ロンドン、ハワイ、
メルボルン、ニューヨーク、
パリ、ヘルシンキ、ホーチミン、
ミラノ、ストックホルム。
伊藤まさこさんが、
世界各国、9つの街に住む友人たちと、
オンラインで話をしました。
これまでの暮らしとは
すこし変わってしまったいま、
家の中で多くの時間を過ごす日々を
どうやって過ごしているか、
食事は、生活習慣は、おしゃれは、
ストレス解消方法は?
そして、日本とはちがう社会の現状についてなど、
いろんなテーマでのおしゃべり。
現地からの日常の写真もまじえて、
ちょっと風通しのよいコンテンツに
なったらいいなぁと思います。
●登場するみなさま
ニューヨーク‥‥仁平綾さん
ハワイ‥‥工藤まやさん
ロンドン‥‥イセキアヤコさん
メルボルン‥‥田中博子さん
パリ‥‥鈴木ひろこさん
ヘルシンキ‥‥森下圭子さん
ホーチミン‥‥田中博子さん
ミラノ‥‥小林もりみさん
ストックホルム‥‥明知直子さん
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/04/Aya-Nihei_prof.jpg)
仁平綾
1976年生まれ、編集者・ライター。
2012年よりニューヨーク・ブルックリン在住。
得意ジャンルは、食、猫、クラフト。
雑誌やウェブサイト等への執筆のほか、
著書に、ブルックリンのおすすめスポットを紹介する
私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』vol.01~03、
『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』
(いずれもエクスナレッジ)、
『ニューヨークおいしいものだけ!
朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、
『ニューヨークの猫は、なぜしあわせなの?』
(朝日新聞出版)、
『ニューヨークでしたい100のこと』(自由国民社)、
伊藤まさこさん・坂田阿希子さんとの共著に
『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、
『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/04/Maya-Creaprof.jpg)
工藤まや
TV、CM、雑誌、イベントなどで活躍する
メディアコーディネーター。
虹がかかることで知られるマノアバレーに住む。
連載などの執筆も行い、
近著に『ハワイ暮らしのお気に入り:
オアフ島ライフスタイルガイド My Daily Hawaii』
がある。
CREAのウェブサイトで
「工藤まやのおもてなしハワイ」を連載中。
ハワイの日々はインスタグラムからどうぞ。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/83ec0904d26760940ce2b74c1b5566d5.jpg)
イセキアヤコ
京都出身。2004年よりイギリス、ロンドン在住。
アンティークやヴィンテージのジュエリーを扱う
ロンドン発信のオンラインショップ、
「tinycrown(タイニークラウン)」
を運営している。
(メルボルン)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/IMG_0394.jpg)
田中博子
パティスリークリエイター。
1978年生まれ。
福岡で中村調理師専門学校製菓技術科を卒業後、
横浜のノインシュプラーデン(ウィーン・フランス菓子)
にて勤務。
その後、食育料理研究家である
藤野真紀子氏に6年間師事したのち、
2006年にフランスへ。
パリの「L’Ecole Lenôtre」「Le Cordon Bleu Paris」、
プロ向け製菓学校「Ecole Gastronomique Bellouet
Conseil de Paris」などで研修をつみ、
アルザス地方にある「Maison Ferber」で、
ジャムの妖精とも呼ばれ、世界中で注目されている
Christine FERBER氏のもとで1年間働き、
アルザス地方伝統の菓子や料理、ジャムづくりを学ぶ。
帰国後は
東京、福岡を中心に全国でお菓子レッスンを開催。
2011年から<クレアパ CREA-PA>の屋号で活動を開始。
旬のフルーツを贅沢に使った少量生産のジャムやお菓子の
卸販売を始める。
2019年、結婚を機にオーストラリアのメルボルンに移住。
著書に『パウンドケーキの本』
『セルクルで作るタルト』
『家庭で作れるアルザスの素朴なお菓子』
『ジャムの本』などがある。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/prof_suzuki_hiroko.jpg)
鈴木ひろこ
スタイリスト、ライター、コーディネーター、
ファッションコンサルタント。
パリ在住29年。
スタイリストとして、雑誌や広告、
音楽関係などで経験を積んだ後、渡仏。
現在は、女性誌を中心に
パリをはじめ、ヨーロッパ各国で取材・執筆を行い、
ファッション撮影のキャスティングや
オーガナイズを手がける。
日々、パリの街を歩きながら、
人、モノ、コトなど
さまざまな古き良きものや、
新しい発見をすることが趣味。
著書に『フレンチ・シャビーのインテリア』
『大人スウィートなフレンチ・インテリア』
『パリのナチュラルモダン・スタイル』
『シャンペトル・シャビーの家』(グラフィック社)
などがある。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/konmari-or-danshari-and-found-my-old-teiki-from-2001.jpg)
森下圭子
1969年生まれ。
ムーミンの研究がしたくて
1994年の秋にフィンランドへ
夏は島めぐり、秋は森でベリー摘みに始まって茸狩り、
冬は寒中水泳が好き。
現在、ヘルシンキ在住。
「取材や視察のコーディネートや通訳、
翻訳の仕事をしています」
訳書に『ぶた』『アキ・カウリスマキ』、
ミイのおはなし絵本シリーズ、
『ぼくって王さま』
『トーベ・ヤンソン 仕事、愛、ムーミン』などがある。
映画『かもめ食堂』の
アソシエート・プロデューサーとして
初めて映画の仕事を体験。
「ほぼ日」では2004年から2005年にかけて
『サンタの国、フィンランドから。』を、
2009年から2012年にかけて
『フィンランドのおじさんになる方法。』を連載。
2015年には作家・重松清さんのインタビュー、
『トーベ・ヤンソンの人生を、ぼくたちはもう一度生きる。』
にも登場している。
写真は「ちょっと断捨離してみるかと箱を整理していたら、
いきなりでてきた昔の定期券」。
当時はお金がなくて、髪も自分で切っていたので、前
髪が斜めってるのはわざとではなく、
まっすぐ切ってるつもりが結果こうなったのだそう!
(ホーチミン)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/prof_IMG_7668.jpg)
田中博子
ベトナム手刺繍コーディネーター。
洋書の表紙に写る生春巻きに感動を覚え、
現地に行き、見て、食べて確かめるべく
1996年サイゴン(ホーチミン)旅行を決行。
1999年7月に移り住むまで、
休暇を使って北から南まで何度も旅をする。
住み始めてからは、ベトナム語を学びながら、
現地案内、職人探しをはじめ、
現在は手刺繍を絶やさないよう奔走中。
刺繍以外にはホーチミン近郊でのかご作り、
水牛の角や木製の小物などの手仕事にも携わる。
オンラインショッピングサイト
「Costa-Japan」の刺繍製品全般を担っている。
「ほぼ日」では、伊藤まさこさんとつくった
「ベトナム手刺繍の服。」を、
「weeksdays」では、
「ベトナムのかご」「ベトナム手刺繍のハンカチ」
の製作を担当している。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/prof_kobayashi_morimi.jpg)
小林もりみ
丁寧に作られたイタリア食材を直輸入する
カーサ・モリミ代表。
ミラノ在住10年。
ライフスタイルに特化したプランニング会社に勤務した後、
2000年カーサ・モリミ設立。
2009年スローフードが運営する食科学大学大学院へ。
イタリアに拠点を移す。
”Food as Life Style よく食べることは、よく生きること”
”You are what you eat 台所から始まる、豊かな暮らし”
こうした信念から、添加物不使用、
手間と時間をかけたナチュラルな美味しさを
イタリアから日本に紹介している。
2011年の東日本大震災後、福島の子どもたちの
イタリア保養を行うNPO”オルト・デイ・ソーニ”
(www.ortodeisogni.org)をミラノにて仲間と設立、
代表を務める。
2014年より母校である在ピエモンテ州ポレンツォの
食科学大学大学院
にて非常勤講師として日本の食文化を担当する。
■Instagram
@morimicucinetta
@casamorimi
■Blog
イタリアの小さな台所から
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/prof_akechi_naoko.jpg)
明知直子
1979年生まれ。
フォトグラファー、コーディネーター、
ライター、通訳・翻訳。
千葉大学美術・図工教育課程終了。
その後、IDEEにてインテリアコーディネートに携わる。
2007年渡瑞。北極圏の街キルナに語学留学し、
スウェーデン最古の街シグチューナで写真を学ぶ。
現在、ストックホルムを拠点に北欧の魅力を伝えるプロジェクト
「Handcrafteriet」(「手でつくる」の造語)にて、
幸せは自分たちで作る北欧のライフスタイルや
暮らしを彩るヒントを探っている。
「ほぼ日」では
2012年のほぼ日手帳springの限定カバーで
「ダーラナの春」を販売したさい、
ダーラナ地方と、ダーラヘスト(木彫りの馬)の
魅力を伝える写真のコンテンツに登場。
「weeksdays」では2019年11月に
冬支度のコラム「冬の愉しみ」を執筆。
ミラノ 小林もりみさん[1]夕方6時の記者会見、
たっぷりのいい食材、
最初からあった安心感。
5/1、東京は夕方5時、
イタリアのミラノは朝10時。
世界の都市のなかでもかなり厳しい状況と言われるミラノで、
ひとりぐらしをしている小林もりみさんと対談をしました。
その3日後から「フェイズ2」という段階に入ることが
決まったイタリアの人々は、
いま、どんなふうに暮らしているんでしょう?
- 伊藤
- もりみさん、
ご無沙汰しています。
- 小林
- ずいぶんご無沙汰しています。
今回は誘ってくださって
ありがとうございます。
- 伊藤
- 今、ミラノですよね。
- 小林
- はい。ちょうどこの4月で
10年経ちました。
- 伊藤
- NHKの『世界はほしいモノにあふれてる』
に出られていましたね。
- 小林
- 撮影、ぎりぎりだったんですよ。
シチリアでの撮影が終わって
ミラノに帰った日に、
北イタリアで感染者第1号が
見つかったんです。
- 伊藤
- そのときまでは、
アジアの向こうのほうのことだと
いう感じでしたか?
- 小林
- はい。ローマでは、
武漢から来たご夫婦ともう1人が
感染しているという情報はありましたが、
まだ遠い出来事だったんですよ。
ところが、ミラノの郊外で1人見つかってからは、
これは本当に現実なんだろうか、
っていう日々が始まりました。
2月21日のニュースから1週間もしないうちに
その地域が封鎖になって、
3月の8日には、ミラノも制限がかかりました。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/90675946f868deb66ac684f8752bdb87.jpg)
▲3月8日朝目覚めたらロックダウンに。最後のカフェ。この日はFesta delle donne女性の日でした。(小林さん)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/db4e7afeceff70ac26b7ae71626b0de3.jpg)
▲ロックダウン前日のお肉屋さん。
- 伊藤
- 都市が封鎖されたときに、もりみさんも含めて、
周りの方はどんな反応だったんですか。
- 小林
- 事態は深刻だったんですけれども、
最初から安心感、信頼感はあったんです。
- 伊藤
- えっ? それはなぜ?
- 小林
- イタリアの首相はコンテさん
(ジュゼッペ・コンテ)っていう
50代の男性なんですけれど、
彼はもともと弁護士で、
大学で教えたりもしていた人なんですね。
正直、政治家としては頼りないと思っていたし、
カリスマ性も足りないという印象だった。
そのコンテさんの首相会見がTVで放送され、
そこでの説明や呼びかけが、
すごく明確だったんです。
「国民の健康がなによりも第一。
今は議論するときではなく、
とにかくみんなで協力して危機を乗り越えていく」
と熱く語っていて、
20分くらい吸い込まれて見ていました。
その国民第一の明確なメッセージを聞いたことが
安心につながったんです。
「きっと大丈夫だ」って。
もちろん「えぇっ? 封鎖?」と思ったんですけど。
- 伊藤
- なるほど、
いちばん最初がそうだったんですね。
- 小林
- はい。その後、イタリアの市民保護局、
プロテツィオーネ・チヴィーレ(Protezione Civile)
という機関があるんですけど、
そのリーダーであるボレッリさん
(アンジェロ・ボレッリ)という人が、
毎日18時に、保険機構のトップの人たちや、
専門家と記者会見をして、
毎日、何件陽性反応が出て、
集中治療室に何人いて、犠牲者は何人だと、
日々アップデートをして、
透明性高く発信をしたことも、
信頼につながりました。
なにもかも、明快だったんです。
その後もあたらしい措置が取られるたびに、
コンテさんの熱いメッセージがテレビで流れました。
「イタリアを救うために、僕は政治的責任を負う。
だから、国民1人1人が責任を持って
自分たちの愛する人のために行動してくれ。
それぞれが、自分の役割を果たしてくれ。
誰ひとりとして、置き去りにしない!」
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/77a47695456ffd32e9b928506349ddc8.jpg)
▲ロックダウン中のミラノの様子。
- 伊藤
- もりみさんだけじゃなくて、
イタリアの皆さんがみんな、
「よし、ついていこう」
と思った、という感じですか。
- 小林
- そうですね。
イタリアって、皆さんもご想像のとおり、
1人1人の意見がすごく強いんですね。
政治も右と左を行ったり来たりですし、
与党と野党の対立も激しい。
ジャーナリズムは体制に対して
強く説いていくことが任務だと思っているから、
首相への質問も厳しいんです。
でも今回はみんな協力姿勢をみせていました。
野党も「今はとにかくイタリアのために、
自分たちの国を取り戻すために、
傷を早く癒すために、1つになって頑張るぞ」
っていうメッセージがはっきりしていたんです。
人の命の前で、こんなに団結するんだ、
そのことに、イタリアに住んで、
初めてびっくりしたんです。
- 伊藤
- イタリアは、コロナを前に、
ひとつになって向かおう、
みたいな感じなんですね。
- 小林
- 私も、たぶん他のイタリア人も一緒だと思いますが、
毎日、夕方6時の記者会見を軸に
1日が回っていたような感じです。
そこで、今どうなっているか、
みんなが固唾を飲んで見守るみたいな。
- 伊藤
- きっと数字を発表する以上の
メッセージがあるんでしょうね。
- 小林
- そうですね。
でも、数字もとても重要だと思っていて。
毎日、市民保護局のホームページに
すべてのデータが載るんです。
検査数も、症状が軽い自宅待機の人の数も、
1日も欠かさず毎日アップデートされています。
私がいつも追っているのは新聞のサイトで、
それをさらにわかりやすい表にしてくれるものです。
たとえば、昨日は68,000件検査をしていますが、
3月あたりまでは
陽性反応者数が20%くらいだったのが、
4月に入ってから6パーセントくらいになり、
昨日(4/30)のデータだと、
2.7パーセントなんですよ。
- 伊藤
- そうなんですね。
- 小林
- 68,000人に対して2.7%ですから、
1,800人以上の人が新たに感染してるんですけど、
それでも下がってきていることが把握できる。
集中治療室に入っている方も、
何月何日にピークで4,000人まで行ったけれど、
今はこうです、ということが表になって、
しかもそのデザインが美しいのが、
イタリア的だなって思います。
これがページなんです。見えますか。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/0f2f8ce349c04e23f8bcf95b7b6de4f7.png)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/a50906b6599b951ce4739ff2a0d359b2.png)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/138798e188fe60977e055e4ed3dcc58f.png)
- 伊藤
- 見えてます! なるほど、デザインが。
- 小林
- 昨日は345人亡くなっているわけなので、
本当にまだまだ先は長いと思います。
ほかにも「どれくらい緊急電話を受けたか」を
都市別に示していたり、
感染者数の州ごとの推移、
感染者、死亡者の年齢も。
さらに、イタリア国内だけではなく、
各国の感染者数を
ぱっとわかるグラフにしていたり。
感染が始まってからの日数で、
国ごとの推移がわかったり。
- 伊藤
- 数字をつぶさに読まずとも、
すぐにわかるようにデザインされているんですね。
- 小林
- だいたい何が起こっているか把握できるんです。
ただ、国によっての違いはありますよね。
イタリアは、日本の政策とは全然違って、
初めのうちからものすごく検査をしているので、
その数に応じて感染者数もすごく多いんですよね。
どの国の対策が正解かは終わってみないと
わからないと思うんですけれども。
- 伊藤
- 今回のことについて、
イタリア特有だと思う現象はありますか。
- 小林
- イタリアのライフスタイルって、
世代を超えて、家族愛が満ちているので、
ものすごく交流が多いんですよね。
会ったら、ハグしたり、
ほっぺにキスしたりっていうのが当たり前なので、
そういうライフスタイルが、
わからないうちに感染を拡げていたと、
後になってわかったんです。
老人介護施設に孫が会いに行ったら、
じつはその子が陽性で
症状が出ていなかっただけだった。
それでその施設で感染が広まってしまったとか。
- 伊藤
- 今はどうしてるんですか。
ハグは、きっと、しないですよね。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/All-you-need-is-love.jpg)
▲バルコニーに掲げられた手作りの垂れ幕。「ALL YOU NEED IS LOVE」
- 小林
- 2月の末くらいに、首相が言ったんです。
「私たちが今まで慣れてきた習慣を
手放す必要がある」って。
「再び、もっと強く抱擁できるように、
今は遠くからお互いを励まし合おう」って。
それもイタリア的だなぁと思いました。
そのときはまだ友達に会えていたので、
いつもだったらほっぺにキスするのを、
「私たち、今、できないよね」みたいな。
最近、ニュースで見たら、首相が、
どなたかに会うのに、肘と肘を合わせてました。
- 伊藤
- 肘!
- 小林
- スーツのおじさんたちが(笑)。
やっぱり何かをしないと、
落ち着かないんだぁと。
- 伊藤
- かわいい(笑)。
レストランに行かなくなって、
どうされてるんですか、皆さん。
食いしん坊の人たちは。
- 小林
- 本当に幸いなことに、
食べ物は全然困らないんですよ。
それも首相が言っているんです。
「一番重要なのは、パニックを起こさないことだ。
私たちの国には、食べ物がしっかりあるから、
安心しろ」と。
それでも最初の頃は、
郊外のスーパーに人が殺到して、
パスタの棚が空になったりしましたけれど、
私は列もほとんど作ったことがないですし、
食材は何でも買えています。
私の住まいは道を渡ると大型食材店があって、
おいしいものには事欠かないんです。
入場制限をしているので
とても空いていますし、
レジに並んで待っているとき、もし列ができても、
1メートルずつ空けているので安心できます。
それに、こういうことになると、
「いつもよりいいものを買って、楽しく過ごそう」
と思うんですね。
友人が言っていておもしろいなぁと思ったのは、
レストランが閉まっちゃってるから、
魚屋さんに行くと、いつもよりいいものがあると。
レストランに行く分が回ってきてるんですよ。
だから「魚を食べる機会が増えた」と言ってました。
- 伊藤
- へぇ!
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/ac85422c6219d43ef6de78dd05b54483.jpg)
▲ひとりアペリティーボをよく楽しみます。
- 小林
- 最初、トンネルの出口が見えなくて、
どこまで悪くなっちゃうんだろう? って、
みんなが思っていたときからそうでしたが、
本当においしいものが食べられたり、
おいしいワインが飲めたりとか、
そういうことが
すごく心を安定させてくれていると思うんです。
イタリアでいい食材が手に入らなくなったら、
すごく惨めな気分になるでしょうね。
- 伊藤
- そうですね。それはすごく重要ですね。
食べるものって。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/cd544cfaa9aec99d565af46800790526.jpg)
▲パンケーキの朝ごはん。いちごをピュレにして生クリームを泡だてて。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/693d124caefb071ed8b6e54ccb7fb34c.jpg)
▲野菜の旬で季節を感じています。(小林さん)
- 小林
- オンラインで友達と同じ時間に
ディナーをすることがあるんですけれど、
みんなしっかりご飯を作っているんですよ、
おいしそうなものを。
パンや手打ちパスタを
自分でつくる人が増えているらしく、
スーパーでよく品切れになるのが
小麦粉と酵母です。
私は10日に1回くらいしか
買い物に行かないので、
食材が尽きるころに誘われると、
粗食が映っちゃうんですけれど、
友人は、ドーンと旬のアスパラガスを盛ったり、
ドーンとお魚一尾を調理したりしていて、
「あ、しまった!」って(笑)。
でも、そうだよね、みんな、
おいしいものを食べたいんだなって思います。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/31ec3df367f51c94aea48d8ceecd3bb5.jpg)
▲友人たちとスカイプディナー。
- 伊藤
- なるほど~!
10日に1回くらいなんですね、買い出し。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/e3a252bef6a10ad05e431dd4f8385298.jpg)
- 小林
- はい。スーパーレジの方も亡くなっているので、
私たちは負担をかけないように、
「できるだけ控えましょう」みたいな感じです。
でも1回で持って帰ることのできる量には
限りがありますから、
毎日おいしく食べるためには工夫をしないと。
初めのうちは葉物、
長持ちするキャベツは最後、
これはピクルスにして、とか、
カタクチイワシのおいしそうなのが買えたら、
アンチョビ(塩漬け)にしておこう、などと考えます。
私は食材屋なんですけれど、
そうか、冷蔵庫がなかった時代には、
たとえばコラトゥーラ(魚醤)って
必然だし、重要だったんだななんて実感したり、
いろんな発見があって楽しいです。
いま外で起きている出来事を思うと
不謹慎なんですけど、
ロックダウンってなったとき
「楽しんでやる!」と思って。
毎日をどれだけ楽しく過ごすか考えてます。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/9c514b91be1c976f14c20764e35ea0ca.jpg)
▲干物やアンチョビをつくって貯蔵する工夫を。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/9340d672bdf58acae7ec184fbaf2c256.jpg)
▲1日1回は麹を取るように。魚に塩を振って長持ちするように工夫。干物作りにチャレンジも。
- 伊藤
- 「こうしなさい」って決まってることだから、
それをどう楽しく乗り切るかっていうふうに
気持ちを切り替えたほうがいいですよね。
- 小林
- そうなんですよ。
私は、自分でやれることをやるだけだ、と。
首相もそうですけれど、
市民保護局のリーダーが、
毎日、記者からの質問に、
全然ひるむことなくパンパン答えている姿を
TVで見ると、思うんですよ。
「もうとにかく、この人たちについて行けば
大丈夫だから、あとは
自分でやれることをやるだけだ」って。
記者会見では、経済について
文句を言う人もいますが、ハッキリと、
「経済で人の命は奪われないけれど、
コロナでは奪われますから」みたいに、
毅然と反論していて。
社会が思ったよりも健全で、
当たり前に「人の命」っていうものを
経済人も大事に思っていて、
だからこんなにひどい状況なのに、
安心感があるんです。
- 伊藤
- それは、すごいです。
だって今欲しいのって
「安心感」ですもん。
私たちも安心したい。
- 小林
- こういうことになって、
全然知らなかったイタリアの
いい面をいろいろと知れましたよ。
わりとみんなちゃんと仕事してるんだ!
みたいな(笑)。
- 伊藤
- (笑)
- 小林
- こんなにちゃんとできたの? って(笑)。
本当に感謝してます。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/657664ada7cf3ae81a169eef8f485f1c.jpg)
▲朝の1時間。コーヒーを飲みながらベランダで日光浴。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/543ed50b2936faaab394be20156e3aae.jpg)
▲窓から中庭を見る。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/05/c4073ea57eba8954d14bfe9cf25a0d02.jpg)
▲夕陽が入ってくる時間が日々の楽しみに。