1/8/2002 シベリア鉄道の旅 DAY 13 午後、エカテリンブルグで。 夜中に起きてしまう。 今日はかなり冷え込んでいて、 ー27度くらいらしい。 と、いうことは体感温度は‥‥? おそろしいので考えないことにいたしましょう。 (写真は、凍った列車の窓。 念のため、これ内側です。) 列車の中で、親戚のうちへ旅をした帰りの 2人の姉妹オーリヤ(21)と ウリァーナ(18)に出会う。 オーリヤは絵が好きなデザイナー志望で、 ウリァーナはピアニストで音楽家を目指している。 すごく素直で、素朴な、 しっかりしたお姉さん達という印象。 人と出会っていくという課題に 重いものを感じていたので、 2人に会う時も、正直すごく消極的な自分がいた。 だけれど、話し始めたらウリァーナがリードして 色々聞いてきてくれたので、とても助かる。 この人達の事を本当に知りたい、 という気持ちがどんどん湧いてくる。 明日、2人が市内を案内 &おうちに招待してくれると言う。 「お客さん」に対する考え方が 自分や都会に住んでいる人とは 全く違うのではないかと思う。 お客さんを迎えるという事を真に歓んでいるし、 心からもてなそうという誠意がある。 外から客が来る、ましてや海外から! というのは本当にビッグイベントという感じだ。 自分はお客さんを呼ぶ時に、 あそこまで心の奥底からもてなしたい、 と願っているんだろうか? <おもてなし>それすらも システム化されていないだろうか。 午後、エカテリンブルグに到着。 いよいよ、シベリア地区の最後のストップだ。 (ここは、エリツィン大統領の出身地でもあるらしい。) スヴェルドロフスク駅に着くと、 ウリァーナと「明日9時に、ダムで」という 大ざっぱな(?)約束をして、バイバイ。 エカテリンブルグは案外都会で、 なんだか拍子抜けしてしまう。 今までずっと広大な大地を旅してきたせいで、 都会のビルや、行き交う車にまだ目が慣れていない。 モスクワに近付けば近付くほど近代化してきて、 安心感はあるけれど、 何故だかちょっと不安な気持ち? バスの中でCrewを待っている間、 なにげなく窓を見ていたら、 雪がひと粒ひと粒降ってきて、 ガラスに張り付いて、積ってゆく。 その一つ一つの美しい結晶は溶けず、崩れずに、 形を保ったまま重なっていく。 窓がゆっくりと少しずつ、雪で覆われてゆく。 それをずっと眺めてた。 それは一つの宇宙で、 こんな何気ないものの中だけど、 確実にミクロの中にマクロがあるんだと感じる。 圧倒されてしまう大自然も感動的だけれど、 こういう小さな小さな宇宙に胸うたれてしまう。 <何がリアル?> <何に本当に感動する?> という亊にとても戸惑ってきたけれど、 あぁ自分はこういう取るに足らないように思える ささやかな感動に一番リアリティーを感じるんだな、 となんとなく解ってくる。 バスが動くと、窓についた雪は飛んでいった。 ホテルに着く前に、ある広場で撮影をすることになった。 でもその前にすごくトイレに行きたかったので、 どこか借りれるところを探すと、近くにSUBWAY (地下鉄、ではなくサンドイッチのサブウェイ! ファーストフードのチェーン店があるなんて! 都会〜。)を発見する。 関係ないけれど、これだけ着込んでいて 急いでトイレに行きたい時って‥‥焦る。 スキー場でスキーをはずして 歩きにくいスキーブーツでよたよた歩いて 上下繋がったスキーウェアを脱いで‥‥ というのと似たような面倒くささ。 しかも! この旅、日中はほとんど、 小さなマイクを腰につけている。 それをはずさずにトイレに行くと‥‥ 音響の杉山くんやカメラの樋口さんに <音>が聞こえてしまうという…(汗)。 まだ、そんな失敗はないけれど。 ダムのある広場で散歩、の撮影。 吹雪であまり周りが見えないけれど、 綺麗な建物などがありそうな広場。 しかし、散歩といわれても、吹雪だ。 雪が顔にビュンビュン当たって、 目を開けているのも大変。 ダウンのフードをかぶって 風を防ぎたいところだけど、 撮っているのに顔が見えなくてはしょうがない。 そんなところでインタビューされても、 あまりの寒さに顔が凍り付いて 文字どおり口もまわらないし、 頭も働かなくて大した事は言えないし、 ものすごくもどかしかったが、 やはりどこか甘えている自分にも腹が立った。 カメラが回っていない瞬間があれば、 すぐにフードをかぶり、 全く暖まらないホカロンを ポケットの中で虚しく握りしめ、 たちつくしていたが、そんな瞬間を 名マネージャーに激写されていた‥‥。 こんな情けない自分にカメラを向けないでくれ! と至上最高にふてくされたこの顔‥‥。 (あまりに酷い顔のこの写真、 本当は絶対に人に見せたくないんだけれど‥‥ これこそが極寒の地シベリアでの 坂本美雨のリアルな姿かもと思い、 しかたなく掲載します…。) やっと辿りついたTrans Hotelはとてもとっても綺麗で、 雨宮さんと思わずはしゃぐはしゃぐ。 天井の高いロビーでかなり期待は高まり、 部屋に着くと、とりあえず フカフカのベッドにジャンプ!! ぬくぬく布団にもぐりこむ。 やっぱり今までどこか身体の緊張が 完全には解けなかった部分があるけれど、 こういう環境だとホッと力が抜けて、ほどけていく。 深呼吸ができる。 バスルームもキレイ☆。 そして、最後まで期待はするべからず、と思いながらも 蛇口をひねると…一回でお湯が出る(涙)! 最初、若干、水の色が茶色かったけれど‥‥ それでも、はぁ〜〜うれしい〜〜。 2週間ぶりに、バスタブにお湯を溜め、 足をお湯につける。 シャワーでちょっと放心。 暖かい家、清潔なバスルーム、ふかふかの布団など、 私達が当然だと思っているものは当然じゃないし、 それに気付くと感謝が生まれる。 同時に、私達の感覚が いつのまにか鈍っているのだとも思う。 Crewはそれからまた列車を撮りに出かけた。 陽がおちはじめ、どれほど寒いだろうかと想像して 眉間にシワを寄せつつ、 ゴメンネ! と思いながら あったかい部屋でテレビを見たりして過ごす。 夜8時頃、ディナー。 ロビーからお姫さま階段で 上がって2階にあるレストランは、 とてもキレイだったけれど、 出窓からすきま風が入ってやけに冷えていた。 カーテンで塞ごうと、大人達が試行錯誤。 料理が来るのが遅くてちょっとイライラし始めた 真面目なアンドレイさんと、 気を使って周りに気付かせないように 密かにイライラしている感じの西野さんと、 ものすごく疲れているらしく いつもより無言・無表情の藤井君との間で、 ちょっと焦りつつ、 久々のきちんとしたディナーに感謝。 MTV・ロシアをつけ、 ふかふかのかけ布団と真っ白なシーツに幸せを感じ、 就寝。
『フェリシダージ・トリビュート・トゥ・ ジョアン・ジルベルト』 9月3日発売!! 東芝EMI/TOCT−25177/ ¥3,000(税込) 9月に初来日が決まっているボサノヴァの神様、 ジョアン・ジルベルト初来日記念アルバムに ナタリーワイズと一緒に1曲参加しました。 ジョアンのカヴァーを中心に、 ジョアンの歌声にインスパイアされた オリジナル曲も収録予定です. <参加アーティスト> 宮沢和史・畠山美由紀+Cholo Club・ 小野リサ・THE BOOM・ Nathalie Wise&坂本美雨・ Ann Sally・青柳拓次・ saigenji・CHORO AZUL・ ナオミ&ゴロー・Dois Mapas・ 中村善郎・AURORA・ So Aegria(順不同・敬略) くわしくはこちらのサイトへ。
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2003-09-25-THU