雑踏を歩いていて、とても困るのは、
きれいなお姉さんやおにいさん達が
つけていらっしゃるパフュ−ムやコロンです。
美味なる匂いにわたしは拒否反応を起こしてしまう
体質らしく途端にくしゃみが連発してしまう始末なんです。
えら迷惑ったらありません。
とことん、そのようなこじゃれたたしなみとは
縁が薄いらしくって。
ですからね、わたしのつたない歌をえろてぃっくの
匂いがしてうふふとかのdarling様に
おほめいただいたりすると、うれしくって。
そのひいちにちじゅうは、
じぶんじしんがおんなの人としてほめられた
みたいで、気分がよいんです。
ところで、ふぇろもん。
巷のおとこのひとやおんなのひとって、やっぱり
そんな謎の物質に誘因されていろんなことを
いたしたりしていらっしゃるのかしら?
とほんとうに素朴な疑問がわきおこってしまっている
このごろです。
きっと匂いオンチのわたしなんかが
出る幕ではないんでしょうけれど、
ついこの間わたしは、目撃してしまったんです。
ふぇろもんを、うまれてはじめて。
冬のある夜。むかしからよくしてくださっていたお宅に
ファミリーなパーティに招かれました。
そこには、活字の世界で活躍されている方も
大勢いらしてて。
へ〜とかほ〜とかこちらはただあっか〜んと
してしまうぐらい眺めのいおとこの人
たちがいっぱいでした。
そこにいらしたとあるおとこの人がですね。
どうやらふぇろもん保有者だったらしく。
はじめはなんとも明るい方だなぁという
印象しかなかったんですが、宴もたけなわな頃、
すこし酔い疲れていらしたのか、
ソファに寝転がっておやすみになられたんです。
で、わたしはたまたまその方の
おやすみなさっているソファの隣に用事があって
その側をなにげなく、ほんとうに
なにげなくですよ、ぬきあしさしあしで通ったらですね、
すんごい気配がするわけです。
なんていうんでしょう。とても静謐なかんじで、
ただ眠っている。
ひそやかすぎてせつなくなるぐらい、ただ眠っている。
生きているよね?とたしかめにいきたくなるぐらい、
とてもあちらに近いぐらいに眠っていらしたんです。
眠る姿って、無防備にその人の抱えてしまっている世界を
写し出してしまうものだと感じ。
でも、無防備だからいろっぽいとかそういうんじゃなくて、
無防備である故のむきだしのかなしさに
触れてしまったというんでしょうか。
触れちゃいけないものにぎりぎり近付いてしまったときの
あやうさにわたしはうまれてはじめて
やられてしまいました。
あぁおそるべし、ふぇろもん。
それにしてもあの方はどうしてあんなに
揮発性のまったく低い、濃すぎるぐらい
重たいふぇろもんを、
眠っている時に放っていたのでしょうか。
やっぱりそれってわたしのいつもの幻覚なんでしょうか。
もうあれからわたしはやみつきになってしまい、
ふぇろもんサーチャーとして生きてゆきたいなんて、
思っている毎日です。
あぁ、冬の雑踏を縫うように歩く恋人たちのふぇろもんは、
いつ放たれ、どんなタイミングで
消え去ってゆくんでしょう。
そんなことよりじぶんのそれはいつか
誰かを誘う時があるんでしょうかというとても
切実な問題に、気付いてしまって
なんともやりきれないモードに陥っている
もりまりこでした。
では、どうぞ、みなみなさま、お幸せに!
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前からみてもえろてぃっく、うしろからはもちろん、
ななめからならみようによっては。
そんなえろてぃっくな歌がいっぱいつまった
もりまりこの第一歌集『ゼロ・ゼロ・ゼロ』(フーコー/
星雲社)。だいすきな誰かとふたりで、ページを
めくってね。どうぞ、よろしく!
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