきて、
その画面を見ながら、試しにここを押して下さい、
となって、そこから先は自動操縦で、こう動くんですよって
示してくれて、また元に戻る、というような。
非常に残念なのは、その中に書いてある言葉というのが
「失敗したあなたが悪いのよ」
っていう突き放しじゃあね。責任の所在が、
「何で俺のせいにばっかりするの?」
ってことになったり、言葉として意味不明だったり。
そういうことをもっと
解決していかなくちゃいけないですね。
糸井 キャラが、3人4人いて、
「こわいひとでもいいから、てきかくにわかる」
のを選んだら、怖いけど的確に教えてくれる。
「いっしょにこまってくれてもいいから、
 おれをきずつけないで」
って子を呼べば、その子が答えるとか。
八谷(はちや)くんと作れますよ。ポストペットの。
そうしたら、できるよ。
これはね、マックやろうがウインドウズやろうが、
初めから悩んでいる問題なんですよね。

(つづく)

1999-11-26-FRI

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