YouTubeでも大人気のお掃除職人・きよきよさんに
「ほぼ日の學校」でお掃除の授業をしてもらいました。
きよきよさんによると、
汚れと洗剤の組み合わせさえ覚えておけば、
おうちの汚れはだいたい落とせるそうですよ。
目次は印象的だった、きよきよさんの5つの言葉です。

>お掃除職人きよきよさんプロフィール

お掃除職人きよきよ

10年間のビル清掃、マンション清掃を経て独立。現在は個人でハウスクリーニングを中心に請け負う、職人歴38年のお掃除のプロ。2016年にYouTubeチャンネル「お掃除職人きよきよ」を開設し、チャンネル登録者数は36万人(24年11月現在)。
YouTubeチャンネル「お掃除職人きよきよ」

前へ目次ページへ次へ

第2回「万能洗剤」というのは、ありそうでないんです。

ーー
ここからは、汚れと洗剤の相性について、
教えていただけますか?
きよきよ
はい。
まず、油汚れは「酸性の汚れ」です。
生き物から出る汚れ、とでも言いますか。
野菜の汁や、体のアカも酸性の汚れです。
これを落とすには「アルカリ性の洗剤」がよく効きます。
ーー
今日は市販洗剤をいろいろと用意してみました。
どれもドラッグストアや、会社にあったものです。
アルカリ性洗剤はこの辺りですね。

きよきよ
はい、そうですね。
ーー
私の印象なんですけれど、
キッチン用、お風呂用と書かれている洗剤は
アルカリ性が多い気がします。
きよきよ
それは、
家の中の汚れで一番多いのが油汚れなので、
アルカリ性洗剤で十分だからだと思います。
アルカリ性洗剤かどうかは、
成分表示の「液性」のところを見てみてください。

△キッチンマジックリンの成分表示 △キッチンマジックリンの成分表示

きよきよ
でもこちらの「ガラスマジックリン」は成分表示をみると
「弱アルカリ性」ってなってるんで、ちょっと違いますね。
ーー
弱アルカリ性はちがうんですか?
きよきよ
はい。
弱アルカリ性は「中性をちょっとアルカリ性に寄せた」
というイメージで考えてもらえるといいと思います。
つまり、手垢など軽い油汚れを意識して
作られているはずです。
がっつりついた油汚れは、
アルカリ性の強い「キッチンマジックリン」のようなものが
良いと思います。
ーー
なるほど。
きよきよ
重曹も、アルカリ性の性質を持っています。
環境にも、手にもやさしいですが、
威力はあまりないんです。
ーー
赤ちゃんやペットがいるお家では
使いやすい洗剤ですが、
その分、威力は弱いんですね。
きよきよ
どうしても重曹の威力を上げたいときは、
熱々のお湯で溶かすのがいいですよ。
そうするとアルカリ度がぐーっと上がって
もっと強い洗剤になってきます。
ーー
そうなんですか!
おもしろいですね。
きよきよ
油汚れと真逆なのが水垢汚れです。
水垢汚れは「アルカリ性の汚れ」になってくるので、
これには、酸性洗剤を使います。
ーー
酸性洗剤はこのあたりですね。

きよきよ
「酸」と言っても、いろいろあるので、
他にもたくさんの洗剤があるのですが。
「サンポール」はわたしが知る中では、
市販洗剤の中で一番、酸の濃度が高いです。
水垢をグングン落としますし、
お手洗いの尿石も溶かしてくれる。
(※注:サンポールは強い酸です。お手洗い以外でのご使用はお控えください)
ーー
クエン酸は、食品にも入っているのを見かけますね。
きよきよ
はい。
酸っぱいジュースにもクエン酸が入っているので
「ジュースでトイレがきれいになる」
って言う人がいるんですけれども、あながち嘘ではないですね。
すこしは水垢を落としてくれると思います。
ただクエン酸は、やっぱり弱い酸なので、
サンポールで10分でできる作業も
これを使うと一晩かかる、という違いはあります。
時間かけてもいいので、安全なものを使いたい人とか、
強い洗剤だとトイレの素材を痛めそうで使えないという方は
クエン酸を使うのがいいですね。
ーー
ご家庭の状況によって、
使い分けるのがよさそうですね。
きよきよ
そして、カビ汚れは「中性の汚れ」です。
これには一般的に「次亜塩素酸」が含まれるような、
「塩素系の洗剤」を使います。
ーー
塩素系洗剤はこちらを用意してみました。
ほかにも「カビキラー」なども有名ですね。

きよきよ
ドメストはトロッとしていて、
つけたら留まってくれることが多いので、
濃いカビにおすすめです。
ただ、塩素濃度が高いので、
目に入ったら大変危険です。
目より上には使わないようにしてくださいね。
スプレータイプのものは、
使いやすいのがいいところですね。
刷毛がなくても、シュッとやれば広がりますからね。
あとキッチンハイターは、
パッケージには「キッチン」って名前についてますけど、
トイレのカビ取りにも使えますよ。
ーー
トイレのカビも、キッチンのカビも、
同じ中性だからですね。
きよきよ
はい。大事なのは液の性質と、成分なんです。
成分表示は買うときにぜひ確認してみてください。
塩素系は液性は「アルカリ性」になっていますけど、
成分に「次亜塩素」と書かれていれば塩素系なので、
それを基準にしてみてください。

ーー
ちなみに、さきほどの酸性のサンポールも
塩素系のドメストも、お手洗いの洗剤ですよね。
でも、成分は全然違うんですね。
きよきよ
はい。
ドメストはカビ汚れに特化しているので、
「サボッタリング」とよばれる
トイレの水際に出る黒っぽい汚れを落とします。
サンポールは縁についた水垢や尿石を落とします。
だから、「トイレの洗剤はどっち使ったらいいの?」
という人もいらっしゃいますけど、2つ必要なんです。
きよきよ
普段のお手入れでおすすめなのは、
1週間に1回、どちらかを便器に回しかけるやり方です。
かけておくだけで、汚れを落としてきれいになりますからね。
じつは、一生懸命こする必要はないんです。
でも、塩素系洗剤をクエン酸やサンポールと混ぜると
大変危険です。有毒ガスが発生します。
絶対に一緒にかけたり、混ぜないようにしてください。
ーー
塩素と酸は混ぜない。
しっかり覚えます。
きよきよ
はい。
だから、水垢とカビを一緒に落とす洗剤というのは
そもそも無理な話なんです。
危険ですからね。
じゃあアルカリ性と酸性を混ぜて使えば万能かというと、
それでは中性になってしまうので、
効き目が弱くなってしまいます。
ですから「トイレはこれ1本でOK」っていうのは
なかなかないんですね。
「万能洗剤」というのは、ありそうでないんです。
ーー
まさに化学ですね!
その他の洗剤に、中性洗剤もありますね 。
中性洗剤といえば、食器洗い洗剤ですが。

きよきよ
これには界面活性剤が含まれているので、
汚れをサーッとはがす力があるんです。
家の中のいろんなところで使えますよ。
テーブルの上についたベトベト汚れに、
中性洗剤を少し薄めて
布に含ませて拭くときれいに落ちますし、
こどもの素足やペットの足で
ベタベタしている床にも使えます。
ーー
人や動物の汚れは油汚れなので、
アルカリ性の洗剤のほうが良いのかと思いましたが。
きよきよ
はい、アルカリ性洗剤でも落ちるんですけども、
アルカリ性が強いものを使うと床のワックスまで
はがしてしまう可能性もあるんです。
中性洗剤は軽い油汚れを、
はがして取ってくれるっていうイメージです。
ーー
ここまでをまとめますと
油汚れには、アルカリ性洗剤。
カビ汚れには、塩素系洗剤。
水垢汚れには、酸性洗剤。
軽い汚れには、中性洗剤。
‥‥ですね!
きよきよ
はい。その4パターンを覚えておけば、
ほとんど網羅できます。
ーー
なんだか、どんな汚れも落とせそうな気がしてきました!
きよきよ
洗剤って、買いに行くとたくさん並んでるじゃないですか。
選ぶときに裏を見ると、
「あ、界面活性剤が入っているからいろんなところに使えるな」
「アルカリ性洗剤はちょっと強いから手袋をはめて使用しよう」
とか、そういう知識がちょっとあるだけ、
使い勝手が増えると思います。
ーー
洗剤選びの新基準ですね。

(あしたは道具についてお話をうかがいます)

※この記事で紹介している掃除方法は、きよきよさんが個人で行われているものです。
ご自宅で実践される際は、ご自身の健康を害さない使い方であるか、掃除される場所の素材が傷まないものであるかお確かめください。

2024-12-17-TUE

前へ目次ページへ次へ