暦の上では季節が変わったはずなのに、
暑さはまだまだ。
衣替えをしたいけれど、
気候だけじゃなく、心もなんとなくついていかない。
ましてや出かけたり、人に会う機会が減った今、
おしゃれのことって、どう考えたらいいんだろう?
そんな話がしたくって、
伊藤さんの尊敬する先輩のひとりである
エディトリアル・デザイナーの
若山嘉代子さんに会いました。
在宅での仕事が増え、会議もオンライン、
仕事の納品もデジタルで‥‥。
そんななかで、若山さんは「季節」のこと、
どうとらえているんでしょう?

若山嘉代子さんのプロフィール

若山嘉代子 わかやま・かよこ

1953年岐阜県生まれ。エディトリアル・デザイナー。
(エディトリアルとは「編集の」という意味。)
1980年に縄田智子さんとともに
デザイン事務所「L’espace(レスパース)」を設立。
料理家の有元葉子さん、
エッセイストの平松洋子さん、
服飾スタイリストの原由美子さん、
料理スタイリスト堀井和子さん、
そして伊藤まさこさんなどの数々の書籍や、
雑誌・CD、紙袋、パッケージなど、
多くの印刷物を手がける。
アパレルブランド「nooy」の若山夏子さんの叔母でもある。

■L’espaceのウェブサイト

その1
衣替え。

若山
今日は、朝の早い時間にしていただいて。
大丈夫でした?
伊藤
全然! 早起きなんです。
若山
今年は浴衣を着ないで終わっちゃうから、
夜、浴衣を着て出かけましょうということになり。
そうなると、午後の対談では、
ここに浴衣で来ることになりそうで、
それも変だな、と思い、
いちど帰宅できる時間に
変更していただいたんです。
伊藤
浴衣でも、大丈夫でしたのに!
若山
でもね、「写真を撮ります」っておっしゃっていたし、
掲載される頃は、
いくら暑さが残っていても秋なのに。
伊藤
それもそうですよね(笑)。
若山さんは、この夏、いかがでしたか。
わたし、すっごく夏に弱いんです。
夏に弱い人と、冬に弱い人がいますけれど、
どの季節がお好きですか。
若山
うーん、どうでしょう? 
あんまりどの季節、というのが
ないかもしれません。
伊藤
若山さんには、夏が苦手という印象はないんですよ。
若山
そうですね、どちらかといえば、
子どもの頃から寒いほうが嫌だったかな。
あっ、今、苦手な季節は春かも。
というのは、この何年か、花粉症がひどくなって、
「春は早く過ぎて!」となってしまって。
ちょっと悲しいですよね。
そう考えると、やっぱり秋がいいかな?
伊藤
わたしはもう、ほんとうに、暑さが苦手で、
夏は仕事もできないくらいなんです。
8月は夏休みと称して仕事をすこしセーブして、
犬みたいにダラーっとしていました。
早く秋になってほしい気持ちがあるので、
サンダルも9月になったら仕舞っちゃうんですよ。
若山
あら、そうなんですね(笑)!
伊藤
そうすることで、
区切りが欲しいのかもしれないです。
そういえば若い頃は
「3月になったら、靴下は履かない!」
って宣言して、実行してました(笑)。
若山
寒いのに、まだ、3月って。
伊藤
寒い日があっても、がんばるんです。
4月からは、履かなくても
寒いって思わなかったかな。
なにしろ暑がりなので。
若山
それじゃ、9月にサンダルをやめて、靴にしたら、
足元がポカポカしすぎちゃうんじゃないですか。
伊藤
それが、首まわりが開いていれば、
足元はあったかくてもまあまあ大丈夫。
だから、9月になったら、足元だけは、
冬の靴に変えてきたんですよ。
若山
わたしはそもそもサンダルを履かなくなりました。
すごく疲れる気がして。
伊藤さんはおしゃれで元気だけれど、
わたしは‥‥。
伊藤
いえいえ、若山さんのスタイルは、私の憧れです。
今朝も、娘に
「今日、若山さんいらっしゃるんだよ」と言ったら、
すごく嬉しそうだったらしくて、
「ママ、ほんとに若山さんのこと、大好きだよね」
って(笑)。
ふたりで「素敵だもんね~!」って。
若山
いやいや、とんでもない(笑)。
でも、うれしいです。
伊藤
chizuさんとともに、憧れの先輩です。
若山
chizuさんは、すごく素敵ですよね。
なにを着てもchizuさんらしい。
彼女のおしゃれについての
本を作ったことがあるんですけど、
「こういうふうにしたらいいのよ?」って言われても、
それはchizuさんにしか似合わないだろうな、
っていうことも多くて(笑)。
参考にならないことも。
伊藤
わたし、ずいぶん若山さんを
参考にさせていただいたんですよ。
「若山さんがパールのネックレスをしてて、
とってもかわいかったから、わたしも!」とか。
若山さんを見ていると、おしゃれって、
流行とかじゃないんだと思えるんです。
おしゃれな人の定義って、
自分に似合うものが分かってる人なんだなって。
若山
そうですか? 
おしゃれは得意じゃないっていうか、
歳をとって、似合うものも減ってきました。
伊藤さんはいつもおしゃれだけれど、
とくに気にかけていることはあるんですか。
伊藤
わたしはとにかく
暑くない恰好をしているだけなんですけれど、
この歳になりましたから、
清潔感には気をつけています。
髪の毛をちゃんと切ったり。
そういうことが、
すごく大事だと考えるようになりました。
若山
そうですよね。
でも「この歳」って言うけれど、
まだ若いでしょう?
伊藤
50歳になりましたよ。
若山
若いじゃないの(笑)。
伊藤
ありがとうございます(笑)。
若山さんは季節ごとにきっちりと
衣替えをなさるんですか。
若山
もちろん着るものは変わりますけれど、
一気に取り換える、ということはないですね。
全部の季節のものがクローゼットに入っています。
伊藤さんは?
伊藤
わたしはします。いま着ないものは、
実家に持っていって保管して、
季節のたびに取り換えているんです。
もちろん素材やかたちによっては、
夏から着ているワンピースをそのまま
秋に着ることもありますけれど。
若山さんは、お洋服は、
どんどん変わっていきますか? 
毎シーズンあたらしいものを買って、
そのぶんを整理している、という印象は、
若山さんからはあまり感じないんですけれど。
というのも、ずっと前から、若山さんって、
イメージが変わらないんですよ。
色もそうですし、足もともかっちりした靴をはいて。
そんな若山さんのスタイルがあるように思えて。
若山
もちろんあたらしいものを買ったりはするけれど、
捨てることが、あんまり得意じゃないのね。
だから、着なくなった服は姉に送っています。
器用に直したりして、とても喜んでくれます。
伊藤
今日の服も素敵です。
若山
今日の服は珍しいかな、
最近、歳をとったので、
派手なものも着るようにしていて。
ほら、コロナで買い物に行かなくなっちゃったでしょう? 
わたしも家でテレワークになっちゃったから、
スポーツウエアみたいなものが多くなって。
(つづきます)
2020-09-13-SUN