「weeksdays」初登場となるブランド、
nooy(ヌーイ)。
若山夏子さんと平山良佳さん、
ふたりの女性によるチームです。
若山さんと平山さんに職業的な分担はなく、
それぞれがデザイナーであり、パタンナー、
生産管理も、広報も、実務も、ぜーんぶやっています。
(ほんとうに、アトリエにはふたりきり!)
年に2回、新作を発表していますが、
「毎回、まるっきり変わる」というような
ハイファッションの提案ではなく、
着心地よく、長く着られ、
それでいてちゃんと「いま」を感じられる服づくりで、
幅広い世代の女性たちから支持を集めています。
顔は出さない、という主義のふたりですが、
お話はいくらでも、ということで、
伊藤まさこさんといっしょにアトリエを訪問しました。
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若山夏子
文化服装学院メンズデザイン卒業。
雑誌『装苑』の連載を経て、
洋服や小物づくりの本を出版。
ニューヨークに留学しパタンナーとして活動。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2019/10/prof_hirayama.jpg)
平山良佳
大学卒業後、エスモード・ジャポンで服づくりを学んだ後、
ニューヨークに渡り、州立ファッション工科大学を卒業。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2019/10/prof_nooy.jpg)
旧知の仲だった若山さんと平山さんだが、
同時期の渡米はまったくの偶然。
再会をきっかけに、
ともに持っていた服づくりへの情熱をひとつにして、
2001年春、スカートの制作からブランドをスタート。
2003年、拠点を東京にうつし、再始動。
2008年よりパリAtmosphereにて展示会を開始。
ファッションを楽しむ全ての女性に向け、
クラシックなラインをベースに
独自の遊び心と時代のスパイスを加え、
自由なスタイルを提案。
上質で心地よい素材使い、繊細な色使い、
メンズのパターンを取り入れたカッティングが特徴。
nooyと並行し、ユニフォームラインである
nooy kitchenを展開し、
カフェ等のユニフォームデザインを手がける。
また、洋服や小物作りの本を出版するなど、
幅広く活動している。
その2クラシックであること。
- 伊藤
- では、いまのように
生地をオリジナルで作るようになったのは、
あとからなんですね。
- 平山
- そうですね。ニューヨークのときの知り合いで、
ネクタイ屋さんをやっていた方が
日本で生地の工場をやっていて。
その方の伝手で、初めてオリジナルの
生地をつくったんです。
- 伊藤
- それってやっぱり、
「こういうのが欲しい」っていうときに、
頭に描いたものがなかったから?
- 若山
- そうですね。
- 伊藤
- 今は、オリジナルの生地は
どれくらいの割合に?
- 平山
- もう半分以上‥‥いや、もっとだね。
- 若山
- 8割ぐらいはオリジナルかも?
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- 伊藤
- おぉ、すごい。そうなんだ!
- 平山
- デザインは同じでも色は変えている、
というものを入れたら、ほとんどすべてが
オリジナルかもしれません。
- 伊藤
- 生地をつくるのって時間がかかるでしょうね。
- 平山
- すごくかかります。
展示会が終わったら、次のシーズンに向けて
生地を決めるのが最初の仕事ですね。
それでも間に合わないときは
1年、繰り越すこともあります。
- 若山
- 最初のサンプルは予想もしていなかった、
ほんとうに倒れそうなものが来たり(笑)。
- 伊藤
- どっちが先ですか。服のイメージと、
生地のイメージ。
- 平山
- デザインが先のものもあるし、
この生地を使いたいねというところから
デザイン化するものもあります。
- 若山
- 「この生地、絶対使いたい!」って、
「何作ろう?」ってなるときもあります。
逆にこういうのを作りたい、
あ、ちょうどこんな感じの生地があった、
ということもありますね。
もともとつくりたいなぁってぼんやり思っていたのが、
生地を見て、「あ! これだ!」って形になることも。
もちろんそのために生地を探すこともありますし、
たとえばこの立体感のある鳥の羽根柄の服は、
もともと、生地屋さんに、同じ手法で、
まったく違う柄のものがあったのがヒントでした。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2019/10/IMG_8359-1400x933.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2019/10/IMG_8364-1400x933.jpg)
- 平山
- こういう方式でこういう仕組みでできてます、
っていうことを説明してもらって、
じゃあこんな柄もできますよね? って、
絵を描いて、糸の色を指定して
つくってもらいました。
- 伊藤
- テキスタイルデザインは勉強したんですか。
- 若山
- 学校の授業‥‥、それだけです。
仕事しながら、日々勉強な感じです。
「教えてくださーい!」ってしつこく電話して(笑)。
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- 伊藤
- nooyの服って、
一見かわいらしいんだけど、
おとなも似合いますよね。
- 若山
- お客様、年配の方も多いですよ。
体形も幅広くって、
すごく痩せた方も、
ふくよかな方もいらっしゃいます。
身長も、150㎝ぐらいの方もいれば、
170㎝ぐらいの方も。
- 伊藤
- それは、そう工夫して
パターンを引いているんですか。
- 平山
- 工夫はあると思います。
たとえば肩。
このコートも、肩が落ちている形なんですけど、
痩せた方でも肩幅が大きく見えないし、
肩が張っている方もしっかり入るように。
- 伊藤
- へぇ!
そして、ちょっとクラシックなイメージがある。
- 若山
- はい、好きです! すごく。
- 伊藤
- この前、美智子さまスタイルが素敵だって、
盛り上がったんですよね。
クラシックなのに、古くならない。
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- 若山
- そう、だから好きなんだと思うんです。
- 伊藤
- ほんとにかわいいですよね。
じゃあ、クラシックなものは、
洋服づくりのヒントのひとつ。
- 若山
- はい、それが基本かもしれないです。
- 伊藤
- 古着を着ていた時代とかも?
- 若山
- 中学生のときとかに、一通り。
祖父の三つ揃えを着たりとか!(笑)
- 伊藤
- 分かる(笑)!
ほかにはどういう要素があるんでしょう?
- 若山
- ユニフォームですね。
昔のユニフォーム的なもの。
昔のパン屋さんとか、薬屋さんとか、
ヨーロッパっぽいもの。
- 伊藤
- そういえばnooyでは、
パン屋さんのユニフォームを作っていますよね。
- 若山
- はい。パン屋さんだと、丸の内の新丸ビルの
ポワンエリーニュ(POINT ET LIGNE)などですね。
- 伊藤
- それは、独立してわりと間もないとき?
- 平山
- はい、わりとすぐの頃でした。
叔母の知り合いが、
あたらしいお店のプロデュースをするのに、
ふつうの白衣ではないものがほしいと。
それで、打ち合わせして、つくりました。
- 若山
- そこから意外といいエプロンがないぞ、
っていう話になって、
nooy KITCHENという
別ラインが生まれたんです。
「家事しなきゃ!」じゃなくて、
着て「これなら楽しく家事ができる」
っていうものを作りたいねって。
しかも、外にそのまま着て出かけられるような。
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- 伊藤
- キッチンのための服って、
作業しやすいことが前提だから、
いろんな工夫がありそうですね。
- 若山
- はい。まず、素材ですね。
バサバサ洗っても、
どんどんいい味になっていくように。
お洗濯も簡単で。
これは1枚の布でできているんですよ。
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- 伊藤
- 畳むのも楽そう。
- 若山
- それから、アンティークも好きなんです。
今回のこのコートの裏の花柄も、
アンティークのお皿の絵付けが
ヒントだったんですよ。
- 伊藤
- そうなんだ!
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- 伊藤
- なるほど、
これをパターンに起こしたんですね。
- 若山
- そうです。
この裏地に使った模様は、
もともと違う生地で洋服をつくったことがあって。
もとは1色で、ペタッとした感じだったんですけど、
これは同系色の濃淡で陰影をつけて、
ぺったんこな印象にならないようにしています。
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- 伊藤
- かわいい!
色もいいし。それはいつのですか?
- 若山
- 2017年の春夏です。
- 平山
- スカートとか、シャツもありました。
- 伊藤
- それを今回の裏地に応用なさったんですね。
着物で、八掛(はっかけ)が
チラッと見えるおしゃれみたいな感じ。
そういうの、すごく嬉しいんです。
コートをちょっと手に持ったりするときに、
ちらっと見えるとすごくいいですよ。
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- 若山
- 色っぽさもありますよね。
- 伊藤
- nooyの服は、おとなをかわいくするし、
年配のかたを元気にするし、
若い人をすてきにする。
私、娘に着てほしくて。
最近、興味を持ってくれるようになったんです。
- 若山
- ありがとうございます。
- 伊藤
- 先日、一緒に服を整理していたら、
「すぐ着なくなる安い服」がたくさんあって。
たしかにかわいいなって思うんだけれど、
1回洗濯すると、かたちが崩れてしまったりするんですね。
いっぽう、素材や仕立てのよい服は、長持ちするし、
娘も私のそういう服を借りて出かけたら、
褒められたことがあったようで、
「ほらっ! いいでしょ?」って(笑)。
- 若山
- そういう道を通りますよね。
最初は自分の好きな服をちょっと安く買って、
それがすぐだめになっちゃうことを知って、
「1回勉強して」って言ったら、あれですけど‥‥。
- 伊藤
- 気に入って買ったはずが、
すぐ着なくなるんですよね。
買うのが楽しい、いちど着てみたい、
そういう気持ちもわかるし、
ファストファッションを
全部否定するわけではないけれど。
娘は、小学校高学年から、
スニーカーで、リュックしょって、
細いデニムを穿いて、っていうファッションでしたが、
最近デニムでも選ぶ形がちょっと変わってきた。
それにnooyのジャケットを合わせたりとかして。
それを見て、nooyって、
こういうハタチの子から、おばあちゃんまで、
ほんとうに幅広いなって思ったんです。
- 若山
- 有難いです。
- 平山
- 伊藤さんのように、
親子で着てくださる方もいますよ。
- 若山
- 以前から来てくださるお客様に、
初めて会ったときはお嬢さんが小学校低学年だったのが、
今年大学生になって、入学式に、
お母さんのnooyのコートを着ていったんですって。
「なめられちゃいけない」って。
- 伊藤
- なめられるって(笑)!
- 若山
- 「お母さんのコート貸して」って、
私たちが昔つくったコートを着たんだそうです。
- 平山
- Aラインのコートがあったんです。
- 若山
- 赤いチェックの。それを着て行ったら、
ファッション部っていうのがあったらしくて、
「ちょっとそこの赤いあなた!」って、
入部しないかって勧誘されて
追いかけられたそうです(笑)。
- 伊藤
- えー、かわいい!
- 若山
- 「違います! 母のです! 私、違います!」
って逃げて帰ってきたんだそうです(笑)。
- 平山
- 「私、そんなんじゃないですから! 違いますから!」
って。
- 伊藤
- ファッション部、気になる!
何するんだろう。
- 平山
- 私も気になって調べたけれど、
分からなかったんですよ。
- 伊藤
- でもそれ、嬉しいお話ですね。
- 若山
- すっごい嬉しかったです!
- 伊藤
- ファストファッションを着る時期があってもいいけど、
やっぱり私たち、そういう年代じゃなくて、
ずっと着れるものが欲しいから、
nooyの服がグッと来るんでしょうね。