80's
80代からのインターネット入門。
前橋の母Aが、Eメールで原稿を
送ってくるまでの物語。

第9章 レッスン5・接続の苦闘(4)


インターネット接続の実現に向けて、
力で二階にiMac を移動させようという女性部隊。
今日は、すぐに本文に入りましょう。

どっこいしょ、っと。
南波あっこ先生、ではレポートを、
開始してくださーい。


全てのコードを外す。
本体は私。
キーボードはノリコさん、マウスはユキエさん。

ヨイショっと!
これを落としたら一大事。
目の前のエサを逃がすどころの話じゃなくなる。
「iMacベイビー、さぁ、お散歩よ~。
しっかりだっこされててねー!」

ミーちゃんを先頭に、二階への大名行列が始まった。
「下に~、下に!」
いや、この場合、道ばたの民衆はいない。
二階めざして、「上に~、上に!」
iMac、赤ん坊と言うよりお殿様気分か?

電源コードに引っかかってiMacが転がり落ちないように
ノリコさんがそのコードを持ってくださる。
コード、ウェディングドレスか何かの裾であるような、
はたまた、私の抱く猛犬の鎖であるかのような。
無性に可笑しくなり、腹筋とともにiMacが揺れる。
笑いは時として人を苦境に立たせるものだ。
「iMacと心中」・・・ま、これもなかなか。(笑)

二階の壁にはモジュラージャックが一つ。
そして、ここにも「弁当箱」が存在する。
さて、どうなるか。

結果・・・あっさりと失敗。

赤ん坊だか、お殿様だか、ご神体だか、
もうわからなくなってきたが、
とにかく、このiMacさまも肩を落とす。
皆、その孤独な影を見つめながら、
「これはもうNTTのお世話にならないとダメねぇ・・・」

最初からお世話になっていればよかったのに、って?
そこは女の意地である。
この軍団の好奇心がそんな
容易い手段を選ばせるわけがない。
でも、全員、十分楽しんだ。
そろそろ元を取ったかのような気分である。
ここはひとつ「降参」を認めよう。

ノリコさん、さっそく「106」に電話する。
事情を一通り話した後、私とタッチ交代。

「えっ?じゃあ、結局、
どうもがいてもダメだってことなんですか~?」
「はい、ダメですね。この場合、
回線のジャックから一本線を出して
新たに差し込み口を作らなくてはなりませんね。
工事代がかかってしまいますが、それでもよければ・・・」

ノリコさん、工事日を指定して電話を切る。

あじゃ~~!
無駄なバトルをしていたわけだ。
一日かけて探していたモノが実はポケットに入っていた、
そんな時の「な~んだぁ」な感触。
それでも解決方法が見つかった喜びには代えられない。
全員、とりあえず気の抜けた笑いでその場をしのぐ。

さて、また「下に~、下に!」
iMacさま、帰り道もどうぞよろしゅ~。

無事、所定のラックに戻ったiMac。
珍道中、大変お疲れさまでした。
NTTの工事は二日後。 もうすぐだ。


ワーオ、降参ですか。
はじめから降参していればよかったのに、
なんて考える人は、この「おたのしみ感」が
わからないと思うな。
要するに、女の意地もあるだろうけれど、
この人たち、こういうことも含めて、
たのしんでいるんだと思うんだよなぁ。

(降参しても、あしたにつづくに決まってますよ)

1999-07-15-THU

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