1/9/2002 シベリア鉄道の旅 DAY 14 PART 1 ウリァーナのエカテリンブルグ案内。 今朝も、ものすごーーく寒い。 昨日の別れぎわの‘9時にダムでね。’の約束通り、 朝まだ暗い9時前に待ち合わせ場所に向かう。 ダムのある広場に、 茶色いコートを着込んだウリァーナを発見。 こういうアバウトな約束、なんだかうれしいなぁ。 渋谷なんかだったら 50cmしか離れていなくても 人が多過ぎてお互いを見つけられなかったりするのに。 ウリァーナ流エカテリンブルグ・ツアーのスタート。 まずは、すぐ近くの、 ウリァーナが通っている音楽学校見学。 ダムのすぐ近くにある学校。 目の前にチャイコフスキーの銅像がある。 チャイコフスキーの母校? と聞くと、 そういうことでもないらしい(?)。 建物の中は殺風景なくらいで、足音が響く。 まずは、すごく古い楽譜なども保存してある ライブラリーに案内してもらう。 1800年代のものや、 300年前の歌の楽譜などもある。 これはブタの革の表紙。 昔は、楽譜一冊が牛100頭分! の値段の物もあったらしい。 音楽を楽しむことは誰でも出来ることだけど、 専門的に学んだり楽譜や楽器を手に入れたりすることは 貴族の特権だったのだろう。 歴史ある楽譜は、手書きのもので、 タイポグラフィーやデザインなども美しく、 本当に素晴らしい。 博物館などにあってもおかしくない、国の宝だなと思う。 ビクターという、 とても人の良さそうな校長先生に紹介される。 ウリァーナも優秀な生徒という感じで、 校長先生も誇らしげ。 天井の低い廊下を通って、 他にも教室を幾つか見せてもらうが、 ピアノの個人レッスンをしていた教室で見た 真っ赤なピアノには、衝撃を受けた。 そのピアノの名前は‘mockba’=モスクワ。 ロシアでは美しさの象徴の深紅のピアノ。 慣れ親しんだ、ぬくもりのある音ではなく、 ピンと張った、でも上品な音をしたピアノだった。 その後、築100年の古いホールを見せてもらうが、 今は修理中で(というか資金の問題で それも滞っているらしいけれど)使われていない。 とても美しい作りで、 音響的にも特異な作りになっているらしい。 ステージで発せられた音が、 ホールの全体を包むような設計になっている。 ステージは広くて、上がるととても気持ちがいい。 100年前の紳士淑女達がドレスアップして 音楽会に集っている光景が想像できる。 早く復活するといい のになぁ。 そのあと、校長先生の部屋で 幾つか古い民族楽器の笛を見せてもらった後、 もう一つの使える方のホールで、 ウリァーナちゃんのピアノ演奏を聞かせてもらう。 友達のフルートとのデュエット曲で、 なんと彼女が作曲したのだという。 彼女がピアノに向かう姿は気品に溢れて、 とても年下とは思えない。 楽曲にもものすごい才能が滲み出ていて、 心底びっくりしてしまった。 でも彼女はそれを当然のようにやっていて、 「なんですごいの?」という感じなので、 自分でも同じくらいがんばっているだろうか? と焦りを感じるほどだ。 その後また古いホールに移動して、 民族楽器のアコーディオンと バラライカの演奏を聞かせてもらう。 3人の学生はマキシム、アレックス、アレクサンドル。 バラライカで弾いてくれた曲は、テトリスの音楽(笑)。 アコーディオンは、はば広い音階が出せて、 ピアノのように一台でメロディーと ベースラインが成り立つ。 細部にまで装飾が施してあり、機能的でもある。 見ているだけでうっとりしてしまう楽器。 演奏後色々質問している時に、 3人の学生に「趣味は?」と聞かれて焦る。 趣味、といわれてもなぁ‥‥。 文章を書いたり何か作ったり‥‥としどろもどろ。 学校を出て、バスでウリァーナの家に向かうことにする。 一般のバスに乗るのは初めて。 バスターミナルに入った途端、 ロシア美人と異国人との組み合わせが物珍しいのか、 ものすごい人数の注目を浴びて、 ビクビクしていたらウリァーナちゃんが ぐんぐん引っ張っていってくれて、たのもしい。 とにかく寒くて、足の先が凍傷になるかと思った‥‥。 相当の人数がバスに乗るために並んでいたが、 なんとか乗れて、何故か席はまだ幾つか空いているのに 立っている人も大勢いるのが不思議だった。 日本みたいに皆こぞって座ったりしないみたいだ。 外の景色が見たいけど、 窓が真っ白く凍りついて何も見えない。 ガリガリガリガリ氷をこそげ落としても、 すぐまた曇って凍ってしまう (何度も言いますが、これ内側ですよ!)。 30分くらい乗って、ウリァーナが途中で降りるという。 バスを降りると、目の前にはアジア大陸と ヨーロッパ大陸の境界線のオベリスクが 何も無い真っ白い雪原にポツン建っている。 どこの国の人もやることは似ていて、 オベリスクには無数のサインやハートの中に カップルの名前が‥‥(日本だったら相合い傘?)。 私達もはしゃいで、境界線を飛び越えたり、 線をまたいで立ったり、 ウリァーナと手を繋いでオベリスクに手をまわすという お約束もやってみたり。 ヨーロッパとアジアの端っこは こんなに何もないところなんだ‥‥。 さすがに感慨深い。 でも寒くてしょうがなくて、 というより頭が凍り付きそうで怖くなって、 CREWが撮影を終えるまで迎えに来たバスに避難。 ウリァーナに散々 「帽子をかぶりなさい」と言われたけれど、 「カメラに顔が見えなくなったらだめだから、 あまりかぶれないんだ」と説明。 彼女にカイロを貸して、 彼女はバブーシカ(おばあちゃん)に 編んでもらったという白い手袋を貸してくれる。 カイロよりもバブーシカ手作りの手袋のほうが ずぅっと暖かかった。 彼女が自分の住んでいる町のハガキをくれたので、 お礼にバッグにつけていた ラインストーンの付いたリンゴ型の小さなピンをあげる。 手袋につけてくれた。住所交換。 次は、ロケバスでウリァーナの家へ向かう。 彼女の家はそこから車で20分くらい。 彼女は毎日、バスに一時間揺られ、 バス停からまた30分歩いている、と言うので、 嘘でしょー? と思う。 ウリァーナ はこんな距離を毎日往復しているのか‥‥。 彼女は「いい散歩よ」と言うけれど。 日本でも同じように通勤通学に2時間かけている人々は たくさんいるけれど、 これだけ顔面が凍り付きそうな寒さの中で、 自分だったら絶対続かないだろう、と情けないけど思う。 でも彼女はそれを苦にしないくらい、 自分があの音楽学校に通えている事を誇りにしているし、 ある程度の犠牲は当然だと考えている。 それに比べ自分は? とやっぱり考えてしまう。 どれだけ甘い環境で育ち、恵まれていることか‥‥! 家の10分くらい手前でロケバスを降りて、 撮影しながら家まで歩く。 気が遠くなりそうな冷たさの中で、 途中で赤い実がなっている木に 小さくて綺麗な鳥がとまっているのを発見して、 なんて強いんだと思う。 赤い実と真っ白の雪のコントラストが ハッとするほど綺麗。
『フェリシダージ・トリビュート・トゥ・ ジョアン・ジルベルト』 9月3日発売!! 東芝EMI/TOCT−25177/ ¥3,000(税込) 9月に初来日したボサノヴァの神様、 ジョアン・ジルベルト初来日記念アルバムに ナタリーワイズと一緒に1曲参加しました。 ジョアンのカヴァーを中心に、 ジョアンの歌声にインスパイアされた オリジナル曲も収録予定です. <参加アーティスト> 宮沢和史・畠山美由紀+Cholo Club・ 小野リサ・THE BOOM・ Nathalie Wise&坂本美雨・ Ann Sally・青柳拓次・ saigenji・CHORO AZUL・ ナオミ&ゴロー・Dois Mapas・ 中村善郎・AURORA・ So Aegria(順不同・敬略) くわしくはこちらのサイトへ。
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2003-09-25-THU