伊藤まさこさんと「ほぼ日」がつくる
あたらしいネットのお店「weeksdays」。
2年ほど前から計画をスタートしたこのプロジェクトが、
ようやくこの7月にオープンのはこびとなりました。
週に何日も(ときには平日毎日!)「ほぼ日」に詰めて、
計画をすすめてきた伊藤さん。
開店の日が決まってすぐに
伊藤さんは糸井の部屋をたずね、
「糸井さん、ここまで、できました」と報告。
そのときの2時間ほどのおしゃべりを、まとめました。
伊藤さんがどんな気持ちで
このプロジェクトをはじめたのか、
「weeksdays」のバックグラウンドが
なんとなくわかっていただける対談です。

その1
「weeksdays」はじまります!

伊藤
糸井さん、「weeksdays」の
オープンがいよいよ近くなりました。
糸井
できるね。
伊藤
できます。
「weeksdays」という名前は
糸井さんと一緒に考えたんですよね。
糸井
そうだったっけ?
伊藤
そうですよ(笑)!
わたしが最初に考えていたのは
「365 department store」
という名前だったんです。
企画書もそのタイトルで。
糸井
うん。
伊藤
百貨店って、地下に食品があり、
1Fに化粧品があり、婦人服、紳士服、
家庭用品、家具、こども服、食堂、
屋上に広場、なんでもあるイメージですよね。
だからこのお店のイメージも、
ネットのお店だけれど、
石造りの古いデパートみたいな
イメージにしたらどうかなって。
365とつけたのは、
年中無休ですよということです。
糸井
そうだったね。
それでぼくがぜんぜん違うところから
「weeks & days はどうかな」
ってメールを送ったんだ。
デイリーにこだわり過ぎなくても
いいんじゃないかな? って。
伊藤
あのメールをいただいたとき、
糸井さんが「肩の力を抜いたら?」と
おっしゃっているような気がしました。
そうしたらチームのみんなも
「そっちのほうがいい」って。
──
「365 department store」が
「場所」のイメージだったのに対して
「weeks & days」は
「時間」のイメージだったのが、
なんだかホッとしたんです。
閉じこめられずに、ずっと先にのびていく、
未来へつづく気持ちがあるような気がして。
daysが先じゃなくてweeksが先なのも、
なんだかちょっとひっかかるのが面白いし、
週単位で新作を出したいねという計画に
ぴったりだとも言えますし。

trippen “ZORI”。このシルバーは「weeksdays」の特注色。

伊藤
さらにわたしから、
「『weeksdays』と、
一語にするのはどうでしょう?」って。
ほんとうは英語にはない言葉ですが、
いっそそのくらい思い切ったほうがいいなって。
糸井
うん、いいと思うよ。
──
最初にこういうことをやりたいと
伊藤さんからお声がけくださったのは、
もう1年半か、2年ちかく前のことになりますね。
いろいろな媒体で活躍なさっているのに、
伊藤さんはどうして
ぼくらに声をかけてくださったんですか?
伊藤
「毎日」やりたかったからです。
毎日のワクワクみたいなものが、
ネットのお店で出せたら嬉しいし、
始めたら、できるだけ長く続けたい。
だからそれをすでにやっている「ほぼ日」に
相談してみようと考えたんです。
さらに、わたしが全て考えるんじゃなくて、
いろんな人といっしょにできたらおもしろい。
そういう意味でまず
「ほぼ日」といっしょがいいなって。

もうひとつ、理由があって、
このお店をもしわたしがひとりでやったら、
ある一定の「引き算」の
お店をつくるんだと思うんです。
糸井
うん、引き算ね。
伊藤
「やさしいタオル」のスタイリングから
「ほぼ日」と仕事をするようになりましたが、
スタイリングにおけるわたしの役割って、
引き算担当なんですね。
「そのもの」を語りたいときに、
「他のもの」はいらない、と。
写真なら、そのものと空気感。
光とか、だけでいい。

「やさしいタオル」2016夏のコレクションの、伊藤さんのスタイリング。

糸井
それはいいね。
伊藤
樋口可南子さんが
わたしのアトリエに来てくださったとき、
お豆腐を蒸してゴマ油と
塩をかけただけのものを出したら、
「こんなふうに引けないのよ、引けない」
って言ってくださって。
そして家の中を見て、
「みんな、あなたみたいに引き算はできないのよ」。
糸井
(笑)。
伊藤
タオルのスタイリングも、
場所を決めればあとはもうタオルがいいんだから、
わたしが何もする必要がないんですよ。
風景ができあがってるから、
それを置けばもういい。

でもその方法で商品をつくったり選んだりするのは、
「weeksdays」というお店をつくるにあたっては、
おもしろくないだろうな、と思ったんです。
糸井さんやみなさんと話していると、
ひとつのテーマからどんどん話が広がっていきます。
絵の話をしていたはずがいつのまにか
額の話になっていたり、
もっと突拍子もない話題になっていったりする。
わたしが見落としてしまいそうなおもしろいことが、
いっしょなら、見つかるんじゃないかなって思ったんです。
糸井
「まさこさんにとっても、
『ほぼ日』とやるのはいいよ」
ってぼくも言いたいわけですよ。
その役をみんなちゃんとやろうぜっていうことを、
社内の人たちに言うのが、ぼくの役割だし。
伊藤
‥‥と、言い出したものの、
立ち上げの大変さには驚きました。
ここに来て、オープンの目処が立って、
ようやく実を結んだ感じです。
糸井
(笑)ぼくは最初から言ったよ、
「たいへんだよ!」って。
「ほんとにやるの?」って。
伊藤
そう! それでわたしも
「ムキーッ! ぜったいやりますから!」なんて。
準備はまず、ほかの仕事を減らすこと、体調管理、
そして気合いを入れることでした。
糸井
毎日というのは、病気になれないからね。
考え過ぎると、長期旅行も無理になる。
そこは休み方を発明するしかないんだ。
伊藤
旅行や息抜きがあっての商品ですものね。
糸井
その通りだと思う。
伊藤
「これのことばっかり考えてました」って言うと、
何が売れる商品なのかばかり
考えるようになりそうで。
糸井
たぶんね、「weeksdays」と
「ほぼ日」が違うのは、
「ほぼ日」って意地でも休まないで、
「あきれたよ!」って言われることを
信用にしてきたわけです。
だけど、たぶん「weeksdays」は
まさこさんが
「何日から何日まで休みます」
っていうのを宣言して、
「パリに行ってきまーす」って言ってもいい。
そういうやり方をすればいいと思う。
ただ、頭から離れるってことはなくなる。
伊藤
きっとそうですね。
(つづきます)
2018-07-08-SUN