「weeksdays」が金沢の老舗の酒蔵である
「福光屋」さんと組んで、日本酒のセットを販売します。
じつはこの企画、「weeksdays」がはじまる前の
2018年から、いっしょに、あたためてきたもの。
当時、「ほぼ日」がお酒を販売する
免許を持っていなかったことなど、
いろんな事情で中断していたのですが、
ようやく販売のしくみがととのったところで、
あらためて「基本のお酒を」ということになりました。
はじめて、ですから、ちょっとずつ、いろいろ。
名前は「ちびちびセット」といいます。
一合瓶の日本酒が6本と、おつまみが6種類、
さらに熱燗をおいしくするものがひとつ、
それから20種のおつまみレシピがのった
『ちび本』が、松林誠さんの描く
かわいい箱に入っています。
この商品ができるまでのこと、
福光屋の担当ディレクターである利岡祥子さん、
そして松林誠さんと、
金沢・高知・東京をむすんで話しました。
(松林さんは途中から参加します。)

利岡祥子さんのプロフィール

利岡祥子 としおか・さちこ

1984年に福光屋入社。
商品開発や広告宣伝、広報担当を経て、
1999年に福光屋の初めての直営店を
東京・銀座に立ち上げる。
現在は直営店6店の運営、
化粧品事業、海外展開を統括している。
直営店の企画やセレクトを通して、
作家との繋がり、モノとの関係を深めてきた。
九谷焼の窯元に生まれ、
金沢の伝統工芸や食への興味も尽きない。

●福光屋ウェブサイト

松林誠さんのプロフィール

松林誠 まつばやし・まこと

1962年、高知県高知市生まれ。
創形美術学校研究科版画課程修了。
2000年、パリ国際芸術会館に1年間滞在し活動、
2003年、高知のセブンデイズホテルプラスの
アートワークを手がける。
1992年より精力的に個展、グループ展を開く。
1995年の第12回ザ・チョイス年度賞大賞を受賞、
ほか版画の公募展で入選多数。
現在は高知に居を構え、創作活動をつづけている。
weeksdaysでは
「ちいさなアートが暮らしをかえる。」に登場。

●松林さんのウェブサイト

その3
松林さんの活躍。

伊藤
松林さんが(オンラインに)いらしたみたいです。
一同
わあーっ(拍手)。
伊藤
松林さん、こんにちは! 
すごくかわいいのができて、うれしいです。
最初、いろいろな色を提案してくださったなかから、
わたしたちが黒を選びましたが、
それはどう思われましたか?
松林
あのぅ、実は‥‥黒は、原稿のつもりで、
印刷の指定で色をつけてもらおうかなと
思っていたんですよ。だから黒で塗っておけば、
たとえばピンクとか緑とか青とか、
違う色で印刷を仕上げたいときにもいいかなと思って。
伊藤
あら‥‥! そうだったんですね。
そうしたら、私が「黒がいい!」って飛びついた。
一同
(笑)。
松林
だから「あ、黒のままなんだ!」って。
伊藤
でも、結果、よかったですよ。
それが基本となって、本も黒にしましたし。
お酒、おつまみとのバランスも本当にいいんです。
そういえば「松林さんに箱を作ってもらおう」
という発想、ちょうど、高知の、
セブンデイズホテルでもなさっていて。
松林
『7days laatikko』ですね。
箱に絵を描く依頼、
ほぼ同時にいただいたんです。
びっくりしました。
伊藤
そうだったんですか、すごい。
松林
不思議です。
伊藤
私が、「松林さんにお願いしたい」みたいなことを
言いだしたら、福光屋の社長室に、
松林さんの絵があると知り、
「ええっ?」みたいになって。
利岡
そうなんです。
伊藤
松林さんは、まだ商品の完成形を
ごらんになっていないんですよね。
松林
あ、まだ見ていないです。
僕の絵のラベルも、できたんですか。
伊藤
できました! ピンクのラベルですよ。
(オンラインのカメラに)見えますか?
松林
あ、いいですね!
伊藤
かわいいですよね。ラベルも箱も。
松林
箱の白いドットも、一番最初に送ったのが、
ドットのリズムがもっと整然としていたんですよ。
伊藤
はい。けれども、もうひとつ書いていただいた、
アルファベットをちりばめた、
ちょっとふぞろいのものを見ていたら、
こっちのほうがいいかな、と。
文字が水玉に馴染んでいるのがかわいかった。
松林
こうやって仕上がってみたら、
水玉というよりも、
雨や雪が降っているようにも見えますね。
伊藤
ああ、たしかに。
そうしたら、色を変えたりすれば、
ほかの季節、たとえば夏バージョンもできるかも?
松林
そうですね、
そんなふうに使っていただけたらうれしいです。
伊藤
箱のデザインで、試行錯誤はありましたか。
松林
いや、正直言って、まったくなくて。
伊藤
ええ、すごい!
松林
見本で送ってもらった無地の箱に、
絵の具で何パターンか描いたものを、
金沢での展覧会のときに利岡さんに持って行って、
それがそのまま採用された、という感じです。
お酒のラベルになったのも、
そのときに描いたもののひとつです。
伊藤
そうだったんですね。
松林さんは、日本酒は?
松林
飲みますね。最近すごく。
伊藤
どんなアテで飲むのが好きなんですか。
松林
やっぱり、カツオですね。
高知に住んでいるので。
伊藤
ああ、いいなあ、いいなあ。
でも、金沢も、いいなあ。
利岡
はい。金沢だと冬はブリですね(笑)。
伊藤
ねえ、いいなあ。寒ブリ。
そうそう、『ちび本』の松林さんの書き文字! 
これはオンラインでミーティングをして、
その場で依頼をしたら、
すごいスピードで届きました。
松林
これも本当に、一発書きだったんです。
「絵として文字を書いているんですか」
と言われるんですが、
ふだんからこういう文字なので、早いんです。
伊藤
わたし、松林さんからの手紙、取ってありますよ。
平仮名と漢字と片仮名のバランスが最高なんですよ。
こうして使わせていただくと、
全てをフォントを使ってデザインをするのと違い、
印象がやわらかくなって、よかったです。
松林
はい(笑)。
伊藤さんのレシピ、どれもおいしそうですね。
伊藤
簡単なものばっかりでしょう?
利岡
そこがいいんですよ。
伊藤
作れるかな、みんな。
──
編集をしながら読みましたが、
作れると思います。
利岡
「じゃがいものおひたし」
作ってみました。おいしかったですよ。
伊藤
意外な味ですよね。
利岡
本当に透き通って、おいしくて。
伊藤
みなさん作ってくださるといいな。
この「ちびちびセット」は、
「weeksdays」のほかに、
福光屋さんでも。
利岡
1週間遅れで、
玉川店ミッドタウン店金沢店
公式オンラインショップで販売します。
伊藤
おおーっ。それもうれしい。
よろしくお願いします。
松林さん、言い残したことはないですか。
松林
ああ。この黒い面、白いペンを使って、
ご自分で絵とかメッセージ、サインを
入れたらいいかなと思うんです。
伊藤
いいですね! 「こんなふうに」
っていう例を描いていただけたらうれしいな。
松林
はい、わかりました。
あの黒い面は、きっと
「weeksdays」や福光屋さんのロゴや
商品名が入るんだろうなと思って
あけておいたんですが、
そのまんま黒だったので‥‥。
伊藤
あっ、また、作家の意図と違うことを、
わたしたち‥‥。
松林
いえいえ、いいんです、
なので、みなさん、自由に使って
いただくのもいいかなと思って。
伊藤
いいですね!
松林さん、利岡さん、
ありがとうございました。
いいものができて、ほんとうにうれしいです。
利岡
こちらこそありがとうございました。
金沢にいらしてくださいね。
松林
高知にも! 
ありがとうございました。
(おわります)
2021-11-03-WED