坂本美雨のシベリア日記。
一日一日が、かけがえのない一日。
******登場人物******

 西野さん
 ロシア語ペラペラ、
 ロシアをこよなく愛する
 プロデューサー
 (お父さん)

 上野さん
 激しく厳しいロケばかり
 くぐり抜けてきている
 ディレクター

 樋口さん
 美しい
 映像のためなら
 何も惜しまない
 カメラマン


 杉山くん
 主に音声を担当、
 優しいカメラマン
 アシスタント

 藤井くん
 この旅が初の遠征ロケ、
 クルー最年少、
 二十歳の
 カメラマン
 アシスタント


 雨宮さん
 坂本の
 名マネージャー

 サーシャ
 女性を愛するコーディネーター
 /通訳(旅前半のみ)

12/27/2001
シベリア鉄道の旅 DAY 1
新潟からウラジオストックへ。


ぎりぎりのぎりぎりまで、
荷物のパッキングが終わらない。
漫画のように全体重をかけて
ギュウギュウに押し込んだ灰色のトランク一つと、
ボストンバッグが一つ。
手荷物のバッグが一つ。
9時、事務所の人が迎えに来て、家を出発。
10時頃東京駅着。今回の番組の制作会社
テレコムスタッフチームと集合。
大量の荷物で目立っている西野さん達と
荷物の確認をしている時、
トランクのカギを玄関先に忘れて来たことに気付いて、
パニック。
家の合鍵を預けている事務所の栗山さんに、
家に鍵を取りに行ってもらい、
東京駅では間に合わないので、
なんと新潟空港に届けてもらうことにする。
もしものために、東京駅でもう一つ
予備のトランクを買っておく。
万が一栗山さんが間に合わなければ、
このトランクの鍵を壊して、
新しい方へ詰め替えるために。
申し訳ない・・・。
パッキングはぬかりないと思っていたのに、
鍵を忘れるなんて信じられない...。
この旅はどうなってしまうんだろう。

落ち着きを取り戻し、新幹線で新潟へ。
見送りに来てくれたテレコムスタッフの
高尾さんと渡辺さん達とは東京駅でお別れ。
12時頃新潟着。
そこから車で30分。新潟空港へ。
空港は新しく綺麗だけれど閑散としている。
樋口さん、カメラクルーは
東京からバンに荷物を積んで運転して新潟まで来ていた。
そこで、初対面のスタッフ二人に会う。
音声の杉山さん、カメラマンアシスタントの藤井くん。
ディレクター上野さんは、
ロケハンで先にシベリアを旅していて、
ウラジオストックで落ち合うことになっているらしい。

空港で西野さんと雨宮さんと最後のうどんを食べる
最後のうどん、という妙な響き。
だけどこれから3週間は日本食とはお別れだと思うと、
記憶しておきたくなる。
お店から、海が見えた。
へんな色をしていたので、
最初は海だと思わなかった。
雲が厚く、全体がグレー。
空港から自分のホームページの掲示板へ
最後の書き込みをする。
三時頃、栗山さん、鍵を握りしめ新潟空港に到着。
間に合ってよかった・・・。
めでたくトランクの鍵が開く!!
そして栗山さんはそのままUターン。
どうもありがとう・・!!

搭乗ギリギリまで、何人かの友人に
携帯からイッテキマスのメールを送る。
15時40分、ウラジオストックAIR出発。
飛行機が小さくて、プロペラ機のよう。
たよりなくて、ギシギシいっているし、
すきま風まで入ってくる。上昇する時、
すごーーーーーく怖い。震えるくらい。
雲が厚いのですごく揺れ、泣きそう(いつもの通り)。
・・・ふと横を見たら、通路を挟んで隣の藤井くんが
ものすごい早さで眠りの人になっていて、
顔に陽が当たっていて、
口をぱかっと開けていてかわいいので、写真を撮った。
(いつも夜眠らないで翌朝飛行機に乗って、
 飛び立ちもしないうちに気絶するように
 眠ってしまう自分みたい。)
 


機内サービスもなかなか笑えた。
一時間ちょっとのフライトなので機内食はないが、
キャンディーやらリンゴやら配られて、
これでもかというくらいのドリンク責め。
「スパシーバ」=ありがとう、連発。
あまりに最近寝ていないので頭がシビれる感じ。
それにしてもgolden twilight!! 



この旅に、さんざん迷った末、
パソコンは持って来なかった。
荷物の扱いや寒さも心配だし、
どうせメールは繋がらないだろうから・・。
番組内で使うために、
毎日日記をつけるように
ディレクター上野さんから言われていたので、
一冊のノートを用意してきた。
ニューヨークで買った、ヒョウ柄のふわふわのノートと、
二本のお気に入りのペン。
パソコンのキーボードにすっかり慣れたこの指が、
今日からこのノートに全て書き記していく。



様々な覚悟をしてのぞんだこの旅。
何が待ち構えているのか、想像もつかない。
写真は撮るが、どれだけ目に焼きつけることができるかだ。
美しすぎるものばかりだけど、
美しいものから目を逸らしてはいけない。
眩し過ぎても、見ていなくてはいけない。
雲の上に出た瞬間、突然陽が窓から飛び込んで来た。
金色で、まぶしかった。
雲が波みたいに一面を覆い尽くしていた。
遠くには見事な rainbow color。
自分の肌や髪の毛が、こんな濃厚なオレンジを含んだ
金色に染まったことはない! 目がつぶれそう!!
生々しい、生きている色だ。
私達は「赤」に染まる。「紅」に。
その色に染まることしか出来ない。
色を浴びながら、真っ赤な太陽を見送る。
りんごを食べながら。みんな、赤になる。



私達は今まだお互いを何も知らないけれど
飛行機で並んで座っている。
こんな風に、あっという間に時が過ぎて、
3週間なんてアッという間で、
気付けば帰りの飛行機に座っていたりするのだろう。

xxxxxxxxxxxxxx

ちょうど陽が暮れる時間。
ロシア極東の土地ウラジオストック。
ウラジオ空港に着くと、一度タラップを降りてから、
バスに乗って灰色の建物へ。
イミグレーションなど。
なるほど元ソビエト圏という雰囲気で
ちょっと緊張するが、
「スパスィーバ!」と笑顔で無事通る。
日本人も意外と見かける。
baggage claimはすごく狭い。
どんどん人が後ろにたまっていって、
カートも足りないし
このしきりの悪さというかなんというか。
カートは200ルーブル。
でも荷物が無事見つかればラッキー、という雰囲気。
全ての荷物を無事引き取り、
最終checkする時になって、
機材の価値があまりにも高いので(?)
一夜預からなくてはいけないと言われる。
おとうさん(=西野さん)と
アンドレさん(コーディネーター?)が
「カメラマンにとってカメラや機材は命と一緒だ!」
と主張し必死に戦うがどうにもならず、
やむを得ず一晩だけ預けることに。みんなオロオロ。
藤井君と私と雨宮さんは何も出来ず
それをずっと見ているだけ。
でもまあいちいちびっくりしたりハラを立ててたら
始まらないのだろう、この国は。
まず自分の“常識”を捨てなきゃ。

藤井君が二十歳で、私より年下(一歳だけだけど)
だと言うので信じられなくて
パスポートを見せてもらう。
技術陣で年下なんて滅多にいないので、びっくり。
ちょっとうれしい。

機材の件が一件落着して、
初めて触れるシベリアの寒さを覚悟しながら外へ出ると、
想像していたほど寒くなく、
空気がピンと張ってて気持ち良くて、思わずはしゃぐ。
マイナス8度くらいだという。
月がすごく明るくて、真っ白。
あまりにも明るいので、星は少ししか見えない。
ウラジオ空港は成田みたいなもので、イナカ。
3〜40分ほどバスに揺られ市内へ。
ウトウトしているうちにHOTEL Versaillesに到着。



広大なロビーに、巨大なシャンデリア。
ロビーの壁にはところ狭しと絵が飾ってあって、
みんな売り物らしい。
クリスマスデコレーションもしてある。



CHECK INしてパスポートを預ける。
2階の廊下は薄暗くて、誰も居なくて少し怖い。
部屋の天井が異様に高い。
窓の外は暗く、何も見えない。
あまりに無音なので、テレビをつけると、
チャンネルがとても多く、何故かNHK BSも入る。
BBCやCNNも。少しホッ。
部屋は綺麗で、「ロシア=トイレは汚い」と
心配していたトイレも、まあまあ普通というかんじ。
でも洗面台の下に
ゴキブリホイホイみたいなのが
あったのが気になるな・・・。

荷物を置いて、下へ集合。
ここで、ウラジオに到着したしたばかりの
ディレクター上野さん合流!!
一人でシベリアをロケハンしてきた上野さんは
「色々あった・・」とイミシン。

とりあえず3Fのレストランでdinner。
ロシア料理でもなんでもない。
サラダとチキンスープを頼む。
野菜がウマい! きゅうりの味が濃くて、
塩ふって食べるだけで力強くて本当に美味しい。
日本語ペラペラのコーディネーター、
サーシャさんも加わる。
みんなウォッカで乾杯をする。
アンドレさんはお酒が呑めない。
呑めないロシア人もいるんだ・・。
私と雨宮さんと藤井君は呑めない。
日本みたいにライムで飲んだりせず、
ストレートで、きちんと食べながら呑む。
ウォッカは何度も乾杯をしながら飲むらしいが、
「3度目の乾杯は女性のために」
というしきたりだそうだ。
サーシャに美しい美しいと言われ、照れ照れ。
ロシアの男性はイタリア人のように
女性に優しく褒めちぎるのか、
それともサーシャだけか・・。

オナカがいっぱいになったら
すごーーく眠くなってきてしまった。
ここ一週間ほど、ろくに寝ていない。
毎日、1、2時間睡眠でやってきたから。
まだまだ盛り上がっているスタッフチーム、
明日からの旅に備えて話し合うことが山ほどありそうだ。
先に失礼して、部屋へ引き上げる。
廊下やエレベーターホールの電気が消されていて、
デヴィッド・リンチの映画のように怖いので
雨宮さんに部屋まで来てもらう。
トランクを開けたら、ベビーオイルが漏れて
全体が少しヌルヌルで、閉口。
もう顔を洗うエネルギーも残っておらず、
そのまま意識を失う。
テレビも電気もつけたまま。
夜中に一度起きる。何故か時計が無くて、
何時かわからないのでそのままもう一度眠りの中へ。


坂本美雨さんプロデュースのアクセサリー
“aquadrops”が誕生しました。
aquadrops(アクアドロップス)は、
坂本美雨さんがデザイン・製作、
トータルプロデュースを手がける
オリジナル・アクセサリーです。
美雨さんからのメッセージをどうぞ!
aqua drops...

揺れる水の粒。
したたる、春の慈雨。
冷たい水に触れる、指先。

透明感のある繊細なエレガンス、
毅然としたハードさ、フェミニンな揺らぎ。
耳から首筋、鎖骨へのしなやかなラインは
女性の美しさの象徴のような気がします。
そこを、水滴が一粒流れ落ちるような...。
そんなイメージを抱いています。

幼い頃から、母親や友人や自分のために
ビーズでアクセサリーを作るのが
好きでたまりませんでした。
最近、人を綺麗に見せるラインの洋服が
どんどん消えていき、
女性がドレスアップして行く場所も少なくなった。
そんな中で、おもわず背筋がピンと延びるような、
髪をキュッとアップにして出かけたくなるような。
生活の中で愛しい人や物を
真っすぐに見つめられるような。
自分が大切に作ったピアスを
耳にかける時に感じる、そんな気持ちを、
身につける一人一人にも感じてもらいたいと思い、
一つ一つ作り始めました。

坂本美雨

http://www.miuskmt.com/
 
限定通信販売もスタート!

aquadrops取り扱い店
<20471120>
東京都渋谷区神宮前3ー29ー11 
03ー5410ー2015
12時〜20時
<RICO>
渋谷区恵比寿西2ー10ー8 
03ー5456ー8577
12時〜20時

2003-07-03-THU

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