
スガノ |
私、子供がいるんですけど、
母親にそんなにして育てられたから
ちょっと手を掛けて育てようと
思ってはいるものの、
他の人が遊びに来たりすると
すごいびっくりされて。
うちの子はまだ三歳なのに、
脱いだ服とかを
全部洗濯かごに入れるんです。 |

美雨 |
すばらしい。 |

スガノ |
でもそれはほんとに当たり前のことで、
普通にしなさいって言ってるだけなのに、
「ああ、こんなことをするの?」
って、だから私はいくら避けようと思っても
結局彼女(母)のほったらかし人生を
そのまま受け継いじゃってるな、
大部分をって、ちょっとね。
もう逃げれない道だとか思うんですけどね。 |

きょうこ |
あ、でも私そこの部分は、
自立しなさい系のことは、
自分の子供にも言いたい。 |

スガノ |
でもね、私ね、あんまりちゃんと
教育されたっていう覚えはないんですよね。
なんかあの結局ほったらかされて、
で、うち商売人だったんで、
いくら大学で勉強して何とか論とかやってても
「 何言うてんの。
世の中カネやで」
っていう感じだったんですよ。
 |

美雨 |
すごい。 |

スガノ |
で、もう建前とかきれいごととか一切なしで、
夜ご飯のときは近所のお客さんで
ツケが溜まってる人のこととかばっかり
言ってるんですよ。 |

りか |
世の中カネやで~。 |

ほぼ日 |
人の噂話なんかしちゃいけませんとかは、なし。 |

スガノ |
そんなん全然ないっすよ。
もう人の悪口言い放題で。
何かとにかく世の中はカネでしか
解決できないって言う、
ずっと小さい時から父も母も
そうだったんですよ。 |

ほぼ日 |
へえ。 |

スガノ |
ずっと言われてたので
人の思いやりは、とかじゃなくて、
0からスタートしちゃったもんだから、
本当は人間って大したことないんだよっていう、
その土壌に立って、
やさしさとかを
0から考えられたって言うのは
ちょっと得したかなって思ったですね。
最初からそれが当たり前で、
当然だと思っちゃいけないってことですね。 |

美雨 |
それはあるかも。 |

スガノ |
マイナスからの出発というか。 |

ゆうこ |
何かちっちゃい頃から自分でご飯作って
洗濯物も自分でしてとかっていう
生活しかしたことなかったから、
お母さんとご飯を食べる、
夕飯を食べるのは土日週2回。
あとは朝から晩まで全部一人だった。 |

まいこ |
そうだよね。 |

ゆうこ |
だからご飯とか夜になると
二人(姉妹)で、今日のご飯は?
とかやってたよね。
ほんとお母さんとご飯を食べたことが
ほとんどないんですよ。 |

ほぼ日 |
ほおーっ。編集者、忙しい。 |

ゆうこ |
普通の家はご飯が6時とか7時なのに
うちはちっちゃい頃から10時だったの。
普通の家が7時くらいに
ご飯を食べるっていうのを
ずっと後になって
高校くらいの時に初めて知って。
みんなはそんな時間にご飯を食べてるのか?
そうか、うちはなんなんだ?
これは夕飯なのか? 夜食か? |

美雨 |
夕飯が5時の家とかあるよね。 |

ゆうこ |
いるいる。 |

きょうこ |
でもおばあちゃんち行くと、
5時とかになるからこうなんだ、
でもそれは異常だった。
おばあちゃんちがおかしいんだって。 |

美雨 |
おばあちゃん・・・(笑)。 |

スガノ |
私は圧倒的に刺身率が高かったですね。
夕飯。
もう切って売ってるでしょ。
しかも刺身、豪勢でしょ?
便利ですよぉ、って、母親になってわかった。 |

美雨 |
ふーん? |

まいこ |
当時グルメ本みたいなのがたくさんあって
レストランの取材とか
いっぱいしてる時期があって、
その時に自分はね、いろんな豪勢なものを
取材だから食べてくる訳ですよ。
お母さん、おなか空いたのって言ったら、
ダーンとご飯が出てきて、
ダーンってシャケ缶が
出てきて。 |

ゆうこ |
そうそう。 |

美雨 |
シャケ缶? |

スガノ |
ネコだっ! |
一同 |
ははは。 |

まいこ |
え? これ? って感じ。
「お母さんもうおなかいっぱい」って。
で、それくらいからもう親は
頼っちゃいけないんだって思って!
自分で食べたいものは
自分で何とか調達しなきゃいけないんだって。 |

ゆうこ |
そうそうそう。 |

りか |
よそのお母さんと違うっていう点に
反抗したりとかしなかったの? |

きょうこ |
結構ほっとかれるの好きだから
よかったですね。
逆にかまわれなくて。 |

まいこ |
私が働くの止めてって言っても
この人は働きつづけるだろうとか思ってたから、
そういうふうに思わなかったけど…。思った? |

ゆうこ |
悪いことをした口実に
「お母さんが働いてるから悪いんだ」
って言ったことは何度かある。 |
一同 |
はははは。 |

ほぼ日 |
分かって言ってるね。 |

ゆうこ |
分かってる。自分が悪いんだと
思ってるんだけど、
ここで自分が悪いって認めたくないなって
思ってるときに
「だってだって、お母さんが働いてるから…」
って言ったことはある。
そこでお母さんは
「分かった。これからお母さんは
夜8時までに戻ってくる」
って言って、
それは一度も守らなかった(笑)。
うそじゃーん! |

まいこ |
そんなこと言ってたんだ。 |

ゆうこ |
言った言った。 |

まいこ |
知らなかった。 |

きょうこ |
でも親って帰ってきて欲しいって
言ってもらうとうれしいんですかね? |

美雨 |
いや、どうなんでしょうね? |

きょうこ |
うちはもう逆に、
保育園とかに迎えに行っても
「もう来たのー?
まだいいよ。どっか行ってて」
って言って。私はもっと遊びたいって。
そういうのちょっと寂しかったみたいよ。 |

ほぼ日 |
うーん。 |

きょうこ |
あんまり頼られてる感じがなかったから。 |

美雨 |
言うのも恥ずかしかったの、私。
多分そう思ってたことはあったと思うんだけど、
お母さんが仕事でいなくても、
代わりにベビーシッターの人がいたりして、
ま、それで仲良かったし
いろんなことを教えたもらったから、
まいいかって。
代わりに私はスタジオ行ったりとかもしてたな。 |

ほぼ日 |
うんうん。 |

美雨 |
でもいてって言っちゃいけない、
それだけは言っちゃいけないって思ってたのね。 |

スガノ |
何で何で? |

ほぼ日 |
ちっちゃいから理屈じゃないよね、きっとね。 |

りか |
すごいお母さんが忙しそうだったからとか、
そういうの見てるから? |

美雨 |
忙しそうだったし、絶対必要なことだろうし、
何か、うーん、音楽家として
社会でも認知されてるっていうのは
分かってたからかな。 |

ほぼ日 |
それって最初から当たり前のように
分かってたことなの? |

美雨 |
うん、分かってた。
物心ついた時から親二人とも
ステージに立つ人で、
みんなの目がそっちに向けられてて、
っていうのはすごい分かってた。 |

ほぼ日 |
へえー。 |

美雨 |
だから何か、
自分よりも大切とは
思わないけど、
何か自分と同じくらい大きなものを
背負ってるんだし、それは当然だ
みたいなふうに思ってたのね。 |

ほぼ日 |
へえ、すごい! |

美雨 |
分かんないけど・・・。 |

スガノ |
苦労を増やしてしまう? |

美雨 |
うん、絶対必要なことをやってるんだから、
それを言っちゃいけないとは思って。
そんなに論理的には考えてじゃなかったけど、
今思うと。 |

りか |
すごい尊重の仕方ですよね。 |

美雨 |
音楽をやってるところも好きだったし。
音楽やってるお父さんもお母さんも
好きだったっていうのももちろんある。 |

ほぼ日 |
うんうん。 |

美雨 |
何か大人の領域、大人と子供の領域の境界線を
すっごくはっきり引く親だったから。
今でもそうなんだけども。
例えばもう大人の時間だから
寝なさい、とか。 |

ほぼ日 |
うん。 |

美雨 |
ミュージシャンの人が
周りにいることもすごく多かったから、
例えばスタジオの収録中に静かにしなさいとか、
それはもう雰囲気で絶対感じるから、
入り込めない領域っていうのはすごく感じてた。
迷惑かけちゃいけないっていう感じ。 |

ほぼ日 |
へえー。 |

美雨 |
そこの辺がすっごく厳しかったから、
すっごい泣く子供とかが私もダメなんだ。
実際私も泣いてすごい迷惑かけてたと
思うんだけども、
それでも何か、今自分のことは
棚に上げて思う。
親はどうなってるんだ!
って(笑)。 |

スガノ |
ちゃんと教育しろよ! |

美雨 |
って思う。 |

ほぼ日 |
へえ |

美雨 |
子供には厳しいな~、わたしも。
(つづきます。メールはこの下で!)
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