REPORT

ミラノ 小林もりみさん[1]
赤・オレンジ・黄色、
ロックダウンの規制の3つの色。

コロナ禍のなか、伊藤まさこさんが、
世界各国の9つの街に住む友人たちと
オンラインで話をしたのは、
ちょうど1年前のことでした。
「1年後にはきっと会えるね」
‥‥なんて、そのときは思っていたのに、
いまも、わたしたちの暮らしは、ままならないまま。
ひさしぶりにみなさんに連絡をとり、
それぞれの様子を綴っていただくことにしました。
遠い町のようすを、たっぷり、連載でおとどけします。

(前回のオンライン対談は、こちらからごらんくださいね。)

登場するみなさま

(登場順)
ストックホルム‥‥明知直子さん
ロンドン‥‥イセキアヤコさん
ホーチミン‥‥田中博子さん
パリ‥‥鈴木ひろこさん
ハワイ‥‥工藤まやさん
ミラノ‥‥小林もりみさん
メルボルン‥‥田中博子さん
ニューヨーク‥‥仁平綾さん
ヘルシンキ‥‥森下圭子さん


小林もりみさんのプロフィール

こばやし・もりみ
丁寧に作られたイタリア食材を直輸入する
カーサ・モリミ代表。
ミラノ在住11年目。

ライフスタイルに特化したプランニング会社に勤務した後、
2000年カーサ・モリミ設立。
2009年スローフード協会が運営する食科学大学大学院へ。
イタリアに拠点を移す。

“Food as Life Style よく食べることは、よく生きること”
“You are what you eat 台所から始まる、豊かな暮らし”
こうした信念から、添加物不使用、
手間と時間をかけたナチュラルな美味しさを
イタリアから日本に紹介している。

2011年の東日本大震災後、福島の子どもたちの
イタリア保養を行うNPO“オルト・デイ・ソーニ”
をミラノにて仲間と設立、代表を務める。

2014年より母校である在ピエモンテ州ポレンツォの
食科学大学大学院にて
非常勤講師として日本の食文化を担当する。

カーサ・モリミのウェブサイト

■Instagram
@morimicucinetta
@casamorimi

■Blog
イタリアの小さな台所から

■note
https://note.com/casamorimi


黒い身体に黄色のくちばし。
小さなツグミがベランダの花々のところに
また姿を見せ始め、
朝のベランダにふたたび陽が差し込むようになり、
中庭の淡いピンクの椿が咲き誇る季節が
また巡ってきました。

▲中庭の椿。

コロナがイタリアにやってきてから、もう1年。
この文章を書かせていただくにあたり、
1年前の記事を再読すると、
まるで遥か彼方の遠い出来事のようです。

夏場には少し落ち着き、
州を超えての移動ができて、
ギリシャなどの海外に
バカンスに行った人々もいて。

私自身も8月の末に、
ずっと会えなかったトスカーナの親友と合流し、
ルネサンスの画家・ラファエッレの
没後500年の展覧会を目的に、
ひと気のないローマへ週末旅をしました。
観光客がいないローマは、
圧倒的なその美しさを持て余し、
空悲しくさえ見えました。

▲がらんどうのローマ・ナヴォナ広場。

今ではこうした夏の出来事さえも、
遠い昔のように感じてしまいます。
州を越えた移動も制限され、随分と時間が経つ今、
あれはもしかしたら幻だったのかしら? と。

つかの間の夏が終わって、また感染が増え始め、
秋からは、赤・オレンジ・黄色という
ロックダウンの規制度合いを示す3色によって
私たちの暮らしの行動範囲が
決められるようになりました。

数週間に一度、
政府からどの州がどの色になるかが発表になり、
今度はまた赤か、やっと黄色に戻ったか、という感じで
社会と経済が
それぞれの色のルールに沿って動いていきます。

私の住むロンバルディア州は、
もう20回近く色が変わっているそうです。
数ヶ月前からは“濃いオレンジ”なるものまで
でてきて、もうさっぱり訳がわからない状態です(笑)。

田舎に家がある人は、
色によってずっと都会に缶詰になるか、
あるいは週末には自然の中で過ごせるかが決まる訳ですが、
セカンドハウスもない私には、
どの色になろうとも影響があるのは、
何のお店が開いていて、
バールに座って朝ご飯が食べられるかが変わるぐらい、
と心得てきました。

▲近所の様子です。

1年前には、行動範囲は家から200m以内、
などの厳しい規制がありましたが、
今は緩く、サステナブルなものになっています。
なんといっても長丁場ですから。
心身の健康のために、当然ですね。

家族の絆を大切にするイタリア人にとっての
重要なイベントのクリスマスもイースターも、
一番厳しい「赤」でした。
招待して良いのは、一世帯につき1日1回2人まで。

クリスマス前に政府の方針が決まるまで、
“田舎のマンマに会えるのか?”などという感じで
イタリア人は固唾を飲んで
見守っている感がありましたが、
おじいさんおばあさんを守るためにも
大勢で集まるのは無理だろう、
という心算はあったようで、
わりとすんなり、
「やっぱり、そうか」
と受け入れていた感じでした。

つい先日のイースター休暇も、
また再度「赤」のロックダウンに。
ただ、たとえ「赤」であっても花が咲き誇る、
新緑の公園に毎日足を運べ、
友人たちと公園で落ち合って一緒に散歩もでき、
家族のような友人たちとは、
招待2人を守って時には食事も一緒に。

▲住まいの近くにある公園。

夜10時には家に戻っていなくてはならないとはいえ、
1年前とは大きな差です。

ワクチン接種は昨年末から少しずつスタートしました。
私の周囲にもワクチンを受けた人が増えてきました。

OVER 50(50歳台)は、
一般には今年の6月ぐらいから
順番が回ってくるらしいですが、
医師、中学校教師、
作曲家ヴェルディが音楽家のために作った老人ホーム
「カーサ・ヴェルディ」に勤める友人などは、
すでに2度目のワクチンも済ませています。

以下のリンクはワクチンの進行具合です。
最初の黄色の数字が
1度目のワクチン接種済みの人数
(全国民に対しての%を表示)、
次のグリーンの数字が
2度目のワクチン接種済みの人数を示しています。

https://lab24.ilsole24ore.com/numeri-vaccini-italia-mondo/

2021-05-01-SAT