カリスマの名、
返します。

宮村浩気の「はじめの一歩」。

第1回 2回目のスタートライン

糸井 ぼくは知ってるに決まっていることをききますけど、
よろしくお願いします。

独立っていうと違っちゃうんですよね?
独立は独立なんだけど、ニュアンスが違うんだよね。
宮村さん、ひとにはどう言ってる?
宮村 「始動」です。はじまって、うごく。
糸井 スタートって意味なんだ、なるほど。
イメージとしては、今はさ、
「ビューティフルライフ」の時期だし、
すごいじゃない?
あれに乗っかろうって気分みたいなのは
今全然ないんですか?
宮村 あのドラマがはじまる前からの
今回のプロジェクトというか企画なので。
一時期美容ブームがこうすごくガーって上がって、
免許問題でがくーんと落ちて。
糸井 落ちたんですか、やっぱ(笑)。
宮村 はい。がくーんと落ちて。
それのちょっとしたあとに、
ああいうように「ビューティフルライフ」を
キムタクがやることによって、
たぶん「1次」と言うにしては
短かったのかもしれないけど、
もしかしたらあの時期のつぎの
第2次美容ブームが来るかもしれないという、
今はそういう「あいだ」の時期ですね。

自分でお店をやることに関しては
もっと前から考えていたんですね。
ブームに乗っかるとか
乗っからないとかじゃなくて、
ぼくは自分の道を来たなあ、
という気持ちはあるんですけど。
糸井 それは意地みたいなものですか?
宮村 意地ではないんですけど、
やっぱり自分の城を持ちたいというものです。
そこが、はじめてスタートラインだなあと。

アシスタントからはじまって
髪を切れるようになったときに
1回目のスタートラインがあったとしたら、
今度は自分のお店を建てることが
2回目のスタートになると考えていたので、
やっと今スタートに立てたな、と思います。
だから「始動」という言葉で。
糸井 ぼくは宮村さんをたまたま知っていたから
こうやって来てくれたけど、
「人気絶頂のカリスマ美容師が独立」
とメディアは必ず騒ぎますよね。
しかもセットで「藤原紀香」が出てきて、
そんな取材がいっぱい来るでしょ?
宮村さんが藤原紀香さんと
仲が悪いわけじゃないんだけど、
ああいうセット販売みたいにされると、
気分はよくなかったでしょ?
宮村 そうですね。
「それに乗っかって宮村も」と。
まわりのひとはたぶんそういうふうに
見るひとが多いと思うけど、ぼくはいつも
そういうのとはかけ離れてお仕事をしていたんで。
きれいな言い方になってしまうかもしれないけど、
たまたま藤原さんものびて、
ぼくもそれに一緒にのびてという。
たまたまぼくと藤原さんとの一緒の夢のなかで
とりあえずふたりで、
まだぜんぜん売れていないころからでしたし。
糸井 両方売れてないときからですか?
宮村 はい。その頃からだったので、当初の目標が、
紀香ヘアで日本中いっぱいにしようという。
糸井 そんなこと考えてたんだ。最初から?
宮村 ええ。
糸井 えー!それ、もうちょっときかせて。
宮村 藤原さんもなかなか売れなくて・・・。
糸井 けっこう苦労してますよね。
宮村 ええ、あのひとも遅咲きで、
ほんと、やりたくない仕事とかを
どんどんどんどん積み重ねてやってたんですよ。
ぼくもヘアディメンションというお店が
青山に開店する前には
四谷で何年かやってたんですけど、
その頃はメディアとかに載る機会も全然なくて。

でもその時でも、
「実力だけはつけておこう、
 いつか絶対そういう時が来るだろう」
というふうに思っていました。
ヘアディメンションが青山に出店するきっかけも
「青山で勝負したい」
と、自分たちでオーナーに言ったんです。
糸井 自分たちで言ったんだ。
宮村 ええ。そのときのスタッフ4、5人くらいで、
「何で自分たちはここにいるのかな」
って思っていたんです。
「青山とおんなじ技術を絶対に持っているはずだ、 
 でも何で俺たちはここで
 こういうふうに普通にやってるのかな」
と、そういうふうに疑問に思ったときに、
じゃあ場所を変えてみたら、
自分たちの力はどのくらいなのだろう?
と、すごく勝負してみたくて。
それで青山の出店を言い出しました。
糸井 けっこう辛抱強い性格だねー。
宮村 はい。それでオーナーも、
「四谷の店がいっぱいにならない限りは
 まず青山の出店は考えられない」
と言って、開店まで1年近くかかりました。

(つづく)

2000-04-05-WED

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