鋼正堂のうつわ、
あのひとのつかいかた。
[その1]額縁のように。
A.K Labo 庄司あかねさん
(パティシエ)前編
内田鋼一さんと伊藤まさこさんが立ち上げた
うつわのブランド「鋼正堂」(こうせいどう)。
生産拠点である四日市から届いたばかりのうつわを、
吉祥寺「A.K Labo」のパティシエ、
庄司あかねさんに使っていただきました。
美しくておいしい菓子づくりの名人である庄司さん、
どんなふうに使ってくださるでしょうか。
(取材・文=伊藤まさこ 写真=有賀傑)
庄司あかねさんのプロフィール
しょうじ・あかね
パティシエ。
前職のグラフィック・デザイナー時代に、
料理本のデザインがきっかけで菓子作りの道へ。
渡仏し菓子作りを学び、
都内でのカフェ勤務を経て
2003年、吉祥寺に
伝統的なフランス菓子を提供する
パティスリー&カフェ「A.K Labo」を開業。
伝統的なフランスの郷土菓子と、
新作の菓子をあわせて紹介している。
●twitter
●A.K LaboのFacebook
ここに来れば、
おいしいフランス菓子が食べられる。
そんな安心感がある、あかねさんのお菓子。
素朴で実直。
きちんと正統派なんだけれど、
お店に漂う雰囲気は、
どこか親しみやすく、かわいらしい。
ああ、こんなお店が家の近所にあったらいいのに、
と願わずにはいられないお店です。
今回は、あかねさんに
鋼正堂の器を使っていただくことに。
「スープ皿にクレメダンジェを。
まわりにはエルダーフラワーのジュレを添えて」
どの位置から撮るのがいいですか? と尋ねると
「上からがいいかな」とあかねさん。
(料理の撮影の時は、
その一皿が一番いい顔をしているアングルを
たずねるようにしているのです。)
白いお皿にフワッフワのクレメダンジェとジュレ、
そのまわりにはフランボワーズなどのベリー類。
皿自体に深さがあるので、ジュレもすくいやすく、
かつ上から見ることで、リムが額縁のよう。
おいしそう、そして美しい!
「白い器は、どんなものをのせても相性がいいですね」。
なんとあかねさん、家で使っている器は、
すべて「白」なんですって。
「器って、それこそ世の中に数えきれないほどあるから、
何かひとつに絞らないと無限に増えてしまう。
だからひとつ決め事を作ったんです。うちは白だけって!」
作家が作ったもの、古いもの。
質感もいろいろな白い器を少しずつ集めているのだそう。
厨房からいい香りがするなぁと思って覗いてみると、
クレームブリュレを焼いている最中。
オーブンから出して、
カソナードをかけ、バーナーでキャラメリゼ。
耐熱皿が耐熱してる!
なかなか家では見ることのできない、
この光景に一同、大興奮です。
しばらく冷まして、
「はい、どうぞ」と出してくれたのがこちら。
大きな方のプレートを下皿にし、
ブリュレをのせ、
空いた部分にベルベーヌの葉をあしらってくれました。
耐熱皿をちょっと横にずらすのがポイント。
フレッシュなベルベーヌは、
飾りだけではないんです。
食べてびっくり、ブリュレの中の生地にも
ほんのりベルベーヌの香りが‥‥。
「牛乳に生の葉を入れて煮出し、風味をつけました」
一口食べると、鼻からそこはかとなく抜ける大人の香り。
ベルベーヌはお茶しか飲んだことがなかったけれど、
こんな使い方もあるんだ‥‥。
少し苦いキャラメリゼとも相まって奥深い味わい。
プロってすごいなぁ。