大人気のBonBonStore(ボンボンストア)の
雨傘と日傘、晴雨兼用傘を伊藤まさこさんがセレクト、
「weeksdays」で仕入れることになりました。
いま、ビニール傘を使うことが
あたりまえになっているけれど、
お気に入りの傘が1本あるだけで、
雨の日も晴れの日もちょっとたのしくなるはず!
BonBonStore主宰の井部さんとのお話、
全4回でおたのしみください。
井部祐子さんのプロフィール
井部祐子
文化服装学院流通専門課程修了後、
有限会社キャパアンドコオに入社、
アパレル、セレクトショップ等に向けたデザイン、
企画、生産まで携わる。
その他、百貨店、専門店における
服飾雑貨コーディネート業務を手がけながら、
広告企画、スタイリング業務や
店舗ディスプレイ業務等も担当する。
2000年に退社後、
商品をトータルプランニング
及びデザインを編集する
BonBonStore(ボンボンストア)を設立。
2014年にはジュエリーブランド<iberi>を立ち上げる。
2015年にはイラストレーター&アートディレクターの
ヒラノマサトオ氏と設立したブランド、
猫の視線をモチーフにグッズをデザインする
<ALAIN et JEAN/アランとジャン>を展開。
その2はじめてのちゃんとした傘。
- 井部
- じつは日本の人って、傘を選ぶ基準が、
とても細かいんです。
とくに高齢のかたがたは、
みんな厳しい目を持っている。
なぜかというと、60年前、
日本が傘の世界的な生産地だったからなんです。
中国生産に移る前のことですね。
だから目が肥えている。
- 伊藤
- へえ!
- 井部
- 日本製の傘のいい時代を知ってらっしゃるのは、
60代、70代ぐらいの方なんですね。
そういうみなさんは、
「折り畳みのサイズはこのくらいがいい」とか、
「手に持ったとき、床に着かない長さがいい」とか、
自分の基準を持っていらして。
ここ5年ぐらい、百貨店でイベント的に
販売をするようになったんですが、
ちょっとボーイズっぽい短めの柄の傘をパッと見て、
「あ、短くていいわね、これ」と、
パッと買われる方がいらしたり。
日本の女性ってすごい! って、
販売してると思いますよ。
- 伊藤
- そういうお客様が、
井部さんに引きつけられるんでしょうね。
その、いい傘の文化を知っている人たちには
パッと分かったことでしょうけれど、
BonBonStoreの傘って、
ビニール傘が当たり前の人にとっては、
どういうふうに見えるんでしょう。
- 井部
- BonBonStoreの傘を使ってくれる若い女性たちは、
学校を出て働き始めたとき、
「ビニール傘じゃまずい!」っていう意識が
芽生えて、いらしてくださるようなんです。
たとえば営業職に就いた女の子は、
年長のおじさまたちと一緒に
よその企業に行く機会が増えるわけですよね。
その時、ビニール傘っていうわけにいかない、って。
- 伊藤
- ビジネスの席では恥ずかしい、と。
- 井部
- そう、「ビニール傘を卒業しなきゃ!」って
思っている子がすごく多いですね。
そういう子がいてくれて、ちょっとホッとします。
- 伊藤
- 身だしなみのひとつなんですね。
それってすごく面白い。
- 井部
- ビニール傘を持っていることで、
いかに自分が幼いのかが分かったと。
そんな若い子が「何か買わなくっちゃ」
って気持ちで来てくれます。
「何色がいいでしょうか」って。
- 伊藤
- どんなアドバイスをするんですか?
- 井部
- 「会社に行くんだったら、
これだとちょっと遊びっぽいから、
もう少し細身で、コンパクトで、
色もあまり激しくない方がいいかも」とか。
他所のオフィスに、
赤い傘を差して行くわけにもいかないから。
だからはじめて高い傘を買おうと思う子には、
あんまり激しい色ではなく、
自分の持ちやすい色をすすめますね。
3年ぐらいしたら、何かちょっと新しいものを
買ってもいいんじゃない? っていうような感じで。
日本の女の子って、オンとオフを
きっちり分けているから、
オフに使うのならば、はじけちゃっても
いいんだと思いますけど、
1本だったら、落ち着いた色を。
- 伊藤
- すごく基本的なことをお聞きしますが、
持ち手を「ハンドル」と呼ぶと、
きょうはじめて知りました。
きっといろんな部分名称があるんですよね。
- 井部
- 私はなぜかハンドルって呼んでしまうんですが、
柄(え)とか、手元とか、
いろいろ呼び方はあるんですよ。
傘にはパーツがいっぱいあって、
それぞれに職人さんがいるんです。
たとえば縫製する人と張る人が一緒で、
石突とハンドルを付ける人はまた別々。
最終的に、メーカーで糊付けをしたり。
つまり、生地、防水&撥水コーティング加工、
骨、ハンドル、縫製、
そして最後にまとめるところで
6社は入っているんです。
- 伊藤
- プラス、井部さん。
- 井部
- そう、私みたいに、デザインをしている人も。
- 伊藤
- この石突の長さも、いろいろですよね。
- 井部
- 「先が尖がってるのが嫌」という人もいれば、
シュッと長いのが好きな人もいます。
でも、最近、よくよく考えたら、
雨の日に使って、傘立てに入れて、
下に水が溜まってることを知らずに置いていたら、
ふやけちゃったり、カビがはえたりしますよね。
石突が長いと、水が溜まってるところに置いてあっても、
ダメになりにくいんです。
世の中の傘屋さんが、石突のうんと短い傘を
作らないのはそういう理由なんじゃないかなって。
- 伊藤
- メーカーとしては、
なるべくリスクを減らしたいですものね。
- 井部
- 1960年代からの高度成長期と共に、
日本のものづくりは、どんどん「売れるもの」を、
っていう発想だから、
1つ1つに思いがあって作られることは、
消えていってしまいましたよね。
ここの、傘をくるくると巻いて閉じるときのための
ネーム布の先につける留め具、
一般的な傘は、ベルクロかホックなんですね。
でもBonBonStoreはフランス式ネームで、
リングなんです。
リングは、美しいけれど、
傘の「露先」(開くと外側になる、骨の先端部分)に
引っかかることがあって、気付かないで開けると、
骨が曲がる原因になったりする。
だから傘屋さん、もう皆ベルクロか
ホックにしたんだと思うんです。
でも、私はボタンやリングを選ぶのもすごく好きだから、
「そこは譲れないわ」って、
フランス式ネームにしているんです。
(つづきます)
2020-06-21-SUN