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某日。
総務、元木の号令のもと、
ほぼ日刊イトイ新聞の年間恒例行事、
「地獄・オア・アライブ」が
いよいよ決行されることとなった。
「地獄・オア・アライブ」とは、
オフィスの一角に「地獄」と呼ばれる広いスペースを設け、
とにかく要らないものをどんどん捨てていくという
「ほぼ日」流の大掃除のことである。
平素はものがなかなか捨てらず、
「どうしよっかなー、
まあ、そんなにかさばらないし、
捨てなくてもいいかなー」
などと迷いがちな人も、
捨てる場所に「地獄」と名前をつけるだけで、
無闇な勢いが生じ、
えいやっと捨てられるから不思議である。
ちなみに、捨てずに取っておくことは
「アライブ」と呼ばれる。
成り立ちなどを詳しく知りたい好事家は、
下に挙げた過去の記事などを
ご覧いただくのもよいかもしれない。
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さあ、いよいよ時は来た。
某日、午後3時。明るいビルで
最後の「地獄・オア・アライブ」がはじまる。
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オフィスの中央に突如出現した広々としたスペース。
これが、いわゆるひとつの「地獄」である。
ご覧になってわかるように、
地獄はふたつの場所に区切られている。
まず、ひとつは‥‥。
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燃える地獄!
そしてもうひとつは当然‥‥。
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燃えない地獄!
さらには、別の場所に‥‥。
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「地獄の1丁目フリーマーケット」!
こちらは、引き取り手がいたら持って帰ってね、
希望者多数の場合はジャンケンしようね、
というものを置いておくスペースである。
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各自に、分担表がくばられる。
ちなみに今回の地獄は
本格的な引っ越しを数日後に控え、個人の荷物よりも、
ロッカーや倉庫を整理することがおもな目的である。
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今回のビッグプロジェクト推進にあたり、
「ほぼ日」科学技術班が開発した
最新鋭の防塵マスクと耐ショックグローブが支給された。
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さあ、諸君、はじめよう。
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ムーヴ! ムーヴ!
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ムーヴ! ムーヴ!
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ブイヨン隊員も、乗組員をフォローする。
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ムーヴ! ムーヴ!
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ムーヴ! ムーヴ!
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おっと、早くも地獄にものが集まりつつある。
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荷物が散乱した和室。すごいことになっている。
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フリーマーケットスペースは早くも飽和状態だ。
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ややや、菅野の背にあるのは、
みうらじゅん氏デザインのお面!
それは去年、地獄に葬ったはずでは!
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ああ、こちらのお面も生き抜いていたか!
もう、十分にたのしんだだろう。
さ、地獄へ導こう。
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懐かしいものもいろいろ出てくる。
こちらは、「智慧の実を食べよう。300歳で300分」の
会場で配ったプログラム。
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オールナイトイベント、
「映画『ダークブルー』を夜中に観る会。」
当日、映画館に飾られていたパネル。
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こちらは、なぜか「ほぼ日」のオフィスが
3日間だけ六本木ヒルズに移転するという
謎のイベントをやったときのパネル。
いまだに、乗組員と関係者のあいだで
「あれは、なんだったんだろう?」
といわれている、摩訶不思議なイベントである。
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そしてこれは『オトナ語の謎。』の出版を
お知らせするグッズプレス第1号。
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商品開発にあたってのサンプルなども出てくる。
こちらは「ユラールのロンT」の裏地。
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おっと、これはユニークアイテム!
ほぼ日手帳のカバーを模索していたときの
サンプルのひとつ。
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きちんと「ONLY IS NOT LONELY」の
文字も刻まれているが‥‥
やはりいまひとつの仕上がり。
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おお、これも貴重といえば貴重だ。
いちばん最初の「ほぼ日ハラマキ」を
つくったときのラフデザイン。
というか、あまりにもラフすぎる。
そしてこの、ふざけたデザインの数々‥‥。
ちょっとアップにしてみると‥‥。
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ふざけている! カニ? ひまわり?
そして「ジョーズ」に丸がついているということは
これが有力だったということなのか?
現在のハラマキの普及具合を考えると
その温度差にクラクラする思いである。
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これは、世に出なかった企画。
「ほぼ日ピーコート」
うーん‥‥微妙か‥‥。
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鼠穴時代のステッカーと、
初代ほぼ日手帳のポストカード。
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おっと、そうこうするあいだに、
地獄がまさに地獄と化してきた。
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誰のものとも知れぬビニール傘たち。
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おびただしい量のケーブル。
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ペンの墓場。
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フリーマーケットスペースにも
大物が現れはじめた。
こちらはアイスクリーム製造器。
こんなものがあったのかと驚く一同。
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たこ焼き器。これは希望者が多そうだ。
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けっこう活躍した焼きイモ用の土鍋。
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ザ・やかん、というほかない、
それはそれは見事なやかん。
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デロンギヒーターは、今回の目玉。
のちほど大ジャンケン大会を開くことが決定。
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これは、いったいなんだ?
「髪を切るやつ」? 「そうじ機につけて」?
箱を開けてみると‥‥。
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‥‥‥‥。
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購入当初は、全員がおもしろがって
押しまくっていた「へぇボタン」。
しかし、いまやもう、誰も押す者がいない‥‥。
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「しお」?
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ほんとに塩だ!
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播口が持っているのはマジックハンド。
いったい誰がなんのために?
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破棄するマシンからメモリを抜く佐藤。
地獄のなかよりメモリをアライブとはこのことである。
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拡大鏡を見つけた播口。
それにしても、さっきから
この男はなにをやっているのだ?
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そうだそうだ、木村の席はどうなって‥‥
あああ、やはりもうなにもない!
というか、ふだんから木村の席はこの状態である。
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さまざまな本が一カ所に、いったん集められる。
本が集まるというと‥‥。
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はじまるのが立ち読みである。
これもまた恒例の風景。
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しかしながら、立ち読みしすぎである。
ここは駅ビル内本屋の新刊コーナーか。
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それにしてもほんとに立ち読みしすぎではないか。
地獄のなかにも立ち読み天国とはこのことである。
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地獄から、自分の趣味のものをアライブさせる菅野。
本人には直接言いづらいが、率直にいって、
バーゲン会場のオカンのようである。
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結果、アライブされたのこちらのグッズ。
その必要もないが、あえて総評を述べるとすると、
パンダ重視のセレクト、といったところだろうか。
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「ああっ、これは危険だっ!」
突如、西本の叫び声が響く。
彼が手に持っているのは‥‥。
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未使用の花火詰め合わせ。これはたいへん危険だ。
あやうく大惨事になるところだった。
魚籃坂の平和は西本によって守られたのであった。
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こちらには魔女の帽子とカボチャのおもちゃが。
貼り紙には誇らしく「ALIVE」の文字が。
魔女からのメッセージも記されている。
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破棄する伝票類などは、シュレッダー用の箱に集められ、
あとでまとめてシュレッダーにかけられることになる。
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しかし、シュレッダー用の箱に
薪が入っているのは、いったいどういうことだろうか。
薪をシュレッダーで粉砕するつもりだろうか。
それはムリではないだろうか。
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そして、気づけば地獄がえらいことになっている。
地獄、いままさに最高潮!
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そのとき、誰かが叫んだ。
「お宝だ! お宝が出たぞ!」
おお、これはたしかに宝箱っぽい箱!
なかにはいったいなにが?
宝石か? 金貨か? それとも?
一同がドキドキしながら箱を開けると‥‥。
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‥‥‥‥。
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そんななか、またしても誰かが叫んだ。
「糸井さんが昔使っていたという
アタッシェケースが出てきたぞ!」
ほこりをかぶった古いカバン‥‥。
これはなにかありそうである。
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開けてみると、なかには一冊のファイルが。
「糸井重里資料」? なにやら貴重そう。
おそるおそる開いてみると‥‥。
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やあ、これはこれは、ずいぶんとお若い!
なかでもすごい写真がこれである。
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見よ! これが時代の寵児だ!
掛け軸のある和室に電話を持ち込んで、
サングラスをかけた男がマイクに向かってしゃべる!
80年代とは、かように混迷を極める時代だったのである。
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ファイルにはそのほかにも、
重要そうな書類がいくつも入っていた。
んんん? これは、どこかで見た‥‥ああっ!!!
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これは「どせいさんフォント」だ!
「どせいさんフォント」の原本!
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そして、こっちの紙は‥‥?
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おおお、これは『春咲小紅』の手書き歌詞!
しかも、完成版とは、若干違う!
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そして「TYPE C」と記されたこちらのコピーは
矢野顕子さんの手書きではないかと思われる。
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そうこうしているうちに、ゴミの運び出しがはじまった!
運搬手段は、「ほぼ日」伝統のバケツリレー方式である。
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渡して、渡して、渡して‥‥。
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渡して、渡して、渡して‥‥。
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渡して、渡して、渡して‥‥。
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最後はこの、通称「地獄への階段」を使って
ゴミ捨て場に運び込むのである。
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ムーヴ! ムーヴ!
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地獄も少しずつ片づいてきた!
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すっかりあたりは暗くなってきた!
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外出していた糸井重里、ラストスパートに盛り上がる
事務所の空気にうまく馴染めず、しばし呆然の図。
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おお、片づいている。地獄が片づいている。
やればできるものだと感心しきりである。
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そして、フリーマーケットスペースでは
ジャンケン大会がはじまったようだ。
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デロンギヒーターをかけた死闘!
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勝ったのは西田であった。おめでとう!
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そして、フリーマーケットスペースも
すっきりとキレイになり‥‥。
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地獄も、これ、このとおり。
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必要なものはダンボールにまとめられ、
とうとう、引っ越し当日を待つばかりとなったのであった。
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魚籃坂での日々も残りあと数日‥‥。
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最後は再び、時代の寵児の姿を見ながら、お別れです。
(つづく‥‥)
2005-11-27-SUN
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