ロンドン、ハワイ、
メルボルン、ニューヨーク、
パリ、ヘルシンキ、ホーチミン、
ミラノ、ストックホルム。
伊藤まさこさんが、
世界各国、9つの街に住む友人たちと、
オンラインで話をしました。
これまでの暮らしとは
すこし変わってしまったいま、
家の中で多くの時間を過ごす日々を
どうやって過ごしているか、
食事は、生活習慣は、おしゃれは、
ストレス解消方法は?
そして、日本とはちがう社会の現状についてなど、
いろんなテーマでのおしゃべり。
現地からの日常の写真もまじえて、
ちょっと風通しのよいコンテンツに
なったらいいなぁと思います。
●登場するみなさま
ニューヨーク‥‥仁平綾さん
ハワイ‥‥工藤まやさん
ロンドン‥‥イセキアヤコさん
メルボルン‥‥田中博子さん
パリ‥‥鈴木ひろこさん
ヘルシンキ‥‥森下圭子さん
ホーチミン‥‥田中博子さん
ミラノ‥‥小林もりみさん
ストックホルム‥‥明知直子さん
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/04/Aya-Nihei_prof.jpg)
仁平綾
1976年生まれ、編集者・ライター。
2012年よりニューヨーク・ブルックリン在住。
得意ジャンルは、食、猫、クラフト。
雑誌やウェブサイト等への執筆のほか、
著書に、ブルックリンのおすすめスポットを紹介する
私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』vol.01~03、
『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』
(いずれもエクスナレッジ)、
『ニューヨークおいしいものだけ!
朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、
『ニューヨークの猫は、なぜしあわせなの?』
(朝日新聞出版)、
『ニューヨークでしたい100のこと』(自由国民社)、
伊藤まさこさん・坂田阿希子さんとの共著に
『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、
『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/04/Maya-Creaprof.jpg)
工藤まや
TV、CM、雑誌、イベントなどで活躍する
メディアコーディネーター。
虹がかかることで知られるマノアバレーに住む。
連載などの執筆も行い、
近著に『ハワイ暮らしのお気に入り:
オアフ島ライフスタイルガイド My Daily Hawaii』
がある。
CREAのウェブサイトで
「工藤まやのおもてなしハワイ」を連載中。
ハワイの日々はインスタグラムからどうぞ。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/83ec0904d26760940ce2b74c1b5566d5.jpg)
イセキアヤコ
京都出身。2004年よりイギリス、ロンドン在住。
アンティークやヴィンテージのジュエリーを扱う
ロンドン発信のオンラインショップ、
「tinycrown(タイニークラウン)」
を運営している。
(メルボルン)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/IMG_0394.jpg)
田中博子
パティスリークリエイター。
1978年生まれ。
福岡で中村調理師専門学校製菓技術科を卒業後、
横浜のノインシュプラーデン(ウィーン・フランス菓子)
にて勤務。
その後、食育料理研究家である
藤野真紀子氏に6年間師事したのち、
2006年にフランスへ。
パリの「L’Ecole Lenôtre」「Le Cordon Bleu Paris」、
プロ向け製菓学校「Ecole Gastronomique Bellouet
Conseil de Paris」などで研修をつみ、
アルザス地方にある「Maison Ferber」で、
ジャムの妖精とも呼ばれ、世界中で注目されている
Christine FERBER氏のもとで1年間働き、
アルザス地方伝統の菓子や料理、ジャムづくりを学ぶ。
帰国後は
東京、福岡を中心に全国でお菓子レッスンを開催。
2011年から<クレアパ CREA-PA>の屋号で活動を開始。
旬のフルーツを贅沢に使った少量生産のジャムやお菓子の
卸販売を始める。
2019年、結婚を機にオーストラリアのメルボルンに移住。
著書に『パウンドケーキの本』
『セルクルで作るタルト』
『家庭で作れるアルザスの素朴なお菓子』
『ジャムの本』などがある。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/prof_suzuki_hiroko.jpg)
鈴木ひろこ
スタイリスト、ライター、コーディネーター、
ファッションコンサルタント。
パリ在住29年。
スタイリストとして、雑誌や広告、
音楽関係などで経験を積んだ後、渡仏。
現在は、女性誌を中心に
パリをはじめ、ヨーロッパ各国で取材・執筆を行い、
ファッション撮影のキャスティングや
オーガナイズを手がける。
日々、パリの街を歩きながら、
人、モノ、コトなど
さまざまな古き良きものや、
新しい発見をすることが趣味。
著書に『フレンチ・シャビーのインテリア』
『大人スウィートなフレンチ・インテリア』
『パリのナチュラルモダン・スタイル』
『シャンペトル・シャビーの家』(グラフィック社)
などがある。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/konmari-or-danshari-and-found-my-old-teiki-from-2001.jpg)
森下圭子
1969年生まれ。
ムーミンの研究がしたくて
1994年の秋にフィンランドへ
夏は島めぐり、秋は森でベリー摘みに始まって茸狩り、
冬は寒中水泳が好き。
現在、ヘルシンキ在住。
「取材や視察のコーディネートや通訳、
翻訳の仕事をしています」
訳書に『ぶた』『アキ・カウリスマキ』、
ミイのおはなし絵本シリーズ、
『ぼくって王さま』
『トーベ・ヤンソン 仕事、愛、ムーミン』などがある。
映画『かもめ食堂』の
アソシエート・プロデューサーとして
初めて映画の仕事を体験。
「ほぼ日」では2004年から2005年にかけて
『サンタの国、フィンランドから。』を、
2009年から2012年にかけて
『フィンランドのおじさんになる方法。』を連載。
2015年には作家・重松清さんのインタビュー、
『トーベ・ヤンソンの人生を、ぼくたちはもう一度生きる。』
にも登場している。
写真は「ちょっと断捨離してみるかと箱を整理していたら、
いきなりでてきた昔の定期券」。
当時はお金がなくて、髪も自分で切っていたので、前
髪が斜めってるのはわざとではなく、
まっすぐ切ってるつもりが結果こうなったのだそう!
(ホーチミン)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/prof_IMG_7668.jpg)
田中博子
ベトナム手刺繍コーディネーター。
洋書の表紙に写る生春巻きに感動を覚え、
現地に行き、見て、食べて確かめるべく
1996年サイゴン(ホーチミン)旅行を決行。
1999年7月に移り住むまで、
休暇を使って北から南まで何度も旅をする。
住み始めてからは、ベトナム語を学びながら、
現地案内、職人探しをはじめ、
現在は手刺繍を絶やさないよう奔走中。
刺繍以外にはホーチミン近郊でのかご作り、
水牛の角や木製の小物などの手仕事にも携わる。
オンラインショッピングサイト
「Costa-Japan」の刺繍製品全般を担っている。
「ほぼ日」では、伊藤まさこさんとつくった
「ベトナム手刺繍の服。」を、
「weeksdays」では、
「ベトナムのかご」「ベトナム手刺繍のハンカチ」
の製作を担当している。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/prof_kobayashi_morimi.jpg)
小林もりみ
丁寧に作られたイタリア食材を直輸入する
カーサ・モリミ代表。
ミラノ在住10年。
ライフスタイルに特化したプランニング会社に勤務した後、
2000年カーサ・モリミ設立。
2009年スローフードが運営する食科学大学大学院へ。
イタリアに拠点を移す。
”Food as Life Style よく食べることは、よく生きること”
”You are what you eat 台所から始まる、豊かな暮らし”
こうした信念から、添加物不使用、
手間と時間をかけたナチュラルな美味しさを
イタリアから日本に紹介している。
2011年の東日本大震災後、福島の子どもたちの
イタリア保養を行うNPO”オルト・デイ・ソーニ”
(www.ortodeisogni.org)をミラノにて仲間と設立、
代表を務める。
2014年より母校である在ピエモンテ州ポレンツォの
食科学大学大学院
にて非常勤講師として日本の食文化を担当する。
■Instagram
@morimicucinetta
@casamorimi
■Blog
イタリアの小さな台所から
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/prof_akechi_naoko.jpg)
明知直子
1979年生まれ。
フォトグラファー、コーディネーター、
ライター、通訳・翻訳。
千葉大学美術・図工教育課程終了。
その後、IDEEにてインテリアコーディネートに携わる。
2007年渡瑞。北極圏の街キルナに語学留学し、
スウェーデン最古の街シグチューナで写真を学ぶ。
現在、ストックホルムを拠点に北欧の魅力を伝えるプロジェクト
「Handcrafteriet」(「手でつくる」の造語)にて、
幸せは自分たちで作る北欧のライフスタイルや
暮らしを彩るヒントを探っている。
「ほぼ日」では
2012年のほぼ日手帳springの限定カバーで
「ダーラナの春」を販売したさい、
ダーラナ地方と、ダーラヘスト(木彫りの馬)の
魅力を伝える写真のコンテンツに登場。
「weeksdays」では2019年11月に
冬支度のコラム「冬の愉しみ」を執筆。
ヘルシンキ 森下圭子さん[2]会わないことが思いやり、
楽しもうという想像力、
スウェーデン語の勉強。
- 伊藤
- それにしても、自分の国と、
その国の人を信じているって、
すばらしいことですね。
- 森下
- フィンランドの社会は、
信頼をベースにしているんです。
最初のうち、行動制限が始まったばっかりのときって、
やっぱり守れない人が大勢いて。
とくに高齢者とか、
ネットで人とコミュニケーションとる術が
あまりない人はついつい、ね、
やっぱり実際に会うしかないというか。
まだ飲食店で飲食ができていた時期でもあり、
70歳以上の人がそういうところに集まっていました。
そのとき、首相が強く訴えたんです。
「私たちはあなたたちを信頼している」と。
「あなた方を信頼したい。
だから、禁止せずに済むように、
みんなで集まったりしないでください」って。
それでずいぶんと変化しました。
いまは行動制限がかなり厳しくはなっているけど、
日本で報道されている
西ヨーロッパの都市ほどではありません。
- 伊藤
- 感染者はどれくらいですか。
- 森下
- ヘルシンキは意外と多いんですよ。
10万人あたりで感染者が何人か、
という計算があるんですけど、それだと、
首都圏で126.5人なんですね。
東京の世田谷区でも4月上旬で
10人以下じゃないかと思うんですが、
そう考えるとすごい数字です。
それでもヨーロッパの中では少ないほうです。
- ──
- 4/17のデータでは、
フィンランド全土の総感染者が3369人、
死亡72人。これはヨーロッパの中では
桁が2桁、3桁違うくらい少ないですね。
- 森下
- そうなんですよね。
でも、人口も少なく、550万人ですから。
- 伊藤
- みなさん、首相の言葉のあとは、
守るようになったんですね。
- 森下
- そうですね。言われたときから、すぐに。
若い人もそうです。
ある人のフェイスブックを読んでいたら、
高齢の両親のところの食材を届ける時、
ドアの前に置いてピンポンダッシュをしたと。
2メートル離れてなきゃいけないから、
やっぱり会ってしまうとつらい。
だからピンポンダッシュして、階段のかげから、
親がドアを開けて物を取っていく音を聞く、みたいな。
最初は、そんなふうなことがみんな辛そうだったけれど、
少しずつ、そうすることが
この国でみんなで一緒にやっていくことなんだから、
っていう感じになっていきましたね。
- 伊藤
- ほんとう、今、会わないことが思いやり。
会社勤めの人は、リモートワークですか。
- 森下
- 私の周囲は、完全リモートワークです。
ただ、できてない人もいます。
夏休み気分でいる人もけっこう多いし、
子どもが家の中にいるので
仕事がはかどらないしっていう人もいる。
あと、シビアにレイオフ、休暇を出されてしまって、
失業の手続きを取っている人もいます。
お店の人に多いかな。
また営業が再開したら戻れるんでしょうけど、
そういう意味で仕事をしていない人もいます。
- 伊藤
- フィンランドは夏休みをとても大事にしていて、
テレビ番組すら夏休みになるんですよね。
日本の人ってほんとうに勤勉だし、
オンオフの切り替えが苦手というか、
いつも動いていなくちゃ、というところがあるけれど、
フィンランドの人って、
オフのときはすぐに切り替えられるし、
じっとしていることもできそうだし、
自分の時間を持て余すこともなさそう、
っていう印象なんです。
それもやっぱりお国柄なのかなと
思ったんですけど。
- 森下
- 確かに、もともと、
こうしなきゃいけない、
ああしなきゃいけないって中に
生きてきてない感じはしますね。
なにをするにも自発的。
働かないときは働かないときなりに、
すごく自発的に自分の時間を使います。
- 伊藤
- 自分の時間も、
休暇をあえて静かに過ごすのと、
今のように「動かないで」って言われている時で、
心の持ち方が違うじゃないですか。
それでもみんな、そんなに変わらず、
自分の時間をマイペースに?
- 森下
- 深刻にしてることはあんまりないですよ。
みんないろいろ不安だと思うんですけれども、
その中で一所懸命楽しもうという想像力はすごくて。
だから、本気で大人が遊んでたりしますね、室内で。
- 伊藤
- どういう遊びを?
- 森下
- たとえば、フィンランドの
有名な絵画を使ったりして、
その絵を真似するのがSNSで流行してます。
自分でメイクしたりコスチュームを考えて、
絵になり切って遊ぶんです。
- 伊藤
- あのシャイな人たちが!
- 森下
- そうそうそう(笑)。
それで写真を撮って載せるの。
- 伊藤
- 1人だからできちゃうのかな(笑)。
「フィンランドの人がやっている、
絵画を真似する人たちの
インスタを集めているアカウントはこちらです。
@karanteenitaidetta
アカウントをやっているのは
フィンランド全国の博物館や美術館で使える
ミュージアムカードを出しているところ。
Tussen Kunst & Quarantaineの
「世界の名画のパロディ」を見て始めたとのこと。
そうそう、この
@tussenkunstenquarantaineも爆笑です」(森下さん)
- 森下
- 私が今、友達とハマってるのは、
新しいコミュニケーションの取りかた。
メッセージでやりとりするんですけど、
小さな仮装をして自撮りをして、
自分で考えた呪文を発表しあったり(笑)。
- 伊藤
- かわいい(笑)!
- 森下
- そういうことをみんなで考えて遊んでいるんです。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/preparing-for-my-easter-greetings-to-my-friends-via-whatsapp.jpg)
▲「イースター用に友人たちに自撮りメッセージを送るときも手軽な仮装をしてから。イースターと言えば、魔女と黒猫。黒猫がいないので、ムーミンのご先祖さまぬいぐるみを。すっぴんの顔にこんなことばかりしてるので、この日もなんとなく鼻の先っぽが赤く染まったまま一日を過ごしました」(森下さん)
- 森下
- 最近すごく思うのは、
フィンランドの人たちの想像力って
ほんとうに素敵だなということ。
自分たちで楽しむために何ができるかなって考えて、
ちょっと面白そうだからやってみようって、
なにかしら、やるんですよ。
だから、あんまり深刻なことは聞かないです。
みんな怖さはあると思うけれども、
あまりそれを表には出さずに。
- 伊藤
- すごく大人ですね。
みんな自立した大人だって感じます。
- 森下
- そうかもしれない。
誰に言われたからじゃなく、自発的で。
でも、そんなフィンランドにも、
だんだん若い人たちが我慢できなくて、
直接会ったりしちゃうという話も聞きます。
だからといって、それを痛烈に批判する世論よりも、
今、自分たちがどうやってこの状況を
気持ちよく過ごすことができるかっていう
アイデアを出し合うほうが建設的だって、
多くの人が思っているんだと感じます。
- 伊藤
- 今、東京都も「お願い」なんですよね。
でも、こういうことって、
お願いされるのではなく、
自分でって思うこともあります。
日本では「お願い」としか
言えないみたいなんですけれど。
だからこそ自発的なこと、大事だなって。
フィンランドの人たち、前向きですね。
- 森下
- そうなんですよ。
家の中を楽しむことを考えるほうが
前向きになれる気がして。
- 伊藤
- 今、自分だけ出るなって言われてるんじゃなくて、
一つの地域でもなく、全世界が同じなんだから、
ちょっと気持ちを変えればいいのにって
すごく思うんですよね。
- 森下
- 伊藤さんも、室内で遊ぶのは得意そう。
多分いろいろとなさっているでしょう?
- 伊藤
- うん。私、もうほんとうに
一生いられるかもって思うくらい(笑)。
- 森下
- (笑)どうやって時間を過ごしてますか。
- 伊藤
- 昨日からはNetflixでエリザベス女王の
シーズン3ぐらいまである連ドラを見始めました。
- 森下
- 『ザ・クラウン』ですね!
- 伊藤
- もう、ヤバーい! と思うくらい面白いです。
あとは、たまっていた本を読んだり、
家の片付けをしたり。
早起きして仕事して、朝ご飯食べて、
またちょっと仕事して、
「あ、もう昼ご飯だ」と準備して、
食後ちょっと仕事すると、もう夕方。
「また1日終わったね」みたいな感じです。
- 森下
- どうやったら見つけられるんですかね、
みんなね、自分で。
- 伊藤
- パリのお友達と話していたときに思ったんですが、
自分の中を豊かにできることを知ってる人が
今、強いなって。
人任せではなく、受ける楽しさだけじゃなく、
自分の中でどう過ごそうかっていうことを、
ちょっと噛み砕いて、
楽しくできる方法を知ってる人が強いです。
- 森下
- フィンランドにも私が見えてないところで
いろんな人がいると思うんですけれど、
自分が何をしたいか知ってる、
自分自身で自発的にいられるって、
やっぱり大きいのかもしれない。
最近思うのは、自分の頭の中で
どれぐらい想像力で広げられるかって大事だなって。
少なくとも私の周りで前向きでいる人たちを見ながら、
何が大きいのかなと思ったら、
やっぱり想像力かなと。
それと、自分にちゃんとビジョンがあるかどうか。
日々の暮らしの中でも、こうやってみようかな、
ああやってみようかなっていうのは、
想像力がないとできないんですよね。
- 伊藤
- そうですね、うん。
- 森下
- 受け身で生きてると、
誰かの言葉や外からの情報がないと何もできない。
そういう状態で今、家の中に1人でいなきゃいけない、
っていうのはとても苦しいかもしれない。
けれども、想像力が一つあると、
空を見上げてるだけでもいろいろ生まれてくるんですよね。
作ったことのなかった料理をしてみよう、というときも、
いろんなものを見たあとで、
じゃあ私はどういうことができるかって考えていけば、
今は時間に余裕があるから、ものすごく時間をかけて
自分で工夫することもできるし。
レストランのシェフが契約農家の食材を売って
レシピを公開してくれているのを参考にしたり。
10分ごとにオーブンの中のものをひっくり返したり
しなきゃいけない料理なんて、
普段はやろうとも思わなかった。
そういう料理も、時間があるので
やってみようって。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/something-new-vegees.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/something-new-vegees2.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/something-new-vegees4.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/mascarpone-cream.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/granola01.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/salmon-soup.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/korvapuusti.jpg)
▲「使ったことのなかった食材を初めて使ってみたり、いままでやったことのない調理法を試してみたり、初めての料理にトライしています。サーモンスープとシナモンロールは普段もよく作るのですが、今回は時間をかけていつもと違う作り方で作ってみました。」(森下さん)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/kukkafocaccia.jpg)
「フィンランドでじわじわ注目され人気になっているのが『お花のフォカッチャ』。フォカッチャ生地の上にお花を描くように、いろいろトッピングするんです。季節的にもぴったり」(森下さん)
- 伊藤
- そう思う。行動できる範囲が広いからといって、
心の中が広いわけじゃないんですよね。
この騒動が明けたときに、
どう過ごしたかによって
今後の自分が変わりそうですよね。
- 森下
- 私も最初のうちはどうしていいのかわからなくて、
むやみやたらに散歩したりとか、
ただダラダラ過ごしていたんです。
でもダラダラ過ごすって、
決して自分の気持ちにとって
いいことにならない。
メンタルヘルス・フィンランドが書いていたように、
「新しい習慣が作れないか、考えたり計画してみる」、
これはとても大きなことでした。
- 伊藤
- 森下さん、それで考えた新しいことはありますか。
- 森下
- 私はね、スウェーデン語を
もう一回やり直してます(笑)。
- 伊藤
- へぇー!
- 森下
- 続々と仕事がなくなっていってしまって、
この夏、すごく暇そうだなと思ったんですね。
ふと、夏の季節労働者としてベリー摘みとか、
海外からやってくる労働力の代わりに
バイトしようかなとも思ったんですが。
でもフィンランド国内で、
もし自由に行き来できるようになるのだったら、
スウェーデン語しか話さない地域に行ってみようと、
トーベ・ヤンソンが大好きだった群島のエリアで、
ひと夏、ずっとスウェーデン語で
暮らしてみようかなと思って(笑)。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/studying-swedish.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/studying-swedish-and-baking.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/studying-swedish-and-baking2.jpg)
▲「私のスウェーデン語の教科書。通常の練習帳(行動制限が始まる前に図書館で借りてきました)と、トーベ・ヤンソンの『島暮らしの記録』、おばあちゃんたちのとっておきのお菓子のレシピを集めた本です」(森下さん)
- 伊藤
- それ、いいですね。私、何やろうかなあ。
- 森下
- (笑)伊藤さん、忙しそうじゃないですか。
いまはどんなふうに過ごしているんですか?
- 伊藤
- 雑誌の連載に、
よそのお家の食器棚を見に行く企画があって。
いつもだったらカメラの人と編集の人と行くんですが、
今は、取材に行けない。
だから、2号にわたって自分の食器棚を
レポートすることになったんです。
それで切り抜き用の写真をiPhoneで撮ったり、
食器棚の見取り図を娘に描いてもらったり、
超家内制手工業をしてます。
- 森下
- わぁ、見たい!
私ね、初めてお仕事をご一緒するとき、
「伊藤まさこさんってこういう方なんですよ」
と見せてもらった資料におどろいたんです。
そこには、ちょっと刺繍を入れるだけで、
布一枚がすごく変わることだとかが載っていて。
なんてのびのびしていて、
自由で素敵なんだろうと。
センスを真似るのは至難の業だけれども、
すごく楽しさが伝わってきました。
だから、今こそ、伊藤さんの秘密を
もっと知りたいと思いますよ!
- 伊藤
- もうないですよ~、秘密。
全部明かしたもん。
でも、そうか、私は最近手芸を
全然やってなかったから、
やってみようかな?
そういえば森下さんに初めてお会いしたときって、
『かもめ食堂』の撮影の直前でしたね。
- 森下
- そうです、そうです。
すごくよく覚えてるのが、
当時まだ6歳くらいの娘さんと旅をなさっていて、
長旅の中で彼女がちゃんと楽しんでいられるように、
伊藤さんが手作りでいろいろ考えてきていたことです。
- 伊藤
- えぇ? とんと記憶にないです!
- 森下
- ないですか。私はすごくよく覚えてますよ。
ノートを横に3分割で切ってあって、
頭、胴、足が何ページも描いてあって、
めくると着替えができるんです。
ティアラをかぶったお姫様なのに、
ハラマキしてるおじさんになっちゃう、とか、
自分で組み合わせて遊ぶんです。
覚えてないですか(笑)。
- 伊藤
- すごいじゃん、私!(笑)
もうまったく覚えてない~。
- 森下
- ああ、この人はほんとうに
こうやってフッと思いついたことを形にできて、
それがすべてのびのびして楽しそうだなって、
そう思ったんですよ。
で、ここがポイントなんだけど、
「あれ私もやってみようかしら!」
って思うんですよ。
で、やると、玉砕(笑)。
でもその「やってみようかしら」って
思わせる感じが、今まさに必要ですよ。
これまでうまくいかなかったけど、
その中から自分らしさを見つけられたら、
きっとその人なりの物の作り方とか工夫のし方とか
発想とかもアイデアが浮かぶ。
何もないところから想像力って言ったって
どうすればいいの? かもしれない。
最初の、何かきっかけになるものを
伊藤さんは持ってらっしゃるような気がするの。
着せ替えブック、最高でしたよ(笑)。
波平さんみたいな頭の人がドレス着てたりとか(笑)。
- 伊藤
- そうなんだ! ほんとうに覚えてない‥‥。
- 森下
- それでずっと遊んでて、
みんなで一緒にやったりしましたよ。
- 伊藤
- そうか。紙さえあれば、
ゲーム機を買わなくてもね!