ほぼ日乗組員、向江夢(むかえ ゆう)は、
「喫茶店のマッチ」を集めています。
その数、現在300個以上。
世の中にはもっとすごいマッチ収集家がいるのでしょうが、
彼女(現在22歳)はこれを4年で集めています。
コレクションの3分の2は、
じぶんが実際に行った喫茶店でもらったものだとか。
しかも、「行ったお店にマッチが無い」
というケースがほとんどなのだそうです。
なのに、約200個を手に入れている。
いったい彼女は何軒の喫茶店の扉をくぐったのか‥‥。
そこまで本気な向江夢が、
好奇心ひとつをひっさげて、
「喫茶店マッチ」にまつわるあれこれをめぐります。
最終的には、オリジナルマッチをつくっちゃうんですよ?
こんにちは、マッチ工場の見学をするため
姫路までやってきた、
ほぼ日のです。
前日には姫路の喫茶店めぐりを満喫しましたが、
きょうはいよいよマッチ工場へ向かいます。
工場の見学を快く受けてくださった
「日東社」さんは、ブックマッチを日本で
最後まで作り続けた会社なんです。
かなり、わくわくしています!
- 日東社さんへ向かうため山陽電鉄に乗ります。
- 電車に揺られること約10分。
- 到着したのは「八家(やか)」という名前の駅です。
- スマホの地図アプリによると、
「日東社」さんはここから7分ほど歩くようです。
- なんだか、道がずっとすてきで‥‥。
味わいのある家屋がいくつもあって。
ついつい立ち止まってきょろきょろしてしまいます。
- いつの間にか、時間が‥‥。
町並みに見とれている場合ではありません。
急いで向かわないと! - 何度か道を間違えながら、けっこう慌てて、
地図の案内で進んでいくと‥‥。
- 見えてきました、「日東社」さんの建物です。
- ぶじ、約束の時間すこし前に到着できました。
- ビルの入口まで進んだら‥‥。
え‥‥これって、もしかして‥‥。
- やっぱりそうです、わたしたちのために、
ご用意してくださっていたものです。
ウェルカムボード!
- 感激です! 恐縮です!
「記事が楽しみすぎます」って、緊張です!! - ちょっとかしこまりながら、ビルに入り、
内線電話をかけると、
すぐに株式会社日東社 専務取締役、
大西潤(じゅん)さんがご登場。
会議室に通してくださいました。
- むかえ
- ウェルカムボード、びっくりしました!
- 大西さん
- ほぼ日さんが来てくださるって、
みんなたのしみにしてたんです(笑)。
- むかえ
- ありがとうございます、感激です。
マッチ棒でNITTOSHAって書いてあって‥‥。
最高でした!
- 大西さん
- よろこんでいただけてなによりです(笑)。
- むかえ
- あの、大西さん‥‥。
- 大西
- なんでしょう。
- むかえ
- このお部屋に来る途中に、
マッチがたくさん並んでいる場所がありました。
- 大西さん
- はい。
過去に弊社が手掛けたマッチを並べています。
- むかえ
- 先に、あちらを拝見しても‥‥
- 大西さん
- あ、もちろんです、行きましょう(向かう)。
- むかえ
- ありがとうございます!(向かう)
- 大西さん
- どうぞ、ご覧ください。
- むかえ
- わあ‥‥!
- 大西さん
- ほんとうにマッチがお好きなんですね(笑)。
- むかえ
- もう、夢のようです‥‥。
こんなにいろいろなマッチを
作ってこられたんですね‥‥。
- 大西さん
- そうですね、
でもここにあるのはごく一部です。
2020年に「マッチの里ミュージアム」という
施設がこの近くにオープンしまして、
そこでは「日東社」の歴史や
もっとたくさんのマッチを展示しています。
- むかえ
- そんな施設まで‥‥。
- むかえ
- これは‥‥『あぶない刑事』?
- 大西さん
- 映画『帰ってきた あぶない刑事』の公開に合わせて
うちとのコラボレーションで
限定販売されたマッチです。
おかげさまでたいへん話題になりました。
- むかえ
- すてきです‥‥。
そして、ああ‥‥ブックマッチが‥‥。
- むかえ
- ブックマッチ‥‥。
日本では「日東社」さんが
最後まで作り続けていたんですよね。
- 大西さん
- そうですね、
残念ながら現在は製造していませんが。
- むかえ
- わたし、とくにブックマッチが好きなんです。
- 大西さん
- そうなんですか、お若いのに珍しい(笑)。
- むかえ
- こちらのマッチは、もしかして、
箱がプラスチック?
- 大西さん
- 1970年の「大阪万博」のマッチですね。
- むかえ
- 50年以上前のマッチ‥‥。
- 大西さん
- ‥‥‥‥。
- むかえ
- ‥‥‥‥。
- 大西さん
- ‥‥あの、そろそろ戻りましょうか(笑)。
- むかえ
- すみません、見とれていました。
- (会議室に戻り、お話をうかがいます)
- むかえ
- あらためまして、よろしくお願いします。
- 大西さん
- よろしくお願いします。
- むかえ
- いま見せていただいたコーナーにも
年代を感じるマッチが展示されていましたが、
「日東社」さんは創業何年で?
- 大西
- 1900年創業なので、124年ですね。
ぼくが引き継ぐと5代目になります。
- むかえ
- 124年も前からマッチを作られているんですね。
すごい歴史です。
ここ姫路は、
マッチの生産量が日本一だとお聞きしました。
- 大西さん
- そうですね。
- むかえ
- マッチ産業が盛んな理由はあるのでしょうか。
- 大西さん
- ひとつは、気候です。
マッチは湿気ちゃうとつかなくなるので、
乾燥している地域に向いているんです。
ここは乾燥地帯だし、台風もそれるんですよ。
- むかえ
- 姫路は、マッチに適した気候。
- 大西さん
- あと、マッチをたくさん作っていた頃は
戦前になるのですが、輸出が多かったので、
大きな港が近いことが大きいです。
- むかえ
- なるほど。
じゃあ、いまも姫路にマッチ工場がたくさん。
- 大西さん
- それが、一時期は全国で
100社以上、1904年に兵庫県には83社も
マッチ工場があったのですが、
いま姫路、いや兵庫では、うちだけなんです。
- むかえ
- 「日東社」さんだけ。
100社から1社に‥‥。
- 大西さん
- マッチを一貫生産してるのは、
うちを含めて日本で2社です。
- むかえ
- え‥‥。全国で2社しかないんですか。
- 大西さん
- はい。
うちと、もう1社は岡山にあります。
- むかえ
- そんなにすくなくなったのは、
やはりマッチが使われなくなったから‥‥。
- 大西さん
- 1973年と2023年で比べたら、
日本のマッチ生産量は
100分の1になっているんですよ。
その要因のひとつは、
使い捨てライターの登場ですね。
- むかえ
- ああ‥‥。
いま、マッチは
どういう使われ方が多いんでしょうか。
- 大西さん
- やはり、お墓でとか、仏壇が多いです。
お寺さんとか。
- むかえ
- なるほど。
- 大西さん
- いまの若い人は、
マッチの擦りかたも謎かもしれないですね。
- むかえ
- そうなのかもしれません‥‥。
- 大西さん
- いま、みなさん100円ショップとかで見ている
桃とか、象、ツバメのマッチ。
- むかえ
- ありますね、広告のマッチではない、
マッチとして売っているマッチ。
- 大西さん
- あれは実は、淡路島でトップの
マッチメーカーが作ってたんですよ。
- むかえ
- そうなんですか。
- 大西さん
- そこもマッチの製造をやめて、
2017年、うちに商標が譲渡されたんです。
- 大西さん
- ほかにも、広告マッチを製造している会社の
マッチ生産をうちがするようになったり。 - マッチ作りに関して弊社は、
最後の砦のようになってるのかもしれません。
- むかえ
- ほんとうにそう思います。
- 大西さん
- ただ、マッチだけではきびしいので、
昔マッチの工場があった土地を活かして、
テニスコートの運営などもしているんです。
- むかえ
- マッチ工場がテニスコートに!
- 大西さん
- ええ、コートをつくるだけじゃなく、
会員制のテニスクラブをまずは始めて、
その後は屋内テニススクールを開校しています。
- むかえ
- 学校を。
- 大西さん
- 全国に35か所以上で
展開するようになりました。
- むかえ
- すごい!
- 大西さん
- あとは名入れライターやのぼりなどの
製造も行っています。
- むかえ
- 多角化を進めながら、
でも、マッチは作り続けていらっしゃる。
- 大西さん
- そうですね、
やはり先代からのものですので。 - ではそろそろ、
マッチ工場へ向かいましょうか。
- むかえ
- はい!
(次回、工場の中に入ります!)
2024-12-18-WED
-
イラストレーター・福田利之さんが、
このコンテンツ「喫茶店マッチが好きだから。」のために
一枚の絵を描きおろしてくださいました。
その絵を印刷した、オリジナルマッチを作成。
渋谷PARCO「ほぼ日曜日」で開催中の
「大福田展」でお渡しします。
会場内の「純喫茶 大福」をご利用ください。
おひとり様に1個、差し上げます。
(ご用意した数が無くなり次第終了)また、TOBICHI東京のワンコーナーでは、
「喫茶店マッチが好きだから。」に登場している
向江夢のマッチコレクションを展示します。
ちいさな展示ですが、
オリジナルマッチのために描かれた、
福田利之さんの原画もご覧いただけます。