「weeksdays」初登場となる
SEVEN BY SEVEN(セブン バイ セブン)。
自由であること、強くあること、
ラフであること、そして美しくあること──、
既存の流派に属さない、
独自のものづくりをつづける若いブランドです。
そのSEVEN BY SEVENを立ち上げた
デザイナー・川上淳也さんのことを知りたくて、
伊藤まさこさんがインタビューしました。
場所は、川上さんの自宅。
めったに人を呼ばないというその場所は、
川上さんが青春を過ごしたサンフランシスコの空気と、
「だいじにしているもの」であふれていました。

川上淳也さんのプロフィール

川上淳也 かわかみ・じゅんや

1978年新潟生まれ。
SEVEN BY SEVENデザイナー。
18歳の時に渡米、サンフランシスコで暮らす。
そこで触れたアメリカの古着にのめりこむ。
帰国後、古着のリメイクをスタートに、アパレルの道へ。
2014年ショップ「7×7」、
ブランド「SEVEN BY SEVEN」を立ち上げる。

その2
デニムの定番をつくりたい。

伊藤
サンフランシスコ時代は、
古着をたくさん見て、
物もたくさん買ったということですが、
そういう審美眼というのかな、
誰か師匠になるような人がいたんですか。
川上
教えてくれる人は、いなかったです。
数を見ることによって勉強してたので、独学ですね。
ただ、そこにいる人達も、すごかった。
強烈なやつばっかりで。
彼らを通じて、目を養っていった感じですね。
思えば、師匠がいなかったのが良かったです。
そうじゃなければデータ中心というか、
座学で勉強して、
デニムにしたって、このメーカーが、この年代がって、
そういう道に行ったんだと思うんです。
僕はデータじゃなく、浴びるように、
毎日何百着も見ていた中で理解していったから。
数を見るとわかることってあるんですよ。
このディテールがいいな、と思うと、
そこに共通するタグがついていたりする。
すると、そのメーカーのものはすごいんだな、
ってわかるようになるわけです。
伊藤
しかも師匠がいたとしたら、
その人のテイストに
染まったかもしれないですしね。
川上
そうですよね。
僕は、現地の人が着てるの格好いい! とか、
そういう感覚でしたから。
伊藤
やっぱり数を見るって大事ですね。
それにしても、何とかなるものですね、
18歳で、何もない状態で行って。
川上
ハイ、何とかなりますね。
それで、22歳くらいのとき
いったん日本に帰って来ました。
伊藤
そのままアメリカにいようって選択は?
川上
いてもいいかな、と思ったんですけど、
アメリカにいたい、という気持ちよりも、
やりたいことの方が明確になってきたんです。
それで、活躍の場を拡げたいと思って、
帰国したんです。
伊藤
それは、服をつくりたいということ?
川上
そうですね。服に関わる仕事がしたいって。
ちょうど、日本の方と知り合ったんです。
その方のアシスタントになって、
見込まれて、物作りを始めました。
伊藤
どんな物を?
川上
服のリメイクです。
その時からですね、好きだったデニムに、
作り手として触れることが増えたのは。
そのあとも、お金を貯めてはサンフランシスコに行き、
という生活をしていたんですが、
いつのまにか行かない時期が続いて、
そんなとき「店をやらないか」と誘われて。
伊藤
セレクトショップですか。
川上
仕入れた古着をベースに、
リメイクだったり、
アメリカの現地のあたらしい物を仕入れたり、
そういうミックスの店でした。
でも仕入れには限界があるので、
ゼロから服をつくるようになって。
それが「セブン バイ セブン」のスタートです。
お店の表記は数字の「7×7」、
ブランド名は英語の「SEVEN BY SEVEN」。
2015年のことでした。
伊藤
川上さんから「デザイナー」然とした空気というか、
そういうものをあまり感じないのは、
そういう来歴からくることなのかもしれませんね。
お話をうかがっていると、
デザイナー以前に、バイヤーであり、
プロデューサーであり、ディレクターでもあり。
それがひとつになったのが
「SEVEN BY SEVEN」という
ブランドなのかもしれない。
川上
自分でもそんな感じです。
最初から買い付けと空間作りをしていましたから。
伊藤
「SEVEN BY SEVEN」での服作りは、
今、どんなふうになさっているんですか。
川上
技術面で「こんなことできないかな?」
っていうところから発想していることが
多いかもしれないです。
この秋冬は、ヴィンテージの生地に特殊加工をして、
やわらかくした素材を使ったりもしました。
いまはもう失われかけている
古着ならではの技術や素材もあって、
そういうものを現代によみがえらせたくて。
それは、なかなかたいへんなことなんですけれど、
次も、ちょっと面白いことをするので、
ぜひ楽しみにしていてください。
伊藤
ぜひ! でも、ファッションデザイナーの仕事、
年2回、新作のコレクションを発表するって、
すごいことだと思うんです。
しかも男子ってすごくベーシックなものが多いでしょう。
年に1回ぐらいでいいんじゃないかしら(笑)。
川上
そうなるとラクなんですけど! 
でも自分みたいなタイプだと、
年に1回じゃ、遊びほうけそうです。
まだ時間あるな! なんて(笑)。
結局〆切前にヤバイって言ってるかも。
伊藤
(笑)今回、「weeksdays」が
SEVEN BY SEVENと一緒に服を作るなら、
川上さんが一番好きなものがいいと思い、
デニムの上下をお願いしました。
私たちもずっとほしかった、
デニムのパンツと、ジャケット。
ジーパンとジージャンですね。
紹介してくださったかたからも、
「こいつ、デニム、すごいんだよ」って。
川上
ぼくも、デニムのあたらしい定番をつくりたいなと
思っていたところだったんです。
ビンテージのデニムのよさは
経験的によくわかっていますが、
それを再現するレプリカではなく、
今の時代とみんなのスタイルに
ちゃんと受け入れられるものをと考えていて。
伊藤
ヴィンテージのデニムへの尊敬、
川上さんは、とても強いでしょうね。
きっとリーバイスですよね。
川上
はい。サンフランシスコが
リーバイスのお膝元でしたからね。
僕が住んでいたすぐ裏に工場がありましたし。
今は小学校になっちゃってますけど。
伊藤
でも、ヴィンテージもとても素敵だけれど、
そのままじゃ、体型が違うから、
うまくフィットしない部分もありますよね。
川上
そういうところをすごく考えました。
サイズも、今の時代あまりやらないと思うんですが、
細かく、1インチ刻みで作っています。
わざと大きなサイズを穿いても可愛いじゃないですか。
それを、綺麗だけじゃないストレートなかたちで。
伊藤
良かった! 
川上さんのまわりの、
社内の女性たちからも、すごく好評だと聞いて、
すごくうれしいです。
いいシルエットですよね。
ディテールも、細かいことまで
ずいぶん相談させていただきました。
川上
伊藤さんといっしょにつくるなかで、
革のパッチはどうしようとか、
ボタンはどうしようとか、
いろいろ相談を重ねてきましたね。
伊藤
そもそもSEVEN BY SEVENは
ブランドのパッチが無地の革ですよね。
それが潔いなと思っていたんです。
だからボタンをどうしますかと言われたとき、
できるだけシンプルにって。
そもそも、素材がいいし。
川上
素材、厚めに感じるんですけど、
穿くと、柔らかいんです。
伊藤
これってワンウォッシュしてあるんですよね。
川上
ワンウォッシュしてます。
いい時代の古着のデニム素材を再現したくて。
色も、この青さがすごく好きなので、
それが出るように作ったオリジナルの生地です。
穿いていくうちに、さらに綺麗な色になっていきます。
日本で作ると、インディゴがグリーンがかることが
多かったりするんですが、
これは青の方にいくデニムです。
伊藤
洗濯は、どうしたらいいんですか。
川上
裏返しにしてガンガン洗ってもらえれば。
‥‥裏返さなくても、別にいいですけど。
アメリカの人たちは、あんまり気にしてなかったです。
でもちょっと細かいことを言うと、
蛍光剤が入っていない洗剤がいいかな。
伊藤
そうします。
ふと思い出しましたが、
うちの父もアメリカが好きでした。
原宿の代々木公園が、ワシントンハイツ、
米軍の兵舎や宿舎があった軍用地だった時代、
そこで働いていたんですって。
川上
うわあ、すごい。面白そう(笑)!
伊藤
当時の父の写真を見ると、
デニムを穿いてるんですよ。
父が今生きてたら87ですから、
60年以上前のことです。
川上
うわ、ヤバイ、すごい! 
それ絶対リーバイスですよ。
伊藤
(笑)こんど写真をお見せしますね。
父はディズニーの『バンビ』を見た時、
1942年の作品だと知って、
こんなの作る国には敵わない、と思ったそうです。
川上
うわあ、すごい。
伊藤
父も、デニムには、ほんと、
グッときたみたいです。
どうして男の人ってアメリカが好きなのかな。
グッとくるポイントって何なんですか。
フランスとかじゃなくて‥‥。
川上
なぜかヨーロッパじゃないんですよ。
アメリカですね、やっぱり。
もっとも、ヨーロッパには
行ったことがないんですけど。
伊藤
どういうふうになるんだろう、行ったら。
川上
意外に超ヨーロッパっぽくなったりして。
伊藤
急にね。そうなったら、
この20年何だったの! って言います(笑)。
──
ザックリ『POPEYE』のせいだっていう
40代~50代の男子は多いですよ。
川上
『POPEYE』見てました! 
映画の影響もあるんだと思います。
『スタンド・バイ・ミー』や『グーニーズ』。
主人公達のジーパン、コンバース姿に憧れました。
小学校の時にああいうのを見て、
ジーパンが欲しいって親に言って
買ってきてもらったジーンズが、
あの501じゃないんです、どうしても。
それが悔しくて。
何かが違う。きっとシルエットも違うし、
たぶん素材もこうじゃない。
ちっとも格好良くねえ! みたいな(笑)。
伊藤
(笑)ほんと、いつも思うのは、
アメリカが男子心を惹き付けるってなぜなのかなって。
川上さんが言葉もわからずあてもないのに
18歳で行っちゃった、
そのくらいの魅力があるわけですよね。
川上
ほんとアホだったんです。
見せたいです、当時の写真。
ぼく、20キロ痩せてたんですよ。
伊藤
えっ。えっ?!(笑) 
見たい見たい。
川上
今度お見せしますね(笑)。
伊藤
ぜひ。
今日は、川上さんの人となりがわかってよかったです。
どうもありがとうございました。
川上
こちらこそありがとうございました。
こんどお父様の写真、見せてくださいね。
(おわります)
2020-03-03-TUE