第2章 先生を探す(4)
N波先生(候補)の返信は、まことに爽やかだった。
軽さが爽やかで、そこにとても知性を感じさせるのだ。
重く本当のことを語ると、相手にその重さが伝染する。
相手のこわばりをなくすには、
自分からカルクなることが大事なのだと思う。
今回のことで言えば、ぼくの側が、
おそるおそる出したメールの返事なのである。
このぼくの側の「硬さ」や「重さ」に、同調したら、
もう1~2回のメールの往復が必要になるはずだ。
ほんとによろしいのでしょうか?
はい、ほんとに。
ほんとにほんとに、ですか?
はい、ほんとにほんとに、です。
という手続きが重いコミュニケーションには大事なのだ。
ところが、軽さが表現できれば、
この牽制球の投げ合いのような儀式は要らなくなるし、
急速にうちとけられるようになる。
ただし、軽すぎは、また困るわけで、
そうなると信頼に欠けるというふうにとられる。
N波さんは、そのあたりの距離感というか、
軽重のとらえ方が、まことにもって見事なメールをくれた。
糸井先生、
M町のN波です。
お忙しいところ、メールをありがとうございました。
ご事情をよく把握しないまま
「近い、近い」とはしゃいでしまい、
大変申し訳ありませんでした。
はい、では、S町ということですね。
17号を車でヒューンと行けばすぐなので、
問題ありません。
普段から車で移動していますし、何の負担にもなりません。
位置的には群大医学部を通り過ぎたあたりですよね?
私が想像するに、たぶん、
「しみずスーパー」あたりの一角なのではないかと・・・。
ご心配いただき恐縮いたしておりますが、
距離的にまったくOKです。
> なんといっても、年金しか収入源がないはずなのに、
> 世界各国を旅行して回っている80代なのです。
> 好奇心と何かがとても丈夫なんだと思います。
> しばらく前までは、機織りと染色をやっていて、
> いまでもダンスやらバレーやらを見に
> 東京に出てきています。
> 謎のばばぁなんです。
わぁ、それはまたかっこいい!
それならiMacの一つや二つ(?)
あっという間にマスターされ、
すぐに「先生」要らずに。(笑)
教える側としましても、とてもワクワクいたします。
こちらの方がいろいろと
教えていただくことにもなりそうですね。
> なお、余談ですが、ぼくは、第4保育所の出身者です。
> さらに桃井小学校の出身です。
> そのあとは第一中学で、前橋高校というコースでした。
> ろくでもないこどもでしたがね。
そうでしたかぁ。
桃井小学校は多少予想がつきましたが、
第4保育所とはびっくり。
余談をし始めるときりがなさそうなので、
とりあえず、このへんで送信いたします。
選んでいただいて大変光栄です。
ありがとうございます。
Mac推進委員会メンバー(←また言ってます)
としましては、必要に応じていつでも
S町まですっ飛んでゆく覚悟でおりますので、
ご遠慮なくこき使ってください。
iMacはいつごろ届く予定なのですか?
お母様はそれが届くことをご存じなのでしたっけ?
では、またご連絡ください。
よろしくお願いいたします。
N波A子
これを読んだら、もう、よぶんな気兼ねは要らない。
というより、そういう態度でいたら失礼だろう。
ぼくは、安心して、このN波さんに甘えることにした。
(はい。今日はここまで。明日につづく)
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