糸井 |
古川さん自身の、これから先の個人としての
夢とか設計ってあるんですか? |
古川 |
個人? |
糸井 |
うん。「ぜーんぶ、辞めて、ハワイで暮らす」でも
なんでもいいんだけれど。 |
古川 |
うーん……。あのね、
「鉄道を買わないか」
って言われているんですよ。 |
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糸井 |
えっ!?(笑) ど、どこの? |
古川 |
ロッキー山脈の。 |
秘書 |
その鉄道、赤字なんですって。 |
古川 |
そのままだと廃線になっちゃうんだって。
それこそ絵本に出てきそうな、昔がんばった機関車が、
退役してそのまま、もう火も入らないまま30年、
公園の片隅に置いてあります、って。
それを、地元の人達がもう一度、
ボイラー試験なんかはちゃんとして、補修して、
昔走ってた山でもう一回、煙出しながら走ってほしいね、
という運動をしているんです。
ボイラー試験やるところまでは、去年、
すこし進歩したんだけど、
走らせる場所が国立公園に指定されたから、
一度線路をはがしちゃうと二度と線路をひくことが
許可は得られそうにない。それを保存するためには、
永代使用権として、鉄道の権利を誰かが
買わなきゃならない。 |
糸井 |
大きいですねえ。小さくないですね。
弥次馬としては、買って欲しいな。 |
古川 |
五島さんとか、堤さんとかがね、東急とか
西武鉄道持ってるとかというのと同じように、
ボクもひとつ、鉄道持ってみたいなあ。 |
秘書 |
でも、儲からないもの、絶対に! |
糸井 |
鉄道っていう物体そのものは、それだけだけど、
前後をつなげたら、儲かるかもしれないですよね。 |
古川 |
その地域の観光のため、とかね。
それから、若い子たちが都会に出ずに、
学校で鉄道の保守の仕方とか、旋盤の回し方とか、
工具の使い方とか実習をやってる。
そういう若い子たちが、都会に出なくても就職する場が
ある、とかね、その地域の観光収入とすると、
別にお土産の饅頭つくってるばっかりじゃなくて、
いきなり全部開拓してしまってアミューズメントパークを
つくって映画館をつくればいいって話じゃなくって、
自然の中で、こう、その地域って温泉も出るし……、 |
糸井 |
ロッキー山脈の近くで温泉。いいなあ。
おさる、なんかも乗せたいねー。 |
古川 |
ロッキー山脈ってサルいるのかな? |
糸井 |
動物は、からめたいなあ! |
古川 |
クマでしょう。 |
糸井 |
クマといえば、角砂糖ですね。
角砂糖工場をつくって……(笑)。 |
古川 |
クマがつかまらなかったら、私が替わりに。 |
糸井 |
(笑)じゃあ、実現する可能性、あるんですね!? |
古川 |
…………うーん……。 |
秘書 |
機関車が走っているところを自分が見たいだけですよね、
きっと。 |
古川 |
人間として何か残そう、っていうのでもないし、
別に、美術館でもないしね。
明治大正の時代だったらまだしも、今この時期に
何かを残す、っていってもね。 |
糸井 |
でも、記憶に残ることを、してほしいですね。 |
古川 |
銅像をたてたい、ってわけでもないし。
犯罪おかして、新聞に名前が出たとかっていう話だったら
シャレにもならないけど。 |
糸井 |
いや、「覚えてるよ」ってこと、してほしいなあ。
せっかくだから。 |
古川 |
「バカなやつだねー」
ってこと(笑)? |
糸井 |
そうそう(笑)。
ほら、高校時代に先生の車を立てちゃったっていう時の
写真と、ロッキーの鉄道写真が並んでて、
「古川の業績」
とかって2つ並んでたら、いいじゃないですか。 |
古川 |
そうかなあ(笑)。 |
糸井 |
古川さん、僕からの相談なんだけれども、
いま1000万人のインターネット人口って
言われてますよね。一番多く言う人で1600万人、
一番少なく言う人だと、まじめに見てるのは300万だ、
って言う人もいる。
古川さんは、どうなると読んでいるんですか? |
古川 |
なにかのデバイス……それはキーボードがついたような
ものじゃなくて、たとえばiModeで100万台
増えるまでの加速度って、すさまじかったですよね。
@NiftyにしてもBIGLOBEにしても、
100万ユーザーを獲得するにはおそらく4、5年
かかってますよね。で、いまは300万ユーザーだとか
600万ユーザーだとかいう言い方をしているけれど、
最初の100万を獲得するまでの
スピード感っていうのは、iModeが、
過去のインターネットメディアのなかで
一番早かったかもしれない。もうすでに200万だけど。 |
糸井 |
そうなんですか。 |
古川 |
それからもう一つは、たとえばSEGAの
ドリームキャスト、売れてる売れてないっていう
話はあっても、この半年の間に、
インターネット・レディ(Ready)のデバイス、
追加で何も購入しなくても、買いさえすれば、
電話線につなげばそのまま動くデバイスが、
100万台以上配られているのは、
iModeとドリームキャストだけです。
同一機種で100万台というのは、
VAIOでも達成していないし、iMacでもないし、
ドリームキャストの台数が一番多い。
電話線につなぐためのコードまで全部入っている。
残念ながら、そのなかの15%か、20%くらいしか、
インターネットにアクセスとかしていない。
なおかつ、アクティブなユーザーというのは
その中でもまだ少ないでしょう。
これから先、今までとは違ったデバイスが接続されて、
今までのコンテンツを、コンテクストに興味ある人が
デバイスなんかなんでもいいんだ、っていう状態で
アクセスし始めた瞬間に、大化けする。
アメリカでは実際にインターネットにアクセスできる
端末で、一番安いのが99ドルですよ。 |
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糸井 |
そうですか。
あのね、テープ止めてからナイスな話があるんですけど。 |
古川 |
えっ?(笑) |
糸井 |
夢なんですよ。つまり、母数の事って、
普段は言わないけど、本当は1000万って、
ものすごく少ないっていう大問題があるのに、
株も買いましょう、車も買いましょうって
言ってるとことにばらまこうとしているわけですよね。
通販だとかで。あんなことしてたらみんな
悲鳴あげておしまいになっちゃうんだけど、
みんなが普通に持っている状態にするために、
どういう努力が、コンピュータ業界の人達はできるのか、
ってことを、ほんとにまじめに考えてない!
というのが僕の意見なんです。
「20万のものどうやってばらまくんだよ?」って。
「ほんとは5万でほしいな。5万でも高いくらいだな」
それを、どうばらまくかっていう方法を考えたんですよ。
「つくってさえくれれば、ばらまけるな」
っていう方法があるんです。 |
古川 |
そのヒントもいただきたいんだけれど、
先に、インターネット用のデバイスの普及を
別の方法で始めちゃったのは、大阪有線さん。
売り方は、有線でインターネットを引く機械って
やっぱり箱の価格5万5000円なんかで
買わないでしょう? まだ高い。
アメリカなんかでは2万円くらいだもの、同じものがね。
2万円くらいだったら、ちょっと冗談めかして
買っちゃってもいいし、もう一段と安いバージョンは
99ドルだから、1万2000円とかそのくらいでしょう。
それでインターネットが始められるっていうなら、
買って後悔はしない、っていうレンジ。
でも別の視点で考えれば、1万円だろうが2万円だろうが
5万円だろうが、物を買うときは、
値段を他のものと比べますよね。
「ちょっと周りを見渡してみると、こういうものが
そこそこの値段で買えるとき、1万円でも2万円でも
やっぱり高いですよ」って言われたときに、
有線が始めた方法というのは、月額の契約料を、
今までは2000円でやってたところを、
3500円にしてデバイスをタダで置いていく。
そういうやり方を始めたんですね。
その代わり24ヶ月使ってくれたら箱はタダ。
それで急に台数が増えた。
コンテンツとして有線放送の定期購読を2年間した人には
インターネットに接続できる箱を
タダで置いていきましょう、と。 |
糸井 |
富山の薬、ですね。 |
古川 |
そうそう。パソコンでもそれをやろうとして、
でもパソコンの場合は値段が10万円以上だから、
登録してもらった人間1万人集めてお金だけ取って
そのままトンズラするような会社も増えていてね。
無償のパソコン、というのは、じつは、
お金を回収して逃げちゃう、というカラクリに
使われたりね。今度は、逆に、まじめにやろうと
している人は、利益が出なくて失業しちゃったり。
パソコンの価格をどうしたらいいか、
というアイデアは、ぜひ、いただきたいですね。 |
糸井 |
早い話が、価格の問題もさることながら、
販売チャンネルが、プル型なんですよね。
それが問題なんだろうな、と思っているんです。
だから、流通チャンネルがあるところを、
みんなコンビニコンビニって言ってるけれど、
コンビニ以外に流通チャンネルはどこにあるんだ?
っていうのを、まじめに探す、っていうことから
始めるんですよ。それ、僕の考えでは、あるんですよ。
要するに、あらゆるシステムはすべてメディアに
なるはずだから、たとえばパチンコ屋っていうのが
2万軒弱あるんだけれど、この2万軒は、
メディアとして全く機能していないですね。
パチンコ屋さんというのは、景品を置く場所を、
何平米のうち何平米、とらなきゃいけないっていう
規制があるんですよ。
実際は、9割が換金しているんですよ。
だから、安全カミソリを置く場所さえあれば、
パチンコ屋って、あと全部、台を入れられるのに、
法規制で、ぬいぐるみを置いているわけです。
頑張る会社は、ナイキの靴を、みんなが買えないときに
置いてあるとか。あれを置いてある場所っていうのは、
法で決まっている以上、
メディアに使えるんじゃないのかなあ。
それで、たとえば2万軒増える、とか、
そういう発想で考えると……あるんですよ、
すでに、もう、人に物を売ったり、
サービスしたりするチャンネルっていうのが。
日本中に、何層にも分かれてあるんですよ。
そのうちの、どことどう組んで、あるいは全部を束ねて、
おばあちゃん、おじいちゃん、子供に、
ちゃんと届けられるかどうか、っていう問題が
いちばん大きいんじゃないか。
(つづく) |