この本は、
もうひとつの展覧会会場です。
「weeksdays」ではじめての書籍、
『まさこ百景』ができました。
8/6(木)に先行販売をスタートする
書籍『まさこ百景』。
本ができるまでのことを思い出しながら、
どんな本になったのか、解説します。
たのしい本が、できましたよ!
こんにちは、編集のです。
と、めずらしく立場と名前を書いているのは、
きょうはその「編集者」の立場で
「伊藤まさこさん、すごい!」を書きたいからです。
伊藤さんといっしょに本をつくりました。
名前を『まさこ百景』といいます。
そう、渋谷パルコ「ほぼ日曜日」で開催の
展覧会「まさこ百景」と同じタイトルです。
‥‥ということは、展覧会カタログ?
「そうです」と言ってもいいかもしれません。
でも、「展覧会をまとめた本」でもないんです。
どっちかというとこの本を先につくって、
展覧会の構成を決めた、というところがあります。
だから内容はきちんと重なっているんですけれど、
この本はちゃんと本として成立しています。
展覧会を補足するもの、というよりも、
「みなさんのところで開かれる、
もうひとつの展覧会」がこの本です。
最初は「カタログをつくろう!」だったんですよ。
なにしろ「あったらうれしいね」が
「weeksdays」チームの合言葉。
続く言葉は「じゃあ、作っちゃおう」なのです。
そこで考えはじめました。
伊藤さんの100の好きなものを集めた本、
ちゃんと全部を網羅しようよ。
じゃあ、写真はちゃんと撮りたいね。
文章も、伊藤さんのことばで読みたい!
でも、それなりの「アイテムの解説」もあるといいよね。
いま買えるものもあるの? じゃあ、それは
連絡先リストも載っているほうが親切だよ。
‥‥と、話がふくらんでいきました。
でも、日々、それなりに多忙。
ほんとに100点、書くの? 撮るの?
で、まずは撮影をしました。
撮影といってもコンセプトは大事です。
「ほんとうに部屋にあるように」撮るか、
「もの自体を切り抜きで」撮るか、
そこから考えたのですが、
「あえて、ものに寄って写真を撮ることに。
そこに写ってはいなくても、
ものの後ろにそよぐカーテンまで想像できる、
そんなところまで作り込むのが
伊藤さんのやってきた仕事。
そこであえて部屋の気配をなくし、
見た人、読んだ人に想像してもらえる
スタイリングをしています。
背景は「色にしよう」と、
チームデザイナーのが
「わたし、塗ります!」と、
ホームセンターで大きな正方形の板を買ってきて、
手配したすてきなペンキ(そのペンキも、
100のアイテムのうちのひとつです)で、
5つの色で塗り、背景ボードをつくりました。
それを伊藤さん宅に搬入、
2日間の合宿で、100点を撮りました。
立ちあったものたちは「すごい撮影だった」と
遠くを見る目をしたのですが、
伊藤さん本人は
「たのしかったー! そんなに忙しくもなかったよ。
だって、途中でおやつとか、食べてたもの」。
▲伊藤さんが焼いてくれたプリン。
おそろしい。ただでさえ仕事のはやい人なんですが、
このときも、おどろきました。
そして原稿です。
撮った写真をカラープリントして、
伊藤さんと並べて順番と章だてを構成。
同時にエディトリアルデザイン担当のが
ページデザインのラフを作成、
書籍イメージをつくりあげる作業。
見開きで1アイテムと決め、
左ページに写真、右ページに文章。
その文章は「このくらい入れるとちょうどいい」
というあんばいをかんがえました。
「わたし、書くよ~!」
と、最初はのんきに話していた伊藤さんでしたが、
さすがに100本ノックはきつかった。
何度か「むりかも~」という嘆きをききましたが、
「だいじょうぶです! できます!」と、
言うしかない私たち。
およそ1週間のひとり合宿で脱稿してくださいました。
それを受けて、が文字組み。
同時に「脚注」を、ぼくが
書き、合体して入れることになりました。
「なくても成立しますよ」
とは言われたんです。
でも、伊藤さんの、あののびのびとした筆致を、
事実で裏付けるような「組み合わせ」が
必要だと思ったのです。バランスとして。
そこではメーカーやブランドのことだったり、
アイテムの背景を、別の視点から伝えたかった。
なので、1点ずつ「調べる」作業からスタート、
こつこつパソコンに向かってまとめました。
時間も手間もかかりましたが、
これは、伊藤さんの「ほしい」を探る、
心の旅をしているみたいで、楽しかったです。
さらに、とが
「現行商品かどうか、その場合問合せはどこか」
などを調査、精査、先方にチェック。
チームのをまきこみつつ、
「weeksdays」全員で本をつくっていきました。
デザインが組み上がると、印刷所のお世話になるんですが、
同時に、内容の校正もすすめなくてはいけません。
プロの校正の会社に依頼をすると同時に、
何冊も書籍を手がけてきたが素読み。
もちろん伊藤さん、ぼく、
プラス事実確認チームのチェックもあるので、
5者からの朱字が入ったわけです。
でもまあこのあたりは、
ふつうに「書籍編集」でする、当たり前のことなので、
大げさにたいへんだったと言う必要はないですね。
そうして迎えたコロナ禍。
展覧会は延期となり、本もいったん「塩漬け」というか
「休眠」させることになりました。
やっと自粛期間があけてすぐ、すこしずつ出社がOKと
なってきたころに再スタートした書籍プロジェクト。
そうするといろいろと「直したい」ところや、
「時間が経って変わっちゃった」ことも出てくるので、
もういちど遠慮のない朱字を入れて修正。
二度の印刷所との往復を経て、
ようやく校了した、という次第です。
ということで!
章だては11。
こんな構成になっています。
●わたしの生活必需品
フライパン/アイロン/蒸篭/キッチンクロス/カッティングボード/ハンカチ/はさみ/小ひきだし/銀メッキのお盆/救急箱
●気持ちいいって大事です
バスマット/キャミソール/ネックピロー・アイピロー/ビーチサンダル/ローブ/ヴィンテージリネン/ルームパンツ/カシミアニット/ブランケット
●なんで同じものがいくつもほしくなっちゃうんだろ?
鍋敷き/エッグスタンド/トレー/鍋/バターナイフ/”竹ざる/”/豆皿/ミルクピッチャー/カトラリー
●お金をかけなくてもいいものってある
紅茶缶/ステンレスのカップとレンゲ/クラフトペーパーとバッグ/石/アルミのヘラ/保存袋/ワインのコルク/紐/綿棒/桜の楊枝/ペーパーナプキン/ワインの木箱/れんげ
●思わずにっこりしちゃうもの
ルームシューズ/花柄エプロン/本/エッグカートン/はちみつ/オットマン/ミーシャのおきもの
●なにしろ琺瑯が好きなもので
バット/北欧のケトル/ランプシェード/工具入れ/洗面器/チェコのケトル/保存容器
●Clean up⤴︎ではなくKeep→です
(ときどきもようがえ)
たわし/スポンジ/ウェス/ほこりとり/ほうき/ブラシ/ペンキ
●どうやら黒に目がいくみたい
パラティッシ/シリコーンベラ/おわん/バケツ/がま口/鍋/ゴム手袋
●ながめのいいもの
ビーズのブレスレット/テープカッター/ガラスポット/リネンのバッグ/コーヒードリッパー/木のトランク/鉄のアイロン/茶漉し/消しゴム/はりねずみの灰皿/ハンガー/魚のいれもの/スティーグ・リンドベリの絵皿/コーヒーミル/中里花子さんのピッチャー
●ずっと好きなもの
母のクッキーの抜き型/ランチボックス/柳のかご/椅子
●This Is My 定番
グラス/肉切りナイフ/時計/ものさし/銅鍋/暦帖/糸切りばさみと白樺のサック/スーツケース/菜箸と盛りつけ箸/消火器/鋼正堂の耐熱皿/コンバース
‥‥すごいでしょう。これだけ詰まってます。
ほんとうに眺めていたい景色のような写真と、
伊藤さんのエッセイ、プラス脚注。
シンプルなつくりですけれど、
読んでいて読み飽きない。
見ていて見飽きない、
そんな「いい風景」の本ができました。
8/6(木)、
展覧会会場と「weeksdays」サイトで先行発売。
一般発売は8/25(火)です。
みなさま、ぜひ手に取ってみてくださいね!
書籍『まさこ百景』
著者:伊藤まさこ
236ページ/オールカラー/B5変形/ソフトカバー
ISBN:9784865014488
販売価格:1,980円(税込)
先行発売:8月6日(木)
一般販売:8月25日(火)
※「ほぼ日曜日」会場限定で
著者サイン本を限定数ご用意します。