80's
80代からのインターネット入門。
前橋の母Aが、Eメールで原稿を
送ってくるまでの物語。

第12章 ミーちゃんの日記を入手した(1)


南波あっこ先生は、特に宿題を出すわけじゃないけれど、
生徒のミーちゃんは、予習復習をちゃんとやっていました。
おそらく、ぼくも長いことそう考えていたけれど、
「キイボード」というものが壁なんだなぁ。
鉛筆1本あれば文字を並べて文章を書けるけれど、
キイボードで文字を「打つ」という行為は、
日本人にはなじみがない。
だから、なんだかエライような
難しいような気がしてしまうものなのだ。

だから、ミーちゃんも、そこいらへんのことが
とても心配だったのだろう。
日々、コツコツと、タイピングの練習をかねて、
簡単な日記を付けていたのだった。

文字やコトバの不思議な使い方や、
記号のヘンに見えるところには、
目をつぶってください。
なにしろ、80年近い人生のなかで、
はじめてのことに取り組んでいるのですから。


6月18日~22日    
 東京。横浜。伊豆方面に遊びに行き5日間も留守に
 して日記をさぼつてしまいました。
 みんな旅のお友達でしたのでとても楽しくすごせ
 ました。 
                
6月23日                                      
 しばらくテレビも新聞も見なかつたのでプロ野球の
 動きがわからなくなりました。其の方がよかつたかな。    
 今日は遊び過ぎて疲れたようで何を書くかすらすらと
 でてきません。ただ練習するだけのようです。
 ひたすら手を使う事が最高の上達の秘訣の様ですね。 
  
6月24日      
 今回の旅のお友達へのお礼の電話などで1日中
 落着かないでまた夜になつてしまいました。
 ほぼ日刊のコピ-をつぎつぎと見せてくださる人が
 居りますので南波さんの素敵な言葉使いに感激する
 やら羨ましいやらでこれからの私はどうしたら
 良いかわからなくなりました。
 この次は作文のお稽古でもしていただきますか。

(ここからノリコさんが書いた分)
 みーちゃんは久しぶりにワープロを使ってみたので
 かなり苦戦した様です。約一週間、間が開いたので 
 無理もないかも知れません。 
 性格的に、”まず、まちがわないように”
 と考えるのでちょっとそこらへんがまずいかも
 知れない。たぶん、いろいろ失敗して、それを
 あーでもないこーでもないとツッツイテいるうちに
 なーんだこういうことだったのかと思いがけず正解が
 でる、ということだろうと思います。
 いかがなもんでしょうか。
 どうしてワープロで文章を作ると小学生の作文の
 ようになっちゃうんだろう、と考えながらやって
 みたら少しだけ自分の言葉っぽくなってきたような
 気がします。この『します』なんていうのがどうも
 変(です)。     
(ここまでノリコさん)      
                                                                                                       
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(この作者は不明でした)                                   

6月25日(金) 
 今日はパ-トで働いたので練習は遅くなつてしまつた。
 夕方Kさんが見えて面白い絵など を書いて楽しんで
 行きました。あの調子だと度々遊びに来そうです。
 ミ-ちやんより皆の 玩具になるのでわ?’’’’’’。
 私は頑張るより方法が無いですね。家事より重点的 
 にやるかな?重点的にやるかな?
 なんて考えてしまいます。
 でも私には出来ないでしよう。


どうでしょう。
外面は、ひたすらにお気楽で元気な80歳に見えますが、
やっぱり、内面のところでは、
はじめての経験にとまどったり、
見知らぬ人々に注視されているというプレッシャーに、
軽いおびえを感じたりしているんでしょうね。

悪いことではないとはいえ、
乱暴な「たくらみ」に巻き込んでしまって、
ちょっと申しわけない気持ちも、ぼくにはあります。
でもね、毎日、このページを待っていてくれる人が、
いっぱいいるんだし、
新しい世界を獲得できるんだし、ってことで、
許してください。

(明日も日記のつづきをおおくりいたします)

1999-08-02-MON

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