ふつうじゃない、 「ふつうの器」。
いろんな器を使ってきました。
いろんな器を買ってきました。
失敗もたくさんしてきました。
そんな私が今欲しいのは、
なんのてらいもない「ふつうの器」です。
でも「ふつう」ってじつは一番、むずかしい。
持った時の質感、
料理を盛った時、どう見えるか。
厚み、リムの大きさ、深さ、重み、
重ねた時の、ちょっとした表情
(人間でいえば仕草みたいなもの)。
シンプルという言葉だけでは済ませられない何かを、
「ふつうの器」にもとめたい。
できれば作家性の強いものではなくて、
毎日使っても飽きがこず、
あつかいやすく、
買い足すことができ、
比較的、買いやすい値段で。
‥‥そう考えた時、
形にしてくれる人は陶芸家の内田鋼一さん以外にいない、
と思いました。
最初は、まるで子どもが描いたような私のメモ書きから
始まった器作り。
途中途中も、大まかな輪郭しか伝えなかったのに、
よくぞ形にしてくれましたとうなるばかりのできあがり。
この器には、
内田さんの土に対する知識と経験が
たくさん詰まっている。
にもかかわらず、たたずまいは「ふつう」。
これってかなりすごいことなんじゃないかなぁと
思っています。
毎日使うようになり、
料理を盛るたび、いいなと思う。
食器棚に重なっている姿を見るたび、
美しいなと思う。
カチャカチャとカトラリーが器に触れる音さえも
いいなと思う。
ふつうじゃない、「ふつうの器」。
たくさんの方の手に渡り、
そのよさを実感していただけるといいなと
思っています。
伊藤まさこ
2018-08-03-FRI