ストーブの上はいつも。
冬支度についての3人のエッセイ。
きょうは、料理家のなかしましほさんです。
なかしま・しほ
料理家。
おやつの店「foodmood(フードムード)」店主。
レコード会社、出版社勤務を経て、
レストランでの経験を重ねたのち、料理家に。
書籍、雑誌でのレシピ提案、
広告や映画でのフードコーディネートなど
幅広く活動している。
自身の工房でありお店でもある「foodmood」は、
東京都国立市にある。
販売しているお菓子は、すべて手作り。
イートインスペースもあるので、
好きなお菓子を飲みものといっしょに楽しむことも。
2020年1月公開の映画『ロマンスドール』で
フードコーディネートを担当。
実姉は、ニットデザイナーの三國万里子。
「ほぼ日」ではたくさんのコンテンツに登場。
(こちらから検索ください。)
お菓子を作る仕事をするようになって、
冬が好きになった。
空気が乾燥して焼菓子がいちばんおいしく焼ける季節。
クッキーはカリっと香ばしく、
パウンドはゆっくり熟成していく。
一年でいちばんたくさんお菓子を作る時期なので、
パウンドケーキ用のドライフルーツを
たっぷりお酒に漬け込んだり、
長野の果樹園から届いた真っ赤なりんごは
砂糖漬けにしてシロップに。
栗はえいっと覚悟を決めて一日中鬼皮を剥く。
お菓子の冬支度はなかなかハードスケジュールだ。
一方自分のための冬支度はかなりのんびりとしたもので、
寝具や衣類を少しずつ足していくだけでほぼ終了。
唯一他の季節と違うのは、
この時期だけストーブが登場すること。
我が家は山の中にある古い木造家屋なので、
冬はとても冷える。
なんとなくタイミングをはかりながら
じわじわ我慢していたのを、
そろそろじゃないと家族と話をして、
今年もストーブを物置から出した。
大小合わせて3台のガスストーブ。
あたたかいのはもちろんだけど、
炎の色が見えるとなんだか心まで落ち着いてくる。
常に家族はストーブのまわりに集まり、
犬もぺったりと前に張り付いているので、
うっかり毛が焦げないようときどきチェックする。
そしてストーブは調理道具としても活躍する。
朝は淹れたコーヒーを保温して、
そばでホイルにつつんだパンをあたためる。
おやつの時間にはさつまいもを焼き、銀杏を炒る。
こねたパン生地をちょっと離しておいて、発酵を促したり、
ストーブの上はいつも忙しい。
冬の暮らしに欠かせない存在となっている。
こうしてあっという間に終わってしまう我が家の冬支度。
ちなみに自分のお店では、オーブンがストーブがわり。
早朝お店に来て、寒いねーとまずはオーブンを余熱する。
材料の計量を終えた頃にはじんわりと部屋があたたまり、
きょうもたくさんのお菓子作りがスタートする。