音楽やってる女子高生通信
(from N.Y.)

『VOL.2』

まず、注:
JAL5便でとなりになっためがねのおにいさんへ
>この原稿に悪気はありません。

みなさんこんにちは。坂本美雨です。
アルバムも無事発売され、
HP「Stellarscape」も無事オープンしました。
ファンメールをくださった方の中には「ほぼ日」で知った、
という方もたくさんいてうれしいです。

さて今回は飛行機の中で思いついて
「これは絶対ほぼ日に書かなきゃ!」と思ってすぐに
書き始めました。

突然ですが、わたしは相手がどういう人であっても
飛行機の中で知らない人に話しかけられるのが
とても苦手です。ひどいことを言うようですが、
正直いってちょっとめんどくさかったりします。
だから誰かのとなりになっても
できるだけ話しかけづらいようにしてしまいます。
一人で旅することが多いのでなかなか苦労します。
ずっとヘッドホンをして音楽を聞いていたり、
眠れなくても目を閉じていたり、
読み物や書き物に没頭したり。
できるだけ一人の世界へ入ってゆきます。
だけど、わたしの場合どうしても最後まで
かっこがつかない! いつも何かしらドジなことして
その場の空気をなごましてしまって、
話しかけられやすい空気になってしまうのです...。
今回日本に帰った時もね、パンが入っている袋を
あけようとしたらなかなか開かなくて、
力をいれたら中身が飛んでしまって(笑)。
思わず自分で笑ってしまった!
おそるおそる隣を見たらその人も笑っていて、
とうとう目があってしまった...。

もちろん相手は
「坂本美雨」として話しかけてくるわけではなく、
「となりに座った女の子」として話しかけてきます。
ニューヨーク東京便に乗ることが多いので、
だいたい最初はニューヨークに住んでいるのか、
日本への帰国なのか聞いてくる。
ニューヨークに住んでいると答えると、
学生かどうか尋ねられる。そして歳がわれる。
仕事のために、普通学生が帰国しないような時期に
日本に行くことになると、「珍しい時期に帰りますよね」
と言われてドキッとする。
そういう時は「ええ、この時期に帰らなくてはいけない
用が出来てしまって」と漠然とした答えを返すのだ。
そうすると相手は「これ以上踏み込んではいけない」
ニュアンスをなんとなく感じとり、それ以上その分野では
つっこんでこない。たぶん「身内の不幸」とかを
想像しちゃうんだろうね(笑)。全然違うのにね。
でも、そうすると今度は
家族と一緒に住んでいるのかどうかに話がいく。
ここから先、家族の話に発展しそうになると、もう逃げ腰。
なんせ、わたしはこういうことで嘘がつけない。
聞かれたらどうしても本当の事を言ってしまう。
家族の仕事とか、どうしてアメリカに引っ越したか
とかの話になると、どうしてもいずれは
音楽のことを話さなければいけなくなる。
そうするとちょっとめんどくさいことになるので、
そうなる前に巧みに話題を相手のほうに持っていく。

今回は隣に座ったのがやけにさわやかな、
すごく感じのよい男の人で、大阪の方で、
話し方も親しみがあってすごく良い人だったのですが、
わたしのほうはやっぱり話しかけられるのが苦手には
違いないのでした。で、上記のような会話を交した後に、
相手の話題に持っていったわけです。
ニューヨークに住んでおられて、
◯◯大学で働いていて...と色々聞いて、
どんな仕事をしているのか、聞きました。
そうすると、ちょっと考えた後に彼は
「あの...簡単に言えば医学なんですけど、
動物実験とかやってるんです」と答えた。
いきなり「動物実験」と言われても
反応に困るじゃないですかっ?
あまり動物実験に良い印象はなかったし。
でも失礼になりたくなかったので
とにかく何か言わなくては!
あせったわたしは「あの...うさぎとか?」
ああ...マヌケな事を言ってしまった...。
彼は笑って「いえ、ねずみとかですね。あとは犬とか。」
え、犬??? また悲痛な顔になってしまった。
そしたら「いや〜〜ぼくらも胸が痛むんですけどね」って。

次にコンタクトの話題になる。
わたしはO2レンズ(酸素が通れるハードレンズ)
というのをしてるんですが、彼はメガネじゃない時には
使い捨てソフトレンズをしているらしい。
そうしたら彼は「仕事の時はメガネじゃないと
いけないんですけどね〜、血が飛んでくるのでね〜」と。
え、血??? あまりににこやかに言うので..。
それにしても本当に親しみやすい、おもしろい人でした。

会話は進んで、結局最後のほうには
お父さんの仕事を言う流れになってしまった。
だって嘘つけないでしょう。
そしたらインターネットで「教授の娘」の話は知っていて
「随分有名になってるらしいじゃないですか」って
言われちゃって。あーあ、と思いました。
でも今回はいい人でほんとによかったです。

前回がまたすごい人でね、ひどいめにあったんですよ。
今だから笑えるけれど...って、でもその話は
また次にしていいですか?
次号へ続く! お楽しみに!

1998-12-07-MON

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