坂本美雨のシベリア日記。
一日一日が、かけがえのない一日。



12/31/2001
シベリア鉄道の旅 DAY 5
ついに大晦日。




ついに大晦日。
夜中数回起きながら。
そのたび、月が上の方へ昇っていっていた。
たくさん夢を見た。
でもすごく現実的な夢だったような気がする。
駅に停まって、いつものようにコートを着て、
降りる夢とか。
あと風太兄のはずが何故か藤井君だったりとか、
Crewもたくさん出て来た。
そして、少し意識が戻るたび、
外からカンカンカン・・という音が聞こえてくる。
耳の奥のほうでこだましている。
枕の下あたり...
だけどずっと遠くのようにも思える。
眠りをさまたげるものではなく、眠りに入ってくる音。
後でそれが何かと聞いたら、列車の点検の音だった。
駅でアナウンスの音も聞こえていた。
あと、列車に新しく乗ってきたお客さんか車掌さんが、
気を使って静かにコンパートメントのドアを
開けたり閉めたりする音も。
(でも意外とこのドアは防音になるみたい。)



朝起きたら、Crewが窓の下をサッと通った。
もうこんな早くから撮っているのか、
とぼんやり思ったけれど、
実はもう10時半くらいだった
(Crewはあの時、乗り遅れそうになって
 ホームを駆け抜けていたらしい)。
すごくよく眠っていたんだと気付く。
起こさないでくれていてありがとう、と思う。

「よく眠っているからもう少し寝かせておいてあげようか」

と言っていたかどうかは知らないが、
少し、子供の気分。
陽が昇るのが遅いので、朝という感じがしない。

13時頃、ある老夫婦の個室にお邪魔して、
お昼御飯を見せてもらうことに。
この夫婦は親戚のうちにおよばれして、
列車の旅をしているのだそう。
「およばれ」の距離感が全然違う!
二人のランチは、カップラーメン
(もうお湯を注いでいて、撮影中食べられなくて
 伸びていそうだった)、
ザワークラウト、水ギョーザ、ピロシキ。
ボトルに入ったミルクやハニーもある。
普通のザワークラウトは甘酸っぱさが苦手なのだけど、
これはキャベツの漬け物に近く、美味しい。

みな、それぞれ自分の家から持ってきたものに、
駅で買い足したりして工夫して美味しそうに食べている。
その後、私達も食堂車でランチ。
サラダ、チキン、チャイ。
紅茶が甘い。
チキンはあっさりしていておいしい。
昨日思っていた事、
シベリアの食事はとてもシンプル。
身体に悪いものがあまり無い気がする。
油やバターがこってりだとしても、
化学調味料などの添加物ではない。
だからみんな寒さに耐えられる程度に
ぽっちゃりではあっても、
アメリカのような病的な肥満はあまり見かけない。
素材命。
でも現地の人にとってはそれが当然で、
それ以外を知らないから、
わざわざ都会みたいに「天然」を謳ったりする
必要もないのだろう。



窓からの風景はずっと川や丘、山や林が続く。
線路のそばにはいつも足跡が付いている。
こんなところ誰が歩くんだろう?
凍った小川の上にも足跡がある。
小さな、犬の足跡も並んでいる。
かわいいなぁ..。
18分間停車する駅で、久々に外に出る。
あぁ新鮮な空気!!
車内は乾燥しているので、
閉ざされているので埃っぽい。
せめて窓が開いたらなぁ。
暖房でムワッとしているので、
Crewの中に4人いるタバコ組に混ざって、
少し外の空気が入ってくる連結部分に
定期的に息を吸いに行かないと、ちょっとツラい。
今朝は特に昨日より暑かっ た。

カッコントウが効いたのか、
杉山くんのカゼは良くなったそうだ。
誰か一人でも具合が悪くなったら、大変。
今日もビタミンを飲んでもらう(強制的?)。
自分もハダが荒れないようにとだけ、気をつける。
(ずっとカメラが回っていて、
 ほとんど化粧もしていないし‥‥。)
ビタミンと、NONIジュース。
でも、ずっといつもと変わらず食べて、
全く体を動かさないから、もう既に少し太った気がする。
シベリアに行ったら5kgは太ると
おどかされていたけれど、本当かも。
ちょっと身体が重い。

駅に犬が3匹いて、歓びいさんで近付いて行ったら、
機材が怖いらしくて手を嚼まれてしまった。
「ピロシキあげれば」
と飼い主らしきおばさんが言うので、
自分で食べたくは無かったけれど
その犬にあげるために買った。
日本では見ないような犬。
本当にかわいい!!
嚼んだ子と、鎖に繋がれていた犬にピロシキをあげると、
がっつくがっつく。なんて現金な‥‥。
灰色の子はどこかにいなくなっちゃった。
足が震えていて、とても冷たく、可哀想。
もっともっと、とせがむので、どんどんあげてしまう。
列車の旅のお供に持って帰りたいくらいかわいい。
鎖に繋がれているほうは
オオカミみたいなカオをしている。
そういえばシベリアンハスキーはまだ見ていないな‥‥
本当にシベリアにいるのかしら。



犬達にバイバイして、車内へ帰る。
雨宮さんは昨日と同じバニラアイスを
皆の分買って来ていて、配給(笑)。
生き返るぅ。
列車の窓からさっきの犬達に
バイバイしようとしていたら、
列車が走り出さないうちに
売り子さん達&犬達は
さっさと中に入ってしまったようだ。
ドライだなぁ‥‥なんとなく。
サバイバルというべきか。

また夕方。今日は列車の進行方向的に、
あまり夕陽が見えなかった。
色だけが空にじわりと伝わってくる。
こうやって毎日が過ぎてゆく。
早いのか遅いのかよくわからない。
もう、1、2週間居るような気がするけれど‥‥。
列車の音にももう慣れた。
邪魔にならないのが、不思議。
ガタゴト、の他に、列車がギシギシきしむ音も
終始鳴っている。
だけど全然嫌な音ではない。

それにしてもロシア人は
ダンスミュージックが大好きだ。
ちょっと古めの、80年代後半から
90年代前半にかけてくらいの音楽が、
ずぅっと流れている。
ランチの時に、電気グルーブみたい。
って一瞬思ったら全部そう聞こえてきてしまった。
私も大好きだった初期の電グル。
藤井君の兄が好きだったらしくて、
唯一会話に反応してくれた。
ジェニファー・ロペズなんかも流れて、
こんなところで聞くと思わなかった。
でも大体、ラジオの音は悪い。
ガビガビに割れていたりしても気にならないのかなぁ。

夜になって、満月がポーンと浮かんでいる。
また食堂車に行ってごはん。
駅に停まる度に色々と口にしているので、
お腹がすいてなくて、スープだけにする。
雨宮さんは<酸っぱいスープ>
=スリヤンカがお気に入り。
食堂車の客は私達だけだ。



お正月でもっともっと騒いでいるかと思ったら、
案外そうでもない。
食堂車のお姉さんの子供はしっかりしていて
(6歳くらい?)自分の食器をちゃんと片付けていた。
お母さんは真っピンクの口紅べったりで、ぷっくり唇。
若そうに見え、美人。
御飯後、日記のインタビュー。
2001年を振り返って‥‥。
一年間、本当に早かった。
今年で一番鮮明に思い出すのは<911>で、
それはしょうがない。
誰だってそうだろう。
でも言わなかった(と思う)。
9月からがとにかく早かったな‥‥。
シベリアの話があってから、
3ヶ月があっという間だった。
毎日のように色々な人に出会ったし、
関係が出来たり出来なかったり。
ちょっとまだ整理はできないな。



ニシノビッチこと西野肇プロデューサーは
本当に心がロシア人だ。
本名:ニシノビッチ・ハジメノフスキー。
一人で飲みまくっている。
Crewが食堂車の撮影に行っている間、
今日もコンパートメントに顔を出すと、
色々な話しを聞かせてくれる。
本当に気遣ってくれていて、
私の事を考えてくれている、とわかった。
酔っぱらってはいるけれど(笑)、本当に真剣な目で。
感謝。
全体的にひっそりとした年越しだった。
列車で走りながらも時差があるので、
いつ年を越したのかいまいち解らなかった。
明日に備え、眠る。


坂本美雨オフィシャルホームページ
「stellerscape」
坂本美雨さんプロデュースのアクセサリー
“aquadrops”が誕生しました。
aquadrops(アクアドロップス)は、
坂本美雨さんがデザイン・製作、
トータルプロデュースを手がける
オリジナル・アクセサリーです。
美雨さんからのメッセージをどうぞ!
aqua drops...

揺れる水の粒。
したたる、春の慈雨。
冷たい水に触れる、指先。

透明感のある繊細なエレガンス、
毅然としたハードさ、フェミニンな揺らぎ。
耳から首筋、鎖骨へのしなやかなラインは
女性の美しさの象徴のような気がします。
そこを、水滴が一粒流れ落ちるような...。
そんなイメージを抱いています。

幼い頃から、母親や友人や自分のために
ビーズでアクセサリーを作るのが
好きでたまりませんでした。
最近、人を綺麗に見せるラインの洋服が
どんどん消えていき、
女性がドレスアップして行く場所も少なくなった。
そんな中で、おもわず背筋がピンと延びるような、
髪をキュッとアップにして出かけたくなるような。
生活の中で愛しい人や物を
真っすぐに見つめられるような。
自分が大切に作ったピアスを
耳にかける時に感じる、そんな気持ちを、
身につける一人一人にも感じてもらいたいと思い、
一つ一つ作り始めました。

坂本美雨

http://www.miuskmt.com/
 
限定通信販売もスタート!

aquadrops取り扱い店
<20471120>
東京都渋谷区神宮前3ー29ー11 
03ー5410ー2015
12時〜20時
<RICO>
渋谷区恵比寿西2ー10ー8 
03ー5456ー8577
12時〜20時

2003-07-31-THU

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