day 1/私の旅じたく
今週の「weeksdays」は、
新製品の紹介と販売をお休みといたします。
かわりに、この7日間は、伊藤まさこさんが、
リサーチと取材のために出かけている
「とある場所」からのエッセイをお届けします。
伊藤さんの旅じたくのようすから、現地でのこと、
いろんなくふうなどを、ちょっと時差はありますが、
毎日ひとつ、更新していこうと思います。
どうぞ、おたのしみに!
旅の前はいつも慌ただしくて、
あれも持っていかなきゃこれも持っていかなきゃと
頭の中では思うものの、
なかなか思う通りにはならない。
知人の建築家は出発する1週間ほど前から
リビングにスーツケースを広げ、
必要そうなものをポイポイとそこに投げ入れていくとか。
「出かける当日はパタンと閉じるだけ」と言っていて、
それはなかなかいいアイデアだなぁと感心したものの、
スーツケースが部屋にあるのも
なんだか落ち着かないような気がして、
実現にはいたっていない。
それで結局、
パスポートとお金とカードがあれば大丈夫なのでは?
あとは困ったら買えばいいさ、
というおおらかな(半分投げやりな)気持ちになって
準備は出かける当日の朝か、
もう少し気持ちに余裕のある時は、前夜ということになる。
それがここ最近の私の旅支度の傾向。
それでも、パスポートとお金と‥‥
というわけにはやっぱりいかない。
旅ごとに「どうしても」必要なものがあるのです。
今回、パスポートの次に用意したのは塩。
あの、しょっぱい、SALTです。
というのもこれから滞在する街に
世界一好きなステーキハウスがあるから。
そしてそこはなぜかメインのステーキは、
肉質といい焼き加減といい、
最高に申し分ないのにソースがからきしだめ。
肉の味がぜんぶ消えて
口の中がソースの味だらけになってしまう。
この味大丈夫? と、
毎回まわりのテーブルを見回すのだけれど、
みんないせいよくドボドボとソースをかけてる。
塩。この肉を味わうのは塩だけでいいんだよ‥‥
と思いながらステーキを噛みしめるのです、毎回。
さて、塩を準備してひと安心した私が
次に用意したのは、
エアパッキンと紙、それから箱。
まだ出発もしていないのに、
もう買ったものを持って帰るときのことを考えている。
だってせっかく買ったジャムや
ピクルスの瓶が割れていたら悲しいでしょう?
ちょっとくやしいでしょう?
だから万全を期すための策なんです。
箱はクッキーやケーキなんかの焼き菓子を守るため。
こうして今まで世界中の
「こわれやすくておいしいもの」を
持って帰ってきたのです。
次に用意したのは本。
長いフライト、あまりよく眠れない私は
時間を持て余すことが多い。
そのための本でもあるけれど、
時差ぼけで寝つけなかったりするときに読むこともある。
なれない言葉で日中過ごしたとき、
日本語を読んで心を落ち着かせる、
そんな役わりもあるのです。
今回は定番の向田邦子さんにくわえて、
沢村貞子さんと開高健さんにしてみました。
小さな文庫の文字を読むとき用の眼鏡もわすれずに。
ホテルですごす時の必需品は
着慣れたパジャマと歯ブラシと歯磨き粉。
至れり尽くせりの日本のホテルと違って、
それらのアメニティがあまり充実していない海外。
わりといいホテルでも
なぜか歯ブラシはないことが多いのです。
あったとしても日本のとくらべて格段にサイズが大きい。
だから使い慣れている歯ブラシを持っていくというわけ。
歯磨き粉は小さなサイズのものを
わざわざ準備していくことはなくて、
いつももう少しでなくなりそうなものを
持っていくことにしています。
外貨は国ごとに分けて瓶に入れています。
なんといっても便利だし外から見えて分かりやすい。
それをガイドブックの横にずらりと並べていて、
いざ出かける時に、ささっと取り出す。
マイユのマスタード瓶に入っているのは、
イギリスのポンド札。
エリザベス女王がにっこりしているのが目に入るけれど、
今回の行き先はイギリスではありません。
さてどこかは、また明日。