糸井 |
やっぱりヘアデザインのいいわるいって
100人いたら100人がみんな
わかるわけじゃないですよね。
どのくらいのひと?半分のひとくらいに
いいと言われたらいいんですか?
どんな感じなんですか? |
宮村 |
パーセンテージはわかんないですけど、
たぶんピラミッドでとらえたら、
1番上の部分の考えは
たぶんそんなに受け入れられないようなのが
あるとは思うんですよ。
でも、スタイリッシュなものを
求めているひとにとっては、
そこの部分がすごくよくて、という。
でも、集客をするためには、そこから下の層の、
2番目3番目の層の支持を得られるようになると
ちょっとおしゃれで、
わたしたちも手に届く、というような。 |
糸井 |
切り替えができるんでしょうね。きっと。
今回はどれ用だって。そこがうらやましいなー。
ほかの職業では、例えば料理では
それはできないですよね、
手間はおなじになってしまうから。
ヘアデザインなら、このコストなら、
そのなかで1番になってやる、みたいな。
切り替えのできる商売って、
あんまりないですよねー。 |
宮村 |
だからたぶん限りがないのかなと思います。 |
糸井 |
飽きないですか? |
宮村 |
飽きないですね。
たぶん、基本になるのって
あんまりないんですよ。3パターンくらい。
ワンレングスとボブとレイヤーっていう。
それのかたちのシルエット違いに、
長さや毛先の質感を変えたりとか、
その3つからバリエーションをつくるんで。
あとそこに、似あう似あわないというのが
入ってくると思うんですけど。
そこがお客さんをつかむ1番のポイントで。 |
糸井 |
「似あう」ってどういうことなんですか? |
宮村 |
全体のシルエットを
ひしがたの雰囲気につくるのが
1番似あうんだとは言われていますよね。 |
糸井 |
そんな黄金分割みたいなのがあるんですか。 |
宮村 |
あるんですよ。 |
糸井 |
へー!じゃあ、いろんなスタイルあるけど、
何となくひしがただったりするんだ。 |
宮村 |
はい。 |
糸井 |
そうだったんだ! |
宮村 |
ぼくも作品をつくるうえでは、なるべく
ひしがたのシルエットにするような。
そうすると万人向けになるんですよ。 |
糸井 |
そのひしがたをちょっとずつ
ずらしたりしながら、
ちょっととんがったものをつくったり。 |
宮村 |
そうですね。 |
糸井 |
じゃあ、あんまりきれいに
ひしがた狙っちゃうとおもしろくない? |
宮村 |
そうですね。それはつまんないですね。 |
糸井 |
「つまんない」って言葉も、あるよね! |
宮村 |
一世を風靡した聖子ちゃんヘアも、
ひしがたしてるじゃないですか。 |
糸井 |
あーそうだ、言われてみればそうだ。 |
宮村 |
で、紀香ヘアもひしがたなんですよ。 |
糸井 |
はー。言われなきゃわかんなかった。
そう言えばそうだ。何だろうね、それ。
それは美容学校では教わんないよね。 |
宮村 |
そうですね、何か造形学とか
そういうとこに行くんじゃないですか。 |
糸井 |
自分で似あうと思うのと、
ひとが似あうねって言ってくれるのとは
違いますよね、また。
それ、どっちに重きをおきますか? |
宮村 |
やっぱひとの声でしょうね。 |
糸井 |
自分以上に。 |
宮村 |
ある程度年齢がいくひとこそ、
かたくなるじゃないですか。
逆に、そういうひとたちに
「こういうスタイルどうですか?」
と提案しても、もうだいたい自分を知っていて
顔がこうだからこういうのは嫌だとか、
そういう頑固チックなのがあるんですよ。
でも若いひとたちの場合には、
こっちからの提案はそのまま
すっと入るんですよ。
それプラス顔立ちのことを
少し言ってあげるんです。
「おでこが狭いから前髪おろしたほうがいいよ」
「あ、そうなんですか」
って。逆に信用してくれるんですけど。
少し上の世代に行くと、受け入れてくれない。
ただ、ある程度もっともっと上にいくと、
逆にすごく信用してくれるんですけどね。 |
糸井 |
自分を変化させたいって気分でしょうね。 |
宮村 |
「若返らしてよ」とか。 |
糸井 |
そこのところは宮村さん、
一瞬で見抜かなきゃだめだねー。
お客さんが座ったとたんに。
「どうしましょう」って言ったときには
もう決まってるんだね。 |
宮村 |
そうですね。ある程度。
こうだなあていうのを引き出しから
出すようにしているんですけど。 |
糸井 |
提案きかないひとには
本人の言うとおりにするしかないよね。 |
宮村 |
そうですね。 |
糸井 |
でも、ちょっとこうしようか?とか言うんだ。 |
宮村 |
はい。 |
糸井 |
それ、きいてると楽しいね、何か。 |
宮村 |
そこはお互いむつかしいとこなんですけど。
むこうも納得してこっちも納得すれば
そこは信用でつながっていくだろうし。 |