12/28/2001
シベリア鉄道の旅 DAY 2
ロシア号、モスクワ−ウラジオストック。
7時半のモーニングコールで起きる。
こんなに深く眠れたのは久しぶり。
時間がわからなくてNHKをつける。
日本のホテルだったら必ずベッドの横に
デジタル時計があるのだけど、
この部屋には時計がない。
時間なんて大した事ではないのかも。
ロシアの文化、生活リズムを少し感じた瞬間。
おそるおそる、シャワーに入ってみる。
最初は水が茶色いが、無事入れる。
その後なぜか、日本でも見たことがない
「どーもくん」を見る。
シュールで良かった。
9時、上野さんと雨宮さんとサーシャで
バイキングの朝ごはん。
フレンチトーストとクレープらしきものは、
日本とはちょっと味がちがうみたい。
ベーコンと、きゅうりは最高。
4人でこれからの事を打ち合わせ。
ロビーコール11時半。
昨日空港に無理矢理預けさせられた機材を
朝から引き取りに行っていた撮影クルーの皆が、
無事帰ってきた!
外は、青空。
空気はピンと張り詰めて、もちろん息は真っ白。
でもまだダウンは取り出さなくてもいいみたいだ。
ニューヨークで買った、
襟元のファーがお気に入りの厚手のウールコート。
ただ、足は冷えるとさんざん脅されたので、
薄いタイツの上に靴下を重ね履きで、
靴はニューヨークでこの旅のために購入した、
中にふわふわがついた皮の防寒ブーツ。
首もとには、もともとは父親のだった
肌触りの良い大きな赤いマフラーを。
カメラマン樋口さんが、
巨大なカメラを大砲のように肩に置き、鋭い目になる。
いよいよ、カメラが回り、撮影が始まる。
これから3週間、毎日毎日、カメラと一緒なのだ。
それがどういうことなのか、私はまだ分かっていない。
ホテルを出、坂を下りて、広場へと歩いていく。
大きなカメラを抱えたわたしたち東洋人は、
やはり注目されている。
露店の蒸しパンみたいなのが
ホカホカでとても美味しそう。
コンビニ?のようなお店のウィンドウには
Back street boysとかBritneyが表紙の雑誌があるから、
一応情報は入ってきているのだなぁ、と思う。
ホテルから7分ほど歩いたところにある広場は
クリスマスの雰囲気に染まっている。
ロシアは、1月8日くらいまで
クリスマスのお祭り雰囲気が続くのだとか。
ところどころに氷の水たまり。
巨大な木の滑り台があって、そこにももちろん氷が..。
子供達が滑り降りて遊ぶ。
滑る、ということに恐怖心が全く無いように見える。
反射した光が眩しい。
線路の上の陸橋でインタビューを撮影。
ディレクター上野さんが、
基本的なことから質問してくるのだけれど、
全然答えを用意していなかったので、不安。
あんな感じで使えるのかなぁ・・と。
広場には馬もいて、周りは人でにぎわっている。
子馬達もクリスマスの飾り付けをされて、
子供達が乗れるようになっている。
さてロケバスに乗って展望台へ行こうかという時に、
西野さんの姿が見えない!
どこを探してもいないので、
しょうがなくサーシャと上野さんをおいて、
カメラクルーと私と雨宮さんだけ展望台へ向かう。
バスでどんどん坂を上がって行って到着した展望台からは
港が見渡せる。
空は少し白っぽく、軍艦が停まっているのが、
遠くからでも威圧的な迫力だ。
グレーな風景をいっそう堅くする。
壁の落書きや緑のゴミ箱が何気なくてかわいい。
ロシアン不良達だろうか?
若者4人が私たちをからかいながら車で通り過ぎ、
端に車を停め、たまって飲んでいる。
でも彼らが立ち去った後見てみたら、
みかんの皮が散乱していた。かわいい..。
時間が無いのですぐ広場へ戻るが、
やはり西野さん見つからず。
これからいよいよシベリア鉄道に乗るというのに!
列車の時間があるので、直接駅へ向かうと、
何故か駅で西野さんが一人待っている。
これが有名な「西野さん置き去り事件」。
噂によるとニシノビッチさん(西野さんのロシア名?)は
すぐ居なくなるらしい(!)。
カメラクルーが駅構内の撮影をしている間、
ロケバスの中でアンドレさんに色々と話しを聞く。
ロシアの人々は質素な生活をしていて、
物はやはり少ない。
町中のほとんどの人が着用している
毛皮のコートと、帽子。
みんな、一生モノとして、買うらしい。
平均の月給は200ドルほどらしい・・・。
ウラジオ駅は、少しヨーロッパっぽい。
男性スタッフ達がものすごい荷物と戦っている間、
雨宮さんと、木のベンチが立ち並ぶ
大きな待ち合い室で待つことに。
むきだしの、白く塗られた鉄の暖房の所で
別れを惜しんでずーっとイチャイチャしている
カップルが気になる。どこの国にもバカップル..。
ホームに降りると、
くすんだ赤と青に塗られた長い列車が出迎えてくれた。
列車には
「РОССИЯ
МОСКВАーВЛАДИВОСТОК」
と記されている。
ロシア号、モスクワーウラジオストック。
いよいよ狭い階段を上がり、列車に乗り込む。
荷物が大変!! 機材もあるので、異常な数。
機材班は、寝床を確保することもままならない。
廊下でいつまでもバタバタやっているが、
走り出してすぐ、窓の外の光景に釘付けになる。
これが、流氷..。生まれて初めて。
風太兄が昔「流氷、流氷」って言って
一人でレンタカーして北海道まで見に行ってたのは、
これだったのか..。
ここからオホーツク海まで流れてゆくのかな。
人々が氷の上に立ってる! 釣りをしてるみたい。
そんな景色がずっと続く。
そのうち、陽が暮れてきて、
地平線に消えていくのをずっと眺めている。
シベリア鉄道の中には、
一等から三等までの3クラスある。
私たちは一等車に乗せてもらっている。
車内はもちろん狭いけれど、可愛い。
暖房が効き過ぎて暑いくらい。
細い廊下の片側に小さなドアが並ぶ。
コンパートメント(個室)の引き戸を開けると、
両脇にベッド。窓にはハーフカーテン。
壁にはパーソナルライトとコート掛け、
小物置きのネットに鏡。真ん中には小さなテーブル。
ベッド部分をパカッと開けると
毛布やシーツやタオルなどが装備されている。
車両の中にはお湯もあるし、
トイレもそんなに泣きたいほどじゃないし、
揺れもそんなには気にならない。
想像していたよりもずっと過しやすいし、抵抗はない。
小さい頃から、青森にある母親の実家に
遊びに行く時に乗る寝台列車が
ワクワクして好きだったからかな。
その狭い空間を、
どれだけ自分のスペースにできるかがポイント!
日本の寝台列車の寝床のほうがもっと狭いけれど、
荷物は足元、ここに缶ジュースを置いて、
ここにミカン、眼鏡、目が覚めたら読む本と、
ウォークマンと..と、
完璧に“自分の部屋”にするのが得意だったのだ。
ただ、私の期間限定“シベリアの部屋”の難点は、
乾燥しているので、
ただでさえドライアイなのですごく目が乾く事と、
揺れるので日記の字がうまく書けない事かな。
荷物の整理が一段落すると、
コンパートメントでシベリア鉄道に乗った感想を撮影。
それが終わると、することがなくなる。
とりあえず廊下に出てみると、息をのむ、夕焼け!
ただボーーッと眺める。
鮮やかに変化するグラデーションをずっと。
他にはなにも、なにもない。
電線だけがずっと旅を共にする。
陽がすっかり沈んでしまうと、外は真暗闇。
景色はうっすらとしか見えず、
まるで絵本の中にいるようだ。
廊下の端から、いつのまにか
窓の外を眺めているところを撮影されている。
と、白人のお兄さんが近付いてきて、
無言で小さい紙と黄色いボールペンを渡される。
ロシア語なので、なんだろう? と、
‘わからない’風に言うと、向こうも同じ
‘わからない’風に返して来るので、
サーシャさんに助けてもらって紙を読んでもらう。
その紙には
「私は音の無い世界に住んでいます。
音のある世界は幸せです。
私にはその幸せすらありません。
愛しい家族の声を聞くこともありません」
といった意味合いの事が書いてあった。
彼は耳が聞こえない、喋ることもできない人だったのだ。
紙の裏にはロシア語の手話が書いてある。
その黄色いペンを売ることを仕事にしているらしい。
値段は10ルーブル。30円か40円くらいだ。
是非買いたいと思って、ペンを買う。
筆談で名前と歳を聞くと、オリー(?)で22歳。
たった1歳しか違わない。
急いでメッセージを書いて、渡す。
優しい顔をした男の子だった。
駅に止まると、さっさと降りて行ってしまった。
何故ここで出会ったんだろう。
「音」をテーマに旅を始めた途端、
音のない世界に生きる人にこうやって出会うなんて。
その偶然に、皆黙り込んでしまった。
ディナーは食堂車へ。
お客は数人しか居ない。
ホリデーのゴテゴテとした飾り付けがやけにギラギラ。
イチゴの柄のテーブルマット。
ロシアの主食の一つ、黒パンは、オトナの味?
もさもさしていて少し酸味があって、
コドモの私はちょっと苦手だった。
シンプルに焼いただけのチキンが
薄味だけれど美味しかった。
雨宮さんがしっかり、日本からお塩を持ってきていた。
(このお塩にこれからかなり助けられることになる。)
全てに醤油、の私は小さいボトルのお醤油を
持参していたんだけど。
近くに座っていた酔っぱらいのロシア人のおじさんが
ずっとこっちを見ていると思ったら、
帰り際に他の人を介してチョコレートを渡してくれた。
覚えたての「スパシーバ!」(=ありがとう)を
連発したけど、照れて返事してくれない。
あと、別のおじさんに
「クラシーバ!」と言われて照れる。
綺麗とか美しいという意味らしい。
あぁシベリアに来てから二日間、
今までの人生で一番褒められてます。
ロシア人のおじさん達にモテるって、
よろこぶべきなのかなー。
日本人女性見た事ないんだろーなー。
価値観がまだよくわからない・・。
食後、皆がおもいおもいの時間を過ごしている時に、
私と藤井君は、西野さんと
サーシャの部屋でロシア語教室を開いてもらう。
事前に色々とロシア語講座の本は買ってはいたけれど、
けっきょく本で見るよりも耳で聞いた方が覚えやすい。
基本的な、日常の挨拶くらいは
せめてしっかりと身に染み込ませて帰ろうと思う。
スパコイニーノーチ(おやすみなさい)。
美雨さんからひとこと |
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CMのナレーションをやっています! |
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“aquadrops”が誕生しました。 |
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美雨さんからのメッセージをどうぞ! |
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揺れる水の粒。
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冷たい水に触れる、指先。
透明感のある繊細なエレガンス、
毅然としたハードさ、フェミニンな揺らぎ。
耳から首筋、鎖骨へのしなやかなラインは
女性の美しさの象徴のような気がします。
そこを、水滴が一粒流れ落ちるような...。
そんなイメージを抱いています。
幼い頃から、母親や友人や自分のために
ビーズでアクセサリーを作るのが
好きでたまりませんでした。
最近、人を綺麗に見せるラインの洋服が
どんどん消えていき、
女性がドレスアップして行く場所も少なくなった。
そんな中で、おもわず背筋がピンと延びるような、
髪をキュッとアップにして出かけたくなるような。
生活の中で愛しい人や物を
真っすぐに見つめられるような。
自分が大切に作ったピアスを
耳にかける時に感じる、そんな気持ちを、
身につける一人一人にも感じてもらいたいと思い、
一つ一つ作り始めました。
坂本美雨
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