1970年うまれの同い年。
「weeksdays」と「ほぼ日」を
愛読してくださっているという
坂井真紀さんをおむかえしました。
坂井さんがずっとほしかったけれど
タイミングをのがして買えなかったという
「ベトナムのかご」のサンプルを使っていただき、
その感想をぜひ、というおはなしから、
じぶんたちの年齢のこと、
似合うものが変わってきたはなし、
からだをつくること、
いまの仕事のこと、
だいじなインプットのこと、
そして子育てのこと。
ふたりのおしゃべり、どうぞおたのしみください。

写真=有賀 傑
スタイリング(坂井真紀)=梅山弘子
ヘアメイク(坂井真紀)=ナライユミ
ヘアメイク(伊藤まさこ)=草場妙子

坂井真紀さんのプロフィール

坂井真紀 さかい・まき

1970年、東京生まれ。俳優。
一女の母。
1990年、三井不動産の
4代目リハウスガールに選ばれる。
1992年にテレビドラマ
「90日間トテナム・パブ」で役者としてデビュー。
以後、多数のドラマ、映画、舞台、バラエティで活躍。
最近ではNHK総合 連続テレビ小説
「おかえりモネ」に出演。

●公式サイト
http://sakaimaki.jp/

その6
ちゃんと生きる。

伊藤
そういえば、坂井さんはどうして女優さんを? 
すごくたいへんな仕事じゃないですか。
坂井
たしかにそうですよね。
この仕事を選ぶって、なんだか変だなって、
自分でやっていても、そう思います。
わたし、フランスの女優さんに憧れたんです。
おかしいですね、若い時って。
憧れたことを、やりたいことに結びつけちゃう。
伊藤
フランスの女優さんに憧れるの、わかります。
姿かたちのきれいさだけじゃなくて、
ほんとに人間を見ている感じ、
そのままが映し出されている感じがしますから。
坂井
そうですよね。
伊藤
それは映画がきっかけ?
坂井
はい、映画がきっかけです。
それこそ『Olive』の誌面で
紹介される女優さんたちが、
みなさんかわいくて。
でも‥‥娘がやりたいって言ったら、
やって欲しくないということがバレないように、
でも全力で止めますけどね。
伊藤
そうなんだ!
坂井
ふふふふ。
伊藤
大変だから?
坂井
はい。うん‥‥、不思議な仕事ですよ。
伊藤
へぇぇ。
坂井
楽しいですけれども、変だな、って思います。
でもきっと、どんな職業も、
その人の生き方みたいなものが
出るものですよね。
伊藤
そうだと思います。
そしてそれが一番多くの人の目に触れるのが、
お芝居の仕事かもしれませんね。
生き方がよくないと、
結果がよくならない職業だという気がします。
とくに舞台だと、生ものだから、
毎回違うじゃないですか。
坂井
そうですよね。
芝居の仕事は、浮き沈みのある
厳しい世界ですし、
長く続けられてきたことが
ラッキーだなと思っています。
それだけに、いつでも辞められるっていう心を、
どこかで持っているんですよ。
伊藤
へぇぇぇ! そうなんですね。
坂井
自分の意思さえあれば、
そして仕事さえあれば、
一生、続けられる仕事です。
けれども、
「絶対、ここじゃなきゃ」
って思ったらダメだ。
そういうふうに、思っています。
伊藤
Tシャツが似合わなくなった、みたいに、
女優さんとしての転機もあったんですか。
坂井
正直、この10年は
子育てが中心になっていたので、
仕事をセーブしていたんですね。
そのこともあって、
「自分」を見ていなかったんですよ。
なんだろう、不器用なんでしょうね、
子育てに夢中だった。
けれども、たまに「出る」仕事をして、
パッと自分を客観的に見た時に、
「え?」って思ったんです。
それはTシャツが似合わなくなったのと近くて、
心持ちだったり、意識だという気がします。
この年齢になると、自分への意識があるかないか、
なにを選ぶか選ばないかみたいなことを
キチッとしていないと、
Tシャツが似合わなくなる、
それと同じことが仕事でも言えるんでしょうね。
けれども、それって、本当にちょっとしたことで、
変わる気がするんですよね。
なんだかすごく抽象的なんですけど。
伊藤
そっか、女優さんとしての転機というよりも、
やっぱり、生きていくなかで、
いろんな転機があるんですね。
それが仕事に反映する。
坂井
そう。生きていくほうが中心だと思います。
伊藤
うんうん。そうですね。
坂井
だから、ちゃんと生きていないと、
どんな仕事でも、伝わっていかない。
伊藤
それは、きっと、
「ちゃんと食べる」ことにも繋がりますよね。
坂井
そうですよ、ちゃんと食べなくちゃ!
伊藤
ちゃんと食べている、
ちゃんと寝ている人って、
やっぱり元気ですよね。
すこやかだし。
坂井
そうですよね(笑)。
伊藤
わたしも時間をいとわずに
がむしゃらに仕事ができる時期があったけれど、
最近はもう、寝る時間を確保しないと、
無理な歳になりました。
そのかわり、朝、日の出とともに起きてね。
坂井
そんなに早く?
伊藤
起きちゃうの。
今日は4時半ぐらい。
坂井
寝るのは何時ですか。
伊藤
9時半とか、10時とか。
その時間になると、
もう使い物にならなくなっちゃう。
坂井
(笑)。
伊藤
以前、家に人がよく遊びに来ていたときは、
9時過ぎると、私がコックリコックリ。
みんなは元気に飲んでいるのに、
「そろそろ帰ろっか」って。
坂井
(笑)じゃあ朝、4時半に起きて、
すぐお仕事を?
伊藤
はい、夜のうちに来ていたメールに
返事をしてから、原稿を書きます。
その時間がいちばん書けるんですよ。
会社員のみんなが出社する頃には、
わたしの原稿仕事は終わっています。
それぞれの担当編集者の出社時間までには
わたしの原稿がメールで届いている、
というリズムにしたくて。
「伊藤さんの原稿は朝イチに来る」
って覚えてくれているんじゃないかな。
坂井
ということは、
いろいろなお仕事を、
午前中にやってしまう?
伊藤
そうですね、原稿を送ったら、
ストレッチをして、床の拭き掃除をします。
そうすると、ボチボチ返事が来はじめるので、
それに返信をすると、お昼くらいかな。
坂井
すごい!
(つづきます)
2021-08-04-WED