展覧会「まさこ百景」
全景解説 その5
「ながめのいいもの」
「どうやら黒に目がいくみたい」
2020年8月6日(木)から22日(土)まで開かれる
展覧会「まさこ百景」。
東京・渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」が
どんなことになっているのか、
開催前日に撮影した写真と解説でお届けします。
写真=有賀傑
ながめのいいもの
ながめてうれしいのは、見ていて飽きのこないもの。
それから美しいもの。
‥‥とはいっても私の「ながめのいいもの」は、
テープカッターだったり鉄のアイロンだったりと
案外質実剛健です。
もともとオブジェのようなものより、
なにか目的がある「道具」が好き。
そして道具としての用途がありながらも
姿が美しいものが好きなのです。
(伊藤まさこ)
【出展するもの】ビーズのブレスレット/テープカッター/ガラスポット/リネンのバッグ/コーヒードリッパー/木のトランク/鉄のアイロン/茶漉し/消しゴム/ハリネズミの灰皿/ハンガー/魚のいれもの/スティーグ・リンドベリの絵皿/コーヒーミル/ピッチャー
このコーナーは、右端に、勝山八千代さんによる
ドアのイラストレーション、
その下にある「鉄のアイロン」からはじまります。
「ヨーロッパのアンティーク屋さんや
蚤の市でよく見かけるものなんですが、
かわいいけど別に使わないしな、
と思っていたんです。
でも、本来の使い方はしなくても、
『そうだ!』と、使い道を思いついたら、
すごくほしいものになりました。
その役割がドアストッパーだったんですよ」
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/08/MG_1153-800x800.jpg)
ヨーロッパの鉄のアイロン君も、
ニッポンに来てドアストッパーとして仕事をするとは、
思ってもいなかっただろうなぁ!
このコーナーの右側の「気持ちいいって大事です」には
「ないから、作ろう」なもの。
ここには「ないから、代用しよう」というものが
たくさん並んでいます。
ここまで見てくると、
いかに伊藤さんが「さがしもの名人」か、
感服しちゃうんですが、
やっぱりいつもなにかを探しているんですか。
「海外の蚤の市に行くときのように、
いつでも鵜の目鷹の目というわけじゃないですよ。
ふだんは、欲しいものって漠然としてますし。
でもね、それを友だちに言ったりすると、ふと、
『こんなのあったよ!』って写真を送ってくれたりする。
すると『そう、これこれ!』っていうものが見つかる。
そういうふうにして家に来たものも、多いんです。
だから、ぼんやりでもいいから、
こんなものがあったらいいのに、って言っているのは、
結構大事かも」
そうやって集まるんだ‥‥。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/08/MG_1156-800x800.jpg)
そうそう、代用、という意味では、
フィンランドの古い木のトランク。
旅に使うことはもちろんなくって、
プロジェクター入れにしているんですって。
機械を出しっぱなしにしておくのがいやで、
納戸に入れていたのだけれど、
使う時にいちいち出すのも面倒。
それで、このトランクに入れてリビングに置けば、
景色としても「よし!」。
なるほど、景色がいいって大事です。
(って、そういうテーマの展覧会でしたね。)
どうやら黒に目がいくみたい
器に鍋、ゴム手袋‥‥家の中の黒い道具。
それらを使うたびに思うんです。
ああ、黒って暮らしの引き締め役なんだなぁってね。
それともうひとつの気に入りポイント、
それは女々しくないところ。
「かわいい」は好きだけど「女々しい」のはイヤ。
この微妙な気持ちに黒い道具はしっくりくるのです。
(伊藤まさこ)
【出展するもの】パラティッシ/シリコーンツール/おわん/バケツ/がま口/鋳物の鍋/ゴム手袋
黒一色の世界。
でもそこにはニュアンスがあります。
「漆器の黒と、シリコンの黒、
同じ黒なのに質感がちがう。
そういうところにも魅力を感じるのかな」
と、展示を終えて伊藤さん。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2020/08/MG_1161-800x800.jpg)
琺瑯と同じで、
自分が「黒が好き」だとは思っていなかったそう。
でも自然にいっぱい集まっちゃうのは、
どうやらそうらしい‥‥、
と認めることにしたんだそうです。
黒を置くと、空間がキュッと締まるのも好き。
「バスルームは、基本的に白い空間でしょう。
最初は脱衣かごに、木製のものを使っていたんですが、
この黒いバケツのほうが衛生的だし、
白いなかに置くことで、
すごく締まった印象になりました」
展覧会「まさこ百景」
■日程
2020年8月6日(木)~22日(土)
■場所
渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」
■時間
11:00~20:00
■入場料
無料
※混雑した場合は、入場時間指定の整理券をお配りします。