松徳硝子さんで工場見学。
東京、墨田区の錦糸町駅から
亀戸駅方向に広がる「錦糸公園」の先、
墨田区と江東区の区界でもある
横十間川(よこじっけんがわ)のすぐ西に、
手づくりガラスの「松徳硝子」(しょうとくがらす)の
工場があります。
いまをさかのぼること96年前、
大正11年(1922年)に、
松徳硝子の前身である「丸佐バルブ製造所」が
「電球用ガラス」のための工場として創業しました。
その後昭和3年に現在地に移転、
昭和17年に社名を「日本電硝工業」に、
さらに現在の名前になったのは昭和21年のこと。
「weeksdays」の松徳硝子のうつわシリーズは、
この工場でつくられているんです。
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「電球用ガラス」というところで、
ちょっとびっくりしたかたもいらっしゃるかもしれません。
でも考えてみたら、電球というのは、とても薄いもの。
それを手づくりするには、当然のことながら、
高い技術が必要でした。
つまり当時から松徳硝子には、腕のいい
職人が集まっていたのです。
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やがて機械化の時代が訪れ、
電球は、機械生産のものが市場を席捲します。
そんななか、松徳硝子は、手づくり電球から
「ガラス器」へと、主要製造品目をシフトしていきます。
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そこで役に立ったのが、
「均質な薄いガラスを吹く」技術です。
電球をつくるテクニックは、
料亭や割烹から依頼される
「薄い、ひとくちビールグラス」
をつくるのに役立ちました。
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そうして数千種類にもおよぶ
ガラス器をつくってきたノウハウは、
平成元年(1989年)、ひとつのアイテムに結実します。
「うすはり」グラスです。
ビールやお酒、つめたい飲み物を飲むのにいいと、
TVCMなどでも多く使われることになり、
松徳硝子の名前を世の中にぐんと広めたのでした。
その後、一般的なクリスタルガラスで使われる鉛を
バリウムで代替する技術を確立。
現在、松徳硝子で使っているのはすべてが
「無鉛クリスタルガラス」になっています。
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伊藤まさこさんの隣にいる巨漢は、
齊藤能史(さいとうよしふみ)さん。
松徳硝子のクリエイティブディレクターであり、
営業マンから経営までを引き受けているかた。
「weeksdays」の前身である「白いお店 &」のときから
ずっと「ほぼ日」の担当をしてくださっています。
今回、伊藤まさこさんからの
「こんなガラスのうつわがあったらいいな」
というアイデアを、職人さんたちとタッグを組んで、
じっさいにかたちにしてくださったのも齊藤さんです。
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松徳硝子の工場は2階建てです。
その2つのフロアの中央に
築炉されているのが都市ガス専焼炉。
それをぐるりと取り囲む2階フロアで
職人さん達が仕事をしています。
この現場、ものすごい熱さです。
ましてや夏。暑いというよりも、熱い!
炉を遠巻きにしているだけで汗が出ます。
そんななかで、職人さん達は
炉から溶けたガラスを竿の先にとり、
息を吹いてふくらませます。
とうぜん大量の汗をかくので、
すみに設置された巨大な冷蔵庫と製氷機から
ジョッキ大のカップに冷たい飲み物を入れ、
脱水症状にならないように気をつけながら
作業をすすめていました。
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松徳硝子でつくっているものは、
手づくりとはいっても「作品」ではなく「プロダクト」。
つまり、一定の品質基準と規格を
まもらなければいけません。
つまり、同じかたち、同じ薄さ、同じ重さに仕上げる。
それが職人の技です。
「weeksdays」のうつわは、
松徳硝子で扱う製品のなかでも難易度が高いものだそう。
そこで齊藤さんプロデュースのもと、
熟練の職人さんが3人でチームをつくり、
無駄のないうごきでつくっています。
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ガラスの主原料は真っ白な「珪砂(けいしゃ)」です。
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これを炉で溶かしたものを竿の先につけるところから
ガラスのうつわづくりがはじまります。
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同じ大きさに仕上げるためには「金型」を使います。
その金型の内側には、コルクの粉末を炭にしてつけた
真っ黒な層があり、そこに水分を含ませることで、
熱いガラスが入ってきたときに瞬間的に水蒸気を発生させ、
溶けたガラスと金型の間に水蒸気の膜をつくります。
形をととのえながら、くるくる回しているとき、
ガラスは、水蒸気の膜の内側にあるのです。
ちなみにその炭の層は、毎日剥がしてまた塗って、
という作業をくりかえしています。
このメンテナンスがきちんとできているから、
松徳硝子の製品は、こんなにうつくしく仕上がるのです。
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すこしでもダメな仕上がりであれば、
すぐに廃棄の判断をします。
手をかけても最終的にうまくいかないものは、
職人さんたちには、すぐにわかります。
ガラスのいいところのひとつは、
廃棄してもまた溶かせば、
原料として再利用ができるところです。
かたちができたら「冷やす」作業です。
ゆっくり(1日くらい)時間をかけて冷やす
「留めざまし」を行うこともありますが、
「weeksdays」のようにたくさんつくるときは、
「送りざまし(除冷マシンの中を通す)」を行うことで、
うんと時短ができるそうです。
冷めたら、目視で検品をします。
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続いて「口」をカット。
まずダイヤモンドカッターで筋をつけます。
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その筋から本体を分離させます。
口の部分は、このままでは「なめらかさ」がないので、
まず機械に通して、やすりをかけます。
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さらに、回転する鉄板に
水と粒度の細かい砂(金剛砂)を垂らし、
専任の職人さんが、絶妙な力加減で、磨きます。
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続いて、洗浄工程にうつります。
やわらかな水流(噴水のようなしくみ)にあてます。
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最後に、口のあたる部分に炎を当てます。
こうすることで表面をとかしてなめらかにします。
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最終検品では、ひとつひとつ丁寧に目視をして、
できあがりです。
ちなみに松徳硝子では、「つくる」職人さんと
「仕上げる」職人さんは、それぞれが専門職。
そのほうが品質も効率もたかまるのだそうです。
次回は、齊藤さんによるアイテム解説をおとどけします!