「weeksdays」初登場となるSLOANE(スローン)。
長くアパレルに携わってきた男性ふたりが
「自分たちのために」と立ち上げた、
ユニセックスのニットブランドです。
サイズ違いで男性も女性も着られるといういさぎよさ、
上質な天然素材を使い、
ベーシックだけれど丁寧なパターンと縫製、
華美になりすぎない、けれども上品なデザインで、
まいにち着ても飽きのこない、
上質な日常着を展開しています。

ブランドを立ち上げた大貫さんとプレスの森内さんに、
伊藤さんが、ブランドのこと、つくりかたのこと、
素材のことなどをたずねました。
「歳を重ねたからこそ」わかることっていっぱいあるし、
それはとっても豊かなことなんです。

SLOANEのプロフィール

シルク、ウール、カシミアなど
上質な天然素材をデイリーウエアで展開する
SLOANE(スローン)は、
ニットの会社である株式会社ヴェンティウーノの代表であり
ニットのスペシャリストである大貫雄さんと、
数多くの海外ブランドに携わってきた
ディレクター/デザイナーの小峰明彦さんが立ち上げた
ユニセックスのニットのブランド。
「自分たちが心地よいと感じる服を」と、
2016年秋冬コレクションからスタート、
次のシーズンからプレス担当として
森内敏子さんが加わり、
男性目線のデザインに
女性目線の着心地を兼ね備えたアイテムを展開している。
現在はニットのほか、
布帛の製品(パンツやスカートなど)も。

直営店「THE SHOP SLOANE」が
東京・自由が丘と神戸・元町にあるほか、
全国のセレクトショップでの販売を行なっている。

SLOANEのウェブサイト

その1
日本人の体型に合ったニットを。

伊藤
「weeksdays」では「はじめまして」ですね。
個人的にずっと着ているニットなので、
こうして紹介させていただけることを
とてもうれしく思っています。
ブランドの立ち上げは
2016年秋冬と聞きました。
大貫
はい、この秋冬でちょうどまる6年です。
伊藤
会社は、もっと長いんですよね。
大貫
そうなんです。SLOANEは
ヴェンティウーノという
ニットの会社が母体のブランドですが、
その会社自体は28年目になるんですよ。
伊藤
その会社を、大貫さんがなさっているんですよね。
大貫
はい、12年前に、先代から引き継ぎました。
その歴史を考えると、
SLOANEは日の浅いブランドなんです。
伊藤
SLOANEを立ち上げた経緯は
どんなことだったんですか。
大貫
当時、6、7年前、特にメンズのニットは
クラシコ・イタリアのブランドや
英国のものが主流で、
自分たちもよく着ていました。
けれども、ヨーロッパのものは、
タイトめに作られてるというか、
身体へのフィット感がかなり強いんです。
そこで、今もSLOANEのデザインをしている
ディレクターの小峰明彦とふたりで立ち上げました。
ふたりとも比較的、
ピタッとした服があまり得意ではなかった。
そこで、日本人の体型に合ったニットをつくりたい、と。
伊藤
たしかにヨーロッパのデザインって、
スタンダードな男性服、シャツやニットなどは、
ぴったり目のものが多かった気がします。
大貫
そうなんです。ですから、背が低い人も、
ぽっちゃりした人も、大きめの人も、
着て、すっきり見えるようなシルエットを考えようと。
それから、自分が歳をとってきて、
首周りの開き具合なども気になり始めました。
たとえば衿が詰まっていると、品が良く見える。
そういう要素を取り入れて、
自分たちで作れたらいいよねという話が、
SLOANEの立ち上げにつながっていったんです。
伊藤
もともとニット専業の会社ですから、
立ち上げはしやすいですよね。
大貫
そうなんです。でも、じゃあどんな工場と組む? 
という話になり、僕らは国内生産にしようと決めました。
日本の工場、海外の工場ともに
長いお付き合いがあるんですけれども、
SLOANEは国内でものを作りたいと。
伊藤
そうお考えになったのは‥‥。
大貫
ニットって、工場の方と
こまかなニュアンスを共有することが
とても大事なんです。
イタリア、フランス、中国、タイ、
世界の各地に工場があるわけですけれど、
どうしても言葉の壁がありまして。
ニュアンスを丁寧に、細かく伝えることが難しい。
たとえば裾のゴムのテンションを、
もう少しだけ強くしたいんだよねっていうのも、
日本語なら、その言葉の強弱で、
「もう少しだけ」っていう言葉に
どのくらいの意味があるのか、
なんとなく伝えることができるんですね。
でも、それを英語で伝えるにしても、
現地の言葉に翻訳して伝えるにしても、
語学力の壁が立ちふさがるんです。
SLOANEの、ほんとうに細かなところまで
丁寧に気を配りたいというつくりかたは、
日本で、日本語でやりとりをするほうがいいな、と。

国内の工場、ニットだけでも7つのところに
お願いをしているんですが、
皆さん個性があるんですよ。
同じデザイン、パターンの仕様を出したとしても、
表情がすべて異なります。
伊藤
そうなんですね。
大貫
衿は丸が得意か、台形っぽいほうが得意かとか。
また、きれいめなものが得意なところに、
カジュアルなものを依頼しても違うんです。
伊藤
尚更、国内ですね。
そんなに微妙なニュアンスの違いがあるのに、
海外で意思の疎通ができないと困っちゃいますよね。
大貫
そうですよね。
だから国内の工場に依頼をするときには、
必ず直接出向いて話をしています。
細かな共有をしたいということに加え、
編んでいる人たちの顔を見ながら
ものを作るっていうこともすごい大事で。
その商品に意思が入る、とまでは思わないですけど、
やっぱり作ってくれる人が喜んでくださるような
僕らの会社でなければいけないなと思っています。
だから、意思疎通ができる工場と
取引をしているということが大事だと思います。
伊藤
工場といっても、
きっと、手作業の部分も多いんでしょうね。
大貫
そうですね。編むのは機械なんですけど、
前身ごろ、後ろ身ごろ、アーム、衿と、
パーツごとに編んだものを、
リンキングっていう手作業で、
針を目の穴に刺して繋げていくんですよ。
大変な作業なんです。
そのリンキングの糸の刺し方を、
テンションを甘くしてくれる方と
きつめにする方がいたとしたら、
仕上がりの印象や着心地が変わります。
いろんなニュアンスがあるので、
ニット製品づくりは
一筋縄じゃ、なかなかできない。
編み時間もかかるし、
でき上がる時間がかなり長い商品なんです。
伊藤
なるほど。細かな提案を、直接、工場のみなさんに。
大貫
商社を入れて依頼する方法もあるんですが、
そうすると、細かな指示も伝言になるし、
そもそもどんな工場に依頼しているのかすら
わからないことがあるんです。
僕らの場合、糸屋さんも直接やり取りをしています。
だから比較的細かなところまで、
直接伝わるのかなと思ってます。
伊藤
おもしろいですね、
男性ふたりでスタートした
ニットのブランド。
まず最初は男性目線だったということも
ユニークだと思いました。
大貫
小峰はもともと、ピレネックスのダウンや、
クロケット&ジョーンズの靴、
皮小物のホワイトハウスコックスなどを扱う会社の人間で、
数年前に日本でカナダグースに火がついたとき、
世界に向けてのデザインに関わっていた、
メンズ業界では有名な人なんです。
その小峰と組むことも含め、
SLOANEは自分たちが着ることを考えて、
男性目線の発想で始まったと言えますね。

けれども、実際立ち上げることになって、
もうひとり、ちがう目をもつ人がほしいと思いました。
それで、小峰が知り合いだった森内に声をかけたんです。
伊藤
森内さんは、もともとは?
森内
ずっとアパレルのプレスで、
ユナイテッドアローズには
20年近く在籍していました。
その前はBEAMSにちょこっとだけ。
その後、マディソン・ブルー、ラスティークを経て、
SLOANEに来たんです。
大貫
せっかく来てもらったのに
SLOANEがちゃんと育たなかったら、
森内のキャリアに傷が付いちゃうと、
ぼくも緊張して(笑)。
そうしたらひとめで気に入ってくれて。
伊藤
それで、いまのようなユニセックスの服の
展開の基盤ができていったんですね。
大貫
はい。男性目線でものを作るけれど、
男性にも女性にも
着ていただけたらいいなっていうところから
スタートしたブランドです。
当時はユニセックスのニットって、
ほぼ、なくて。
伊藤
そうですよね!
今でこそちょっとずつ
増えてきたような気がするけれど。
大貫
今も多くはないですよね。
伊藤
わたしがSLOANEをいいなと思うことのひとつが、
「こんなふうに着たい」と思うときの
サイズの選択肢があること。
でも今回は「はじめまして」ですから、
ネットで買うお客様が迷わないよう、
「サイズ2」のみを取り扱わせていただくことにしました。
5つある中で2を選んだのは、チームの皆で着て、
2がベストだねっていうことになったからなんです。
お店では同じかたち・色で5つのサイズがあるんですよね。
大貫
はい。毎年、お客様の気分であったり、
バイヤーさんのニュアンスも変化するなかで、
どのサイズがいいかということも変わると思うんです。
ブランドをスタートした頃は、
サイズ1~2を女性にお買い求めいただいて、
3、4、5というのは男性向けの展開ですということで
説明していたんですよ。
僕らもそのつもりでしたし、
バイヤーさんからも
それで発注をいただいてたんですけど、
いまはビッグシルエットを着られる女性も多いですし、
合わせるボトムスであったり、髪型も含めて、
そのときの気分によって着方を変えますよね。
だから1人のお客様でも、
いくつかのサイズをお持ちというケースも。
伊藤
私も、2がベースなんですけれど、
3・4も持っているんです。
このデザインだったらたっぷり目に4でもいいかなとか。
つくりもしっかりしているし、ほんとうによく着ています。
(つづきます)
2021-04-04-SUN