COLUMN

大嫌いだった。

山下裕文

夏のショートパンツでたいへんな人気を博した
メンズブランドMOJITO(モヒート)の山下裕文さん。
今回、「weeksdays」で扱わせていただく
「ニット」によせて、
思い出話を書いていただきました。
そして、今回のアイテムについても!

やました・ひろふみ

1968年熊本生まれ。服飾専門学校を卒業後、
スタイリストのアシスタントを経て
原宿「PROPELLER」でバイヤー、プレスなどを担当。
米国ブランドの日本初上陸のさい、
ショップのジェネラルマネジャーに。
独立してからは、英国系ブランドやアウトドアメーカーまで
さまざまなアパレルブランドの
コンサルティングを担当したのち、
2010年に、作家・ヘミングウェイの世界観を
ひとつの哲学としてデザインにおとしこんだ
メンズウェアブランド「MOJITO」を立ち上げる。

子供のころに苦手だったものでも
歳をとるに連れて好きになるものがある。
例えばにんじんやピーマンはその代表格と言えるだろう。
ぼくの場合はというと、食べ物ではないが
ニットも大嫌いだった。
セーターやマフラーはもちろん
ニットキャップや手袋(毛糸で編まれた手袋)なんて
もう絶対に、無理なアイテムだった。

ニットを好まない理由はただひとつ、
なんとなく弱そうにみえるからである。
だからぼくは10代の後半ごろまで
ニットの類を身に付けた記憶がほとんどない。

そんなニット嫌いの僕が
好んでニットを身に付けるようになったのは、
20代になってからのこと。
映画や雑誌をみてガンジーセーターや
フィッシャーマンズセーターをかっこよく着こなす、
いわゆる男服のカッコイイ着こなしに触発されたのだ。
そしてニットを好むようになった理由はただひとつ、
なんとなく強そうにみえるからである。

20代のころは未脱脂で骨太な
フィッシャーマンズセーターを好み、
30代ではパジャマにしても快適な
カシミヤの肌さわりの良さを知り、
40代ではハイゲージのカーディガンを着るようになった。

そうしていまやそんな僕がニットをつくっている。
しかも、今回のアイテムは、
ぼくが20代から40代までに着用してきたニットの
好きなところを足し合わせ、
アメリカンレッドクロスのビンテージニットをベースに、
MOJITOらしくアップデートしたものだ。

使用した原料は子羊(ラム)と成羊の中間期に刈りとられた
ラム独特の光沢に柔軟性と成羊の弾力性を持ち合わせた
オーストリア産のウィナーズという原料がメイン。
そこに、タスマニア地区の繊維が細いファインメリノを
ブレンドして作られた毛糸を使用している。
両方をブレンドすることによりフワフワし過ぎず、
なおかつチクチクしにくい
アイテムになるように仕上げている。

はたしてこのニットは弱そうに見えるんだろうか、
それとも強そうに見えるのだろうか。
いまの僕は「そんなこと、どっちでもいいや」と、
できあがったニットを手に、
早く寒くならないかとニンマリしているのである。

2018-10-14-SUN