かごをさがして信州へ。
前編 「赤棒」と「製白蔓」。
今回抽選販売をする「あけびのかご」。
その買い付けのこと、製作のようすを、
たっぷりの写真とともにおとどけします。
(写真=沖田悟)
伊藤まさこさんが
かごの買い付けに出かけたのは、
寒さのきびしい2月のことでした。
東京から松本、戸隠へ、そして野沢温泉へ。
それは「生活のたのしみ展」の、仕入れの旅でした。
松本や戸隠で仕入れた竹かごは
「生活のたのしみ展」で販売をするために。
そして、つくるのに時間のかかるあけびのかごは、
できあがるのを待って「ほぼ日ストア」で販売をしよう。
そんな計画を立てたのでした。
あけびのかごを待っているあいだに、
伊藤さんと「ほぼ日」は
「weeksdays」を立ち上げました。
そうして訪れた冬の野沢温泉。
訪ねたのは、「三久工芸」さん。
さんきゅうこうげい、と読みます。
ここのかごと伊藤さんの出会いは
いまをさかのぼること十数年前。
松本の民芸品店で
伊藤さんがひとめぼれし、購入したかごがありました。
編み目のうつくしさ、形の安定しているところ、
持ち手のじょうぶさ。
あけびの風合いをいかして、表皮をつけたまま編む
「赤棒」とよばれるそのかごは、
伊藤さんの日々のくらしでも、
そしてスタイリングの仕事でも、
ずいぶん活躍したといいます。
そのかごが野沢温泉の「三久工芸」で
つくられていることを知った伊藤さんは、
それから、幾度か野沢温泉を訪ね、
三久工芸に足を運びました。
そこは、三代目になる久保田敏昭さんと、おくさま、
そして敏昭さんの弟さんである直昭さんが切り盛りする、
ちいさな工房でした。
「あけびのかご」は、正確には
「あけび蔓細工」といい、2つの種類があります。
自然そのままの風合いをいかし、
赤茶色の表皮をつけたまま編まれる「赤棒」(あかぼう)、
表皮を温泉で剥いて編まれる「製白蔓」(せいはくづる)です。
一般的によく見られるのは「赤棒」。
伊藤さんが最初に買ったのもそちらでした。
そのうち「製白蔓」の存在を知り、
つるつるとした気持ちのよい手触り、軽さ、
年月を経て変化していくようすに、
さらに惚れ込んでいったといいます。
今回「weeksdays」でご紹介するかごは「製白蔓」です。
じつは、野沢温泉では、この「製白蔓」のほうが、
よく知られ、使われてきました。
ふるい謂われでは、田んぼ仕事のとき、
馬鍬(まぐわ)に引っかかっても切れない
強い蔓があり、それを調べてみたところ、
皮のむけたあけびの蔓だったと、
そんなお話に由来しているのだそうですよ。
(後編につづきます)