おとなの水着事情。
オトナの女性は水着ってどうしているの?
逡巡、後悔、諦念、‥‥それとも、勇気?
3人のかたに、エッセイを寄せていただきました。
すずき・ひろこ
スタイリスト、ライター、コーディネーター、
ファッションコンサルタント。
パリ在住29年。
スタイリストとして、雑誌や広告、
音楽関係などで経験を積んだ後、渡仏。
現在は、女性誌を中心に
パリをはじめ、ヨーロッパ各国で取材・執筆を行い、
ファッション撮影のキャスティングや
オーガナイズを手がける。
日々、パリの街を歩きながら、
人、モノ、コトなど
さまざまな古き良きものや、
新しい発見をすることが趣味。
著書に『フレンチ・シャビーのインテリア』
『大人スウィートなフレンチ・インテリア』
『パリのナチュラルモダン・スタイル』
『シャンペトル・シャビーの家』(グラフィック社)
などがある。
■Instagram
心地よい海風に吹かれて読書三昧。
サンセットを眺めながら
冷えたシャンパン片手にアペリティフ。
あ~、これぞおとなのバカンス。
若いころとはひと味違う、
ちょっと贅沢なリゾートの醍醐味ですよね。
想像するだけで身も心も大満足でとろけそうなのに、
なぜか気持ちは後ろ向き。
え、なぜって?
理由はかんたん。
素敵なビーチにいる自分の姿が見えてこないから。
どんな水着を着たらいいのか浮かばないのです。
パリに来た当初は、
どんな体型でも堂々とビーチを闊歩する
フランス人の大胆さに勇気づけられ、
背中を押されて少し気分が楽になったものです。
でも、ちょっと待って!
別の声がささやきます。
彼女たちみたいに開放的になって大丈夫?
人からどう見えるのかな。
そんな日本人的思考が頭をよぎり、
年齢を重ねるにつれ、
水着選びがますます難しくなりました。
ナチュラルさが魅力のパリの女性たち。
秘訣を聞くとかならず返ってくるのが、
「なにもしてないの。だって自然体が一番だもの」
という答え。
いいえ、そんな魔法は存在しないのだと、
30年近くパリに暮らして、最近気がつきました。
朝起きてバタバタと鏡の前で服を選び、
無造作風の髪型を懸命にアレンジする。
高カロリーディナーは週末だけにして、
ウィークデーはグルテンフリーとノンアルコールで
自分を律する‥‥。
「努力なんて無関係よ」
と涼しい顔で、ノンシャランを装ってはいるけれど、
実は見えないところでバタバタしている、
これこそが、
パリジェンヌの本質だということに。
彼女たちは頑張る姿を表に出さず、
それぞれの背景でいかに素敵に映るかを考えます。
石畳の小道を歩く時、カフェのテラスに座る時、
バカンス先で無防備に昼寝をする時でさえ、
シーンにマッチする最高の自分を演出するのです。
特に年齢を重ねたマダムが魅惑的なのは、
チャームの引きだしをたくさん持っているから。
グラスの持ち方、
本を読んでいる時にふと浮かべる知的な表情。
パリの女性たちが女優のように自信に満ちているのは、
いかにさらりと素敵な振る舞いをするか、
日々の鍛錬を重ねているからです。
こうして、わたしもまた気づきます。
年齢とともに背筋をピンと伸ばして潔く生きること、
そして最高の自分になりきる
イメージトレーニングをすること。
そうすることで
水着を着ても気負いなく過ごせるということに。
じゃあ、いったいどんな水着を着ればいいの?
それは自分にとってコンフォートであること。
誰のためでなく、あなたにとって心地が良いと思えるモノ。
だって、現実は自分が思うほどに、
周りは誰も気にしていないのだから。
そしてパリマダムをお手本にして、
ビーチやプールサイドなどTPOにしっくり馴染む、
ちょっと特別な自分をイメージします。
若い子みたいな露出の多いデザインはNGだけれど、
適度に肌を出したほうがリゾートのムードにはエレガント。
日焼け予防はしっかりと!
でもあまり神経質にならず、
時にはラテンの人のようなおおらかさで
過ごすのもいいでしょう。
綺麗に塗られたペディキュアや、
肌触りのいいリネンのストール、
読みかけの本とサングラスを入れたカゴバッグ。
そんなお気に入りの小物も、
久しぶりの水着姿にほんの少し自信を添えてくれるはず。
重要なのはなにを着るかではなく、
どう自信を持って着こなすか。
さあ、次のバカンスは、
気分をアップしてくれる水着を持って、
わがままで最高の夏を楽しんでください!