糸井 |
こんな話は、美容雑誌に載っているわけですか? |
宮村 |
たまにインタビュー形式のものだと、
昔からの流れというのは話したりしますけど、
そこまでのつっこんだものというのは。 |
糸井 |
そういうのがいっちばんおもしろいのにね。
だって、自分でやってたって、
1番熱くなってるとこでしょ?
最近あいつがさぼってるとか、
例えば恋人ができて、
やる気なくなったりとか
あるじゃないですか。
そういうのって、そのまま
デザインのクリエイティブに出ちゃうわけだ? |
宮村 |
出ますね。 |
糸井 |
かと言って、髪切ることだけに命かけてたら、
「ふくよかさ」がなくなりますよね。
そういうのって自分では
どういうふうに考えるんですか? |
宮村 |
そうですね。
いろいろ情報をヘアデザインと言っても
過激なスタイルをつくるわけじゃなくて・・・。 |
糸井 |
使えるスタイルをつくるんだよね。 |
宮村 |
はい。一般のひとに受け入れられるものを
つくらなきゃいけないんで、
で、これだったらこのひとにも
届きそうかな、という範囲のものと、
ちょっと届かない、というくらいまでを
つくるようにしているんですよ。
そこから先になっちゃうと、
今度は自分で作品としてやればいいんで。
集客をするための作品としては、
「届いて、届かない」
ような、そういうぐらいまでが。 |
糸井 |
別に、商用の商品みたいな
アイデアもあったりするんだ。 |
宮村 |
はい。イメージはイメージでつくりますんで。
その下と上みたいに。 |
糸井 |
そうすると1番とんがったクリエイティブが
1番楽しくなっちゃったりはしないんですか? |
宮村 |
それはその部分でアートなんですけど、
なかなか栄養につながらないものになるので。
ただそういうひとは、それを美術雑誌とかで
作品として発表すればいいですよね。 |
糸井 |
絵描きなんかだと、お客がついてこなくても
行っちゃうというのがあるじゃないですか。
でも、髪を切るっていうのは、
人間にくっついているものだから、
「作品づくり」とかみたいに
走っちゃわなくていいんだね。 |
宮村 |
はい。 |
糸井 |
これは、もしかしたら、
制約だけどうらやましいかもしれない。
「あいつさえわかればいいんだ」
っていう世界に行ったら、
ヘアデザインとしては、失格なんだね。 |
宮村 |
そうですね。 |
糸井 |
ショーのときの情熱は違うんだ? |
宮村 |
違いますね。 |
糸井 |
そのときは違うライバル意識があるよね。
どっちが勝つか、みたいな。
宮村さんって、
「あいつには負けたくない」
とかいうひと、いる? |
宮村 |
いましたよ。ぼくの先輩で。
先輩がいいのをつくったら、
ちきしょう、ぜったい負けないとぼくは思って、
向こうもそうだったと思います。
おたがいに出して、
それを下で見ている後輩たちは、
「今回いいよね」
「今回こっち駄目だね」
とか、そういう目で。 |
糸井 |
きついねー。
でもそういうのはわかるんですか? |
宮村 |
もう一目瞭然ですね。 |
糸井 |
そのまま劇画にしてもおもしろいよ。 |
宮村 |
先輩もほんとに負けず嫌いで。
ぼくも負けず嫌いで。
つまり、いい意味でのライバルという感じで。 |
糸井 |
ヘアスタイルとかメークとかって、
バリエーションに限りがありますよね。
俺は出尽くしたのかなあって
落ち込んだりすることはあるんですか? |
宮村 |
こんなパターンしかないのかな、
というときはあるけど、
でも、そう思ってしまうと
どんどんこうだめになってしまうので、
常にこう何か、どこか変えていかないと。
でも、基本というか、自分のスタイルの基本は
はずさないようにしたいなあと思いますけど。 |
糸井 |
壁にぶち当たったなと思うことはあるんですか? |
宮村 |
壁というか・・最近はそういうの全然ないですね。 |
糸井 |
今はのりのり自信たっぷりという感じなんだ。 |
宮村 |
何か、そうですね。自分でやりたいときですね。 |
糸井 |
俺に任せれば何でもできるぜ、っていう。 |
宮村 |
思ってはいないですけど。 |
糸井 |
でも、気分としてはあるでしょ?
答えは出てないんだけど、
「宮村さん、これ難しいけどお願いします」
っていうのがあったら、答え出ないけど
「できますよ」
と答えますよね。
そういうの、いいんですよー。
じゃあどうするんですか、って言われても
まだ自分ではわからない。
やってみるとわかるよ、っていう。
何なんだろうなー。あれ。 |
宮村 |
わかんなくて、
ああどうしようどうしよう、
って思いながら撮影に入ったときも、
何かこうふっと出てくるのがあるんですよね。
はじめから考えてたときよりも
はるかにいいものになってしまう
場合もありますから。 |
糸井 |
おもしろいなー。
打率じゃないけど、
失敗っていうのはあるんだけど、
失敗を失敗に見せないだけの説得力があれば、
大丈夫ですよね。 |
宮村 |
最近は、反応がこわいですよね。
例えば撮って、もうまわりのひとも
目が肥えているんで、編集のひとが
ポラロイドを見るときに一目瞭然で
かわいいとすぐに
「あーかわいい!」
って言うんです。 |
糸井 |
あー、言うね。 |
宮村 |
でも、言わないと、
「ふーん」
っていう感じなので、
あ、これいけてねえんだなあ、って、すぐ。 |