某日。
総務、元木の号令のもと、
ほぼ日刊イトイ新聞の年間恒例行事、
「地獄・オア・アライブ」が
いよいよ決行されることとなった。

「地獄・オア・アライブ」とは、
オフィスの一角に「地獄」と呼ばれる広いスペースを設け、
とにかく要らないものをどんどん捨てていくという
「ほぼ日」流の大掃除のことである。
平素はものがなかなか捨てらず、
「どうしよっかなー、
 まあ、そんなにかさばらないし、
 捨てなくてもいいかなー」
などと迷いがちな人も、
捨てる場所に「地獄」と名前をつけるだけで、
無闇な勢いが生じ、
えいやっと捨てられるから不思議である。
ちなみに、捨てずに取っておくことは
「アライブ」と呼ばれる。
成り立ちなどを詳しく知りたい好事家は、
下に挙げた過去の記事などを
ご覧いただくのもよいかもしれない。

地獄・オア・アライブ(2003年)
地獄・オア・アライブ(2004年)




さあ、いよいよ時は来た。
某日、午後3時。明るいビルで
最後の「地獄・オア・アライブ」がはじまる。




オフィスの中央に突如出現した広々としたスペース。
これが、いわゆるひとつの「地獄」である。
ご覧になってわかるように、
地獄はふたつの場所に区切られている。
まず、ひとつは‥‥。



燃える地獄!
そしてもうひとつは当然‥‥。



燃えない地獄!
さらには、別の場所に‥‥。



「地獄の1丁目フリーマーケット」!
こちらは、引き取り手がいたら持って帰ってね、
希望者多数の場合はジャンケンしようね、
というものを置いておくスペースである。



各自に、分担表がくばられる。
ちなみに今回の地獄は
本格的な引っ越しを数日後に控え、個人の荷物よりも、
ロッカーや倉庫を整理することがおもな目的である。



今回のビッグプロジェクト推進にあたり、
「ほぼ日」科学技術班が開発した
最新鋭の防塵マスクと耐ショックグローブが支給された。



さあ、諸君、はじめよう。



ムーヴ! ムーヴ!



ムーヴ! ムーヴ!



ブイヨン隊員も、乗組員をフォローする。



ムーヴ! ムーヴ!



ムーヴ! ムーヴ!



おっと、早くも地獄にものが集まりつつある。



荷物が散乱した和室。すごいことになっている。



フリーマーケットスペースは早くも飽和状態だ。



ややや、菅野の背にあるのは、
みうらじゅん氏デザインのお面!
それは去年、地獄に葬ったはずでは!



ああ、こちらのお面も生き抜いていたか!
もう、十分にたのしんだだろう。
さ、地獄へ導こう。



懐かしいものもいろいろ出てくる。
こちらは、「智慧の実を食べよう。300歳で300分」の
会場で配ったプログラム。



オールナイトイベント、
「映画『ダークブルー』を夜中に観る会。」
当日、映画館に飾られていたパネル。



こちらは、なぜか「ほぼ日」のオフィスが
3日間だけ六本木ヒルズに移転するという
謎のイベントをやったときのパネル。
いまだに、乗組員と関係者のあいだで
「あれは、なんだったんだろう?」
といわれている、摩訶不思議なイベントである。



そしてこれは『オトナ語の謎。』の出版を
お知らせするグッズプレス第1号。



商品開発にあたってのサンプルなども出てくる。
こちらは「ユラールのロンT」の裏地。



おっと、これはユニークアイテム!
ほぼ日手帳のカバーを模索していたときの
サンプルのひとつ。



きちんと「ONLY IS NOT LONELY」の
文字も刻まれているが‥‥
やはりいまひとつの仕上がり。



おお、これも貴重といえば貴重だ。
いちばん最初の「ほぼ日ハラマキ」を
つくったときのラフデザイン。
というか、あまりにもラフすぎる。
そしてこの、ふざけたデザインの数々‥‥。
ちょっとアップにしてみると‥‥。



ふざけている! カニ? ひまわり?
そして「ジョーズ」に丸がついているということは
これが有力だったということなのか?
現在のハラマキの普及具合を考えると
その温度差にクラクラする思いである。



これは、世に出なかった企画。
「ほぼ日ピーコート」
うーん‥‥微妙か‥‥。



鼠穴時代のステッカーと、
初代ほぼ日手帳のポストカード。



おっと、そうこうするあいだに、
地獄がまさに地獄と化してきた。



誰のものとも知れぬビニール傘たち。



おびただしい量のケーブル。



ペンの墓場。



フリーマーケットスペースにも
大物が現れはじめた。
こちらはアイスクリーム製造器。
こんなものがあったのかと驚く一同。



たこ焼き器。これは希望者が多そうだ。



けっこう活躍した焼きイモ用の土鍋。



ザ・やかん、というほかない、
それはそれは見事なやかん。



デロンギヒーターは、今回の目玉。
のちほど大ジャンケン大会を開くことが決定。



これは、いったいなんだ?
「髪を切るやつ」? 「そうじ機につけて」?
箱を開けてみると‥‥。



‥‥‥‥。



購入当初は、全員がおもしろがって
押しまくっていた「へぇボタン」。
しかし、いまやもう、誰も押す者がいない‥‥。



「しお」?



ほんとに塩だ!



播口が持っているのはマジックハンド。
いったい誰がなんのために?



破棄するマシンからメモリを抜く佐藤。
地獄のなかよりメモリをアライブとはこのことである。



拡大鏡を見つけた播口。
それにしても、さっきから
この男はなにをやっているのだ?



そうだそうだ、木村の席はどうなって‥‥
あああ、やはりもうなにもない!
というか、ふだんから木村の席はこの状態である。



さまざまな本が一カ所に、いったん集められる。
本が集まるというと‥‥。



はじまるのが立ち読みである。
これもまた恒例の風景。



しかしながら、立ち読みしすぎである。
ここは駅ビル内本屋の新刊コーナーか。



それにしてもほんとに立ち読みしすぎではないか。
地獄のなかにも立ち読み天国とはこのことである。



地獄から、自分の趣味のものをアライブさせる菅野。
本人には直接言いづらいが、率直にいって、
バーゲン会場のオカンのようである。



結果、アライブされたのこちらのグッズ。
その必要もないが、あえて総評を述べるとすると、
パンダ重視のセレクト、といったところだろうか。



「ああっ、これは危険だっ!」
突如、西本の叫び声が響く。
彼が手に持っているのは‥‥。



未使用の花火詰め合わせ。これはたいへん危険だ。
あやうく大惨事になるところだった。
魚籃坂の平和は西本によって守られたのであった。



こちらには魔女の帽子とカボチャのおもちゃが。
貼り紙には誇らしく「ALIVE」の文字が。
魔女からのメッセージも記されている。



破棄する伝票類などは、シュレッダー用の箱に集められ、
あとでまとめてシュレッダーにかけられることになる。



しかし、シュレッダー用の箱に
薪が入っているのは、いったいどういうことだろうか。
薪をシュレッダーで粉砕するつもりだろうか。
それはムリではないだろうか。



そして、気づけば地獄がえらいことになっている。
地獄、いままさに最高潮!



そのとき、誰かが叫んだ。
「お宝だ! お宝が出たぞ!」
おお、これはたしかに宝箱っぽい箱!
なかにはいったいなにが?
宝石か? 金貨か? それとも?
一同がドキドキしながら箱を開けると‥‥。



‥‥‥‥。



そんななか、またしても誰かが叫んだ。
「糸井さんが昔使っていたという
 アタッシェケースが出てきたぞ!」
ほこりをかぶった古いカバン‥‥。
これはなにかありそうである。



開けてみると、なかには一冊のファイルが。
「糸井重里資料」? なにやら貴重そう。
おそるおそる開いてみると‥‥。



やあ、これはこれは、ずいぶんとお若い!
なかでもすごい写真がこれである。



見よ! これが時代の寵児だ!
掛け軸のある和室に電話を持ち込んで、
サングラスをかけた男がマイクに向かってしゃべる!
80年代とは、かように混迷を極める時代だったのである。



ファイルにはそのほかにも、
重要そうな書類がいくつも入っていた。
んんん? これは、どこかで見た‥‥ああっ!!!



これは「どせいさんフォント」だ!
「どせいさんフォント」の原本!



そして、こっちの紙は‥‥?



おおお、これは『春咲小紅』の手書き歌詞!
しかも、完成版とは、若干違う!



そして「TYPE C」と記されたこちらのコピーは
矢野顕子さんの手書きではないかと思われる。



そうこうしているうちに、ゴミの運び出しがはじまった!
運搬手段は、「ほぼ日」伝統のバケツリレー方式である。



渡して、渡して、渡して‥‥。



渡して、渡して、渡して‥‥。



渡して、渡して、渡して‥‥。



最後はこの、通称「地獄への階段」を使って
ゴミ捨て場に運び込むのである。



ムーヴ! ムーヴ!



地獄も少しずつ片づいてきた!



すっかりあたりは暗くなってきた!



外出していた糸井重里、ラストスパートに盛り上がる
事務所の空気にうまく馴染めず、しばし呆然の図。



おお、片づいている。地獄が片づいている。
やればできるものだと感心しきりである。



そして、フリーマーケットスペースでは
ジャンケン大会がはじまったようだ。



デロンギヒーターをかけた死闘!



勝ったのは西田であった。おめでとう!



そして、フリーマーケットスペースも
すっきりとキレイになり‥‥。



地獄も、これ、このとおり。



必要なものはダンボールにまとめられ、
とうとう、引っ越し当日を待つばかりとなったのであった。



魚籃坂での日々も残りあと数日‥‥。



最後は再び、時代の寵児の姿を見ながら、お別れです。

(つづく‥‥)


2005-11-27-SUN


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