80代からのインターネット入門。 前橋の母Aが、Eメールで原稿を 送ってくるまでの物語。 |
第16章 あらためて、気楽に行こう(1) 夜風がすました顔して身体を撫でてゆくたびに 過ぎゆく季節の面影を心に焼き付けようと振り向いてみる。 そこにはもう新しい景色が広がっていた。 何かが終わり、何かが始まる。 移り変わりゆくその空気は曖昧な色合いで心に染み込み ふと気付くとそれはタメイキに変わっている。 あー、もう秋なのか・・・。 ・・・あれ? 紫外線対策を怠った夏の名残、脳味噌の中にまでメラニンが 沈着してしまったのだろうか。 そんなふうに感傷的になれるほど秋は深まっていない。 実のところ、日中はまだまだ暑い。かなり暑い。 残暑いつまで続くんざんしょ! 感傷的どころか、苛立ちを感じさせるような残暑。 雷による影響でMacを再起動させられながらの仕事。 それもやっと片づいた。自宅缶詰状態からの解放。 さて、ミーちゃんは どういう残暑生活を送ってらっしゃることだろう。 電話回線を通した声はいつもの溌剌としたミーちゃんだ。 しかし・・・。 「今、ちょっと気分が落ち込んでるのよね〜。 パソコンも何もかも・・・」 えーっ?そ、そんなことがあるのだろうか。 ミーちゃんが落ち込む? 季節と季節の谷間を彷徨ってらっしゃる・・・? 突然レスキュー気分になる私。 いざ、出動! 「目の前にカナダ旅行が控えてるので、 気持ちが全部もうそちらに行ってしまってるとか、 そういうのでは?」 「うーん・・・どうなのかしら。 あさってにはノリコがもう出発しちゃうし、フランスに。 お隣のハツミさんも一緒だから しばらく寂しくなっちゃうのよね〜、ここ」 「あ〜、そうでしたよね」 「ノリコたちが帰ってきた翌日に今度は私が出発だし。 南波さん、レッスンとは関係なくても、 いつでも気軽に遊びに来てくださいね。」 「じゃ、明日、ちょっとお邪魔してもよろしいですか?」 「あ、はい、大丈夫です。どうぞ、どうぞ!」 そういう気分になってらっしゃるミーちゃんに、 一方的に新しいことをお教えすることはできない。 したくない。 レッスンの押し売りなんて無意味だ。 「パソコンて意外と簡単で面白い」 そういう感触を維持していっていただきたい。 「じゃあ、Macの疑問点とか困ってらっしゃるようなことを メモしておいていただけますか?」 「はい、わかりました」 「パソコンに関しては本当に お気楽におつきあいくださいね」 「ええ。でも、なんだか、 自分が情けなくなっちゃうのよね、 覚えたはずのことができなかったりすると」 「そんな、気に病まないでください。 単なるおもちゃだと思って。 もうだいたいの操作はできてらっしゃるんですから それでいいんですよ」 ミーちゃんに流れるA型血液がいまひとつ納得しない? きちんと一つ一つを把握、実行したいという几帳面さ。 私の中で遊びながら仕事している O型血液に少し混ぜていただきたいものだ。 明日はレッスンとしてではなく、おしゃべりをしに行こう。 そう心に決めた。 もっとも、実質的には、毎回、おしゃべりの中に レッスンの要素を組み込んできたようなものであるが。
ぼくもだけれど、読者のみなさんも、 |
1999-09-27-MON
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