大疑問・みんなでものしり。 10万人寄れば文殊の知恵。 |
海水にダシがきいてるなら、 道場六三郎はどうする? またまた来ましたdarlingっす。 今回は、ずばっと怪答乱麻って感じさ。 例によって、わからないけど答えたいっていう人も、 けっこういたりしたんだけれど、 それはそれで、助走としておもしろいからいいやねー。 さて、思い出しましょう。前回の疑問。 「ニワトリに七色のエサを食べさせたら、 卵黄部分が七色のストライプになるのか?」 と、ついでにですが、 「昆布のダシは海水には出てしまわないのか?」 だったのですが、まず今週は、 昆布問題のみ片づけてやりますばい。 まずは、迷いながらも答えたいという、 野次馬的な方々のメールから読みましょうや。 いやいや、野次馬って言っちゃ悪いな。 真剣だもん。 ◆こんぶとか、煮干とか、鰹節とか、干しあわびなど乾物の うまみのもとは天日で乾燥させることによって発生する アミノ酸かなんかではなかったでしょうか? 調べて書けばいいのでしょうが、きっと正解はほかのもっと 物知りな方が出してくれるとおもって、手抜きします。 でも、もしそうでなかったら、 海産物からは美味しいだしがいつも染み出していて、 海の塩分とあいまって 海水はすご〜く美味しいおつゆになってるよなぁ 沸かしてお味噌をいれたら美味しいだろうなぁ と、考えたら楽しくなってしまいました。 みやの 楽しくなってくれただけでも、いいことをしたと思う。 ◆昆布のダシって、要は 海のミネラルとか、なんやかんやが凝縮したやつだから 多少出たからって、 どーってことないんじゃないですかねえ。 また海からいただけばいいってことで。 昆布のダシの量ってすごいんですよ よく、「節約料理」みたいな本には載ってますが ダシをとったあともまだまだうまみがのこってるから 捨てちゃわずに佃煮にして食べろって。 乾燥したあとに煮炊きしてもダシぜんぶは出ないんだから 生きてるうちに海でへらへらしてるのなんか ぜんぜん平気なんじゃないですか?たぶん。 Naoko Tokunaga 「出たってどーってことない」って、あなた。 「生きてるうちに海でへらへらしてる」って、あなた。 そういう問題じゃない・・・んですけど。好きです、これ。 ◆えーと、すいません、私が思うに 昆布の出汁が海水に出てしまわないのは 「浸透圧」があるからではないでしょうか? 昆布は、生のままでは出汁が出ませんよね。 つまり、生きている昆布は体内に水分を 保持しているということになります。 そうすると、お鍋で煮ても水分の移動は 行われない、と。 さて、では出汁用の昆布はと言えば、 まず干しますね。 確か海産物は太陽の光に当てて干すことに よってグルタミン酸とかの「うまみ成分」が 作られるんです。 なおかつ、水分を失ってカラカラに乾く昆布。 そこから導き出される答えは、 「乾いた昆布はその体内に一旦水分を取り入れ、 うまみ成分をそのかわりに吐き出している」 と、言うことは 「生の(生死に関わらず乾いていない)昆布は、 うまみ成分に乏しく、体内に水分が満ちて いるため、体外の水分を取り入れることは 不可能。よって出汁は体外に出ない」 …いかがでしょうか? めっちゃ素人考えなんですけど、 違ってたらごめんなさい。 あ! 一つ言い忘れましたね。 熱です。 熱を加えれば生の海産物でもいい出汁がでますね。 熱で強引に細胞を壊せば出汁は出るのか! (書きながら発見した気分です! おお、少し賢くなったような気が! 気だけ?) でも、冷たければ出ません。 冷たくても出汁が出るのは、やっぱり乾物だと 思います。 山口由美子 ◆昆布は沸騰する寸前じゃないと 美味しいダシがでなかったと思います。 ぬるくてもあつくてもだめ。 海はそんなに熱くなんないし、 海の生き物だから、海水より濃いんじゃないですか? 浸透圧とかで負けないくらい。 って、何が濃いかわかんないけど。 魚だって貝だって味噌汁のだしになるけど、 海水はしょっぱいだけだもん。 あんま説得力ないなー。 五十嵐 桂 「海水はしょっぱいだけだもん」って実証的ですよねぇ。 しかしそれだと、「多少出てもどーってことない」説と、 ぶつかることになるのかな?たのしいねー。 ◆普段、私達(特に日本人)が「ウマイ」と感じるもの、 つまり、昆布や鰹ぶしから出る「ダシ」と呼ばれる「 旨味」の正体の代表格は、「グルタミン酸」です。 この「グルタミン酸」は、 その植物や動物等の組成に入っている物なので、 たとえ海水に長時間浸っていても、 その「昆布」が生きている以上、 ドンドンとその体内で組成されて行く のではないのでしょうか? と、考えると”「昆布」は 海水に「ダシ」を垂れ流している”ことになりますね。 そして、「昆布」が群生、又は、「養殖」している場所は 海水が「ウマイ」のでしょうか? 「解答」と件名に名打っていながら、 「疑問」になってしまってすみません。 本当にそのことについて勉強されている、 又は、その道の権威の方の意見を聞く のを楽しみにお待ちしております。 アンソニー 前回も登場したアンソニーさんは、 「?」付きの、「たれながし?派」でしたね。 ◆この質問、最近料理番組で 料理の先生とアナウンサーの方が やり取りされているのを見ました。 答えはずばり「出ない」そうです。 どのテレビ局の何の料理番組か忘れてしまったのですが、 きっぱりとおしゃっていました。 理由についても忘れてしまいました。申し訳ありません。 近藤 章子 おいっ。「きっぱりとおっしゃって」たのかよ?! 「忘れてしまいました」って、いいボケかましてー。 でも、こういうのがあるからおもしろいんだよねー。 ◆僕が聞いた噂では、 もし昆布のダシが海の中で出てしまっていたら、 魚や貝類、すべての海にすんでいる生き物の ダシが出てることになる。 と考えると海は道場六三郎が作るこだわりのダシより すごいものになってしまう。 ましてや神田川なんて目じゃない! もうこりゃ皆 海にいくっきゃない って感じになってしまう。 皆がそうなってないということは 昆布のダシは海には出ていないってことじゃないかと 思います。 ごめんなさい。 ヲギソのパン 「噂では」から書きだして、「ごめんなさい」で終わる。 このなんというか、のほほんとした「答え」。 道場や神田川まで登場させて賑やかな演出も。 じゃ、そろそろ、じれったいでしょうから、 バンッと、正解らしい答えを読み出しましょう。 ◆答え、「出ません」。 昆布のダシというのは、細胞が壊れることで出るそうです。 これは生の昆布でもダシ昆布でも同じだそうです。 熱などで細胞を壊せば、生昆布でもダシは出る。 でも海の中、昆布が育つ北の冷たい海は、 細胞を壊すほど海水があたたまることはないようです。 でもダシ昆布は、水につけるだけでもダシが出る・・・。 これは乾燥させていることにそのヒミツがあるようで。 乾燥させることで(細胞そのものではなく) 細胞をつつむ膜が壊れて、 それで水の中でもダシの成分が出る、とのことです。 以上がお答えですが、実はこれ、 愛知県の朝日中学校の「科学部昆布班」の方々の 「水でダシがとれる昆布は、海の中ではダシはでないのか」 という研究発表から 引用させていただいたものです。 小中学生対象に「自然科学観察コンクール」というのが 毎年開催されているんですが その入賞作品ガイド集に掲載されています。 (この研究は、平成12年度中学校の部、 秋山仁特別賞受賞) 「科学部昆布班」の方たちは、 昆布の生育環境を調べたり、 生昆布を取り寄せてダシ昆布と比較実験したり等々、 実験を何種類も繰り返して、結論を導き出していました。 えらいっ! うー えらいっ!ありがとう、中学生って感じですねぇ。 だけどさ、これを先に読んでもらっても、 あんまり遊べないでしょう。 さんざん回り道をしましたが、 正解は、これでいいってことにしておきたいです。 いったん、ここで昆布問題を終わりにしますが、 では、次回の疑問のご紹介。 卵にちょっとこだわってみましょうかね。 ◆コンビニやスーパーで売っている、 「ゆで卵」についてです。 あれは程良く塩味が付いているのですが、 殻を割ったり、穴を空けたりした形跡も見られません。 ゆで卵を作るとき、濃い塩水でゆでてみたのですが、 中身には全く味がしみこんでいませんでした。 売っているものは半熟だったりするので、 煮出す時間はあまり関係なさそうです。 あれはどうやって作っているのでしょうか? もし、家庭でも簡単に作れるようならば、 とても便利(お弁当の中身とか)だと思います。 是非、知りたいものです。 はっとり よしさと つまり、 「塩味のゆで卵って、どうやってつくるの?」 ってことです。 今回は、かなりズバッと答えがでそうな疑問ですね。 そういうこともなきゃ、手がかかってしょうがないんで。 疑問、解答ともに、メールで、 gimon@1101.com までお寄せ下さい。 タイトルに必ず「みんなでものしり」と記してくださいね。 さらに、疑問のメールには「疑問」の二文字を、 お答えのメールには「解答」の二文字を記していただくと、 ぼくが、編集するときにとてもラクになります。 次回はいよいよ「七色のゆで卵です」。 darlingでした。 ・・・と、原稿を書いている最中に、 強気のメールが飛び込んだぜ。 ほーら、みんな遊んでるんだからぁ。 ええい、載せちゃえ! ◆遅くなりました。 darlingさん、他の解答メールで、解答のキーワードが 「グルタミン酸ナトリウムの形成時期」「浸透圧」 「天日干し」等となっている 胡乱(うろん)くさい解答メールは 目を通さずに捨てていただいて結構です。 私が完璧な答えを出しましょう。 答え:出ます。 本来の設問は、 「海底に根を張って、生きている昆布は 昆布のうまみ成分であるグルタミン酸ナトリウム (業界用語ではグルソ)が、その海水に溶け出さないか」 でしょうが、 「昆布のダシは海水には出てしまわないのか?」 と問われれば --出る--立派に出る--絶対に出る--意地でも出してやる。 司馬遼太郎氏の小説「菜の花の沖」の文中で、 北前船を造り蝦夷入りすると、 高田屋嘉兵衛はそこの海水で米を炊き、にぎりめしを作り、 それを土地の者達に振る舞い それが無性に旨かったと記している。 このことは、この時代、また蝦夷地ということで、 銀シャリがご馳走だったということだけではなく、 本当に旨かったと私は推定する。 それは、箱館(函館)湾には、 「蝦夷の花」とよばれたほどに上質の昆布である 宇賀昆布および志海苔昆布のうまみが しっかり溶けているからであると私は確信している。 ひょっとすると、外海と違い、 湾内ではうまみ成分が飽和状態になっていて、 海水がドロドロの状態であったかもしれない。 これについて、司馬遼太郎氏は言及していなのが 不思議なことではある。 だしの取り方: 海水ではなく真水に一晩浸け置く。 昆布や煮干しは煮出すのではなく、上記の方法が最上です。 ちなみに、コミック「おいしんぼ」で、 昆布をさっと湯にくぐらすというのがあり、 これは問題外として もう終わってしまったテレビ番組で 「料理の鉄人」という番組の設定では、 料理完成まで1時間以内ということになっていましたが、 昆布のだし取りは、 1時間で出しきれるものではありません。 つまり、素人はそれを真に受けマネすると、 もったいないということです。 ちなみに「料理の鉄人」の昆布だしの場合は、 事前に作ってあったか 大量の昆布を使い短時間で、だしを抽出していたのか、 こっそり「味の素」を使ってたのか、 私は、その業界の者ではないので知りません。 北象アザラシ どうよ、強気だろう。もう、元変えちゃってるもんなぁ。 貴重で強引なご意見でありました。 これも、ありがとうだね。 もうやけっぱちです。 トドメに、すっごく詳しいものも掲載しておきます。 せっかくここまで読み進めてきた方なら、 この後も読んでおくんなさいやし。いくぞ! ◆昆布のダシがなぜ海水に溶け出さないか、です。 まず第一の理由。 ご承知の通り、ウイルスなどを除き、 大体の生物は細胞でできています。 昆布も生き物のはしくれですから例外ではありません。 ちゃんと細胞でできてます。 藻類の悲しさか、器官分化はあまりしていないようですが。 で、その生物を形成しているところの細胞は 細胞膜というリン脂質でできた 二重構造の膜に包まれています。 この細胞膜には半透性があります。 半透性とは何かというと、 大雑把に、まあ目に見えないような、 分子単位の小さな穴が開いている と考えてもらえばよいでしょう。 細胞膜の場合微妙に違うらしいですけど。 流動モザイクモデルがどうとか。 その辺は私にもよくわかりません。 まあそれはいいとして。 この小さな穴というのが微妙な大きさで、 水分子などの小さな分子は通しますが、 糖や蛋白などの大き目の分子は 通らない大きさになってます。 つまり、生命活動に必要な物質を 逃がさないようになっているわけです。 ちなみに水分子はH2O、分子量18、 ブドウ糖はC6H12O6、分子量180です。 大きさのデータがあればいいのですが、 残念ながら水分子のデータしか今手元にありません。 1.5Å(オングストローム)、 つまり1.5mmの一千万分の一の大きさです。 まあつまり、水に溶けてるもののうち、 通すものと通さないものがあるから、半透性。 ちなみに水に 溶けてるものならなんでも通してしまうのは、 全透性といいます。 この膜に阻まれて、昆布ダシの成分である グルタミン酸モノナトリウム (なんのこっちゃと思われるかも知れませんが、 味の素のことです。 分子式C5H8NNaO4、分子量169) は海水へと逃れることなく 日本の食卓へと無事、運ばれるわけです。 一応補足しておきますと、糖や蛋白なんかは、 およそ細胞の中から出入りできないわけではありません。 小胞体というくしゃくしゃになった袋みたいな構造物が 細胞の中にはありまして、この袋が必要に応じて 栄養を取り込んだり細胞の中で作られた蛋白質を 細胞の外に分泌したりするための穴を 細胞膜にあける働きをしています。 ………と、ここまで読んで、 新たな逆の疑問が浮かびませんか? 「海水中でダシの行く手を阻んでいた細胞膜は、 鍋のお湯の中では何をやっておるのか。」 (以下、ものすごくいっぱい略) 追記 資料として以下の物を参照しました。 ・関口晃一 他8名 著 『四訂版 高等学校 生物』 数研出版株式会社 1992年 (高校時代の教科書です。) ・秀文堂編集部 編 『カラー版 改訂 生物図説』 秀文堂 1989年 (高校時代の資料集です) ・三宅泰雄 監修 三省堂編修所 編修 『三省堂 化学小辞典 第3版』 三省堂 1983年 (高校時代の化学の資料です。 ビタミンAからUまでの効果や含まれる食材 が載ってたり、味の素とかこんにゃくマンナンとか セメントとコンクリートはどう違うかとかいう項目が 専門用語に混じって載ってたりします。 これで千円ですから結構お得だと思いますが) ・石川統 編 『生物学』 東京化学同人 1994年 (大学の一般教養講義の参考書です。 結局試験は受けませんでしたが……) 追追記 題名は一応『解答』としましたが、 疑問に対する答としては『回答』のほうが 正しい字ではないでしょうか? 『解答』だとテストになってしまうので。 まあそっちのほうが近かったですけど(笑)。 追追追記 タウリン1gをCMで謳う栄養ドリンクが そろそろ出てもいい頃だと思うんですが。 1000mgでなく。 もし出れば私なら絶対固定客になりますね。 tritree まいったか。 これでも、相当省略したんだぜ。 ありがとう、 tritreeさん。 じゃ、またそのうち! |
2001-06-26-TUE
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